ブラック企業に認定される企業の特徴とは? 徹底解剖の特徴10選
ブラック企業という言葉はすでに定着し、一般的に「従業員を大切にしない、こき使う、労働時間が長い、賃金が安い、休日出勤をさせる、残業代を支払わない、劣悪な環境で働かせる、パワーハラスメントが横行している、従業員の入れ替わりが激しい」など、多くの人が連想するようになっています。
本記事では、ブラック企業の本質を理解し、その企業の特徴を詳しく解説します。また、ブラック企業かどうかを見抜く方法なども紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
1.ブラック企業とは
厚生労働省では、「ブラック企業」という言葉は使わず、その代わりの表現として『若者の「使い捨て」が疑われる企業等』と称して対策を展開しています。具体的な対策として、『若者の「使い捨て」が疑われる企業等』(=ブラック企業)の特徴である過重な長時間労働の改善や、パワーハラスメントの予防・解決に向けた取組等を実施しています。
よって厚生労働省では「ブラック企業」について正式な定義をしていませんが、以下の通り一般的な特徴を掲げています。
①労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す
②賃金不払残業やパワーハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い
③このような状況下で労働者に対し過度の選別を行う
このような企業に就職してしまった場合、第一に従業員は会社に対して問題点の改善を求めていくことが重要です。しかし、新入社員が一人で、会社に問題点の改善を求めて交渉をすることは、到底現実的なことではありません。したがって厚生労働省は問題点に応じて、労働基準監督署や都道府県労働局の総合労働相談コーナー、または労働組合などに相談することも有効な手段と考えています。
出展元:「ブラック企業」ってどんな会社なの?
2.ブラック企業の特徴
本章では、ブラック企業の具体的な特徴を10の項目に分けて解説します。この項目が多ければ多いほどブラック企業のレベルは高くなります。一度入社すると、なかなか退職しにくいというのもブラック企業の特徴のため、就職活動時の企業選定の際は、これらの特徴を参考にされるといいでしょう。
企業の経営者や人事担当者も、これらの項目の中から一つでも当てはまるものがあれば、至急改善をし、誰もが心身ともに健康的に働ける職場づくりを目指していってください。
2-1 特徴① 過労死ラインを超えた長時間労働
厚生労働省の過労死等防止対策推進法において、「過労死等」を以下のとおり定義づけています。
- 業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡
- 業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡
- 死亡には至らないが、これらの脳血管疾患・心臓疾患、精神障害
これらのような過労死を防ぐことを目的に、2021年に労災認定の基準が20年ぶりに見直されました。この労災認定の基準というのが「過労死ライン」とも言われています。健康障害に発展する恐れのある、時間外労働時間を表した言葉で、労働災害として認定されるべきかどうかの基準として用いられています。基準内容は以下の通りです。
- 発症日の直近1ヵ月で、残業時間が月100時間を超えていること
- 発症日前2ヵ月〜6ヵ月間の残業時間が月平均80時間を超えていること
ただし、これらの基準が過労死ラインに達していなくても、これに近い残業時間や、労働時間以外の不規則な勤務、精神的な緊張が伴う業務が日常的に行われていることがある場合などは、過労死と関連性が強いと評価されるようになりました。ここで過労死による労災認定された企業は、ブラック企業となってしまう可能性が高いです。
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2-2 特徴② 残業代が出ない
企業が所定労働時間外に従業員に労働させても、残業代を支払わないことは、ブラック企業の大きな特徴となります。残業代を払わずに働かせることを、一般的にサービス残業とも言います。
労働基準法により、従業員に残業をさせた場合、企業は残業代を支払わなければならないことが定められています。よって、サービス残業は違法行為であることを認識する必要があります。具体的には、労働基準法32条で、会社は社員に対して、(休憩時間を除いて、)1週間に40時間を超えて働かせてはいけない、また、1日に8時間を超えて働かせてはいけない、と定められています。
ブラック企業は次のような考えのもと、サービス残業を当たり前のように社内に根付かせています。
