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2024/02/15 (公開:2024/01/10)

健康経営におけるストレスチェック制度とは? 義務化の対象となる企業も解説


健康経営におけるストレスチェック制度とは? 義務化の対象となる企業も解説

「ストレスチェック制度が義務化されたと聞いたけど、何をすればいいのかわからない」

「社内のリソースでは手が回らないのでなんとかしたい」

健康経営におけるストレスチェック制度は、社内環境の改善に役立つ反面、多くの事業者の悩みの種になっています。本記事では、そもそも健康経営とはどういったものであるのかから、ストレスチェック制度の詳細、義務化となる企業、注意点や費用を抑えるポイントまでわかりやすく解説します。

 

         

1.そもそも健康経営とは


経済産業省による健康経営の定義は以下の通りです。 

『「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。』

引用元:経済産業省「健康経営」


健康経営が重視される背景としては、高齢化や人手不足、国民医療費の増加などが挙げられます。

 

健康経営を導入すると、生産性が向上するだけでなく、離職率の低下や不祥事の予防ができるため、安定した経営を実現できます。健康経営は以下の記事でも詳しく解説しているので、ご覧ください。


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2.ストレスチェック制度の概要



ストレスチェック制度とは、従業員のストレスについて調べ、職場環境の改善に繋げる制度のことです。従業員が50人を超える企業の場合、ストレスチェックの実施義務ので注意が必要です。なお、50人未満の会社は努力義務扱いとなります。

 

ストレスチェックを実施する場合、年一回ストレスチェックの用紙を記載し、本人の希望があれば医師による面接指導、その後職場環境の改善を行うことになります。

 

検査結果は、実施者から従業員本人に通知され、本人の同意がない場合は企業が強制できない決まりになっています。さらに、高ストレス者から申し出があった場合、医師による面接指導の場を設けることも義務付けられています。

          

2-1 ストレスチェック実施者・実施事務従事者とは?

実施者は医師、保健師などストレスチェックを実際に行う人のことです。一方、実施事務従事者とは、ストレスチェックの結果を入力するなど事務的な仕事をする人を指します

 

実施者は医師、保健師、それ以外が行う場合は厚生労働大臣が定めた研修を終了した看護師、精神保健福祉士、歯科医師、公認心理師でも問題ありません。資格が無い場合は実施者になれません。

 

実施事務従事者は内勤者・外注、いずれも可能です。ただし、社内の従業員から選出する場合は注意が必要です。ストレスチェックを受ける従業員に関する人事の権限を持つ場合は、実施事務従事者になれません。


              

3.ストレスチェックと健康診断の主な違い



健康診断は身体の健康を主に診断するのに対し、ストレスチェックは精神の健康を主に診断します。また、健康診断を受けるのは従業員の義務ですが、ストレスチェックは任意となっている点にも違いがあります。

 

診断結果は、健康診断であれば職場に報告されますが、ストレスチェックの結果は本人の同意が無ければ実施者、実施事務従事者しか知ることができません。

 

厚生労働省の発表によると、ストレスチェック実施事業場の労働者のうち、ストレスチェックを受けた労働者の割合は78.0%です。

 

出典元:厚生労働省「ストレスチェック制度の実施状況を施行後はじめて公表します」

計画策定から実行の支援まで「データヘルス計画支援サービス」

コラボヘルス研究会をはじめとした分析ノウハウ・施策ノウハウをもって、 分析に基づくソリューションをご提案できます。


        

4.ストレスチェックの取り組み



ストレスチェックの取り組みで実際はどのようになっているのか、具体的に見ていきましょう。

          

4-1 ストレスチェックは産業医が行う場合が多い

ストレスチェックは産業医が行う場合が多いです。産業医とは、職場における労働者の健康管理などを行う医師のことです。50名以上の従業員がいる職場では、産業医を選任する義務が課せられます。

 

ストレスチェック制度も50名以上の従業員がいる場合義務となるため、産業医に依頼することでスムーズな実施が可能かつ、外注費用を抑えられます。社内に産業医がいない、手が回らず外注したい場合は、外部委託業者の利用がおすすめです。

 

厚生労働省発表の「現行の産業医制度の概要等」によると、産業医を選任できている事業者は全体の78.6%にものぼるとのことが分かっています。一方、産業医数には限りがあるため近年ではストレスチェックを請け負う業者も増えてきています。

