1. TOP
  2. 健康経営 エンゲージメント
  3. ウェルビーイング経営とは?メリットや注意点・実態調査まで紹介
(公開:2024/11/14)

ウェルビーイング経営とは?メリットや注意点・実態調査まで紹介


ウェルビーイング経営とは?メリットや注意点・実態調査まで紹介

日本ではウェルビーイング(well-being)を、「病気や怪我など身体的な部分だけでなく、精神的な部分や、日常生活をイキイキと送れる社会的な部分も含め、まんべんなく満たされている幸福な状態」と定義されることが一般的です。若い世代を中心に「ウェルビーイング」状態であることが働きやすさの新たな基準となりつつあります。

本記事ではビジネスにおいて、従業員、企業、それらを取り巻く社会全体がウェルビーイングな状態を作ること、すなわち「ウェルビーイング経営」について解説いたします。

1. ウェルビーイング経営とは?

当ウェルナレにおいても多数紹介してきた「健康経営」と、「ウェルビーイング経営(Well-being経営)」との違いを、皆さんはきちんと理解できていますか?

それぞれの違いについて見ていきましょう。

1-1 健康経営とウェルビーイング経営の違い

「健康経営」とは、社員の身体的・精神的双方の健康管理を経営的な視点でとらえ、戦略的に実践することで、従業員の活力向上や生産性が向上し、それが組織に活性化をもたらすというものです。たとえば労働環境の悪化などで、体調不良に陥った従業員がいる企業では、早期発見から治療、復帰までを支援するといった側面に重点をおくと同時に、なぜそのような労働環境になってしまったのかを追求し、組織改善をしてくことで、従業員と企業の双方の成長を目指す経営手法です。

これに対して「ウェルビーイング経営」は、従業員のプライベートの充実や家族の幸福、従業員が所属する組織全体のモチベーションアップといった精神面を重視し、仕事やプライベートへの意欲を向上させる施策です。このように企業が従業員の心身の健康維持・向上に配慮することにより、業績向上につなげるという経営的視点での取組みを「ウェルビーイング経営」といいます。

従業員は、心身ともに健康で満たされた「ウェルビーイング」な状態で働くことで、自社に対する愛社精神やエンゲージメントが向上し、企業にとっては、より良い成果が期待されます。また、ストレスが軽減し、仕事への集中力や業務効率、モチベーションなどが向上し、さらに、病気などによる突発的な欠勤率が低下するようになります。

1-2 ウェルビーイングとは

ウェルビーイングは「心身ともに、さらに社会的にも健康な状態を指し、満足した生活を送れる状態にあること」と定義されています。さらに詳しくウェルビーイングを見ていくと、次の5つの要素が重要となります。

① Positive emotion ・・・嬉しい、楽しい、感謝、希望などの感情を持てている状態

② Engagement ・・・仕事などに集中して積極的に関わりを持てている状態

③ Relationship ・・・人との関係などに恵まれている状態

④ Meaning ・・・仕事や人生に意味や意義を持てている状態

⑤ Accomplishment ・・・目標に向かって自己実現できている状態

出典:心理科学研究所



上記5つの要素を満たした従業員は「イキイキ」働いているのが容易に想像できます。ウェルビーイング(Well-Being)は翻訳すると「幸福」と訳すことができます。世界的にも注目されている考え方で、アメリカ企業でも積極的に取り入れられています。 ウェルビーイングを企業経営に落とし込み、従業員一人ひとりに潜在能力を発揮してもらうことで、企業としての中長期的なパフォーマンスを高めようとするマネジメント、考え方がウェルビーイング経営です。

2.ウェルビーイング経営が注目される理由

近年では新型コロナウイルスの影響により、企業は「ウェルビーイング」について大きく認識するようになってきました。従業員一人ひとりの幸福の実現や健康維持などがパフォーマンスの向上につながり、企業のイメージアップ・業績向上につながることを理解して、実践的に動き出している企業も増加しています。

本章では、「ウェルビーイング経営」に注目が集まっている主な理由を解説します。

2-1 企業の競争力強化

ダイバーシティの広がりにより、企業には性別や国籍、文化など、異なるバックグラウンドを持つ従業員が集まるようになりました。企業も、その多様性を受け入れ、能力をフルに発揮するための環境を整備することが重要と考えるようになりました。そうした企業の姿勢により従業員の幸福度は増加し、さらに企業の競争力を強化させることにつながるのです。

