なぜ”今”健康経営が必要なのか?導入企業の増加の理由を探る
大企業・中小企業に問わず、現在健康経営に前向きに取り組みをしている企業が増加傾向にあります。とくに中小企業は人材不足が問題になっていますが、健康経営に取り組むことにより、数十人規模の企業でも新入社員を3名確保できたという良い情報も入っています。
本記事では、健康経営のメリットから、取り組みのステップを解説し、2024年に健康経営優良法人に認定された企業の取り組み事例を紹介しています。健康経営ご担当者は必見です。
目次
1.なぜ”今”健康経営なのか・・・その背景は?
近年、大企業や中小企業において「健康経営」というキーワードが取り上げられ、注目されています。
健康経営に関心が高まっている背景として、
①社会環境の変化:65歳未満の労働力人口が、今後大幅に減少
②経営環境の変化:少子高齢化や定年延長に伴う従業員平均年齢の上昇、及び企業経営における人材確保
③市場環境の変化:データヘルス計画や、健康経営銘柄等 国の施策の積極化
などが挙げられます。
こうした日本の構造的な課題を背景に、より優秀な人材の確保とその継続的なパフォーマンス維持向上につながる施策の施策の整備が不可欠と考える経営者が増えてきています。
「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。
企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力や生産性の向上など組織の活性化をもたらし、結果的に業績や株価の向上につながると期待されます。
引用元:経済産業省
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2.健康経営に取り組むメリット・デメリット
健康経営に取り組むことにより、どのようなメリット・デメリットがあるのか解説します。
2-1 メリット
健康経営に企業が取り組むメリットは、複数挙げられます。
- 健康面からの労働生産性向上
- 医療費削減
- 従業員と経営者の関係性(ワーク・エンゲイジメント)向上
- 企業価値向上
- 企業イメージ向上や採用優位
前章の背景を踏まえ、優秀な人材の確保とその継続的なパフォーマンス維持向上に繋がるのが「健康経営」のメリットとされています。
2-2 デメリット
メリットがあれば当然デメリットも存在します。
- 投資の効果が出るまで時間がかかる
- 専門家を雇う人件費やデータの収集・管理コストがかかる
- 業務の増加により社員が不満に感じる場合がある
健康経営は中長期的な取り組みなので、費用面、人材面で企業に負担がかかる場合がありますし、推進の過程で従業員への理解浸透ができるかは、大きなポイントといえます。
3.健康経営に取り組む4つのステップ
健康経営をスタートするにあたり、取り組み内容を具体的に一つひとつ検討していかなければなりません。本章では基本的なステップを解説していますので、これから本格的に導入しようと考えているご担当者は、ぜひ参考にされてください。
3-1 取り組み前
健康経営を推進していくうえで、まずは経営層などのTOPを巻き込んで取り組みをしていかなければなりません。ただ、大企業になればなるほど、TOPと健康経営推進担当者との認識の乖離が生じやすく、最初の課題となるのが経営層の意思決定の方向性でしょう。健康経営推進担当者が費用対効果や取り組むメリットなどをしっかりと経営層に伝え、会社全体の意思統一を行うことが重要となります。
導入前の第一歩として健康経営推進担当者がすべきことは、『健康経営優良法人 認定要件』注1をしっかり読み込むことで、その認定要件の各項目内容に関して、自社ではどのような取り組みをすべきかがわかってきます。単に施策を行えばよいだけでなく、維持継続できる組織体制や評価・改善も必要です。あらかじめ経営陣と推進担当者が一丸となってよく考え、準備をしていきましょう。
注1:①健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)認定要件
3-2 取り組み開始
取り組み開始段階では、自社が具体的にどのような施策を実行していくかということですが、単に他社がウォーキングイベントやラジオ体操をしているから、自分たちも同じことをすればいいだろうと考えるのは早計です。
