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2024/03/01 (公開:2022/10/12)

健康診断は会社の義務?種類や費用、対象者など理解しておくべきポイントを解説


健康診断は会社の義務?種類や費用、対象者など理解しておくべきポイントを解説

企業や組織が実施する、従業員へ向けた健康診断にはさまざまな種類があります。また健康経営に取り組む中で「健康診断受診100%」を健康宣言に取り入れている企業も多くみられます。

健全な企業運営を行うためにも、健康診断はどういったタイミングで、どの対象者に向け行うか?など理解しておく必要があります。

 

         

1.健康診断は会社の義務?

企業や組織は、健全な企業運営を行うためにも、また従業員の勤務状態・業務内容に合わせた健康診断を実施し、心身の健康を守る義務があります。



   

1-1 健康診断の実施は法律で義務化

企業や組織は労働安全衛生法第66条に基づき、労働者に対して、医師による健康診断を実施しなければなりません。

いわゆる法定健診ともいわれるように、法律で定められた義務になります。

   

1-2 健康診断を実施しないと罰則

労働安全衛生法第120条1項に「五十万円以下の罰金に処する」とあり、罰則が設けられています。

             

2.健康診断の2つの種類

健康診断には大きく分けると2種類あります。2種類とも従業員の健康を守るのが目的ですが、対象者や検査項目などが異なります。

          

2-1 一般健康診断

すべての企業や組織が、条件を満たす従業員へ向け実施を行う健康診断です。

 

  • 雇入時の健康診断(安衛則第43条)
  • 定期健康診断(安衛則第44条)
  • 特定業務従事者の健康診断(安衛則第45条)
  • 海外派遣労働者の健康診断(安衛則第45条の2)
  • 給食従業員の検便(安衛則第46条)

 「雇入時の健康診断」と「定期健康診断」は多くの企業で実施すべき健康診断となります。この2つの健康診断については、次の項目で対象者・実施時期など詳細を説明したします。

「特定業務従事者の健康診断」は労働安全衛生規則第13条第1項第2号(※1)に掲げる業務(よく謳われるのが深夜業務)に常時従事する従業員がその業務へ配置替えの際と、6か月以内ごとに行わなくてはならない健康診断となり、「海外派遣労働者の健康診断」は海外へ6か月以上派遣する際に、渡航前と帰国後に行う健康診断になります。

 

※1:労働安全衛生規則第13条第1項第2号に揚げる業務

  • 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
  • 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
  • ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務
  • 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
  • 異常気圧下における業務
  • さく岩機、鋲打機等の使用によって、身体に著しい振動を与える業務
  • 重量物の取扱い等重激な業務
  • ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
  • 坑内における業務
  • 深夜業を含む業務
  • 水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
  • 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
  • 病原体によって汚染のおそれが著しい業務
  • その他厚生労働大臣が定める業務       
        

2-2 特殊健康診断

法律で定められた有害な業務に常時従事する従業員に対して実施する健康診断です。

 

  • 高気圧業務健康診断(高圧則第38条)
  • 電離放射線健康診断(電離則第56条)
  • 特定化学物質健康診断(特化則第39条)
  • 石綿健康診断(石綿則第40条)
  • 鉛健康診断(鉛則第53条)
  • 四アルキル鉛健康診断(四アルキル鉛則第22条)
  • 有機溶剤健康診断(有機則第29条)
  • じん肺健康診断(じん肺法第3条、第7~10条)※
  • 有害業務の歯科健康診断(安衛則第48条)

 これら特殊健康診断は常時従事する従業員に対し、原則として、雇入れ時、配置替えの際及び6か月以内ごとに行わなくてはなりません。

※じん肺健康診断は管理区分に応じて1~3年以内ごとに1回。

特殊健康診断は業務ごとに検査内容が違います。そのため実施については最寄りの都道府県労働局・労働基準監督署に詳細を確認するとよいでしょう。

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3.健康診断の対象者と実施時期


多くの企業や組織が必ず実施を行う「雇入時の健康診断」と「定期健康診断」について、対象者と実施時期を確認しましょう。

          

