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(公開:2024/03/27)

健康経営でメンタルヘルスをケアするには?事例や対策方法を紹介


健康経営でメンタルヘルスをケアするには?事例や対策方法を紹介

「健康経営についてなんとなく理解しているけれど、何をしたらいいのだろう?」

「健康経営の具体的なサポート体制について知りたい」

 

このような疑問を抱く方は多いのではないでしょうか。厚生労働省の調査によると、メンタルヘルス対策に取り組む企業の割合は63.4%です。現在多くの企業が、従業員の健康の保持増進に取り組んでいます。

 

健康経営においてメンタルヘルスケアを導入することで、従業員はイキイキと働くことができます。その結果、会社全体の生産性も向上するでしょう。本記事では、メンタルヘルスケアの重要性や取り組み方を解説します。企業の導入事例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

参考:厚生労働省『令和4年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況』




 

         

1.健康経営においてメンタルヘルスが重要視されている理由


健康経営においてメンタルヘルスが重要視されている理由としては、仕事の負荷が理由でメンタル面に不調をきたす人が増加傾向にあるためです。

 

令和4年に実施された厚生労働省の調査では、現在の仕事に関して、強い不安やストレスを感じる事柄がある労働者の割合は82.2%です。これは、令和3年度調査の53.3%から30%以上増加しています。

 

また、業務によるメンタルヘルスの不調を原因とした精神障害の発症に対する労災補償についても、請求件数や認定件数ともに、増加傾向にあるのです。

 

メンタル不調は、従業員本人のケアも重要ですが、企業側もさまざまな方法で対策をとることが求められます。企業側がメンタルヘルスケアを軽視すると、かけがえのない資産である人材にネガティブな影響を与える恐れがあるため、早急な対策が重要です。

参考:厚生労働省『令和4年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況』


  

 

2.メンタルヘルスが不調をきたす要因



メンタルヘルスが不調をきたす要因として以下の5つが挙げられます。

  • 多大な業務量
  • コミュニケーション不足・孤独感
  • 運動不足
  • 偏った食事
  • 職場でのハラスメント
          

2-1 多大な業務量

厚生労働省の調査では 「仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスを感じる」と回答した労働者のうち、56.7%がその原因を「仕事の量・質」、35.0%が「仕事の失敗、責任の発生等」としました。

キャパシティを越える業務量や、残業など長時間労働が続くと、メンタルヘルスにも不調をきたします。また、仕事で失敗が続くと、気分が落ち込み、集中力を維持できなくなる場合があります。

企業側は、従業員の業務量は適切か、残業時間が増えていないかなど、こまめに確認することが重要です。特にメンタル不調を抱える従業員がいる場合、必要に応じて、業務量を見直すことも検討しましょう。 

参考:厚生労働省「職場におけるメンタルヘルス対策の状況」

          

2-2 コミュニケーション不足・孤独感

職場でのコミュニケーション不足や、雰囲気に馴染めず孤独感を感じることで、メンタル不調になる場合もあります。

 

特に、テレワークが浸透した昨今では、メンタル不調を抱える若手の従業員が増加傾向にあります。出社する場合は、他の従業員と休みや食事の時間にコミュニケーションを取る機会がありましたが、テレワークでは、最低限の業務に関する会話のみをする企業もあるでしょう。

 

孤独感から仕事のモチベーションが下がり、メンタル不調になるケースもあるため、注意が必要です。企業側は、従業員同士が積極的にコミュニケーションを取れるよう、配慮することが重要でしょう。

 

2-3 運動不足


メンタルヘルスには「セロトニン」という神経伝達物質が大きな影響を与えています。セロトニンは集中力や活力を左右する物質です。セロトニンが増えると、心が安定し幸福感を得やすくなります。セロトニンは、適度な運動によって分泌が盛んになることが分かっています。

 

