人財確保・定着の有効手段 ~採用活動に役立つ福利厚生とは?~

近年、日本の労働人口が減少の一途をたどっています。ある試算では、2020年から2030年までの10年間で、524万人もの労働人口が減少すると予測されています。これは、北海道の人口(約523万人)に匹敵する数字です。そう考えると、経営におけるインパクトは、とても大きいのではないでしょうか。
労働人口が減少していく中で、企業が「安定した事業の継続」や「企業のさらなる成長」を求めていくには、優秀な人材の確保とともに、確保した人材の定着をいかにして行っていくかを考え、有効な施策を実行していくことが急務といえるでしょう。
本記事では人材の確保や定着に有効な手段とは何かを、福利厚生の視点からご紹介していきたいと思います。
※この記事は、2021年8月26日に開催されたウェビナー『人財確保・定着の有効手段とは ~採用活動に役立つ福利厚生~』の内容をもとに作成しています。
目次
1. 近年の採用活動の状況変化
人材の確保や定着に有効な手立てを考えていくために、まずは採用活動の現状についてみていきましょう。
1‐1 採用活動の変化
① 面接開始時期の早期化
「新卒者への面接開始」時期を、2021年卒と2022年卒の学生に対するもので比較してみましょう。
採用前年の1月以前から面接を開始する割合に大きな差が生じており、2021年卒に比べ、2022年卒の学生に対する面接の開始時期が早まっていることがわかります。
② 内定を出す時期の早期化
「内定を出す時期についても、先程と同様に2021年卒と2022年卒で比較すると、2022年卒の学生に対する内定時期のピークが採用前年の4月下旬、2021年卒は7月以降となり、3ヶ月以上早まっていることがわかります。
面接の開始時期も含め、採用活動全体が前倒になってきていることがわかります。
③ 求人状況の推移
新卒就職希望者(民間企業)の求人倍率を経年比較してみると、2019年卒では1.88だったのに対し、2022年卒では1.50と、0.33ポイント低下しています。
少し掘り下げて、企業の規模(抱える従業員数)の違いで見てみると、従業員数1000人規模の企業は0.98倍なのに対し、従業員数300人規模の企業では5.28倍と、求人倍率に大きな差が生じており、中小企業の人材確保が難しくなっていることがわかります。(研究機関リクルートワークス研究所「第38回 ワークス大卒求人倍率調査(2022年)」より)
このような差が生じてしまう背景は、2017年の就職協定の変更が原因と考えられます。就職協定の変更以降、就職希望者の大手志向への傾向がみられ、就職希望者の企業選びは「安定企業」を望む傾向にあるといえます。
1‐2 採用活動の満足度
採用する側(企業)の採用活動の満足度はどうでしょうか。新卒採用における採用充足率の推移を経年で比較すると、2018年卒〜2021年卒の採用時まで、80%以上を維持し大きな差異は出ておらず、一見問題なく採用活動を行うことができた企業が多かったように見えます。(マイナビ 2021年卒 企業新卒内定状況調査より)しかし、満足度を上場企業と非上場企業で比較すると、事情は少々異なります。
これは、企業の採用担当が2021年卒の採用活動を振り返り、確保できた人材の「質」と「量」に対しての満足感を調査したものです。全体でみると、37.6%が「質」・「量」ともに満足と回答しており、どちらも不満と回答した企業は12.2%でした。
しかし、上場企業と非上場企業の回答を比べると、「質」・「量」ともに満足と回答した上場企業は、47%、非上場企業は36.5%と非上場企業のほうが少なく、「質」・「量」ともに不満と回答した上場企業は、5%、非上場企業は13%と、上場企業に比べ、非上場企業の満足度が低い結果となり、特に非上場企業で、思うような採用活動ができておらず、人材の確保に苦労していることがわかります。
2.選ばれる会社とは?
「人材に選ばれ会社」とは、いったいどのような会社なのでしょうか。本章では、具体的に選ばれる条件やポイント、さらに、選ばれる福利厚生制度の内容をみていきます。
2‐1 会社選びのポイント
人材の確保や定着には、「人材に選ばれ会社」であることが重要な要素になってきます。では、どのような会社が人材に選ばれるのでしょうか。大卒の新卒者と既存社員を対象に調査すると、以下のような結果となりました。
【新卒者】
1位:勤務地(47.6%)
2位:福利厚生(36.5%)
3位:雰囲気・社風(31.6%)
【既存社員】
1位:給与(65.6%)
2位:福利厚生(36.5%)
3位:勤務地(47.6%)
※参考元:若者しごと白書2020
新卒者、既存社員で比較すると、既存社員では給与、福利厚生を選んだ割合が多い結果となり、実際に勤めてみて、給与や福利厚生の充実を、企業に求める従業員が増加する傾向にあることがわかります。まとめると、人材が会社を選ぶポイントは、以下のようになります。
給与や希望に合わせた勤務地の考慮などは、企業の事情によって異なり、業種や業績などの影響も大きく、そう簡単に解決できるものではありません。しかし、福利厚生の充実であれば、ハードルが少し下がり実現可能な課題としてとらえることができます。
2‐2 福利厚生のポイント
人材が求める福利厚生とはどんなものでしょうか。
まず、新卒者の求める福利厚生とは、社宅整備や家賃・交通費補助のように「金銭的な不安を解消」できる制度や、リフレッシュ休暇や育児支援のような「ワークライフバランスを重視」した制度があげられ、「将来や日々の生活面での安心・安定」を求める傾向が見て取れます。
一方、既存社員では、資格取得やeラーニング、研修制度などの自己啓発・自己開発への投資や整備リフレッシュ休暇や育児支援のような「ワークライフバランスを重視」した制度、健診や人間ドック、医療費補助などの「社員の健康」を維持するためのものがあげられ、自己の成長や健康、家族への福利厚生の充実などの、幅広い制度が整備されているということで感じられる、「満足感」を求めている傾向にあります。
このような多様なニーズに合った福利厚生を整備しているか否かということが、人材に選ばれる会社としての重要な要素になってきます。
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3.有効な福利厚生とは?
