ウェルビーイング 経営とは?メリットや注目された理由を紹介

日本ではウェルビーイング(well-being)を、「病気や怪我など身体的な部分だけでなく、精神的な部分や、日常生活をイキイキと送れる社会的な部分も含め、まんべんなく満たされている幸福な状態」と定義されることが一般的です。若い世代を中心に「ウェルビーイング」状態であることが働きやすさの新たな基準となりつつあります。
本記事ではビジネスにおいて、従業員、企業、それらを取り巻く社会全体がウェルビーイングな状態を作ること、すなわち『ウェルビーイング経営』について解説いたします。
目次
1. ウェルビーイング経営とは?
当ウェルナレにおいても多数紹介してきた「健康経営」と、「ウェルビーイング経営」との違いを、皆さんはきちんと理解できていますか?
健康経営とは、社員の身体的・精神的双方の健康管理を経営的な視点でとらえ、戦略的に実践することで、従業員の活力向上や生産性が向上し、それが組織に活性化をもたらすというものです。たとえば労働環境の悪化などで、体調不良に陥った従業員がいる企業では、早期発見から治療、復帰までを支援するといった側面に重点をおくと同時に、なぜそのような労働環境になってしまったのかを追求し、組織改善をしてくことで、従業員と企業の双方の成長を目指す経営手法です。
これに対して「ウェルビーイング経営」は、従業員のプライベートの充実や家族の幸福、従業員が所属する組織全体のモチベーションアップといった精神面を重視し、仕事やプライベートを楽しむための意欲を向上させる施策です。このように企業が従業員の心身の健康維持・向上に配慮することにより、業績向上につなげるという経営的視点での取組みを「ウェルビーイング経営」といいます。
従業員は、心身ともに健康で満たされた「ウェルビーイング」の状態で働くことで、仕事を楽しむことができ、自社に対する愛社精神やエンゲージメントが向上し、企業にとっては、より良い成果が期待されます。また、ストレスが軽減し、集中力や効率性、モチベーションなどが向上し、さらに、病気などによる突発的な欠勤率が低下するようになります。
2.ウェルビーイング経営が注目される理由
近年では新型コロナウイルスの影響により、企業は「ウェルビーイング」について大きく認識するようになってきました。従業員一人ひとりの幸福の実現や健康維持などがパフォーマンスの向上につながり、企業のイメージアップ・業績向上につながることを理解して、実践的に動き出している企業も増加しています。
本章では、ウェルビーイング経営に注目が集まっている主な理由を解説します。
2-1 企業の競争力強化
ダイバーシティの広がりにより、企業には性別や国籍、文化など、異なるバックグラウンドを持つ従業員が集まるようになりました。企業も、その多様性を受け入れ、能力をフルに発揮するための環境を整備することが重要と考えるようになりました。それにより従業員の幸福度は増加し、さらに企業の競争力を強化させることとなるのです。
2-2 人材不足の解消
少子高齢化により人材不足は深刻な問題となっています。また若年層を中心に転職も一般化しているため、企業としては従業員やその家族が幸福になるための施策が必要となります。それにより、企業に対する従業員の帰属意識やエンゲージメント意識が高まり、離職率低下につなげられるようになるのです。
2-3 働きやすい職場環境
企業は「働き方改革」により、多様な職制やライフスタイルを持つ従業員が働きやすい環境を整備する必要があります。企業としてはどのような働き方であれば従業員の幸福度が増してやりがいを感じるのかといった観点で、制度や仕組みを検討することが必要となりました。それにより優秀な人材を確保することにもつなげられるようになるのです。
3.ウェルビーイング経営の4つのメリット
本章では、企業が従業員の心身の健康維持に努めることにより、業績向上につながるという経営的視点での取組み「ウェルビーイング経営」を推進すると、具体的にどのようなメリットがあるのかを解説いたします。
3-1 メリット① 生産性の向上
企業がウェルビーイング経営に取り組むことにより、社員のやりがい・働きやすさが向上し、ワークエンゲージメントも向上します。ワークエンゲージメントとは、従業員の精神的・心理的な健康度を示す概念で、仕事に対して「熱意」「没頭」「活力」の3つの要素が揃って充実している心理状態のことをいいます。
ウェルビーイングが推進されることにより、従業員のモチベーションも上がり、ワークエンゲージメントが向上し、企業の業績アップが見込めるという好循環が生まれます。
従業員が自分自身でウェルビーイングを追求することで仕事にやりがいが生まれ、仕事へのモチベーションアップが期待できます。よってウェルビーイング経営は企業の生産性向上にもつながります。
3-2 メリット② 離職率の低下
企業がウェルビーイング経営に取り組むと、経営層は従業員の心身の機微を敏感に感じとることができるようになります。ウェルビーイング経営を推進することで、企業は早期に従業員の変化を察知し、それに対して早い段階で施策をねり、離職防止に向けて働きかけることができるようになるのです。
よってウェルビーイング経営は、人材の定着率を高め優秀な人材の流出を食い止められるため、採用コストの節約につながります。
3-3 メリット③ 優秀な人材の確保
ウェルビーイング経営を実践することにより、その企業は魅力が増し、求職者が多く集まるようになります。さらに、自社に対してエンゲージメントの高い社員が、その企業の魅力を存分にアピールすることにより、新たに優秀な人材を獲得することが可能となります。
積極的にウェルビーイング経営に取り組む企業は、社外的に「良い会社」という企業ブランドのイメージがアップし、さらには定着して、採用活動においても良い影響を与えます。