世界保険機関(WHO)調査の結果で、日本人の3人に1人が運動不足という状況が明らかになりました。社会人になると運動する時間がなかなか確保できないこともあるでしょう。仕事や子育て、家事、介護などに追われ、運動ができないと悩む人は少なくありません。

 

運動不足解消のために、いきなり激しい運動をする必要はありません。まずは、簡単なストレッチや体操、散歩から始めて、習慣化することが大切です。

 

参考:一般社団法人 日本肥満症予防協会「WHOの運動推進グローバル計画 運動不足は世界に蔓延 日本でも3人に1人が運動不足 「世界行動計画」の日本語版を公開」



2-4 偏った食事


メンタルヘルスには食事で接種する栄養不足も関係しています。鉄分やビタミン類、ミネラルなどが不足すると、うつ病になる可能性が高まることが分かっています。

また、うつ病は糖尿病や肥満などの生活習慣病を誘発する原因になる場合があるため、注意が必要です。肥満や脂質異常症に該当する人は、そうでない人と比較し、発症する割合が1.53倍も高いという研究結果もあります。メンタルヘルスを良好な状態に保つためには、バランスのよい食事を摂取する必要があります。


2-5 職場におけるハラスメント

 

ハラスメントは、人に対する「嫌がらせ」や「いじめ」などの迷惑行為全般を指します。

 

ハラスメントには、職務上の地位の高い者が、業務の範囲を超えて苦痛を与える「パワハラ」や、性的な言動で他者を不快にさせる「セクハラ」、妊娠・出産・育休などを理由に不当な扱いをする「マタハラ」などがあります。

 

厚生労働省は、メンタルヘルスの不調に関する労災認定の基準として「心理的負荷による精神障害の認定基準」を定めています。ハラスメントは、欠勤率や離職率の増加だけでなく、労働者からの損害賠償請求が生じる恐れもあるため、十分に対策を取る必要があります。

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3.健康経営においてメンタルヘルスケアに取り組むメリット



健康経営において、メンタルヘルスケアに取り組むメリットには主に以下の3つが挙げられます。

  • 離職率が低下する
  • 生産性が向上する
  • 健康経営に関する認定を受けられる

 

3-1 離職率が低下する


働きやすい職場環境に整備されると、従業員が心身ともに健康な状態で仕事ができます。健康な状態で仕事ができると従業員の満足度が向上し、職場で働き続ける従業員が増えます。その結果、離職率の低下が期待できるでしょう。


3-2 生産性が向上する


メンタルヘルスが不調により、従業員の集中力や判断力、決断力が低下する場合があります。従業員がメンタル不調に陥ると本来のパフォーマンスが発揮できず、生産性が低下する恐れがあります。

さらに、1人の従業員が休職すると、他の従業員にもネガティブな影響が出る可能性があるため、注意が必要です。職場全体の雰囲気が悪くなり、他の従業員の生産性が低下する場合があります。こうした悪循環に陥る前に従業員のメンタルヘルスをケアすることで、結果的に生産性は向上すると期待できます。


3-3 健康経営に関する認定を受けられる


経済産業省は健康経営を普及させるため「健康経営優良法人認定制度」を用意しています。健康経営を推進している企業を社会的に評価することで、健康経営の認知度向上や取り組みの促進を図っています。

 

健康経営優良法人に認定されるメリットには、主に以下の3つがあります。

 

  • 人材確保が有利になる
  • 企業のイメージアップに繋がる
  • 自治体や金融機関などのインセンティブが受けられる

 

大規模法人は2,488法(ホワイト500を除く)人、中小企業法人は16,233法人(ブライト500を除く)が、2024年の健康経営優良法人に認定されました。

 

参考:「経済産業省」健康経営優良法人認定制度



4.健康経営におけるメンタルヘルスケアの取り組み方



健康経営におけるメンタルヘルスケアの取り組み方は、ストレスチェックをはじめ、さまざまな方法があります。また、メンタルヘルスケアは以下の3本柱から成り、段階に応じて適切なケア方法が異なります。