出典元:厚生労働省「現行の産業医制度の概要等」
           

4-2 外部委託による実施する企業も増えている

規模の小さな企業や、社内に産業医を抱えられない場合は、外部委託により契約する企業も増えています。

 

ストレスチェックのサービスを実施している業者は、従業員の悩みに関する多様なモデルケースを持っていることが多いです。様々な企業の問題や従業員の悩みを多く知っていることで、今抱えている問題に似たケースから解決策を導き出すヒントになる可能性があります。

 

金額や実施内容は業者により様々です。選ぶ際は必ず比較検討すること、実績が豊富かつ集団分析に対応している業者の選択をおすすめします。


           

4-3 ストレスチェック成功させるためには個人分析ではなく集団分析が必要

ストレスチェックで重要なのは、個人分析でなく集団分析です。営業部や総務課など部署ごとの分析も行いましょう。集団・組織がどのようなストレスを抱えているかの特徴と傾向を知ると、ユニットごとの改善点が見えてきます。

 

特に高ストレス者が多い部署は、離職にも繋がるため仕組みや組織図の改善が求められる場合もあります。効果的な改善を見つけ出すためにも、外部委託の事業者を選ぶ際は集団分析に力を入れている業者を選定しましょう。


 

5.ストレスチェックの実施の流れ



ストレスチェックは大きく以下の流れで実施します。

  1. ストレスチェックを実施する前
  2. ストレスチェックの実施
  3. ストレスチェックを実施した後

それぞれのポイントをおさえることで準備から実施後までをスムーズに行えます。一つひとつ見ていきましょう。

          

5-1 ストレスチェックを実施する前

ストレスチェックを実施する前は、質問事項を吟味するとともに、スケジュールを立てます。具体的には以下の内容について決定していれば実施できます。

  • 実施者・実施事務従事者の決定
  • 実施期間
  • 質問事項の内容
  • 面接指導を行う医師の選定
  • 結果はどうデータ化し保管するのか
  • ストレスチェック後の従業員への指導

質問事項を作成する場合は、厚生労働省発表の資料「職業性ストレス簡易調査票(80項目版)」を参考にして、作成するようにしましょう。

 

実施する前に各従業員への教育も重要になります。事業者は本人の同意なくチェックの結果を見ることはできません。高ストレスの場合は、面接指導者が利用できること、本人の同意なく上司は結果を見れず待遇には影響しないことなどを、事前に説明しておく必要があります。
 

出典元:厚生労働省「職業性ストレス簡易調査票(80 項目版)」
           

5-2 ストレスチェックの実施

ストレスチェックの実施は従業員個人ごとにチェック用紙に記入してもらいます。紙で回答する場合は、記入後に中身が見えない封筒などに入れ提出してもらうといいでしょう。Web上で入力を行う場合は、周囲の人間が見えない状態で実施できるようにするなど、配慮が必要です。

 

従業員の記入が終わったなら、回収したチェックシートをもとに、実施者が評価を行います。この際、高ストレス者から希望があった場合は、医師の面接指導の場を設けなければなりません。

 

Web上でのストレスチェックを実施する場合、厚生労働省のページにて「ストレスチェック実施プログラム」が配布されています。事前に内容を確認した上で、対象者が受験できるよう周知しましょう。

 

出典元:厚生労働省「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」
        

5-3 ストレスチェックを実施した後

ストレスチェックを実施した後は、高ストレス者に該当する従業員から申し出があった場合、医師との面接指導の場を設けます。

 

面接指導後に、医師から「面接指導結果報告書」と「就業上の措置に係る意見書」が提出されます。それらの資料をもとに組織や労働環境の改善を行いましょう。また、個人指導に関する書類は5年の保存期間が定められています。


      

6.高ストレス者への対応



ストレスチェックで、高ストレスと結果が出た社員に行うべき対応は以下の通りです。

 

  • 医師による面接指導
  • 相談できる窓口の設置
  • 休職・職場復帰をしやすい体制の構築
  • 高ストレス者への接し方の教育
          

6-1 医師による面接指導

ストレスチェックを受けた従業員の中で、高ストレス者には医師の面接指導の場を設けます。

 

医師による面接指導は、高ストレス者のケアに繋がるため重要です。医学的な視点から、勤務継続が可能なのか、休養が必要なのかを判断でき、ストレスに対処する際のポイントがより明確になり、本人が今後どう行動するかの指針になります。

 