まずは自社の健康診断結果のデータや、残業時間や有給取得率のデータ、病欠者や休職者の割合など、健康や働き方に関する各データをしっかり分析し、他社のデータや全国の平均値と比較をするなどして、自社が劣っている項目や改善しなければならない課題を抽出します。その課題などに対して何をすれば解消されるのか、という具体策が取り組み内容となり、トップが主導し全社で実施開始となっていきます。
注意すべき点は「スモールスタート」です。いきなりあれもこれもと多くの課題解決の施策やハードルの高いことを一気に始めても、多くの従業員はついていけませんし、すぐに離脱してしまいます。まずはだれでも簡単にできることから段階的に進めていくことが重要です。たとえば、健康アプリを導入したばかりの企業なら、ログインした人に健康ポイント付与、などということから始めてもいいでしょう。
3-3 PDCA循環
前項で開始した取り組みに対して、参加者が増え順調に推進できるようになったところで、本当に効果を出しているのかを検証するために、アンケートの実施や実績データをとり分析をしていかなければなりません。施策を実施し、「頑張って続けてやっていますよ」と表明さえすれば終わりというわけではないのです。
健康経営の取り組みは、スモールスタートが基本となり、段階的に推進していくものであるため、比較的長期間にわたって様子を見ていかなければなりません。よって、定期的な評価と改善が必要となります。1ヶ月ごと、四半期ごと、半年ごと、などというように定期的に評価を行うタイミングを決めて、最終ゴールの目標値から逆算して、状況に応じてテコ入れや改善を行っていかなければならないのです。
このPDCAを繰り返すことにより、企業自体も健康的で生産性に寄与する会社へと成長していくこととなります。また、健康経営の実施状況や途中経過を社内に共有することで、啓蒙および参画意識の向上にもつながり、従業員のモチベーションアップやエンゲージメン工場につなげることも可能となります。
3-4 評価の社外開示
最終的に自社の健康経営の評価を受けるには、「健康経営銘柄」「健康経営優良法人」の認定、さらに、大規模法人部門の場合は「ホワイト500」や中小規模法人部門の場合は「ブライト500」に認定されることが有効です。
ただし、健康経営優良法人の認定を目指すことは、たしかに良い取り組みではありますが、認定されることを「目的」としてしまっては意味がありません。健康経営優良法人に認定されることは、経済産業省が定める健康経営に対して優良な取り組みを行っている企業の基準になるものです。
認定取得を目的とするのではなく、自社の健康経営度が向上するためのマイルストーンとして位置づけ、従業員がさらに健康でイキイキと働けるようになるためにはどうしたらいいか、ということを日々考え実行していくことが重要です。
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4.健康経営に取り組む必要のある企業の注意点
健康経営に取り組む必要性がある企業は一体どんな特徴があるのか。注意点を3つご紹介いたします。
4-1 注意点①:従業員の労働時間が長い
長時間労働や休日出勤が常態化している会社は要注意です。早朝から出社し、休憩時間もとらずに夜遅くまで働いているのが「当たり前」となっているのであれば、人事部門はすぐにでも「健康経営」を検討する必要があります。
今、必死で働いている従業員も、いずれは身体的・精神的負担により、休職や退職に向かいます。現場では、彼らの穴を補うために、また採用し、また退職し…という負のサイクルから一刻も早く抜け出すべきです。
4-2 注意点②:従業員が高年齢化している
多くの人は、年齢を重ねるたびに病気への罹患リスクが高まっていきます。とくに生活習慣病といわれる「高血圧・高脂血症・糖尿病」などは40代を境として発病するケースが多いとされています。
業務推進の管理職などのコアメンバーや、営業のエースと呼べる人材が、ある日突然倒れてしまう…というリスクは常にあります。従業員の平均年齢が高い会社であれば、彼らの健康へのケアは必須と言えます。
4-3 注意点③ストレスチェック結果が悪い企業
労働者が50人以上の事業場であれば、メンタルヘルス不調を測る観点から「ストレスチェック」の実施が義務付けられています。