 一次予防:メンタルヘルス不調の未然予防

 二次予防:メンタルヘルス不調の早期発見と適切な対応

 三次予防:職場復帰支援


それぞれの段階でどんなケア方法を行うべきかも、あわせて確認しましょう。

4-1 ストレスチェックを実施する

ストレスチェックとは、従業員が抱えるストレスの度合いを計測する検査です。2015年から、労働者を常時50人以上雇用する企業に義務付けられています。

 

ストレスチェックは、質問用紙や回答フォームを通じて、従業員のメンタル状態を把握します。ストレスチェックの結果は労働者本人も確認でき、自分のメンタル状態を把握することが可能です。ストレスチェックは、一次予防である「メンタルヘルス不調の未然予防」に該当する取り組みです。
 

参考:厚生労働省「ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等」

 

4-2 ストレスマネジメントに関する研修を行う

ストレスマネジメント研修は、ストレスマネジメントのノウハウを習得する教育プログラムです。ストレスマネジメント研修では、以下のような内容を学習します。

 

  • 自分の思考や行動パターン、ストレス要因の把握
  • 自分に適したストレス対処法の習得
  • ポジティブシンキングへの理解
  • コミュニケーションスキルの向上

ストレスマネジメント研修はストレスチェックと同様、メンタルヘルス対策の3本柱の一次予防に該当します。 ストレスマネジメントの研修を受けることで、従業員自らストレスを適切にコントロールできるようになります。これにより、個々のメンタル不調を予防でき、欠勤率や離職率を抑えることに繋がるのです。

 

4-3 産業保健スタッフによる相談対応

産業保健スタッフとは、産業医や衛生管理者、保健師などメンタルヘルスに関する専門スタッフを指します。産業保健スタッフは、メンタルヘルスに関する社内研修や、個人の健康情報の取り扱いなどを行い、心の健康づくりに関する中心的な役割を担います。

学校にある保健室のイメージに近いでしょう。従業員が常時50人以上在籍する事業所は、産業医と衛生管理者の専任が義務付けられています。また、産業保健スタッフなどによる相談対応は、メンタルヘルス不調を早期発見する段階である「二次予防」に該当します。


 
参考:厚生労働省「産業保健スタッフ」

4-4 職場復帰支援プログラムを作る

職場復帰プログラムとは、心の健康問題で休職中の従業員に向けて、休業から復職までの流れを明確にした手引きです。厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手続き」では、従業員の職場復帰にあたり、企業が行う職場復帰支援の内容が示されています。

 

職場復帰支援プログラムの作成は、従業員と企業の双方にメリットがあります。企業の事情に合わせたプログラムを作成することで、休職中の従業員のサポートや対応方法が分かりやすくなるのです。また、職場復帰後に働く従業員も、プログラムがあれば少しでも不安や不満が解消されやすいので、職場復帰しやすいでしょう。

 

職場復帰支援プログラムはメンタルヘルス対策の3本柱の三次予防に該当します。従業員の生活の質や企業の労働力確保のためにも、職場復帰プログラムの立案は重要です。

4-5 従業員支援プログラム(EAP)を導入する

EAPとは、精神的・身体的な不調を訴えた従業員のケアを目的とした支援プログラムのことをいいます。EAPの目的は、従業員が健康で働くために必要な相談窓口を設けて、仕事のパフォーマンスを向上させることです。EAPには、社内でEAP活動を行う「内部EAP」と、社外の機関を頼る「外部EAP」の2つがあります。

 

「内部EAP」は、企業内にEAPに従事するスタッフが常駐しているため、すぐに相談できるのがメリットです。一方、「外部EAP」は内部では話せないことも相談しやすいのが特徴です。

 

「内部EAP」と「外部EAP」ではそれぞれにメリット・デメリットがあるので、企業の実情に合わせて、どちらを導入するのか検討しましょう。多くの従業員支援プログラム(EAP)は、メンタルヘルス対策の3本柱の二・三次予防に該当します。


        