事前に医師に対し、高ストレス者の勤務状況や業務内容、健康診断の結果などを提出すると、より効果的な面接指導になります。面接が決定し次第、会社側は事前に資料をまとめておきましょう。

           

6-2 相談できる窓口の設置

医師による面接だけでなく、社内に相談できる窓口の設置も重要です。高いストレスを自覚していても、同僚や上司への相談はなかなかできません。職場内に広まり、自分の立場を危うくする懸念があるためです。

 

専門の窓口であれば、そうした懸念も軽減されるため、自ら相談しやすくなります。相談窓口の担当社員への十分な教育、勤務時間中に通える環境など、相談者が訪れやすい環境作りが大切になります。

 

社内の人的リソースが不十分で、相談窓口を設置できない場合は外部に委託するのも一つの手です。費用は必要になりますが、自社の人間に相談しにくいことまで話せるのは従業員にとってプラスに働きます。社風やリソースに応じて外部委託を検討しましょう。


6-3 休職・職場復帰をしやすい体制の構築

 

休職・職場復帰をしやすい体制の構築も重要になります。社内での休職に対する空気感はもちろんですが、社内制度そのものが重要です。

 

特に給与と待遇に関わる部分は従業員にとって重要なポイントです。どれだけの期間休むとどのようなキャリアになるか事前に説明し、安心して休んでもらうことが大切になります。職場復帰も同様で、復帰直後は半日勤務など従業員の負担が少ないよう体制を整えていきましょう。

 

可能であれば、ある程度規則を定めた上で個人ごと復帰しやすい状況を柔軟に作り出すことも重要です。制度と環境、復帰の体制を見直すことでメンタル不調を訴える従業員を減らすとともに、今後の対策にもなります。 


6-4 高ストレス者への接し方の教育

高ストレス者だけでなく、管理職を含む周囲の従業員への教育も重要です。教育が不十分だと誤った接し方をしてしまい、精神不調の悪化をまねく危険があります

 

特に人間関係の悩みは、職場復帰を妨げる要因の一つです。休職期間を短くし、職場復帰をスムーズにするためにも接し方の教育を十分に行いましょう。ストレスを軽減させられれば、作業効率が上がり事業にもプラスに働くことが多いです。

 

実施者や事業者はストレスチェックの注意点をわかっていても、実際に受ける従業員に伝わっていないケースが多くあります。ストレスチェックの結果、高ストレスと判断された場合や休職する社員への関わり方などの概要を教育しておく必要があります。


        

7.ストレスチェックの注意点



ストレスチェックを行う場合は、以下の点に注意が必要です。

 

  • 従業員に無理に受験させない
  • プライバシーを保護する
  • 従業員に不利益な扱いをしない
  • 正直に答えてもらえるように最大限配慮する

 トラブルを回避するためにも、一つずつ見ていきましょう。

              

7-1 従業員に無理に受験させない

従業員に無理に受験させないことは重要です。50名以上が在籍している職場の場合、ストレスチェック制度の実施は義務ですが、対象となる従業員が受けるかは任意です。

 

よくある誤解として、義務のため従業員全員にストレスチェックを受けさせなければならないという誤解があります。社内教育の場や会話の中で勧めることはできますが、あくまで受けるかどうかの最終決定権は従業員にあります。

 

ストレスチェックを受けたくない場合、業務が忙しいことや人事評価への影響を懸念しているケースもあります。なぜ受けたくないかを聞くことも職場環境の改善に繋がるため、コミュニケーションとフォローが大切です。

              

7-2 プライバシーを保護する

個人のプライバシーを保護するのも重要な注意点です。面接では他人に打ち明けたくない悩みや既往歴、疾患などを話すことがあります。デリケートな悩みを含むため、面接内容は特に取り扱いに注意する必要があります

 

事前に十分な教育をしていないと、情報をうっかり喋ってしまった、データを社内に送信してしまったなどのトラブルに繋がります。

              

7-3 従業員に不利益な扱いをしない

ストレスチェックの結果により、従業員に不利益な扱いをしないことも重要です。また、ストレスチェックを受験しないことや、面接指導を活用しないことに対して不利益な扱いも禁止されています。

 

ストレスチェックを受けるか、結果を会社に伝えるか、医師との面接指導を希望するかは従業員の自由になります。事業者側が行うのはあくまで場を設けることと、得られたデータから改善点を見つけ出すことです。

