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2022/07/05 (公開:2021/12/20)

過労死ラインとは? 過労死ラインを守った職場を作るポイントを解説


過労死ラインとは? 過労死ラインを守った職場を作るポイントを解説

過労死と聞くと怖気づいてしまう方、または私には関係ないと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、意外に身近に迫っている恐ろしい結末が過労死です。法規や基準は、存在するだけで内容を知らなければなんの意味も持ちません。

本記事では、過労死ラインという国の定めた大切な基準について紹介いたします。これを機に、過労死ラインについて最低限知っておくべき情報をおさえておきましょう。

1. 過労死ラインとは

働きすぎ(=長時間または過重労働)が招く脳や心臓疾患を労働災害と認めるためのひとつの基準を“過労死ライン”と呼びます。では、実際にどのくらいなのか? 労働時間だけにより判定されるものなのか? 知っておくべき基礎となる部分をご紹介します。

         

1.1 過労死ラインは何時間?

過労死ラインと呼ばれる脳・心臓疾患の労災認定基準は、以下の通りとされています。

① 脳・心臓疾患を発症する直前の1か月間で100時間の残業時間

2~6か月間で平均80時間の残業
また、2021年 9月15日には厚生労働省が当規定を次のように改定されています。

② 労働時間がその基準に達さずとも、労働時間以外の負荷要因を労災認定の際に考慮する。

さらに、以下の条項が新たに追加されています。

③ 休日のない連続勤務

④ 勤務間インターバルが短い勤務

ただし、期待されていた“労働時間の基準”自体の見直しはなされませんでした。20年ぶりに改訂された当条項も、WHO(世界保健機関)/ILO(国際労働機関)が発表した「週55時間以上働いている(月60時間以上の残業)と深刻な健康被害をもたらす」といった内容の報告書とはやや乖離したままであることから、労災と認めるために国が考慮する内容が追加されただけなのでは、と議論を呼んでいます。

つまり、過労死ラインとは、本来であれば よりきちんと考慮して労務管理をするべき、という前提のある、最低限守らなければならないものなのです。

             

1.2 過労死ラインと健康障害の関連性

長時間仕事をしたり、遅くまでの残業が続くと、誰もが強い疲れを感じるでしょう。それが続くと、どんな人でも体調を崩したり、やる気が出なくなったりと何かしら影響が出始めます。ただし 実はそれは身体の発する危険信号であり、常に危機感を持って対処にあたる必要があります。

そもそも過労死とは、以下のようなことを指します。

  • 過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患による死亡
  • 仕事による強いストレスが原因の精神障害によって引き起こされる自殺

過労が招く小さな健康障害が積み重なり、重篤な健康障害を引き起こすことは言うまでもありません。これについては多くの研究や統計が行われており、厚生労働省も過労が招く危険性について紹介しています。

時間外・休日労働時間と健康障害リスクの関係


            

2.法律に違反しない労働時間

働くうえでの最低限の基準をご存じの方は多いと思いますが、そこには明確な基準があります。どこまでがOKで、どこからがNGなのか。定められている法律を基に解説します。

          

2.1  1か月の労働時間の上限

労働基準法 第32条により、労働時間の上限は、「原則8時間/日」「40時間/週」と定められています。この上限時間を「法定労働時間」と定義しています。

第32条 1項

使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。

2項

使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。

法定労働時間はこのとおり、日・週単位でのみ定められているため、月あたりの労働時間の上限は原則、「40時間×1ヶ月の日数÷7日」という計算で求められます。

《計算例》
・2月(28日/月)= 40時間×28日÷7日=160時間
・3月(31日/月)= 40時間×31日÷7日=177.1時間
・4月(30日/月)= 40時間×30日÷7日=171.4時間

この“法定労働時間”を超えた残業は、原則として労働基準法に違反となってしまいます。ただし、「36協定(=サブロク協定)」を締結し届け出ると、一定時間までは時間外労働が適法なります。