3-1 雇入時の健康診断

 

安衛則第43条では企業や組織は、常時使用する従業員を雇い入れるときは、従業員に対し、医師による健康診断を行わなければならないと定められています。

 

「常時使用する従業員」が対象者になりますが、正社員はもちろんパート・アルバイト従業員も以下の通達(※)で該当する場合は対象者となります。

※平成19年10月1日基発第1001016号通達

1.期間の定めのない契約により使用される者であること。

なお、期間の定めのある契約により使用される者の場合は、1年以上使用されることが予定されている者、及び更新により1年以上使用されている者。

(なお、特定業務従事者健診<安衛則第45条の健康診断>の対象となる者の雇入時健康診断については、6カ月以上使用されることが予定され、又は更新により6カ月以上使用されている者)

2. その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分3以上であること。

上記1と2のどちらも満たす場合、常時使用する労働者となりますが、上記の2に該当しない場合であっても、上記の1に該当し、1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の概ね2分の1以上である者に対しても一般健康診断を実施するのが望ましいとされています。

 

なお、労働者派遣事業法に基づく派遣社員についての一般健康診断は、派遣元の企業や組織で実施し、有害業務従事労働者についての健康診断は派遣先の企業、組織で実施することとなります。

 実施時期については明確な定めはありませんが、通達(昭23.1.16基発第83号、昭33.2.13基発第90号)では「雇入れの際とは、雇入れの直前又は直後をいうこと」と記述があります。

また安衛則第43条で「ただし、医師による健康診断を受けた後、3月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない。」とあり雇用3カ月以内の検査項目を網羅した検査結果を従業員が提出した場合は健診実施を省略できるため、概ね3カ月以内に雇入れ健康診断を実施することが適切と考えられています。

            

3-2 定期健康診断

安衛則第44条では企業や組織は、常時使用する従業員に対し、一年以内ごとに一回、医師による健康診断を行わなければならないとされております。

対象者は「雇入れ健康診断」と同じ「常時使用する従業員」となります。
実施時期については、1年以内ごとに一回とされております。

また「雇入れ健康診断」と検査項目がほぼ同じの為、該当年度に雇入れ健康診断を実施している従業員は、こちらの定期健康診断は省略することができます。


        

4.健康診断の検査項目

前項でも記載しましたが「雇入時の健康診断」と「定期健康診断」の検査項目はほぼ同じです。

但し、「定期健康診断」の一部検査項目は医師が必要でないと認めるときは、省略することができます。

検査項目

雇入れ健康診断

定期健康診断

診察

既往歴及び業務歴の調査

自覚症状及び他覚症状の有無の検査

身体測定等

身長

体重

腹囲

血圧

視力

聴力検査

オージオメータ(1000、4000Hz)

胸部検査

胸部X線検査

喀痰検査

 

貧血検査

赤血球(RBC)

血色素(Hb)

肝機能検査

GOT(AST)

GPT(ALT)

γ-GTP(GGT)

血中脂質検査

LDLコレステロール

HDLコレステロール

中性脂肪(TG)

血糖検査

空腹時血糖(BS)もしくは随時血糖(BS)もしくは糖化ヘモグロビン(HbA1c)のいずれか1つ

尿検査

尿糖(US)

尿蛋白

心電図検査


●…必須検査項目

△…医師が必要でないと認めるときは省略することが出来る検査項目

  なお、「医師が必要でないと認める」とは、自覚症状及び他覚症状、既往歴等を勘案し、医師が総合的に判断することをいいます。したがって、以下の省略基準については、年齢等により機械的に決定されるものではないことに留意して下さい。  

 

定期健康診断(安衛則第44条)における健康診断の項目の省略基準

項目

医師が必要でないと認める時に左記の
健康診断項目を省略できる者

身長

20歳以上の者

腹囲

1. 40歳未満(35歳を除く)の者

2. 妊娠中の女性その他の者であって、その腹囲が内蔵脂肪の蓄積を反映していないと診断された者

3. BMIが20未満である者

4. BMIが22未満であって、自ら腹囲を測定し、その値を申告した者

胸部X線検査

40歳未満のうち、次のいずれにも該当しない者

1. 5歳毎の節目年齢(20歳、25歳、30歳及び35歳)の者

2. 感染症法で結核に係る定期の健康診断の対象とされている施設等で働いている者

3. じん肺法で3年に1回のじん肺健康診断の対象とされている者

喀痰検査

1. 胸部X線検査を省略された者

2. 胸部X線検査によって病変の発券されない者又は胸部X線検査によって結核発病のおそれがないと診断された者

貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査、血糖検査、心電図検査

35歳未満の者及び36~39歳の者




5.健康診断の費用負担は会社が行う?

