中小企業から大企業まで すべての企業が健康経営優良法人認定を目指すために
近年、健康経営優良法人の認定を受けるために、健康経営に力を入れている企業が、大規模法人・中小規模法人双方ともに増加傾向にあります。ウェルナレでは「健康経営」に関する記事を多く掲載してきましたが、今回はなぜ健康経営優良法人認定の申請企業が増えているのか、認定されることのメリット、申請の流れや申請方法などの解説と、さらには健康経営優良法人に認定された企業の事例を紹介しています。
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1.健康経営優良法人とは何か?
健康経営優良法人とは、日本健康会議が創設した健康経営優良法人認定制度にて認定された企業や団体などの法人のことを指します。日本健康会議は2015年7月に発足し、健康寿命の延伸とともに医療費の適正化を図ることを目的とし、民間主導で先進的な予防・健康づくりの取組を全国に広げる活動をしています。[注1]
経済産業省は健康経営優良法人認定制度を以下のように定義づけています。
健康経営に取り組む優良な法人を「見える化」することで、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人」として社会的に評価を受けることができる環境を整備することを目標としています。
出典元:厚生労働省「働き方改革って 何だろう?」
健康経営優良法人認定制度の創設前の2014年度より、上場会社から健康経営に優れた企業の「健康経営銘柄」の選定が行われています。具体的には、経済産業省と東京証券取引所が共同で、上場企業の中から1業種1社を基本として健康経営に優れた企業として認定しています。またその1業種1社に加えて、各業種の最高順位の企業の平均より優れている企業についても、健康経営銘柄として選定しています。
この認定制度が発端となり、健康経営の重要性が大企業はもちろん、未上場企業や中小企業にも認識されるにつれ、健康経営優良法人認定制度は次の2つの部門により健康経営優良法人を認定するようになりました。
- 大規模法人部門
- 中小規模法人部門
「健康経営優良法人」に認定されることで、従業員や求職者、取引先などの関連企業や金融機関などから「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人」として社会的な評価を受けられ、会社としての価値が向上すると認知されています。
また、「健康経営優良法人」ロゴマークの使用が可能となるため、自社のホームページや求人サイトなどに掲載して、社員の健康経営に積極的に取り組んでいることなど自社アピールができます。そのほか、健康経営優良法人や健康経営に取り組む企業向けに、自治体や金融機関等よりさまざまなインセンティブがあります。
現在は健康経営優良法人認定制度などの顕彰制度の運営は、日本健康会議が認定主体を、経済産業省が制度設計を担いつつ、事務局運営については、補助事業者(幹事:日本経済新聞社、実務支援:日本総合研究所・日経リサーチ等)が実施しています。[注2]
[注1]:内閣府「日本健康会議について」
2.中小企業における健康経営の重要性
健康経営優良法人認定制度のスタートは、「健康経営銘柄」という上場企業の中でもさらに優れた法人が認定される制度だったため、当初は中小企業にとっては縁のない制度というイメージだったかもしれません。しかし今では、中小企業にとって健康経営を重視し実施することは、大企業よりもはるかに重要度の高いものと認識されつつあります。
知名度のある大企業は採用時には多くの優秀な人材が応募し、企業としては難なく要望通りの人材を獲得することが可能です。その一方で中小企業の場合、直近の従業員数過不足の推移を確認すると、下図の通り、全ての業種において2009年をピークにマイナス方向に転じ、2013年第4四半期以降、全ての業種において従業員が「不足」と答えた企業の割合が「過剰」と答えた企業より上回るようになりました。
業種別に見た、従業員数過不足の推移
このように中小企業で人材が不足すると、少ない人数で会社を回すこととなり、従業員の残業時間が増加し、休日出勤も常態化し、従業員の健康管理は後回しになるという悪循環に陥り、一歩間違えればブラック企業と化すことになってしまいます。
このような時こそ、優秀な人材を多く採用するために、従業員の健康に配慮し、イキイキと働ける環境を整備し、従業員のワーク・ライフ・バランスに取り組んでいく努力が必要となります。その取り組みの結果として、健康経営優良法人に認定されることが可能となり、求職者からも「従業員を大切にする会社」という良いイメージを抱かれる企業となり、人材不足の悪循環から脱却することができるようになります。