- できるだけ安い賃金で、できるだけ長時間、従業員を働かせて利益を出したい。
- 意図的に、残業代を申請することはおかしい、お金に卑しい、などという社風を作っている。
- 上司が残業代申請をさせない。
- サービス残業は「やりがい」や「自己の成長」であると強調し、意図をすり替えている。
2-3 特徴③ 給与が最低時給を下回る
基本給を異常なまでに低く設定しているというのもブラック企業の特徴です。ブラック企業とはいえ、残業代をゼロにすると訴訟のリスクもあるため、基本給を著しく下げて、残業代はきちんと支払っている体を装っているのです。ただし最低賃金法により、最低賃金を下回っている場合は違法となってしまうので、見極める必要があります。最低賃金法の内容は以下の通りです。
(最低賃金の効力)
第四条 第一項
使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。
第四条 第二項
最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金額に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、最低賃金と同様の定をしたものとみなす。
引用元:e-GOV法令検索
最低賃金法の「労働者」とは、正社員・アルバイトなどの雇用形態や職種などに関係なく、企業に雇用され給料をもらっている全ての従業員を指しています。なお、ここに出てくる最低賃金には、以下の通り2種類があるので、違いを認識しておきましょう。
2-4 特徴④ 昇給しない
ブラック企業では、昇格するのに昇給がないという会社もあります。具体的には課長に昇格する際、管理職手当として給料も上がるのが一般的ですが、ブラック企業では課長に昇格しても給料が上がらないということです。
一般的には課長に昇格することは責任のある立場にもなるため、給料も増えるのが当然と考えるかもしれません。ただし、昇格したから管理職手当をつけなければならないという法律がないため、ブラック企業はこれを良いことに、給料を「責任感」や「やる気」などに置き換えて、従業員を働かせ続けるということです。
一般社員の時は、安い給料ながら残業代はきちんと出ていたのに、管理職になったら、わずかながらの手当で残業代が出なくなったというケースもあります。ただし、就業規則に昇格時の昇給額が明記されているのに、その金額が支払わなければ「労働基準法第89条」に違反していることとなり、ブラック企業としてみなされてしまいます。
2-5 特徴⑤ 休日日数が少ない
労働基準法上、1日8時間労働の場合、週休2日でなければなりません。1年で換算すると年間最低でも104日の休日がなければなりません。一般的な企業では、年間休日はおよそ100日~120日程度です。しかし、ブラック企業では年間休日104日未満としている企業も多いようです。
さらにひどいケースは、年間休日が52日を下回っていたり、月に2~3日しか休みがないという企業もあり、完全に労働基準法上違法となります。このようなブラック企業は従業員の入れ替わりも激しいため、常に求人を出している企業が多くあります。求人票には堂々と違法な休日日数が明記されていることもあるので、ブラック企業かを見極める判断としてもいいでしょう。
2-6 特徴⑥ 有給休暇を取得出来ない
ブラック企業では労働基準法を完全に無視し、本来なら与えられるべき有給休暇を与えず、社員が風邪や病気などになっても遅刻しても欠勤とし、有給休暇を使わせずに給料を減らそうとします。また、さまざまな理由で、有給休暇を取らせない環境を作り上げています。一般的にはあり得ない理由とは以下の通りです。
- 当社には「有給休暇」という制度がないと明言している
- 会社を休むことは怠惰な人がすることで、恥ずかしいことと植え付ける
- 有給休暇を取得する社員の評価を下げる
- いつの間にか有給休暇を消化したこととなっている
2-7 特徴⑦ 休日に呼び出される
ブラック企業に関わらず、どの企業でも突発的業務が発生して、休日出勤を余儀なくされることはあります。ホワイト企業などでは、休日出勤の代わりに代休が与えられたり、休日出勤手当が支給されたりすることが徹底されています。しかし、ブラック企業では休日に急に呼び出されたら、必ず出社しなければならないルールがあったり、休日出勤手当はもとより、代休さえも申請できない社風だったりします。
ブラック企業で働くパートやアルバイトによくあるケースですが、シフトに入っていないにも関わらず、「もしかしたら出勤してもらうかもしれないから」と待機を命じられることもあります。会社から連絡がなければ「休日」とされてしまいますが、自宅待機の場合も労働基準法上では出勤に当たり、休出手当、残業代などが支払われなければなりません。
2-8 特徴⑧ 冠婚葬祭に出られない