 
健康診断は医療保険を使うことのできない自由診療のため、医療機関によって費用がまちまちです。その費用の負担先を確認しましょう。

          

5-1 健康診断の費用は原則会社が全額負担

1-1でも申し上げましたが、健康診断は企業や組織の義務のため、費用も企業や組織が全額負担することになります。

ただ保険者(健康保険組合など)の義務である特定健診や予防医療で実施している生活習慣病予防健診などに補助を出していることがあります。その補助を上手く利用して健康診断を実施することにより、費用軽減につながることもあります。

所属する健康保険組合の補助を活用しましょう。

           

5-2 再検査費用は基本的には従業員の自己負担

再検査を受けさせることは企業の義務ではありません。

そのため費用は、基本的には従業員の自己負担など各企業の判断に委ねられています。

厚生労働省の「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」で受診勧奨を行うことが適当であるとされていますが、罰則はありません。

ただ企業が負担すれば再検査を受けやすくなると見込めるため、受診勧奨のため費用を負担することも1つの方法です。


        

6.健康診断の結果の保管

 



検査結果の保管には従業員本人の承諾が必要のため、就業規則の中に「健康診断の受診」と「診断結果の保管」に関する内容を含めておき、従業員にあらかじめ周知しておくとよいでしょう。

また健康診断の内容は機微な個人情報となるため、情報が漏洩しないよう適切な保管が必要です。


        

7.定期健康診断の結果は5年間保存

労働基準法第109条では、企業や組織は、従業員の名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を5年間保存しなければならないとあります。健康診断の結果もこれに含まれるため、保管期間は5年間となります。



          

7-1 二次健康診断の結果も可能であれば保存

二次健康診断の結果も可能であれば保存し、従業員の健康状態を経年で確認できるとよいでしょう。

              

7-2 健康診断の結果を見るのは本人のみ

労働安全衛生法66条の5では、医師又は歯科医師の意見を勘案し、従業員の実情を考慮して、就業場所の変更や業務の転換、労働時間の短縮など適切な措置を講じなければなりません。しかし個人情報保護法の観点から言うと、企業は本人の承諾なく検査結果を見ることができません。

 

労働安全衛生法上、会社は従業員の健診結果を把握することが前提なため、健康診断を受診した時点でその結果を会社が把握することにも同意が得られた、と考えてよいでしょう。

 

労働安全衛生法で規定された検査項目については、その結果を会社が把握し、適切な措置を講じる義務があると考えられます。

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8.まとめ



企業や組織は、法律で義務化されている定期健診や業務内容に沿った適切な健康診断は必ず実施を行い、病気を早期発見し、従業員の心身の健康を守りましょう。

そのことが健康経営にも繋がり、従業員が心身ともに健康的に働けるよう環境を整備し業務の生産性向上にも繋がります。

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著者情報

株式会社イーウェル ウェルナレ事務局

「人も、企業も、ウェルビーイングへ。」をテーマとして、企業の健康経営や福利厚生の支援を行う株式会社イーウェルが運営する、BtoB(人事総務向け)オウンドメディア「ウェルナレ」の編集部。
2021年7月にメディアリリース後、毎年60回以上、有名企業様とのコラボセミナーや官公庁の専門分野に特化した方を招いてのカンファレンス、大学教授による福利厚生勉強会の開催や専門家記事の掲載などを実施し、多くの方に好評いただいております。
人事部署や経営者が、会社のウェルビーイングを向上されるためのヒントを探して、日々活動しています。

 

    

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