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2024/01/11 (公開:2022/12/16)

健康経営の現状と課題とは? ~日本の健康経営の解決方法~


健康経営の現状と課題とは? ~日本の健康経営の解決方法~

近年、「健康経営」という言葉が当たり前のように使われるようになり、従業員の健康管理を経営戦略のひとつとして取り組んでいる企業が増えつつあります。
本記事では世の中のトレンドとなっている「健康経営」について、現状はどのような取り組みが行われているのか、またメリットではなく課題(デメリット)はあるのか、などについて解説いたします。


体操する会社員

1.日本の健康経営の現状は?

健康経営とは、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することにより、従業員の活力向上や生産性が向上し、それが組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上に結び付けられることが期待されています。

「日本の人事部」の調査『人事白書調査レポート2020 新しい人事課題』によると、健康経営を実践している企業の状況が以下のようになりました。健康経営の認知度や重要性が高まる中、実際には取り組んでいる企業がまだまだ多くはないことがわかります。





また企業規模別では、実践している企業が大規模企業ほど高く、小規模の企業と大規模企業との間に大きな差が生じていることが判明しました。




なお、健康経営を実践している企業に期待する効果を確認したところ、「従業員満足度の向上」がトップで81.7%となりました。従業員規模別で見ても、どの規模でも70~80%の企業が期待している効果となり、非常に高い数字となっています。



 

引用元:日本の人事部『人事白書調査レポート2020 新しい人事課題』


2.健康経営がうまくいかない理由とは?



従業員満足度向上への期待値が高く、認知度・重要性が高まっている割に、まだ取り組んでいる企業が多くはない理由は、どこにあるのでしょうか。メリット・デメリットはもちろんありますが、それを論じる前の段階でつまずいてしまっているということはないでしょうか。取り組みでつまずく原因としては、以下のようなことが考えられます。 


2-1  トップが無関心


例えば、会社でこんなことはないでしょうか?
 社長が健康診断で生活習慣病を指摘されたことを社内で笑い話にしている
 経営陣が喫煙しながら談笑している姿がよく見られる
 役職者が毎日のように遅くまで残業をしている

 

健康経営の推進には、経営の責任者であるトップ(社長や経営陣)の決断が不可欠です。またトップから取り組みを宣言し、会社としての本気度を示すことも成功のステップであると言われています。取り組み宣言したのにもかかわらず、実際には経営陣が無関心で全く実践しない、というのでは、従業員に真逆の内容が伝わってしまうことにもなりかねません。

「先ず隗より始めよ」と言われる通り、会社の決断は、トップが身を以て知らしめることが重要です。 


2-2 担当者が業務過多


健康経営の実行を担うのは、人事系の業務を行っている部署であることが多いようです。
健康診断の手続き等を行ったり、社員の身心不調による休業などを管理したりする部署ですので、業務がなじみやすいと考えられますが、人事部は外から見る以上に業務が集中する部署でもあります。

給与計算や各種保険の手続き、入退社処理など、ミスも延期も許されない業務が多いうえ、人手不足といわれる昨今では採用が大変な場合もあるでしょう。

会社の健康経営を推進するために、一部の部署が逆に健康を損ねかねない業務量を背負うことは本末転倒です。また、担当者の業務量を考えて割り振らないと、目先の業務が優先になり、すぐに結果の出ないものは劣後させてしまうことも。

健康経営は会社全体に関わる経営課題ですが、それを一部署としての役割にしているようであれば、そこから見直し、効率的に施策を進められる組織を編成しましょう。前章の内容とも関係しますが、推進に成功している企業では、社長自らが率いる特別チームを編成した例もあります。

 

2-3 具体性がなく方針だけ


「会社方針として決まったので、今日から健康経営を推進してください」といきなり指示されて、何をどう進めたらいいか、すぐにイメージできる従業員はそうそういません。
推進を漠然と指示しても、具体性がなければ従業員も何をしていいか分からず、また進んでいるかどうかも不明確になります。

