変化する働き方改革 ~コロナ禍が加速させた業務のDX化~
新型コロナウイルスの感染拡大により急変した「働き方改革」について、この数年間でデジタル化がどれだけ進化したかをコロナ禍前と比較しながら理解し、今後進めるべきポイントについて解説します。
※本記事は、2021年12月16日に開催されたウェビナー『コロナ禍で変化した働き方改革~加速する業務のデジタル化~』をもとに作成した記事を、2024年12月にウェルナレ編集部にて追記・内容の見直しをしております。
目次
1.働き方改革とは
昨今、皆が口にするようになった「働き方改革」ですが、きちんと理解していますか? 本章では「働き方改革」が施行された経緯やポイント、具体的な取り組みについて解説します。
1-1 働き方改革の経緯
2019年4月に施行された「働き方改革 関連法案」について、過去の経緯を含め改めて見ていきましょう。
①1970年代~1980年代
「企業戦士」「モーレツ社員」などの企業に貢献、仕事第一、がむしゃらに働くサラリーマンが推奨された「高度成長期」
②1991年3月
バブル崩壊により日本の不景気、景気後退時期、バブル崩壊をきっかけに、社会情勢が大きく変動し「長時間労働による過労死」が疑問視され、「企業戦士」型働き方が疑問視されるようになった。
③2000年代以降
働き方の見直し
④2019年4月
「働き方改革関連法案」が施行。「働き方改革」とは、働く方々がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会の実現。
1-2 働き方改革のポイントと具体的な取り組み
3.DXと働き方改革はどのような関係がある?
3-1 RPAによって労働時間が削減される
RPAとはRobotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)の略称で、これまで人間が日常的に行ってきたパソコンなどの操作を、ソフトウェアのロボットにより自動化することで、「ロボットによる業務自動化」を意味しています。
RPAでいうロボットとは、工場などで働く産業用ロボットや、人や動物と同じような形で同じような動きをする「ハードウェアロボット」ではなく、パソコンの中で動く無形の「ソフトウェアロボット」のことを指します。
RPAはこれまでシステム化が見送られてきた精度の高い手作業などの業務などで、品質を落とさず、比較的低コストかつ短期間で導入できるという特徴があります。具体的な業務としては、帳簿入力や伝票作成、ダイレクトメールの発送業務、経費チェック、顧客データの管理、SFA(営業支援システム)へのデータ入力など、主に事務職の人たちが携わる定型業務が挙げられます。
RPAの導入と運用は、労働時間の削減に向けた働き方改革である「業務改善・改革」の目標を明確にし、自社に合うツールの選択とマネジメントの運用方法に配慮して進めることが重要となります。まずは継続的にPDCAサイクルをまわしながら活用していくことが望ましいでしょう。
引用元:総務省「RPA(働き方改革:業務自動化による生産性向上)」
3-2 ERPによるITシステムの構築
ERPとはEnterprise Resources Planning(エンタープライズ・リソース・プランニング)の略称で、企業経営の基本となる資源要素(ヒト・モノ・カネ・情報)を適切に分配し有効活用する考え方、またそれを実現するシステムのことです。ERPシステムは「統合基幹業務システム」や「業務統合パッケージ」などと呼ばれ、業務効率化や情報一元化を目的に導入されます。
ERPシステムに搭載される機能は、主に以下のものなどがあげられます。
- 財務会計管理
- 予算管理
- 販売管理(受注・請求)
- 購買管理
- 顧客管理
- 業支援管理
- 倉庫・在庫管理
- プロジェクト管理
- 人材管理
- マーケティング管理
- Eコマース
- ビジネスインテリジェンス(BI)
ERPのメリットは、企業のあらゆるところに散らばっている情報を一箇所に集め、そのまとまった情報を元にして、企業の状況を正確・迅速に把握し、経営戦略や戦術を決定できるところです。さらに、ITを活用して「業務の効率化」をはかったり、他のシステムとの連携によりスピード化を実現する、といった目的で導入企業も増加傾向にあります。
3-3 AI・IoTソリューションによる業務効率
業務の効率を上げるために有効な手段として、AIやIoTの導入を検討している企業も増加傾向にあるようです。ただ、「AI」と「IoT」の2つの細かい違いは分かりにくいようで、意味を混同しきちんと理解している人は少ないと思われます。この2つの違いは「モノ」があるかないかという点です。
AIは「データを分析して活用する知能」で、プログラムのひとつであり、AIそのものは形がないため、活用するにはコンピューターなどが必要となります。IoTは「データを集めるモノ」で、モノが主体となるため、活用するには家電などのモノが必要となります。
この異なるAIとIoTの2つを組み合わせて、新たな付加価値を生み出すことができるようになりました。製造業における設備保全の自動化や、農業分野における栽培管理や土壌管理の自動化、医療分野では健康状態の可視化や病気の早期発見などとなります。これらの分野において、コンピューター化とオートメーション化が推進され、生産体制や運用管理の効率化が図られるようになったのです。
4.コロナ禍で変化した企業の取り組みや課題
4-1 コロナ禍での企業の感染対策の取り組み
各企業が行った「新型コロナウイルス対策」の取り組みは、下の図の通りとなります。
特に、企業が重点を置かれた対策は、密(人との接触)を避ける対策で、出勤をせずに自宅やその他の施設などで業務を行う施策ではなかったでしょうか?