また、健康経営優良法人(中小規模法人部門)に認定されるためには、個社に合った優良な取り組みを実施し、地域における健康経営を拡大するために、その取り組み事例を発信し、全国に浸透させていかなければなりません。
現在、中小企業では健康経営の重要性に対する認識が高まりつつあり、申請・認定数が年々増加傾向にあります。
2-1 「健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)」の認定状況
2024年3月11日に発表された「健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)」に認定された法人数は、16,773法人となりました。2023年の認定数14,012法人と比較すると、2,761法人の増加となります。この結果は、数十人規模の中小企業においても、健康経営の重要性を認識し、前向きに取り組みをしている企業が増加したことを意味しています。
ここでは「健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)」に認定された法人の「都道府県別認定数」と「業種別認定数」の数値を紹介します。
都道府県別 認定法人数
本社所在地の都道府県 |
計 |
本社所在地の都道府県 |
計 |
北海道 |
614 |
滋賀県 |
220 |
青森県 |
166 |
京都府 |
346 |
岩手県 |
126 |
大阪府 |
2046 |
宮城県 |
419 |
兵庫県 |
728 |
秋田県 |
144 |
奈良県 |
171 |
山形県 |
313 |
和歌山県 |
105 |
福島県 |
282 |
鳥取県 |
101 |
茨城県 |
290 |
島根県 |
176 |
栃木県 |
192 |
岡山県 |
518 |
群馬県 |
288 |
広島県 |
480 |
埼玉県 |
334 |
山口県 |
162 |
千葉県 |
286 |
徳島県 |
126 |
東京都 |
1156 |
香川県 |
167 |
神奈川県 |
449 |
愛媛県 |
159 |
新潟県 |
276 |
高知県 |
123 |
富山県 |
137 |
福岡県 |
420 |
石川県 |
174 |
佐賀県 |
98 |
福井県 |
160 |
長崎県 |
119 |
山梨県 |
111 |
熊本県 |
262 |
長野県 |
552 |
大分県 |
103 |
岐阜県 |
353 |
宮崎県 |
99 |
静岡県 |
576 |
鹿児島県 |
281 |
愛知県 |
1871 |
沖縄県 |
109 |
三重県 |
345 |
合計 |
16,733 |
出典元:ACTION!健康経営「認定企業一覧」
業種別 認定法人数
業種名 |
認定法人数 |
|
会社法上の会社等、士業法人、その他、国内法に基づく法人 |
16,018 |
|
|
農業 |
25 |
林業 |
14 |
|
漁業 |
6 |
|
鉱業 |
5 |
|
採石業 |
11 |
|
砂利採取業 |
3 |
|
建設業 |
3,848 |
|
製造業 |
3,650 |
|
電気・ガス・熱供給・水道業 |
131 |
|
情報通信業 |
679 |
|
運輸業 |
1,271 |
|
郵便業 |
0 |
|
卸売業 |
1,249 |
|
小売業 |
750 |
|
金融業 |
170 |
|
保険業 |
677 |
|
不動産業 |
276 |
|
物品賃貸業 |
74 |
|
学術研究 |
9 |
|
専門・技術サービス業 |
700 |
|
宿泊業 |
51 |
|
飲食サービス業 |
122 |
|
生活関連サービス業 |
149 |
|
娯楽業 |
61 |
|
教育 |
31 |
|
学習支援業 |
40 |
|
医療 |
72 |
|
福祉 |
274 |
|
複合サービス事業 |
40 |
|
サービス業(他に分類されないもの) |
1,209 |
|
公務(他に分類されるものを除く) |
0 |
|
その他 |
404 |
|
不明 |
17 |
|
特定非営利活動法人 |
26 |
|
医療法人、社会福祉法人、健康保険組合等保険者 |
239 |
|
社団法人、財団法人、商工会議所・商工会 |
411 |
|
公法人、特殊法人 |
39 |
|
合計 |
16,733 |
出典元:ACTION!健康経営「認定企業一覧」
3.大企業における健康経営の重要性
大企業の場合、もちろん中小企業で述べた重要性は根底にありますが、『健康経営』の取り組みを促進することで、長期的な視点からの企業価値の向上を目指し、魅力のある企業として成長することが重要視されています。特に「健康経営銘柄」においては、健康経営を普及拡大していく「アンバサダー」的な役割を求められ、健康経営を行うことでいかに生産性や企業価値に効果があるかを分析し、それをステークホルダーに対して積極的に発信していくことを求められています。