従業員の健康について真剣に向き合うのであれば、健康診断結果やストレスチェックで所見ありとされる従業員につき健康相談や受診勧奨を行う、広く健康について考えるセミナーを開催するなど、具体的にアプローチする方法はいろいろです。

号令だけでは効果も形式的なものになることを考慮し、具体的な取り組みを提示するようにすべきでしょう。 

 

2-4 実現不可能な目標設定



健康経営実施に前のめりになるあまり、「全社一律で今日から残業禁止」「喫煙所を全撤去」「全員参加で始業前にラジオ体操」など、いきなり強制的な内容を実施すれば、いくら従業員の健康を考えてのこととはいえ大きな反発を生みます。
また、従業員にも業務状況や個人的事情があり、参加できないこともあります。

いきなり大きすぎる目標を掲げ、その後従業員への浸透に苦労するのではなく、無理のない実施方法を検討する方が現実的と言えます。
労働安全衛生法により労働者50人以上の事業場で設置を義務づけられている衛生委員会で話し合い、実行可能な施策を選択する、労使による話し合いの場で決定する、などの手法もあります。

急発進急ブレーキではなく、安全かつ確実な取り組みを目指すようにしましょう。

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3.日本の健康経営の課題(デメリット)は?

健康経営のメリットというと、以下のように良いイメージが思い浮かびますが、ここでは健康経営で注意すべき課題やデメリットについて解説いたします。

 健康経営の良いイメージ 
  ・生産性の向上
  ・医療費の削減
  ・ブランドイメージの向上 

3-1 課題① 効果が不明瞭

健康経営は長期的な取り組みとなるため、始めの頃は効果が見えづらく、取り組むことに大きな意味はあるのか、と思ってしまうこともあるかもしれません。しかし、長期的に取り組むことで、その効果は確実に目に見えるものとなります。

長期的な取り組みとなるため、担当者によっては苦難を強いられる場面もあるでしょう。そのため健康経営を導入する際には、効果が見えづらいということを念頭に入れ、その上で施策を考えることが大切です。
 

3-2 課題② 効果検証のためのデータ収集が困難



健康経営の効果検証をするにはデータ収集が必要となり、その作業は大きな負担となります。
社員がデータをきちんと提出してくれたのか、そのデータが正確なものなのか
さらにデータを収集したのはいいけれど集計が大変など、様々な負荷が発生します。

負荷をかけずに効率的にデータ収集をするためには、便利なアプリを導入するなどが考えられますが、費用面で大きな負担がかかる場合もあります。またアプリ導入による情報流出等のリスクもあるでしょう。

効率的にデータ収集をしようとすると費用がかさんだりリスクがあったり、逆に費用を抑えると大変な作業となるため、どちらにしても健康経営を実践する場合の大きなハードルとなるかもしれません。 


3-3 課題③ 取り組みによる社員の負担増の可能性

健康経営の取り組みは、通常業務が忙しい従業員にとっては、さらにやることが増え、結果としてそれを負担に感じることがあるかもしれません。時間外や休日の健康イベントや数値目標の設定をした取り組みなど、健康につながるとわかっていても、通常の業務に追加でやるべきことが増えることで、ストレスを感じてしまう従業員が出てくる可能性もあります。

従業員の健康維持や促進を見込んで健康経営に取り組んだことが、逆に社員のストレスや負担を増加させてしまっては意味のないものになってしまいます。よって従業員の負担が増さないように注意して、健康経営に取り組むことも大きな課題となります。

様々な施策に魅力を感じて、全て実践してみたいと思ったとしても、まずは優先順位を絞って取り組む方が、社員それぞれの負担が少なく効果も出やすいかもしれません。



4.日本の健康経営の解決方法とは?

