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2024/05/07 (公開:2024/01/26)

健康経営はいつから始まった?歴史とこれまでをご紹介


健康経営はいつから始まった?歴史とこれまでをご紹介

健康経営とは、企業が従業員の健康増進を経営的な視点で考え、戦略的に実践する取り組みです。日本国内で、企業が社会的責任を果たそうとするこの動きは2013年に始まりました。

 

健康経営の起源は、1990年代からの長時間労働改善を目的とした取り組みまでさかのぼります。本記事では「健康経営はいつから始まったのか」「日本ではどのような取り組みがされているのか」など、健康経営の歴史についてまとめました。

 

具体的にどのような健康施策が実践されてきたのか、また、どのように変化しつつあるのかがわかるので、ぜひ参考にしてみてください。


 

         

1.きっかけは従業員の健康促進




健康経営のきっかけは、過重労働による従業員の健康被害が社会問題となったことです。従業員の病気や怪我が増えることで、企業の医療負担が高騰し、経営に支障が出始めました。これにより、メンタルヘルス対策や健康診断の実施など、健康保持・増進を目的とした施策が始まりました。

 

日本政府も2030年に向けて、さまざまな健康経営の施策を挙げています。また、健康経営に自発的に取り組む企業をリストアップし公開するなど、企業理念として定着するよう働きかけています。



2.アメリカで起こった医療費による経営の圧迫が起源


アメリカにおける健康経営の始まりは、1990年代、従業員の医療費負担の高騰が企業経営を圧迫したことが背景にあります。そこで臨床心理学者のロバート・H・ローゼンは、従業員の健康促進を生産性向上につなげる「ヘルシー・カンパニー思想」を提唱しました。

 

それまでの「疾病モデル」と呼ばれる、病気になってから医療費を支払う方式から、予防的健康管理を人的資本への投資と位置づける「生産モデル」へ転換したのです。これが健康経営の原点であり、日本の健康経営もこの考え方を参考にしているといえます。健康な従業員が企業の収益力を高め、Win-Winの関係を築いていくのが、ヘルシー・カンパニー思想の大きな特徴です。



3.日本における健康経営の移り変わり



日本でも高額な医療費は深刻な問題になりつつあります。健康経営はアメリカから始まった考えですが、日本も実践する必要があるでしょう。ここでは日本における健康経営の移り変わりをまとめました。

 

  • 2013年 日本再興戦略を閣議決定
  • 2017年 未来投資戦略を閣議決定
  • 2019年 成長戦略を閣議決定

日本政府も2030年を目標に、健康経営の概念を企業に浸透させる働きかけをしています。以下で詳しく解説します。


          

3-1 2013年 日本再興戦略を閣議決定


2013年に閣議決定された日本再興戦略では「健康寿命の延伸」が柱の一つとして掲げられました。高齢化が進む日本にとって、国民一人ひとりの健康寿命をいかに延ばしていくかが極めて重要な課題になりつつあります。

また、健康寿命延伸の戦略を受け、2014年には「健康寿命をのばそう!」をスローガンにした国民健康づくり運動「スマート・ライフ・プロジェクト」がスタート。健康経営の機運が一気に高まりました。経済産業省や東京証券取引所を中心に、健康経営優良法人の認定や健康経営銘柄の選定など、企業に対するインセンティブ制度もスタートしています。

 

出典元:首相官邸「日本再興戦略」


            

3-2 2017年 未来投資戦略を閣議決定


2017年、政府は経済成長戦略の一環として「未来投資戦略2017」を閣議決定しました。「未来投資戦略2017」では、日本経済の長期的な課題を克服し、成長していくために「Society 5.0」の実現に向けた取り組みを推進しています。

 

特に重視されているのが、データを活用した健康づくりです。従業員一人ひとりの健康状態や生活環境をきめ細かく把握し、個々に最適化された健康支援を行うことを目的としています。 

 

出典元:首相官邸「未来投資戦略2017」


 

3-3 2019年 成長戦略を閣議決定


2019年以降の成長戦略では、健康寿命の延伸がより強調されます。具体的には、保険者と企業が連携・協働して健康課題に取り組む「コラボヘルス」が強化されました。保険者の保有するデータを企業と共有・分析し、効果的な施策を実施する流れです。

加えて健康投資の価値を確実に企業業績や市場に反映させる好循環の確立も重視されています。健康経営の成功事例や健康投資の開示が促されるなど、健康経営を後押しする体制が整備されつつあります。  

 

出典元:首相官邸「成長戦略(2019年)」



      