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4.ウェルビーイング経営の取り組み事例
ウェルビーイング経営を実践することにより、企業や従業員にもたらされるメリットを理解できましたでしょうか。では実際にどんな企業がウェルビーイングに取り組んでいるのでしょうか。事例を2件紹介します。
4-1 事例① 楽天グループ株式会社「コレクティブ・ウェルビーイング」
新型コロナウイルス感染症の拡大を契機に、楽天グループではニューノーマル時代に合った持続的なチームの在り方を考える必要があると考えました。そのきっかけとして、楽天ピープル&カルチャー研究所は、「コレクティブ・ウェルビーイング」に関するガイドラインを作成しました。このガイドラインでは、持続的なチームの在り方を検討する上で、「企業」と「働く個人」の両側面から、3つの要素「仲間」「時間」「空間」(三間)の設計と、それぞれに「余白」を設けることが大切だと考えました。
※引用元:楽天グループ株式会社「コレクティブ・ウェルビーイング」
https://corp.rakuten.co.jp/collective-well-being/
4-2 事例② 株式会社デンソー『サステナブルな社会は、「健康」から始まる』
デンソーでは「自分だけではなく、つながる社会全体で、より良い状態を目指そう」という価値観を「ウェルビーイング」という言葉で表現し、「一人ひとりが、身体面・精神面・社会面において、すべて良好で満たされている状態」を表しています。
デンソーは現場を大切にする文化があり、各職場に『健康リーダー』を置いています。職場ごとで働き方もコミュニケーションも違い、抱えている課題も違う。そのため、リーダーがメンバーの特性やチームの状態を確認して、その現場に合った施策を考案・実施しています。このような全社的な活動であるものの、部署ごとに全く異なる活動を展開している点が、デンソーのウェルビーイングに対する取り組みの特徴となっています。
※引用元:株式会社デンソー『サステナブルな社会は、「健康」から始まる』
https://www.denso.com/jp/ja/news/stories/all/210709-01/health-management/
5.ウェルビーイング経営を成功させるためのポイント
2社の事例をみてきましたが、ウェルビーイング経営をはじめるのには、何から取り組めばいいのでしょうか。本章ではウェルビーイング経営を成功させるためのポイントを解説します。
5-1 ポイント① セルフチェック・セルフケアの促進
企業として、従業員が自ら身体的、精神的な健康状態を把握することができ、自身で改善できるようにサポートしていくことが重要です。
身体面では、社内の健康診断や予防接種の実施、外部の検診の費用補助などのサポートが必要となるでしょう。精神的なメンタル面では、ストレスチェックの実施や産業医との個別面談なども実施してほしいです。在宅勤務などのテレワークにおいても、オンラインでの相談に対応できるような環境を作ることも効果があるでしょう。
5-2 ポイント② 福利厚生の充実
ウェルビーイングを向上させるための福利厚生とは、運動・グルメ・レジャーや旅行など、ライフスタイルを豊かにさせるサポートを充実させるのがいいでしょう。
福利厚生のメリットは、社員が自由に福利厚生メニューを選べることです。例えば、フィットネスクラブの割引チケットを導入したり、講師を呼んでヨガやピラティスの教室を開催したりする企業があります。
また、宿泊施設の割引や映画チケットの優待券などを用意することなどで、従業員のリフレッシュに役立つことでしょう。
5-3 ポイント③ コミュニケーションの改善
所属している部署や組織内において、従業員間や上司・部下の間にてコミュニケーションが円滑になると、業務の運用や人間関係などの悩みが解消され、ウェルビーイングにつながるため、交流しやすい、風通しの良いオフィスづくりが重要となります。
例えば、職場内のコミュニケーションの活性化に繋げるために、部門関係なく利用できるリフレッシュスペースを用意するのも良いでしょう。企業によっては、無料の飲料やお菓子をおいて、みんながそこに行きたいと思える環境づくりをしている企業もあります。
5-4 ポイント④ 労働環境の見直し
常態化している長時間労働や休日出勤などは、迅速に是正をおこない、労働環境の見直しに向けて、柔軟な働き方の促進に取り組まなければなりません。
正確な労働時間の記録や社内アンケートを実施するなどをして、経営層を筆頭に、この実態を把握し、対策を取る必要があります。
また、誰もが見渡すことができるような、オフィスのレイアウトへと変更したり、テレワーク環境を整えたりして、従業員全員が楽しくイキイキと勤務ができ、柔軟かつ効率良く働ける環境を作ることも重要なことです。
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6.まとめ
ウェルビーイング経営の視点は、健康経営と比べ領域が広い意味合いを持つことをご理解できたでしょうか。
心身ともに健康で、従業員、家族、組織全てが幸福な状態を維持する「ウェルビーイング経営」は、働き方改革や健康経営を推進していくうえで必要な概念となります。
身体が健康になるだけではない「ウェルビーイング」の概念をしっかりと認識し、企業に取り入れ、従業員を取り巻く全てが健康を保持することで、企業の生産性の向上や優秀な人材の確保といったメリットが生まれ、組織全体の発展につながるのです。
監修者 株式会社イーウェル 健康経営推進室
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