健康経営にはメリットだけではなく、取り組みの際に課題も発生する可能性があることを理解できたのではないでしょうか。ここでは、その課題を解決するためにはどのような方法があるのかを解説します。

4-社内の課題に合致した設計





健康経営に取り組む際に、他社の事例を参考にしたり、世の中のトレンドを採用したりする方法もありますが、高い効果を出すためには、社内の課題に合わせた設定をすることが大切となります。
より高い効果を得るためには、社内で取り組むべき課題を明確化し、そこを改善するために有効的な取り組みを検討するようにしましょう。

例えば、長時間労働者が多い、高ストレス者が急に増えた、社員の定着率が悪い、過重労働者が多いなど、社内の状況に合わせて取り組む課題を見つけていくことが重要となります。まずは課題に合わせた設定に対して、1つ1つ取り組んでいくことで効果を実感しやすくなります。

健康経営を実践する際は、自社の課題を可視化し、テーマを定めることが大事なポイントとなります。


4-2 目標やスケジュールの明確化


健康経営のように長期的な取り組みが必須な場合、まずは健康経営で取り組む課題を可視化し、その上で目標やスケジュールを明確にしておく必要があります。

目標は数値化することにより誰もが効果を感じやすく、スケジュールを設定しておくことで従業員が取り組みやすい環境へと導けます。月間目標や中間目標などが明確にされ、さらにスケジュール管理されていれば、施策に取り掛かりやすくなります。


4-3 健康経営推進担当者の設置


まず健康経営を導入する際に大切なのは、健康経営を推進する担当者を選任することです。社内に専任の担当者がいることで、健康経営に対する社員の理解が得られやすくなり、社内の担当者が健康経営を推進することにより、前向きに取り組む社員も増えるかもしれません。

その際に、ただ担当者をつけるだけでは、担当者の負担が大きくなってしまうこともあるため、担当者の負荷を少なくするサポートをする手段を検討することも重要となります。
例えば健康経営のプロを派遣したり、担当する従業員が健康経営の勉強会やセミナーに参加できるようにすることなども重要になります。
健康経営の担当者の負担を最小限にするためには、専門家による指導が重要となるので、会社に産業医が設置されている場合は産業医との連携や活用をされることをお薦めします。

健康経営の第一歩からPDCAの循環まで「健康経営推進支援サービス」

健康経営を推進する上で必要な「健康経営度調査」「健康投資管理会計ガイドライン」などを活用して、貴社の健康経営の第一歩からPDCAを回していくお手伝いをするコンサルティングサービスです。



5.さらに具体的な方法を知りたいなら



ここまで、健康経営に取り組むための手法を紹介してきました。

 

実際に取り組んできた企業の具体例をさらに知りたい場合は、経済産業省でまとめている「健康経営優良法人 取り組み事例集」(令和2年3月)等を参考にするといいでしょう。

 

参照:https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieiyuryohojin_jireisyu200327.pdf

 

また、当サイト内でも、具体的な方法を紹介しています。

 ※ウェルナレ記事リンク:『健康経営で働き方改革に取り組みたい方必読!具体的な方法を教えます



6.まとめ



健康経営の取り組みは、短期的に見ればコストがかかり、人手も足りないなど,なかなか企業として実行しづらい側面もあります。また、社内風土に健康経営の考えが根付くまでには時間がかかるものです

最初は各施策の認知度参加率が悪く、時間がかかったとしても、あきらめずに情報発信を継続していくことが重要となります。
長期的な目線で従業員が健康でいることによる生産性の向上や、企業イメージの向上などのメリットを鑑み、全社で長期的に取り組んでいく必要があります。
経営トップが健康経営の必要性を理解し、会社の方針として健康経営を積極的に取り組んでいくことが,健康経営を成功させる鍵になると考えられています。


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著者情報

株式会社イーウェル ウェルナレ事務局

「人も、企業も、ウェルビーイングへ。」をテーマとして、企業の健康経営や福利厚生の支援を行う株式会社イーウェルが運営する、BtoB(人事総務向け)オウンドメディア「ウェルナレ」の編集部。
2021年7月にメディアリリース後、毎年60回以上、有名企業様とのコラボセミナーや官公庁の専門分野に特化した方を招いてのカンファレンス、大学教授による福利厚生勉強会の開催や専門家記事の掲載などを実施し、多くの方に好評いただいております。
人事部署や経営者が、会社のウェルビーイングを向上されるためのヒントを探して、日々活動しています。

 





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