結婚式やお葬式などの冠婚葬祭が土日祝日におこなわれると、飲食業や美容院、アパレルなどのサービス業で勤務している場合、一般的に休みにくいことでしょう。ただしブラック企業となると、休みにくいのではなく、休めない、休ませてもらえないという実態が浮き彫りになってきます。
もちろん、冠婚葬祭だからという理由で、従業員を休ませなければならない法律はありません。ただし、就業規則で冠婚葬祭の休暇を認めている場合は、休暇を認めなければなりません。
さらに突き詰めると、常時10人以上の従業員を雇用しているのに、就業規則がない会社は労働基準法第89条に違反しています。厚生労働省が作成した「モデル就業規則」には冠婚葬祭の休暇について記載があるため、多くの企業の就業規則では冠婚葬祭の休暇について定められています。
また、冠婚葬祭でも休ませてもらえない会社は、何かしらの問題を抱え、客観的に見れば、完全にブラック企業だといえます。しかし、実際にその会社の中で働いていると、冠婚葬祭よりも、仕事を優先するのが普通と思い、他の社員も全員が同じように冠婚葬祭で休まないということが当たり前のこととなり、それがやりがいのあることだと、会社から刷り込まれてしまっているのです。
2-9 特徴⑨ 離職率が高い
労働基準法を無視し、劣悪な環境で勤務させていると、社員は自ずと離職していきます。それだけではなく、ブラック企業は社員を物のように扱い、成果のあげられない社員をどんどん切り捨てていくため、人の入れ替わりも激しく、必然的に離職率が高くなります。
前述のブラック企業の特徴に「給料が著しく安い」と解説しましたが、ブラック企業の中にはそこそこの給与を提示している企業もあります。早く安定的な仕事に就きたいという人の心理につけこみ、ちょっとよさそうな条件を付けるのです。しかし、実際に入社したら、全く残業代を支払ってもらえないとか、ほぼ毎週休日出勤で手当も支給されないなどという激務が待っていることも多々あります。
一般的なホワイト企業での採用は、学歴や経歴や資格、人間性などでふるいにかけていることでしょうが、ブラック企業の場合は、自社でどれだけ耐えて働けるかということだけでふるいにかけています。よって、ブラック企業の場合は、突然来なくなったとか、もめて辞めたなどというケースが大半を占め、円満退社というものはほとんど見受けられません。
2-10 特徴⑩ 精神疾患の労働者が多い
ここまで、ブラック企業のさまざまな特徴を見てきましたが、このようなブラック企業で働き続けていれば、必ず心身のどこかに弊害が起きることは想定できることでしょう。ブラック企業はメンタルを食いつぶすともよく言われています。
ブラック企業では、従業員の燃え尽き、疲労、疾患などの過度のストレスによって、多数の従業員の健康状態に被害を与えます。そのような従業員が複数人いる場合、その会社はブラック企業と断定してもいいかもしれません。また、自分のことだけでなく、一緒に働いている同僚や先輩・後輩の健康状態や言動や精神状態をみることで、職場環境の良し悪しを判断することができます。
また、ブラック企業ではパワーハラスメントの横行や、職場全体で特定の社員を集中的にイジメたりすることもよくあります。このような集中砲火を受けた当事者は、当然精神時なダメージも大きくなり、うつ病などを発症、さらには自死に至る最悪の事態になる可能性もあります。
3.実は経営者の多くは「ブラック企業」だと思っていない?
ブラック企業の特徴を見てきましたが、では、そのブラック企業の経営者は、いったいどのような考えで会社を経営し、従業員をどのように見ているのでしょうか。
ブラック企業の経営者の多くは、寝る間も惜しみ、休日などない厳しい状況で会社を立ち上げたという経験を持っています。また、そのような親を持つ2世、3世の経営者なども、親の大変さを身近に見てきました。よって、自分たちが大変な状況で頑張ってきたのだから、従業員のみんなも出来て当たり前、会社の仕事はみんなで共有し、みんなで一緒にすべきことと考えているのです。
ブラック企業の経営者の中には、「社員を使い捨てること」を効率の良いシステムとして、意図的にやっている経営者もいるといわれています。しかし、多くのブラック企業の経営者は、みんなで一緒に苦労しているのだからブラック企業ではないと勘違いし、自分の経営方針が悪いこととは考えていないのです。
よって、会社説明会や求人票などに、「当社はファミリーのように、和気あいあいとした会社です」とか「アットホームで人間関係を大切にしています」などというフレーズがでてきた場合は要注意です。もちろんホワイト企業で、いい意味のアットホームを実現している企業もありますが、ブラック企業の場合は、みんなファミリーなんだから、一緒に助け合いながら仕事をすれば、お金なんていらないよね、ということにつながるのです。
4.ブラック企業認定を避けるためにやるべきこととは?