また「健康経営優良法人(大規模法人部門)」においては、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから『従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人』として社会的に評価を受けなければなりません。
そのためにためには自社の健康経営の環境を整備し、活動を見える化することが必要となります。その先のゴールとしては、グループ会社全体や取引先、地域の関係企業、顧客、従業員の家族などに、健康経営の考え方を普及拡大していく「トップランナー」としての役割を担わなければなりません。
下のグラフは「健康経営銘柄」に認定された企業の平均株価とTOPIXの推移(2011年9月~2021年9月の10年間を比較)となっています。銘柄に選定された50社の平均株価はTOPIXを上回る形で推移しているのがわかります。よって、大企業にとっては健康経営に取り組むことが企業業績を押し上げる要因となり、大変重要な取り組みであることが明確になっています。
健康経営と企業業績・株価の関係性
4.健康経営優良法人の認定要件と申請の流れ、スケジュール
健康経営優良法人の認定要件は、大規模法人部門と中小規模法人部門とで異なります。2024年度のそれぞれの認定要件を見ていきましょう。
4-1 大規模法人の認定要件
2024年度は「従業員パフォーマンス指標及び測定方法の開示」が必須となっています。具体的にはアブセンティーイズムやプレゼンティーイズム、ワーク・エンゲイジメントのいずれかを指標として計測・開示することが求められています。
引用元:ACTION!健康経営
4-2 中小規模法人部門の認定要件
2024年度に向けては、中小規模法人はあまり影響がありませんが、大規模の項目内容は遅れて中小規模に反映されることが多いため、中小規模でも大規模法人の認定要件も合わせて、しっかり注目していかなければなりません。
引用元:ACTION!健康経営
4-3 申請の流れ
健康経営優良法人の認定を受けるには申請が必要です。申請から認定までの流れについては以下の通りです。
引用元:ACTION!健康経営
4-4 令和5年度健康経営顕彰制度のスケジュール
令和5年度健康経営顕彰制度のスケジュールは大まかに以下の通りとなります。申請受付の期限は大規模法人部門と中小規模法人部門とでは毎年異なっているので、毎年しっかり確認するようにしましょう。
【2024年の申請期限】
・大規模法人部門 :2023年8月21日(月)~2023年10月13日(金) 17時締切
・中小規模法人部門:2023年8月21日(月)~2023年10月20日(金) 17時締切
引用元:ACTION!健康経営
5.健康経営優良法人認定の具体的なメリット
健康経営優良法人に認定された企業は大規模法人・中小規模法人ともに、多様なステークホルダーから評価が得られたとの声が上がっています。
①投資家等への情報発信
- 就活生向けの会社案内資料に健康経営銘柄の選定を盛り込んだほか、有価証券報告書、CSR報告書や社内報に記載するなど、社内外や投資家に向けて打ち出し。
- 名刺やHP、会社紹介冊子等に取組を紹介し、取引先等に選定結果をPR。
- 健康経営の取組に関する取材が増え、メディア露出の機会が増大。また、役員による講演も多数依頼されるようになった。
②社内における行動変容
- 経営トップによる取組強化の指示などが発信され、健康増進計画や社員参加型の健康増進プログラムの拡充を図っている。
- 新たな取組を実行(銘柄を継続して取っている企業においても更なる取り組みを実行)。
- 健康増進に関する中長期計画策定や健康経営推進組織の設置を行った。
- 各事業所で取り組むアクションや目標を継続して実行できており、健康経営が習慣化した。
③社内外の反響
- 学生の認知度が向上し、就活生が大幅に増加したり、内定後辞退率が減ったりした。優秀な人材の確保につながっている。
- 取引先やその他の企業から、高く評価してもらえた。取り組みに関する多数の問合せがある。
- 投資家から「中長期的な成長が見込まれる」と高い評価をもらった。
- 銘柄を取得した他企業との情報共有を通じ、他業種との繋がりのきっかけとなった。
6.健康経営優良法人2024を取得するための費用と納期
健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)の認定のための申請料は16,500円(税込)でした。参考まで大規模法人部門の認定申請料はで88,000円(税込)でした。振込手数料は申請者負担となります。健康経営優良法人2025の認定申請料についてはACTION!健康経営のWEBサイトにて年間スケジュール発表後に確認できます。