2-2 人材不足の解消

新型コロナウイルスの影響もあり、一部業界では一時的に買い手市場に転換したかのように見えましたが、終息後は「人材減・求人増」になり、人材獲得競争が激化しています。このような状況下では、高給与・好待遇だけでは優秀な人材の確保ができなくなります。採用市場においてもウェルビーイング経営が評価されるようになり、実践している企業に優秀な人材が集まってくるようになります。また、ウェルビーイングな状態で潜在能力を発揮している従業員が多い企業は生産性も高くなります。量と質の両方で優秀な人材確保を実現することができるのです。

また、少子高齢化により人材不足は深刻な問題となっています。また若年層を中心に転職も一般化しているため、企業としては従業員やその家族が幸福になるための施策が必要となります。それにより、企業に対する従業員の帰属意識やエンゲージメント意識が高まり、離職率低下につながるようになるのです。

2-3 働きやすい職場環境

企業は「働き方改革」により、多様な職制やライフスタイルを持つ従業員が働きやすい環境を整備する必要があります。企業としてはどのような働き方であれば従業員の幸福度が増してやりがいを感じるのかといった観点で、制度や仕組みを検討することが必要となりました。こうした働きやすい職場環境の整備は、より優秀な人材を確保することにもつなげられるようになるのです。

社会における価値観も変化していっています。昨今、日本だけでなく世界全体で働き方だけでなく、生き方そのものについての価値観が多様化しています。一昔前までの、自己犠牲的な働き方が見直され「自分らしく働ける環境づくり」が求められるようになってきました。そのような社会においてウェルビーイング経営は高く評価されており、労働市場における社会的企業価値の向上につなげることができます。



3.ウェルビーイング経営の3つのメリット

本章では、企業が従業員の心身の健康維持に努めることにより、業績向上につながるという経営的視点での取組み「ウェルビーイング経営」を推進すると、具体的にどのようなメリットがあるのかを解説します。

3-1 メリット① 生産性の向上

企業が「ウェルビーイング経営」に取り組むことにより、社員のやりがい・働きやすさが向上し、ワークエンゲージメントも向上します。ワークエンゲージメントとは、従業員の精神的・心理的な健康度を示す概念で、仕事に対して「熱意」「没頭」「活力」の3つの要素が揃って充実している心理状態のことをいいます。

ウェルビーイングを推進することにより、従業員のモチベーションも上がり、ワークエンゲージメントが向上し、企業の業績アップが見込めるという好循環が生まれます。

従業員が自分自身でウェルビーイングを追求することでやりがいが生まれ、仕事へのモチベーションアップが期待できます。よって「ウェルビーイング経営」は企業の生産性向上にもつながります。

また、ウェルビーイング経営では従業員の「仕事」と「生活」両方のサポートが必要です。従業員の課題というと、しばしば働き方や職場コミュニケーションなどといった仕事の課題に目を向けられがちですが、育児・介護との両立や生活習慣、老後の経済的不安、新型コロナウイルスによる生活変化などといった生活における課題の解決も必要になってくるのです。

3-2 メリット② 離職率の低下

企業が「ウェルビーイング経営」に取り組むと、経営層は従業員の心身の機微を敏感に感じとることができるようになります。「ウェルビーイング経営」を推進することで、企業は早期に従業員の変化を察知し、それに対して早い段階で施策をねり、離職防止に向けて働きかけることができるようになります。

よって「ウェルビーイング経営」は、人材の定着率を高め優秀な人材の流出を食い止められるため、採用コストの節約につながります。

3-3 メリット③ 優秀な人材の確保

「ウェルビーイング経営」を実践することにより、その企業は魅力が増し、求職者が多く集まるようになります。さらに、自社に対してエンゲージメントの高い社員が、その企業の魅力を存分にアピールすることにより、新たに優秀な人材を獲得することが可能となります。

積極的に「ウェルビーイング経営」に取り組む企業は、対外的に「良い会社」という企業ブランドのイメージがアップし、さらには定着して、採用活動においても良い影響を与えます。

従業員のウェルビーイングの状態は、人事施策等の成果を的確に表す先行指標にもなり得ます。今までは、人事施策を講じてから業績向上や離職率低下などといった組織的成果に現れるまで、時間がかかってしまい、成果までのプロセスも不明瞭でした。人事部門のご担当者様も、人事施策を講じる際、経営層に対して、本当に効果がある施策なのかを示すのに苦労されてきたのではないでしょうか。従業員のウェルビーイングの状態に着目することは、的確な施策を講じる上でも重要です。



4.ウェルビーイング経営と健康経営の違い

「健康経営」とは、2006年にNPO法人健康経営研究会が定義した言葉となり、「企業が従業員の健康に配慮することによって、経営面においても大きな成果が期待できる」との基盤に立って、「健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践すること」を意味しています。(NPO法人健康経営研究会「健康経営とは」より)