5.企業におけるメンタルヘルス対策の事例



実際にメンタルヘルス対策を行う企業の事例を見てみましょう。メンタルヘルス対策に力を入れている企業の事例は次の3つです。

 

  • ヤフー株式会社
  • 株式会社八天堂
  • 味の素株式会社
それぞれの企業の対策を参考に、自社で取り組むべき施策を検討してみましょう。

   

5-1 ヤフー株式会社


ヤフー株式会社は、メンタルヘルスケアの取り組みとして、以下を実施しました。
 

  • グットコンディション推進室の設立
  • 週1回の1on1ミーティング
  • 職場復帰プログラムの策定


ヤフー株式会社は、健康経営優良法人2023(大規模法人部門)の「ホワイト500」に7年連続で認定されています。社内では「グッドコンディション推進室」を設置し、復職支援プログラムの充実や、業務配慮が必要なメンバーの情報共有システムの確立に取り組んでいます。

 

社内には産業医9名、保健師など看護職6名が勤務し、専門的知識を持った従業員がメンタルヘルスケアを行います。社内では「1on1」という制度を設け、上司と部下が最低週1回は、1対1で面談するようにしています。これにより、上司が部下の業務や体調の変化について、早期に気づくことが可能となりました。

          

5-2 株式会社八天堂


株式会社八天堂は、メンタルヘルスケアの施策として、次のような取り組みを行っています。
 

  • 臨床心理士によるケア体制の充実
  • 毎年社内アンケートを従業員全員に実施

株式会社八天堂では、臨床心理士のいる病院と提携し、すぐにオンライン相談に繋げる仕組みを整えています。

社内アンケートでは、働く環境への満足度や上司からのサポート満足度など、さまざまな切り口で17項目の質問をしています。従業員個々人の自己肯定感を高め、より良い職場環境作りに活かしています。

           

5-3 味の素株式会社

株式会社八天堂は、メンタルヘルスケアの施策として、次のような取り組みを行っています。
 

  • 産業保健スタッフによる全員面談
  • メンタルヘルス回復プログラムの実施

味の素株式会社では産業医9名、保健スタッフ13名の体制で、従業員のメンタル不調の予防に注力しています。また、最低でも年に1回、全ての従業員が産業保健スタッフと面談を行い、必要に応じて適切な保健指導をしています。

また、味の素株式会社の独自プログラム「メンタルヘルス回復プログラム」も導入。自身の性格や価値観を客観的に見直し、職場復帰を前提としたシミュレーションを繰り返します。

 


6.まとめ



メンタルヘルスケアを行うことで、従業員の心の健康が維持できると考えられます。結果として従業員の仕事のパフォーマンスが上がり、企業の生産性向上が見込めるでしょう。

 

株式会社イーウェルでは、健康経営推進支援サービスを提供しています。業務整理やアウトソーシング、健康データ見える化など健康経営に関する業務を幅広くサポート。ニーズに合わせた最適なプランをご提案するので、お気軽にお問い合わせください。

健康経営の第一歩からPDCAの循環まで「健康経営推進支援サービス」

健康経営を推進するうえで必要な「健康経営度調査」「健康投資管理会計ガイドライン」などを活用して、企業の健康経営の第一歩からPDCAを回していくお手伝いをするコンサルティングサービスです。

 

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著者情報

株式会社イーウェル ウェルナレ事務局

「人も、企業も、ウェルビーイングへ。」をテーマとして、企業の健康経営や福利厚生の支援を行う株式会社イーウェルが運営する、BtoB(人事総務向け)オウンドメディア「ウェルナレ」の編集部。
2021年7月にメディアリリース後、毎年60回以上、有名企業様とのコラボセミナーや官公庁の専門分野に特化した方を招いてのカンファレンス、大学教授による福利厚生勉強会の開催や専門家記事の掲載などを実施し、多くの方に好評いただいております。
人事部署や経営者が、会社のウェルビーイングを向上されるためのヒントを探して、日々活動しています。

 

    

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