健康経営優良法人2025の申請期間もおそらく2024と同様に、8月頃から10月中旬頃と思われますが、申請期間が終了した翌月上旬頃に申請料の請求書が届きます。請求書発行日はおおよそ11月中旬頃の予定で、振込期限は12月下旬頃となっていますので、明記された所定の期間内にお支払いください。入金確認ができ次第認定審査へと進みますので、申請のみしてお支払いのない場合は申請無効となり、認定審査が行われません。
参考まで2024年の取得に関しては以下のスケジュールとなっていました。
引用元:ACTION!健康経営「認定申請料のお支払いについて」
7.認定を取得した後の維持と更新
健康経営優良法人の認定要件を満たした場合、認定通知がメールで届きます。また、健康経営度調査の回答法人に対しては、各施策の偏差値等を記載した評価結果(フィードバックシート)が、毎年個別に送付されます。2024年度については大規模法人部門の場合2023年12月頃フィードバックシート速報版が送付され、中小規模については2024年3月頃フィードバックシートが送付される予定となっています。
フィードバックシートは各社が今後の健康経営を改善する際に参考となるよう、評価の詳細や経年変化が分かる内容となっています。2021年度までは健康経営度調査の回答法人に対しては、各施策の偏差値等を記載したフィードバックシートを個別に送付し、自社の取り組みの改善に活用してもらっていました。
しかし、他社との比較を通じた更なる取り組みの促進や、ステークホルダーに対する情報開示を促す観点から、2022年度より、同調査の設問において「評価結果の開示」の可否を確認し、令和2023年度、開示に同意した2,238法人分(うち上場企業726社)の評価結果を公表するようになりました。[注3]
これにより、認定されなかった企業は認定された企業の取り組みを参考にし、健康経営を効率的に実践し、次年度の認定に向けて取り組むことができるようになります。また、認定された企業にとっても、他社の取り組みなどを参考にして、自社の独自性のある運用を生み出し、健康経営のさらなる取り組みに着手できるようになります。
ただし、健康経営優良法人に認定されるメリットだけを享受するために、虚偽の申請をしてしまった場合などは、取消し規定などもあるので、健康経営度調査の記載には十分気を付けなければなりません。[注4]
8.健康経営優良法人取得の実践ステップ
健康経営とは、従業員などの健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践しなければなりません。具体時にどのようなステップを踏んでいけばいいのでしょうか。「大規模法人部門」も「中小規模法人部門」も、ほぼ同様のステップとなりますが、中小規模法人部門への申請には、事前に健康宣言事業への参加が必要となります。
大規模法人部門への申請には、STEP1の健康宣言事業の参加は必須ではありません。しかし、認定要件として保険者との連携は必須となります。健康経営を始める際は、保険者との連携・協力が得られやすい体制づくりが大切となります。
STEP1:健康宣言事業に参加
中小規模法人部門への申請には「健康宣言事業」への参加が必須となります。健康経営を経営理念の中に明文化し、企業として取り組む姿勢を社内外に発信します。
健康宣言とは、経営者が従業員やその家族の健康管理を経営課題として認識し、組織として対策に取り組む旨を文書などへの明文化を通じて意思表示することです。加入する保険者などの宣言事業に参加することで、健康づくり支援策に応じたさまざまなサポートが受けられます。地域によっては、自治体や労働局が保険者と協定を結び、「健康宣言事業」を行っていることもあります。 どこの「健康宣言事業」に参加できるか調べてみましょう。
STEP2:実施できる環境の整備
自社の経営理念に合わせ、従業員の活力や組織の活性化につながるよう、経営層全体で取り組みの必要性を共有したり、担当者・担当部署を設置するなど、戦略的に健康投資をすることを目的とした、取り組みやすい体制をつくります。継続できる組織体制や専門家の視点も重要です。保険者や自治体、経済団体等の地域ネットワークも積極的に活用しましょう。
STEP3:具体的な対策をする
自社の健康課題を見つけ出し、目標を設定した上で施策を実行します。
STEP4:取り組みを評価する
施策の効果について経営層を含めて確認し、現状の取り組みの評価を次の取り組みに生かしていきます。
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9.健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)の取り組み事例
ここでは、2024年3月11日に発表された「健康経営優良法人2024 中小規模法人部門」に認定された企業から3社を抜粋し、それぞれの健康経営の取り組み事例を紹介します。中小規模法人の場合、コンサルティング会社などに頼らず、自社の努力のみで選定されたケースも多く、取り組み内容も独自性があり大変興味深い内容となっています。