4.健康経営が必要とされている理由



健康経営が促進される背景には、日本の切羽詰まった事情があります。ここでは健康経営が必要とされる理由をまとめました。

  • 社会保障費の増大を改善する必要があるため
  • 企業のリスクマネジメントの必要性が増しているため

少子高齢化は避けられない現実です。将来起こりうるリスクを避けるため、どのような取り組みが必要になるのか確認しておきましょう。

   

4-1 社会保障費の増大を改善する必要があるため


我が国は少子高齢化が進んでおり、生産年齢人口は減少する一方で高齢者人口は増加しています。そのため将来的に高齢者向けの年金や医療などの社会保障費の増大は確実といえるでしょう。

しかし、社会保費が増大しても財源となる保険料を担う生産年齢人口は減っていくことが予想されます。そこで厳しい財政事情を改善するために、国民一人ひとりの健康寿命を延ばしていく政策が必須となるのです。 

 

出典元:財務省「高齢化により増大する社会保障関係費」


   

4-2 企業のリスクマネジメントの必要性が増しているため


従業員の健康問題は、生産性低下や離職率の増加に直結します。起こりうるリスクを放置すれば企業力の低下は避けられません。例えば、生活習慣病が放置されている場合、貴重な人材が失われるとともに、新規採用とそのスタッフを育成するコストが発生します。

このように従業員の健康状態が損なわれることで、企業業績に影響を与える可能性はゼロではないでしょう。そのため健康経営を推進し、人的リスクの低減や回避をすることには大きな意味があります。また、健康な従業員が企業の存続と成長を支える原動力になる点も、大きなメリットといえるでしょう。

 

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5.健康経営を自社に取り入れるメリット



健康経営を自社に取り入れる最大のメリットは、従業員の健康増進が直接的に生産性の向上につながる点です。欠勤が減り、充実した状態で業務に取り組めば、業績アップにも結びつきやすくなるでしょう。

 

加えて、従業員の健康を考える取り組みがある企業なら、働きがいのある職場として魅力が高まり、優秀な人材の獲得や定着にも有利になります。また、健康経営の取り組み自体が企業の社会的評価を高める効果があり、ブランド力の向上や取引先からの信頼獲得にも役立つでしょう。

 

そのため、健康経営は生産性と業績の向上、人材競争力の強化、社会的評価の獲得など、多くの好影響を企業に及ぼす戦略といえます。 


 

6.健康経営を推進することで起こる未来


健康経営が社会に浸透していくことで、さまざまな前向きな変化が期待できます。個人レベルでは健康寿命が延び、自らの人生をより充実した状態で過ごすことが可能になるでしょう。

 

例えば、健康で仕事を続けられる年数が増えたり、退職後も健康でアクティブな生活を送れる期間が伸びたりすることになります。企業レベルでは健康投資に対するよい評価を受け、企業ブランドと従業員の生産性の向上に役立ちます。

 

日本全体では、疾病予防や健康づくりの取り組みが活発になることで、医療費の節約につながっていくでしょう。そのため健康経営は、個人、企業、社会のそれぞれのレベルで好影響がある重要な取り組みなのです。

 

 

7.まとめ



健康経営は、1990年代のアメリカにおいて、企業の医療費負担の高騰を背景に生まれた概念です。日本では2013年の日本再興戦略をきっかけに本格的な取り組みが始まり、健康経営優良法人認定制度などの施策が進められてきました。

 

2017年の未来投資戦略以降は、健康経営の取り組みの加速化や評価体制の整備が重点方針になっています。企業が健康経営を取り入れるメリットは大きく、生産性向上や優秀な人材の確保、ブランドイメージの向上など、さまざまあります

 

健康寿命の延伸と経済成長の好循環を生み出す健康経営は、これからもその重要性を増していくでしょう。そのため、今からでも気軽に健康経営の取り組みを始めてみてはいかがでしょうか。

                                  

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著者情報

株式会社イーウェル ウェルナレ事務局

「人も、企業も、ウェルビーイングへ。」をテーマとして、企業の健康経営や福利厚生の支援を行う株式会社イーウェルが運営する、BtoB(人事総務向け)オウンドメディア「ウェルナレ」の編集部。
2021年7月にメディアリリース後、毎年60回以上、有名企業様とのコラボセミナーや官公庁の専門分野に特化した方を招いてのカンファレンス、大学教授による福利厚生勉強会の開催や専門家記事の掲載などを実施し、多くの方に好評いただいております。
人事部署や経営者が、会社のウェルビーイングを向上されるためのヒントを探して、日々活動しています。

 


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