「従業員の健康に配慮すること」を目的としている点で「ウェルビーイング経営」と「健康経営」は同じ意味があります。しかし、具体的な取り組みにおいて、健康経営は健康診断の促進や運動プログラムの提供といった具体的なアクションプランを持ちますが、「ウェルビーイング経営」では従業員一人ひとりの幸福感を高めるための環境を整えることに注力します。この点が両者の大きな違いと言えるでしょう。



5.ウェルビーイング経営の注意点

「ウェルビーイング経営」への取り組みは、企業の中長期的な成長戦略として重要ですが、一方で利益追求の難しさが懸念される場合もあります。短期的な利益の減少を避けるためには、ウェルビーイングの理念を経営に統合し、従業員の幸福と生産性の向上が長期的な利益にどのように寄与するかを明確にすることが必要です。

従業員が心身共に健康であれば、創造性やエンゲージメントが高まり、これが結果的に業績向上につながるという視点が求められます。したがって、短期的な成果に囚われることなく、人材の充実と企業文化の強化による長期的なリターンを目指すべきです。「ウェルビーイング経営」の推進は、従業員と企業の双方にとって最終的に利益をもたらす持続可能な経営戦略といえるでしょう。



6.ウェルビーイング経営の基本プロセスと課題例

ここまでウェルビーイング経営の概要と、実際に取り組んでいる企業の事例をみてきました。本章では、これからウェルビーイング経営に取り組むには、何から手を付けていけばいいのか、プロセスと取り組む際の課題事例を紹介します。

6-1 基本プロセス

STEP1:ゴールの設計・・・自社の現状に合わせてゴールを設計する

STEP2:現状の把握・・・サーベイを構築・利用し現状を把握する

STEP3:課題の可視化・・・現状を把握した後に課題を分析し優先順位を付け、解決策を立案する

STEP4:課題の解決・・・立案した解決策を一つひとつ実行していく

6-2 課題例

・自社に合ったゴールを設計したいが専門的な知識やノウハウが無い

・そもそも何から始めたら良いか分からない

・サーベイを構築できる人がいない、ノウハウがない

・課題の解決策が適切か判断できない

・課題の優先順位がつけられない

・施策の立案と実行する人手がいない など

企業が100社あれば、100社それぞれの課題が出てきます。各社様々な課題がありますが最も重要で多くの企業が直面する課題は、「ウェルビーイング経営の仕組み作り」と「PDCAの最適化」です。

健康経営の第一歩からPDCAの循環まで「健康経営推進支援サービス」

健康経営を推進するうえで必要な「健康経営度調査」「健康投資管理会計ガイドライン」などを活用して、企業の健康経営の第一歩からPDCAを回していくお手伝いをするコンサルティングサービスです。



7.ウェルビーイング経営の取り組み事例

「ウェルビーイング経営」を実践することにより、企業や従業員にもたらされるメリットを理解できましたでしょうか。では実際にどんな企業がウェルビーイングに取り組んでいるのでしょうか。事例を2件紹介します。

7-1 事例① 楽天グループ株式会社「コレクティブ・ウェルビーイング」      

新型コロナウイルス感染症の拡大を契機に、楽天グループではニューノーマル時代に合った持続的なチームの在り方を考える必要があると考えました。そのきっかけとして、楽天ピープル&カルチャー研究所は、「コレクティブ・ウェルビーイング」に関するガイドラインを作成しました。

このガイドラインでは、持続的なチームの在り方を検討する上で、「企業」と「働く個人」の両側面から、3つの要素「仲間」「時間」「空間」(三間)の設計と、それぞれに「余白」を設けることが大切だと考えました。

引用元:楽天グループ株式会社「コレクティブ・ウェルビーイング」

 

7-2 事例② 株式会社デンソー『サステナブルな社会は、「健康」から始まる』

デンソーでは「自分だけではなく、つながる社会全体で、より良い状態を目指そう」という価値観を「ウェルビーイング」という言葉で表現し、「一人ひとりが、身体面・精神面・社会面において、すべて良好で満たされている状態」を表しています。

デンソーは現場を大切にする文化があり、各職場に『健康リーダー』を置いています。職場ごとで働き方もコミュニケーションも違い、抱えている課題も違う。そのため、リーダーがメンバーの特性やチームの状態を確認して、その現場に合った施策を考案・実施しています。このような全社的な活動であるものの、部署ごとに全く異なる活動を展開している点が、デンソーのウェルビーイングに対する取り組みの特徴となっています。