9-1 事例① 株式会社長田工業所
工場やプラント設備の屋外・屋内の作業環境改善工事をする株式会社長田工業所では、「健康経営優良法人2024(中小規模法人部門(ブライト500))」に2年連続で認定されています。2024年3月13日に開催された「健康経営アワード2024」では、事例発表・パネルディスカッションにおいて、代表取締役の小林氏が登壇され、自社の健康経営の取り組み内容について発表しました。具体的な取り組み内容は以下の通りです。
取り組み① ベクトル合わせ
まずは従業員ヘクトルがあっていないと健康経営の取り組みが伝わらないということで、以下2点を実施しました。
・長田フィロソフィ手帳読み合わせ…家庭環境の改善に寄与
・就業時間内の全員ラジオ体操
取り組み② 自主性を生む
自分たちで研修を作ること、そして「見える化」で自発性を促しています。
・あさイチ5分間研修…更年期障害・喫煙リスクなど、社員で調べてプレゼンすることで、プレゼン能力が向上
・有給・残業の見える化…有給の少ない人、残業の多い人などをお互いにフォロー
取り組み③ 発信する
健康経営の活動内容を発信したSNSなどを、知人から「見ているよ」と言われることにより、モチベーションもアップします。
・インスタやFB で取り組み発信
・置き型社食制度がそのまま代理店に…1品100円のお惣菜の食事補助を実施したり、それを事業として外部向けの販売代理店として試食会などを実施しています。
取り組み④ その他
全従業員の物心両面の幸せ を追求しています。
・工場内に水サーバー導入
・工場内LED化
・工場内が35度以上の日は1時間毎に15分間休憩増
・休憩室増設
・空調服、空調設備増
・日報の排除
・年間休日数89日→105日
出典元:2024年3月13日開催「健康経営アワード2024」講演資料参照
9-2 事例② ハリウコミュニケーションズ株式会社
ハリウコミュニケーションズ株式会社は、創業86年の老舗の印刷会社です。活版印刷などの古い印刷文化を守りながら、バリアブル印刷などの新しい印刷文化を取り入れています。、「健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)」には、2020年以降毎年認定されており、優良な上位500法人に与えられる「ブライト500」には、3回目の選定となっています。
健康経営の取り組みの特徴としては、外部のコンサルを入れずに社内で完結し、最小限の予算で効果を出しています。また、専門性の高い元養護教諭を採用し「学校保健」の考え方を取り入れ、自らの力で健康を保持・推進できるための知識を習得させる「ハンズオン型健康経営」を取り入れたことです。推進すべき「心身の健康課題を解決するための取り組み」の具体的な内容は、以下の20項目となります。
①健康づくり担当者、健康相談担当者、ハラスメント相談員、両立支援コーディネーター、企業在籍型職場適応援助者の配置
②健康づくり推進委員会の設置
③健康宣言書の作成、取り組みの実施
④職場安全委員会の活性化…安全点検の充実、健康教育の実施(月1回)
⑤日常の健康観察、健康管理、環境管理の実施
⑥健康診断後の保健指導の充実、喫煙者への啓発活動
⑦健康づくり研修会の開催、各種研修会への派遣
⑧週一回、健康増進の日(ノー残業デー)
⑨週一回、政争の日を設定し15分間、協力して清掃し体を動かす
⑩感染症予防の啓発とインフルエンザ予防接種の100%接種(全額補助)
⑪有給休暇取得の推奨、年5日の時間単位の有給休暇の導入
⑫社食の実施(ご飯社食・みそ汁社食・繁忙期の夕ご飯)、栄養メモの配布
⑬スポーツ活動、コミュニケーション活動への支援
⑭健康情報コーナーの設置、「今日の健康」の回覧、各種ポスターの掲示
⑮年2回の面談による健康づくりの取り組み状況の確認
⑯医療機関との連携
⑰リフレッシュスペース、コミュニケーションスペースの充実
⑱スポーツジムの法人会員入会
⑲がん検診受信費用一部補助
⑳普通救命講習Ⅰの受講
出典元:2024年3月13日開催「健康経営アワード2024」講演資料参照
9-3 事例③ トリニティ株式会社
デジタルライフが豊かになる製品の販売やサービスを提供しているトリニティ株式会社は、従業員数がわずか23名という規模にも関わらず、「健康経営優良法人2024(中小規模法人部門(ブライト500))」に認定されました。「健康経営優良法人の中でも優れた企業」かつ「地域において、健康経営の発信を行っている企業」として優良な上位500法人に、2年連続で選定されています。
代表取締役の星川氏も2年連続の認定について、”一時的に頑張って認定されるということでは本質ではなく、継続的に努力を続けて毎年認定していただくことが大切だと考え、社内でもプロジェクトチームがよりよくできないかと1年間模索して、改善を続けてきた結果”であると述べています。具体的な健康づくりのための取り組み内容は以下の通りです。