    

7-4 正直に答えてもらえるように最大限配慮する

正直に答えてもらうことは、ストレスチェックの誤診を防ぐために重要です。「面接で業務が止まるのが嫌だから」「悪い結果だと給料が減額されたり解雇されたりしそうだから」と虚偽の報告をしてしまうケースがあります。

 

虚偽の報告があると、本来の目的である従業員の健康を保つことが達成できなくなります。従業員が正直に回答できるよう、実施の目的・結果の公表範囲・分析結果の活用方法など事前に十分な説明を行いましょう。

 

特に、本人が同意しなければストレスチェックの結果が上司に伝わらないことは、従業員にとって正直に答えるかの分かれ目となる情報です。



8.ストレスチェック制度にかかる費用



ストレスチェック制度にはある程度の費用がかかります。社内で行う場合は産業医への報酬のみで済みますが、外注する場合多くの項目で費用がかかってくるため、それぞれ見ていきましょう。

  

8-1 ストレスチェック制度の費用相場


ストレスチェック制度の費用は、受ける従業員の人数と面接指導の時間により増えていきます。詳細な金額は依頼先により左右しますが、一般的には以下のような料金であることが多いです。

 

項目
費用

 基本利用料

 10,000〜30,000円

 従業員一人あたりのストレスチェック費用

 300円〜600円

 

保険診療にならないため、費用は事業者の負担となります。ある程度まとまったお金が必要なため、ストレスチェックを実施する場合は事前に準備しておきましょう。

 

外部に依頼する場合、料金体系は様々です。先述した従量課金制の業者から、何名以下ならいくら、というプランが用意された会社まであります。比較検討した上で金額および実施内容に問題がないかの確認をおすすめします。 

  

8-2 ストレスチェック制度にかかる費用を抑える方法


ストレスチェック制度にかかる費用を抑えたい場合、社内で完結する方法を選べば費用が安く済みます。しかし、社内リソースが足りず外注を余儀なくされるケースもあるでしょう。外注する場合は、助成金制度を利用できないか確認しましょう。

 

ストレスチェック制度は時期により、助成金が利用できる可能性があります。例えば、令和4年度からは「団体経由産業保健活動推進助成金」が利用可能であり、以下のような助成金が受け取れます。

 

〜令和5年9月

令和5年10月〜

助成率

 80%

 90%

助成上限額

 100万円

 500万円

(一定の要件を満たす場合:1,000万円)

助成対象

 産業保健サービス

 産業保健サービス+事務費

 

出典元:労働者健康安全機構「団体経由産業保健活動推進助成金のご案内」


最新の情報を調べつつ、行いたい時期に受給できる助成金がないか、確認してから予算を組み始めましょう。


 

9.ストレスチェックは厚生労働省のマニュアルを参考にしよう



ストレスチェックの実施は、厚生労働省のマニュアルを参考にするとスムーズに進みます。実施規定に関する例文も掲載されており、社内説明を行う際に配る資料としても活用可能です。

 

さらに外部委託する場合の注意点や、実施におけるQ&Aなど疑問点を先回りして解決する資料が多く公開されています。準備段階から内容を確認しておくと、時間を短縮しながら効果的なストレスチェックを行えるためおすすめです。

 

詳細なPDF資料は、以下のページでダウンロード可能です。実施前に一度通読の上、会社に合う質問事項などをまとめておきましょう。
 
出典元:厚生労働省「ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等」

 

 

10.まとめ



健康経営を行うために、ストレスチェックは重要な制度です。ストレスチェック制度を行うことで、現状の問題点を洗い出し職場環境の改善のポイントが見つけられます。改善点を見つけるためには、個人分析よりも部署ごとの集団分析が効果的です。


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著者情報

株式会社イーウェル ウェルナレ事務局

「人も、企業も、ウェルビーイングへ。」をテーマとして、企業の健康経営や福利厚生の支援を行う株式会社イーウェルが運営する、BtoB(人事総務向け)オウンドメディア「ウェルナレ」の編集部。
2021年7月にメディアリリース後、毎年60回以上、有名企業様とのコラボセミナーや官公庁の専門分野に特化した方を招いてのカンファレンス、大学教授による福利厚生勉強会の開催や専門家記事の掲載などを実施し、多くの方に好評いただいております。
人事部署や経営者が、会社のウェルビーイングを向上されるためのヒントを探して、日々活動しています。

 

   


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