その結果、メンタルヘルス不調者が多い、ということであれば、その事業所は要注意です。従業員が精神的に問題を抱えており、生産性の低下や大きなミスへの要因につながることが想定されます。
「健康経営」を促進することは、メンタルヘルス不調の防止につながるのです。
5.健康経営の取り組み事例
2024年3月11日に発表された「健康経営銘柄2024」および「健康経営優良法人2024(大規模法人部門_ホワイト500)」に認定された企業から3社を抜粋し、それぞれの健康経営の取り組み事例を紹介します。
5-1 事例① 『しずおかフィナンシャルグループ』健康経営銘柄2024 認定
健康経営銘柄2024に認定された、しずおかフィナンシャルグループは今回初めての選定となります。2024年3月12日開催の「健康経営アワード2024」では、事例発表・パネルディスカッションにおいて、代表取締役社長の柴田久氏が登壇され、自社の健康経営の取り組み内容について発表しました。健康経営の取り組みに関する全体像は以下の通りです。
取り組み① うぇるはぴプログラム
「うぇるはぴ(ウェルネス・ハピネス)プログラム」は、健康行動によって獲得したインセンティブを地域やお取引先にて消費し、地域活性化にもつながる仕組みです。
取り組み② 地域との共創
出典元:2024年3月12日開催「健康経営アワード2024」講演資料参照
5-2 事例②『SCSK』健康経営銘柄2024 認定
健康経営銘柄2024に認定されたSCSKは唯一最多の10回目の選定となります。
かつては、24時間365日稼働するシステムを相手に、夜間の作業や問い合わせが多く、夜遅くまで残っている社員や休まない社員を良い社員とする風潮が蔓延し、帰りづらい、休みづらいという環境が生まれていました。また、優秀な技術者が難しい仕事を一人で抱え込み、ジョブローテーションを困難にし、ますます休めない状況となり心身の健康にも悪影響を与えていました。
そこで、SCSKの仕事に求められる高い業務品質の維持、多様な能力の発揮、創造性の発揮には、健康課題への抜本的な改革が必要となり、次の3つの取り組みを2013年から段階的に開始。それぞれの取り組みで成果をあげてきました。
取り組み① スマートワーク・チャレンジ ~長時間労働を効率的な働き方で改善~
取り組み② どこでもWORK ~“画一的”から“柔軟”な働き方へ~
取り組み③ 健康わくわくマイレージ ~心身ともに健康的な職場へ~
出典元:SCSK 「健康経営の課題と取り組み」
5-3 事例③『PHONE APPLI』健康経営優良法人2024(大規模法人部門 ホワイト500)認定
健康経営優良法人2024(大規模法人部門 ホワイト500)に認定された、PHONE APPLIは2019年から6年連続の選定となります。2024年3月13日に開催された「健康経営アワード2024」では、事例発表・パネルディスカッションにおいて、代表取締役社長の石原洋介氏が登壇され、自社の健康経営の取り組み内容について発表しました。主な取り組み内容は以下の通りです
①健康経営の取り組みとウェルビーイング経営
PHONE APPLIは「従業員のウェルビーイング」と「長期的な利益創出&成長」の両立を目指す経営をしています。
②事業戦略としての健康経営・ウェルビーイング経営
③2024年度の取り組み施策(一例)
出典元:2024年3月13日開催「健康経営アワード2024」講演資料参照
健康経営を推進するうえで必要な「健康経営度調査」「健康投資管理会計ガイドライン」などを活用して、企業の健康経営の第一歩からPDCAを回していくお手伝いをするコンサルティングサービスです。健康経営の第一歩からPDCAの循環まで「健康経営推進支援サービス」
6.まとめ
これまでの記事で健康経営に取り組む大きなメリットはご理解いただけたと思います。すでに多くの企業や健保組合の皆さまが、自分たちにとっての「健康経営」とは何か?を模索し、実践しています。
健康経営の推進方法についてより詳しく知りたい、健康経営を通じて、会社を良くしていきたいと感じている関係者の方々は、最初の一歩を踏み出すためにもぜひ、まずは当社へご相談ください。
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