①ウォーキングイベント「トリニティ・ウォーク」を3期連続で開催
基礎的な運動増進を目的に、開催期間中の合計歩数を競うウォーキングイベントを実施しています。2023年度は、”1年間の個人戦”と”3ヶ月のチーム対抗戦”の2パターンを実施し、毎年イベントが盛り上がる工夫やルールを追加しています。
社員の1日の平均歩数は、開催当初の2021年度と比較して2023年度は930歩増加し(2024年2月末現在)、運動不足解消にプラスして、他部署とのコミュニケーション促進にもつながっています。優勝チームにはカタログギフトが贈呈されたそうです。
②栄養バランスを考えたランチの支給や野菜強化月間
トリニティの会社の敷地内にあるレストランと提携し、社員の食と健康を考え、栄養バランスのとれたランチを社員に提供しています。レストランの作りたての食事は、社員からも好評でモチベーションアップにもつながっているそうです。7月は野菜摂取強化月間として全社員に野菜スープを配布し、誰もが手軽に野菜摂取量を増やせ、普段の生活にも取り入れやすいと好評だったそうです。
③社員ブログによる健康についての情報発信
トリニティの社員一同が毎日更新しているブログ「トリログ」では、社員の健康に対する意識の変化から、食事や睡眠・運動など「健康」にまつわる話題を自発的に発信することが多くなりました。2022年度の健康にまつわるブログ数は40件だったのに対し、2023年度は66件と1.65倍に増加し、一人ひとりが自身の健康課題に向き合うきっかけにもなったそうです。
④社内サークル活動支援制度を導入
会社の企業文化の醸成やコミュニケーションの促進を目的とし、社内サークル活動支援制度を導入しています。そこでは活動費の一部を支給し、活動しやすい環境を作っています。2023年度は、「サバゲー(サバイバルゲーム)サークル」と、芸術鑑賞をメインに活動する「巡り部」が発足され、運動の促進にも役立っているそうです。
出典元:トリニティ株式会社「健康経営の取り組みと体制」
10.健康経営優良法人認定を目指すためのアクションプラン
前章では健康経営優良法人取得に向けての流れをみてきましたが、本章では具体的な取り組みの内容や施策を解説します。
①経営理念
- 経営トップのコミットメント
- 統合報告書やCSR報告書への記載等を通じた社内外への発信
②組織体制
- 社長や役員が健康づくり責任者になる等、経営層が参加する組織体制の構築
- 専門知識を持った産業医や保健師等の健康施策検討への参加
- 健康保険組合との連携体制の構築
③制度・施策実行
- 計画の策定 《例》従業員の健康課題を把握、健康課題解決のために有効な取り組みを設定、健康経営で実現する目標値と目標年限を明確化
- 土台作り 《例》ヘルスリテラシー向上のための研修を実施、ワーク・ライフ・バランスや病気と仕事の両立に必要な就業規則等の社内ルールの整備
- 施策の実施 《例》食生活の改善、運動機会の増進、感染症予防、メンタルヘルス不調者への対応、受動喫煙対策
※具体的には以下があげられます。
・検診等に関する費用補助
・ウェアラブルデバイス支給
・健康づくりセミナーの実施
・ジム利用の費用補助 など
④評価・改善
- 実施した取り組みの効果検証
- 検証結果を踏まえた施策の改善状況
⑤法令遵守・リスクマネジメント
- 定期健診やストレスチェックの実施
- 労働基準法、労働安全衛生法の遵守
11.まとめ
健康経営優良法人に認定されるまでの流れや、やるべきことなどを説明してきましたが、ご理解いただけたでしょうか。これからはじめて健康経営優良法人認定の取得に着手される企業担当の方は、自社の従業員たちが、健やかにイキイキと働いているかということに意識して、認定要件としっかり照らし合わせて推進することが重要です。
また、近年は申請企業のフィードバックシートが公表されるようになったため、各企業の取り組みをヒントにしながら、自社独自の取り組み方法を生み出していくのも良いかもしれません。ただ、気を付けなければならないのは、健康経営優良法人に認定されることに注力し、主役の従業員のことを置き去りにしてはならないことです。常にどのようなことをすれば従業員やその家族がみな健康的に過ごすことができるかを考えていくことが、自ずと健康経営を推進していくこととなるのです。
健康経営を推進するうえで必要な「健康経営度調査」「健康投資管理会計ガイドライン」などを活用して、企業の健康経営の第一歩からPDCAを回していくお手伝いをするコンサルティングサービスです。健康経営の第一歩からPDCAの循環まで「健康経営推進支援サービス」
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