        

2.2 協定の上限

法定労働時間を超えた残業には、サブロク協定と呼ばれる労使協定を結び、所轄の労働基準監督署へ届け出ることにより対応します。労働基準法 第36条に規定されているため、このように呼ばれていますが、法定労働時間を超える時間外労働や休日労働を労働者にさせる際には必ず締結が必要なものとなります。

使用者が労働者との間で結ばれますが、当協定の基準を超えない範囲の時間外労働および休日労働を労働者にさせることができるようになります。ただしこれには、以下のようなことをあらかじめ定めておく必要があります。

  • 時間外労働に携わる業務の種類
  • 1日、1か月、1年当たりの時間外労働の上限

また、定めることのできる時間外労働の上限は、原則以下のとおり定められています。

  • 45時間/月 まで
  • 休日労働は除き 360時間/年まで

※一部業種では上限規制なし(労働基準法 第36条4項 一般条項)

ただし、250時間/月の労働をした場合、1か月あたりの時間外労働は、31日の月でも約73時間、28日の月だと90時間ということになり、これを締結したとしても月45時間の上限を超えてしまうため、労働基準法違反であることに変わりません。

         

2.3 特別条項付き36協定

季節イベントが集中するとき、決算など会社運用上必要な事情あるときなど、臨時に特別な事情がある場合には、特別条項付きの36協定を締結することができます。これを締結する場合、時間外労働の上限時間は一般条項の場合よりも長くなりますが、この場合でも、原則として以下のような上限規制を守らなくてはなりません。

  • 時間外労働は720時間/年以内(労働基準法 第36条 5項)
  • 時間外労働及び休日労働の合計が複数月(2-6か月)平均で80時間以内 (第36条 6項 3号)
  • 時間外労働及び休日労働の合計は100時間/月未満 (第36条 6項 2号)
  • 原則の45時間/月を超えられるのは6か月/年以内 (第36条 5項)

よって、250時間/月の労働をしている場合、約70-90時間/月の時間外労働をしていることになるため、毎月250時間労働が続くと、8-10か月で 720時間/年のラインに到達します。よって、45時間/月を超えられるのは6か月/年 という規制を上回ってしまうため、原則違法であると言えるのです。

         

3.過労死ライン

「ここまでやったらアウト」という過労死ライン、加えて 長時間労働が招く最悪の事態についても紹介いたします。実際の病名を目の当たりにすると、途端に長時間労働の危険性、迫る過労死ラインのリスクについて気づくことができるでしょう。

            

3.1 アウトソーシングサービスのメリット

過労死ラインとは、厚生労働省の定める「これ以上働くと、脳・心臓疾患のリスクが高まるとともに、実際に疾患が起きた際にはこれをひとつの労働災害の主な原因であるとみなす」示準のことです。

これを超えて働いた場合、脳・心臓疾患による過労死のリスクが非常に高まるとともに、過労死が発生するおそれが大いにあります。また、直近の勤務状況より、ここまで働いていた実績がある場合、労働災害として認定されるひとつの基準にもなることも。

つまり、厚生労働省が「この基準を超えて働くと、病気や最悪の場合 過労死や過労自殺につながった際に、仕事との相関性が高い」とする基準なのです。

           

3.2 長時間労働は病気や過労死につながるのか

長時間労働が病気や過労死に直結するかという問いに対して、長らく議論が続けられてきました。それに伴い 多数の研究や統計による医学的論文が発表されるようになり、長時間労働と健康問題の相関性が明らかになっています。

2002年にLiu et al氏により発表された研究結果では、日本国内にて急性心筋梗塞の男性患者260人および対照患者 男性445人への調査が行われています。

週あたりの長時間労働、およびそれに伴う睡眠時間の減少により、急性心筋梗塞のリスクが最大4.8倍に高まることが記されています。

           