引用元:株式会社デンソー『サステナブルな社会は、「健康」から始まる』

 



8.ウェルビーイング経営を成功させるためのポイント

2社の事例をみてきましたが、「ウェルビーイング経営」をはじめるのには、何から取り組めばいいのでしょうか。本章では「ウェルビーイング経営」を成功させるためのポイントを解説します。

8-1 ポイント① セルフチェック・セルフケアの促進

企業として、従業員が自ら身体的、精神的な健康状態を把握することができ、自身で改善できるようにサポートしていくことが重要です。

身体面では、社内の健康診断や予防接種の実施、外部の検診の費用補助などのサポートが必要となるでしょう。メンタル面では、ストレスチェックの実施や産業医との個別面談などの実施が求められます。在宅勤務などのテレワークにおいても、オンラインでの相談に対応できるような環境を作ることも効果的でしょう。

8-2 ポイント② 福利厚生の充実

ウェルビーイングを向上させるための福利厚生とは、運動・グルメ・レジャーや旅行など、ライフスタイルを豊かにさせるサポートを充実させるのがいいでしょう。

福利厚生のメリットは、社員が自由に福利厚生メニューを選べることです。例えば、フィットネスクラブの割引チケットを導入したり、講師を呼んでヨガやピラティスの教室を開催したりする企業があります。また、宿泊施設の割引や映画チケットの優待券などを用意することなどで、従業員のリフレッシュに役立つことでしょう。

8-3 ポイント③ コミュニケーションの改善

所属している部署や組織内において、従業員間や上司・部下の間にてコミュニケーションが円滑になると、業務の運用や人間関係などの悩みが解消され、ウェルビーイングにつながるため、交流しやすい、風通しの良いオフィスづくりが重要となります。

例えば、職場内のコミュニケーションの活性化に繋げるために、部門関係なく利用できるリフレッシュスペースを用意するのも良いでしょう。企業によっては、無料の飲料やお菓子をおいて、みんながそこに行きたいと思える環境づくりをしている企業もあります。

8-4 ポイント④ 労働環境の見直し

常態化している長時間労働や休日出勤などは、迅速に是正をおこない、労働環境の見直しに向けて、柔軟な働き方の促進に取り組まなければなりません。正確な労働時間の記録や社内アンケートを実施するなどをして、経営層を筆頭に実態を把握し、対策を取る必要があります。

また、誰もが見渡すことができるような、オフィスのレイアウトへと変更したり、テレワーク環境を整えたりして、従業員全員が楽しくイキイキと勤務ができ、柔軟かつ効率良く働ける環境を作ることも重要なことです。



9.ウェルビーイングの実態調査

自社の従業員はウェルビーイングな働き方ができているのか?この様な疑問を持つ方も多いと思います。株式会社イーウェルでは「働く人々の実態調査」を調べたアンケート結果を公表しています。

「ウェルビーイング経営」を従業員はどの様に感じているのか?気になる方は以下の記事もぜひご覧ください。



合わせて読みたい

 



10.まとめ

「ウェルビーイング経営」の視点は、健康経営と比べ範囲が広い意味合いを持つことをご理解できたでしょうか。心身ともに健康で、従業員、家族、組織全てが幸福な状態を維持する「ウェルビーイング経営」は、働き方改革や健康経営を推進していくうえで必要な概念です。

身体が健康になるだけではない「ウェルビーイング」の概念をしっかりと認識し、企業に取り入れ、従業員を取り巻く全てが健康を保持することで、企業の生産性の向上や優秀な人材の確保といったメリットが生まれ、組織全体の発展につながるのです。

a145.jpg

株式会社イーウェル 運営会社ロゴ

著者情報

株式会社イーウェル ウェルナレ事務局

「人も、企業も、ウェルビーイングへ。」をテーマとして、企業の健康経営や福利厚生の支援を行う株式会社イーウェルが運営する、BtoB(人事総務向け)オウンドメディア「ウェルナレ」の編集部。
2021年7月にメディアリリース後、毎年60回以上、有名企業様とのコラボセミナーや官公庁の専門分野に特化した方を招いてのカンファレンス、大学教授による福利厚生勉強会の開催や専門家記事の掲載などを実施し、多くの方に好評いただいております。
人事部署や経営者が、会社のウェルビーイングを向上されるためのヒントを探して、日々活動しています。

運営会社:株式会社イーウェル

 


Related keywords

Related article

Recommend

お役立ち資料
最新人気ランキング

メルマガ登録

最新情報や
お役立ち資料を自動受信