人材に選ばれる会社となるために、多様なニーズにあった福利厚生を整備するといっても、そう簡単なことではありません。
旅行補助や休暇制度、子育て支援に自己啓発、住宅補助や家賃補助など、整備していかなければならない制度は多岐にわたり、一つ一つ対応していくには、多くの時間や労力が必要です。そもそも、採用活動や日々の業務が忙しい上に、まったなしのコロナ対応や業務上外せない社員教育や研修の実施に加え、健康経営の実現に向けての様々な施策やダイバシティへの対応など、新しい業務も増え「多忙で手が付けられない!」「計画はしているがなかなか進まない!」という状況に陥ってしまいがちです。特に中小企業の人事の方は、1人の業務が多岐にわたり、より大変な状況となってきます。
そんな状況だからこそ、有効な福利厚生を整備するための手段として、多くの企業が採用している、アウトソーシングサービスの活用を検討してみてはいかがでしょうか?
3‐1 アウトソーシングサービスのメリット
人材の確保や定着のために福利厚生の充実を図るといっても、その道のりは簡単なものではありません。右の図のように高い山に登るイメージでしょうか。遠く険しい道のりも、アウトソーシングサービスをうまく活用することで、効率的かつ、多くのメリットを生み出し、乗り越えていくことができます。
① 専門業者のサポートやノウハウ
福利厚生の充実のための課題に対して、専門業者の高いノウハウが、解決のためのサポートとなります。多くの顧客を抱えている専門業者であれば、他社の事例なども参考にしたうえで、制度の整備を行うことができます。
② 大企業並みの幅広い福利厚生
専門業者の多くは、多様なニーズに対応したメニューをパッケージ化したサービスも用意しているので、大企業並みの幅広い福利厚生を、手軽に手に入れることができます。
③ コア業務に集中
自社で行うと手間のかかる、フィットネスクラブや保養所など、社員の求めるサービスの提携や制度運用も任せられるので、自社のコア業務に集中することができます。
④ コスト削減
アウトソーシングサービスには、社員1人当たり数百円程度の費用で利用できる安価なものもあり、専門業者に合わせることで、福利厚生にかかる費用の削減にもつながります。
これらのことから、アウトソーシングサービスの活用は、福利厚生の充実に向かう長い道のりを乗り越えていくための近道として有効な手段であるといえます。
3‐2 パッケージサービスとカフェテリアプラン
福利厚生のアウトソーシングサービスの中でも、多様なニーズに対応できるサービスとして、パッケージサービスとカフェテリアプランをご紹介します。
① パッケージサービスとは
様々なメニューがパッケージ化された、「量」と「質」にこだわった福利厚生サービスのことを言います。
旅行や健康増進、育児、介護、自己啓発、エンターテイメントなど、多彩なメニューが会員価格でお得にご利用いただけますので、多様なニーズにこたえることができます。最もポピュラーなもので、多くの企業が採用しています。
② パッケージサービス導入のメリット、デメリット
導入のメリットは、多くの利用者がいるため、そのスケールメリットを生かし、幅広い世代のニーズに対応した豊富なメニューが利用できるという点やサービス導入に手間がかからず、短期間に低価格で導入が可能という点、メニューの提携や設定を専門業者が行うため、業務が大幅に削減できるという点です。
一方で、全利用者が共通のパッケージサービスを利用するので、独自のメニュー設定などに制限があり、企業の独自性が出しづらいというデメリットがあります。
③ カフェテリアプランとは
先程のパッケージサービスとは異なり、企業独自でメニューを選択・設定して、企業ごとに従業員の皆様のライフプランや様々なニーズにはあわせた福利厚生を設定できるサービスです。企業独自の理念や制度を生かした福利厚生を行いたい企業に向いています。
④ カフェテリアプラン導入のメリット、デメリット
導入のメリットとしては、一般的に全社員一律のポイントを付与するため、個人による受益格差がなく、公平性が保たれるという点や、メニューの設定や変更が可能で、人材や社員のニーズに合わせた柔軟な対応が可能という点、ニーズに合わせたメニュー設定を行うことで、多くの社員が積極的に利用をし、満足度が高くなるという点です。
その一方で、デメリットとして1人当たり数万円のポイント付与を行って運用するケースが多く、会社として福利厚生費用として、付与ポイントの原資をあらかじめ準備し、管理していく必要がある点です。また、企業内の他の制度と連動するメニュー設定も可能なので、サービス導入時に調整などの手間が必要となる場合があります。
どちらのサービスも、専門業者に問い合わせれば、導入事例などを聞くことができ、サービス選定の参考になります。
アウトソーシングサービスをうまく活用することで、福利厚生の充実を図り、より小さな労力と費用で企業の目的や従業員の満足度を上げることが可能です。充実した福利厚生は、アウトソーシングサービスの賢い活用で実現可能なのです。
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4.まとめ
本記事では、人材の確保や定着に有効な選択肢として、福利厚生の充実やアウトソーシングサービスの活用をご紹介してまいりました。採用活動は、人材側の売り手市場が続いており、変化する環境への対応が重要となります。
また、福利厚生の充実が人材の確保や定着の有効な手段であり、その実現のためには、多様なニーズへの対応が期待できる、アウトソーシングをうまく活用することで、企業としてのメリットが大きくなることがおわかりいただけたのではないでしょうか。今後、企業として生き残っていくための備えの一つとして、現実的な福利厚生の充実について、考えていくことが重要であるといえます。
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