3.3 長時間労働が原因で起こる可能性のある病気

長時間労働が招く病気にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、長時間労働により起こりえる病気とその理由を、具体的に解説していきます。

精神障害や自殺

労働災害としての申請の割合が最も多いのが精神障害です。うつ病、自律神経失調症などの病気として認定されるケースから、なんとなく気分が乗らない、仕事に行きたくなくなる、といった軽微なものまで、状況はさまざまです。

ただし、最も重篤なものとして、過労自殺を招いてしまうケースもあるようです。2019年度には2,060件もの労働災害申請が、またそのうち202件が自殺として申請がなされており、この件数は増加傾向にあります(2020年度はコロナ禍により減少したとみられます)。

単調作業の多い製造業や、長時間労働の常態化しやすい医療・福祉業に多い傾向があるようです。

脳や心臓の疾患

「脳・心臓疾患」とは、次のようなことを指します。

脳内出血  くも膜下出血  脳梗塞  高血圧性脳症
心筋梗塞  狭心症     心停止  解離性大動脈瘤


命にかかわる非常に重篤な症状であり、酷い痛みを伴ったり、後遺症が発生することも少なくありません。2019年度には936件もの労働災害申請が、またそのうち253件が死亡として申請がなされていますが、労働災害認定が238件と、基準からしても申請対認定の比率が非常に高いことが特徴です。この件数は増加傾向にあります(精神障害と同様、2020年度はコロナ禍により減少したとみられます)。

常に気が張り、その体勢から脳や心臓への負担が大きいためか、運輸業の労災認定が最も多く、ついで製造業、卸売業・小売業で労災認定が多いようです。

事故やケガ

集中力散漫により、副次的に招いてしまうおそれがあるものとして、日常生活での小さな判断ミスによる小さなけが、それが積み重なることにより、確率として交通事故や大けがにつながるおそれがあります。

「ハインリッヒの法則」とも呼ばれますが、大きなひとつのミスや事故の裏側には、300もの異常(ヒヤリ・ハット)が存在する可能性があるという、統計学やリスクマネジメントの分野ではよく使われる法則があります。

小さなミスを防ぐことが 大きなミスの撲滅にもつながることが証明されている以上、長時間労働によって小さな事故の数が増えてしまうことは、大事故に直結するリスクを生じさせることに他ならないのです。

運輸業などでは、特に他の人の命を預かるため、自分や会社だけの問題ではなく、非常に重篤なインシデントとなり得ることから、労働時間などについては非常に厳しく規制がなされているようです。

         

4.過労死ラインを守った職場を作る3つのポイント

過労死ラインを守ることがすべてではありませんが、大切なのは“過労死ラインを守ることのできる環境を整備すること”です。そのためにすぐに着手すべき、3つのポイントを紹介いたします。

            

4.1 法令遵守

過労死ラインとして規定する以上、国も 長時間労働を是正/防止するために労働基準法・労働安全衛生法をはじめとした、さまざまな法整備・法改定を行っています。

違反した場合、“6か月以下の懲役 または 30万円以下の罰金” が使用者に下される場合があります。加えて、業種によっては事業停止処分などが下される場合もあります。これは社会にとっても非常に影響が大きいものであることから、法令を遵守することこそ、会社も、労働者も、サービス利用者をも守れる最も早道であると言えるのです。

また、先述したとおりの時間外労働や週あたり/月あたり労働時間に関する規定だけでなく、労働基準法や労働安全衛生法には、別途定まりがあるため注意が必要です。

例えば「長時間労働発生時には安全配慮義務がある」などの規定となります。

《長時間労働発生時の安全配慮義務》

① 従業員への通知義務(労働安全衛生法 第52条の2 第3項)

時間外労働が80時間/月を超えた場合には、
企業はその従業員に対し、通知を行う義務があることを規定

② 医師による面談指導の義務 (労働安全衛生法 第66条の8)