厚生労働省は「長時間労働削減に向けた取組」として、「働き方の見直し」に向けた企業への働きかけや、長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導の徹底等を行っています。そこでは「働き過ぎ防止のための取組強化」や「過労死等の防止のための対策に関する大綱」などが定められました。
こうした状況の中、厚生労働大臣を本部長とする「長時間労働削減推進本部」が設置され、そこでは「違法な長時間労働を繰り返している企業に対する指導・公表について」にて、指導・公表すべき企業の基準を明記しました。さらに「労働基準関係法令違反に係る公表事案」では企業の実名と違反内容を、毎年公表しています。
出典元:厚生労働省「長時間労働削減に向けた取組」
現在、「ブラック企業」と言われる明確な基準はありませんが、上記の「労働基準関係法令違反に係る公表事案」に掲載された企業が、ブラック企業認定企業とされることもあります。このようにブラック企業の烙印を押されないためにも、最低限以下のことを遵守していくことが重要です。
- 残業代支払いの徹底
- 休日の確保
- 企業が「社員を育てる」意識を持つ
本来ならば、長時間労働の是正も健康面を鑑みれば大変重要なことですが、どの企業も時節的に長時間労働を避けられないことがあることでしょう。また、日常的に長時間労働を強いられているとしても、きちんとリフレッシュできる休日を与え、正当な残業代の支払いをしていれば、従業員としても苦労した残業の対価がもらえたということで、企業に対する不満はかなり少なくなります。
また、会社全体で新入社員(特に新卒入社)を育てる意識を持つことも重要です。ブラック企業の典型は、新入社員たちに困難な目標を設定させ、達成できないと厳しく叱責するなどのパワーハラスメントで精神的に追い込み、退職を余儀なくさせるというものです。周りの先輩社員により新入社員に対するフォローアップ体制が整っていれば、新入社員が孤立して不安になることも少なくなります。
5.健康経営はそんなお悩みを解決する一つの方法?
ブラック企業では従業員が心身ともに疲弊し、うつ病などになり退職せざるを得ない状況になることが多発することは前述の通りです。スタートしたばかりの企業も創業から安定的な経営に移行できるようになるまでは大変な時期で、第2章で解説したブラック企業の特徴のどれかに当てはまってしまうことがあるかもしれません。
ブラック企業とは言わないまでも従業員にかなり無理をさせていると考えている経営者の方は、持続可能な経営を目指すためには、社員を大切にし、社員の健康に配慮した健康経営に取り組んでみてはいかがでしょうか。週に1日だけでもノー残業デーを作り、その日は自宅の最寄り駅の一つ手前で降りるなどして、できるだけ歩いて帰ろう、という目標を作り、部署ごとで歩数を競わせるなど、スモールスタートから始めてみるのもいいかもしれません。
その他に、週3日以上7時間以上睡眠が取れたか、とか、毎日きちんと3回の食事をとっているか、などの簡単な行動目標を設定させ、できた人にはインセンティブ・ポイントを付与するというのもお勧めです。もらったポイントで、コンビニの支払いにチャージできたり、スポーツ用品や好きな商品と交換できたりする仕組みを取り入れると、従業員にも自主的に健康になろうという意識が芽生え、ダラダラ残業を効率的に変えるようになるかもしれません。
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6.まとめ
ブラック企業の実態についてご理解いただけましたでしょうか。
これから就職活動をする方は、この記事で挙げた特徴を踏まえて、ブラック企業か否か入社前に見抜けるよう、企業調査をしっかりと行いましょう。また、一次面接だけであっさり採用が決まった場合などは、受諾する前に就労条件などを細かく確認することも必要です。それでも万が一ブラック企業に入社してしまった場合は、働き続けて健康を害し、泥沼にはまってしまう前にできるだけ早く見切りをつけ、退職する勇気を持つことも大切です。
企業の経営者は、特にスタートアップ企業などの場合は、就職希望者にどれだけ忙しいのかを正しく、具体的に説明することが重要です。ただし、残業代は全額きちんと支払う、休日出勤の場合は手当を支払う、そして、従業員の健康管理はしっかりする、いずれ福利厚生を充実させる、など当たり前と思われることを明言し、それをきちんと遵守していくことが求められています。
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