時間外労働が80時間/月を超え、かつ疲労の蓄積が認められる場合には、
企業はその従業員に対し、医師による面接指導を行う義務があることを規定

③ 労働時間短縮措置を講じる義務 (労働安全衛生法 第66条の8)

企業は長時間労働者に対する医師による面接指導ののち、担当医師へその意見を聞き、
状況の是正措置をとる義務があることを規定

その他、労働時間に関する規定は、あらゆる業種に適用される労働基準法・労働安全衛生法といったものから、特定の業種や従事者を対象に規定されるものまで多数あるため、確実な確認およびその遵守が求められます。

            

4.2 新たな人事制度の導入

法規を遵守するためには、ただの意識改革だけでは形骸化してしまうおそれもあり非常に難しいものとなってしまいます。そこで、昨今注目されているのが“新たな人事制度の導入”です。

例えば、連続した長時間労働を防ぐために効果的なのが「勤務間インターバル制度」です。これは国も推奨しており、主に運輸系の業種などですでに法規化されている制度のひとつです。前日に遅い時間まで働き、そのまま翌朝も普段と同じ、ましてや普段よりも早い時間より従事するというのは、よく考えれば非常に負担なものです。これを是正するのが勤務間インターバル制度。“休憩時間”ではなく、勤務終了後の“休息時間”をどれくらい置くか、という点に主眼を置いた制度です。

連続した長時間労働を防止するためには、このように 単日ではなく通期的に捉えて検討を進めていく必要があります。

            

4.3 管理職の責任・管理職自身の労務管理

管理職の定義とは、一般的に、『一定の範囲において、成果への責任と決裁権を持ち、所属するメンバーを指揮・指導・管理する社員のこと(=部門の責任者:部長|課の責任者:課長) 』 とされています。日本では課長以上を管理職とすることが多く、決裁権を持たない者(=係長・主任など)は管理職としないことが非常に多いのですが、明確に法規定されているわけではないため、非常にあいまいです。管理職であれば時間外労働に対して割増賃金を支払う必要が無いという認識が一般的ですが、だからといって長時間労働を集中的に課しても良いわけではありません。

そもそも管理職といえ、労働時間/休憩時間の枠を超えてでも労働しなければならないほどの責任および権限があるかを見極める必要があります。

  • 上層の管理職から業務遂行における大部分に対し指示を仰ぐような場合
  • 労働時間が厳格に定められ管理されている場合
  • 一般従業員と比べ相応の待遇でない場合

これらは管理監督者とはみなされません。

管理職は適切に部下の長時間労働・時間外労働を管理するために仕事の割り振り(業務分掌)を常に見直すことが求められるだけでなく、自身の時間外労働管理についても適切に把握していく必要があるのです。そのためにはタイムカードや業務用PCでのログイン履歴などによる記録も重要・効果的です。

また実際に、これまでの法規では「行うことが望ましい」という表現に留まっていた、管理監督者の労働時間の把握が、働き方改革による労働安全衛生法の改正(=改正労働安全衛生法 第66条の8)によって管理監督者の労働時間を把握することが必要となるなど、見直しが進められています。管理職にも労働基準法の労働時間上限規制が適用されるため、違反すると重罰則が科せられます。

         

5.まとめ

本記事では、法律が多く関わる やや難しい題材を取り上げてきました。ただし、あらためて内容を確認してみると、決して難しい内容ではありません。

① 長時間労働は健康障害を引き起こす可能性が非常に高いため、法律で厳しく取り決められている

② 遵守するための最低限のラインが“過労死ライン”

③ 過労死ラインを超えた長時間労働は、脳・心臓障害や精神障害の要因のひとつとなり、過労死や自殺を招く可能性もある

④ 長時間労働を防ぐために 会社として意識改革だけでなく制度から見直すことが求められている

今からでも、過労死ラインに到達しないように、組織全体で働き方改革や制度の見直しを行っていきましょう。


監修者 株式会社イーウェル 健康経営推進室

 


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