4-2 企業のテレワークの導入目的
ここでは、コロナ禍で顕著に増加したテレワークについて解説します。
- 業務の効率化生産性の向上
- 勤務者のワークライフバランスの向上
- 勤務者の移動時間の短縮・混雑回避
- 人材の雇用確保・流出の防止
などが挙げられています。
出典元:総務省 情報流通行政局 情報通信政策課情報通信経済室「令和元年通信利用動向調査の結果」別紙より
4-3 企業のテレワーク導入状況
2017年から2019年の3年間のテレワークの導入企業の割合を示したグラフです。
出典元:総務省 情報流通行政局 情報通信政策課情報通信経済室 令和元年通信利用動向調査より抜粋
コロナ感染前ということもあり、2019年は導入している企業20.2%、導入予定がある企業9.4%で、合わせて29.6% 約3割程度の企業がテレワークを導入、導入予定があると回答をされています。2017年の調査から徐々にではありますが、増加傾向が見られます。
東京都が実施した2020年「都内企業のテレワーク導入率緊急調査」のデータでは、2020年3月導入率24.0%、2020年4月導入率62.7%となっており、1ヵ月で38.7%も急激に上昇したことが示されています(東京都 産業労働局雇用就業部労働環境課 報道発表資料 10月度テレワーク実施率調査結果「実施率の推移」より )。その後、緊急事態宣言解除などの影響もありますが、約60%の企業でテレワークを導入されていることがわかります。
出典元:東京都 産業労働局雇用就業部労働環境課 10月度テレワーク実施率調査結果
以上のことから、コロナ感染拡大により、「働き方改革」は、感染拡大前の「働く方々がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現する」から、コロナウイルス感染防止対策として、「密(人との接触)を避ける」ことの必要性から新型コロナウイルスに感染しないようにする「テレワーク/リモートワークの導入」を行うことを目的としたものに変わっています。
4-4 テレワークのメリット
パーソル総合研究所の「第四回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」では、従業員がテレワークを実施して感じるメリットとしては、「感染症リスクを減らせる」「通勤時間の削減」「ワークライフバランスの実現」「生産性の向上/業務改善」が挙げられていました。
また、総務省が行った「令和元年通信利用動向調査」では、企業としての導入目的として「業務の効率(生産性)の向上」「勤務者のワークライフバランスの向上」「勤務者の移動時間短縮」「人材の確保・定着」などが挙げられており、企業と従業員それぞれのメリットがほぼ一致していることがわかります。
4-5 テレワークの導入による不安
パーソル総合研究所の「第四回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」によると、従業員がテレワークに関して感ずる不安を要約すると、「上司や同僚からの評価に関する不安」「業務の進捗や負担増などに関する不安」「コミュニケーション不足に関する不安」を多く抱えていることを示しています。
4-6 テレワークをして感じる課題
同じくパーソル総合研究所の調査で、テレワークを利用したメンバーが実際に感じた「課題」としては、「運動不足を感じる」「自宅でのシステム・ネット環境への接続」「コミュニケーション不足」「労働時間の管理」などが挙げられました。
以上のことから、テレワークにおける課題をまとめると、以下の4点となります。
①コミュニケーション不足
どうしても外出する機会が減ってしまうことにより、「今日は誰とも話さなかった」という日がある方も多いのではないでしょうか。また、仕事のプレッシャーを感じながら自宅で黙々と仕事をすることも、孤独感や閉塞感を感じやすくなる要素のひとつと考えられます。
②ONとOFFの切り替えができない
在宅勤務により、出勤や退社のような気持ちの切り替えにつながる行動がなくなるため、途中で長時間休憩を取ってしまったり、終業時間以降もだらだらと仕事をし続けてしまい、結果的に長時間労働になってしまうケースがあります。
③ 運動不足
運動をすることで、気分のリフレッシュや精神的な安定につながるセロトニンが分泌されストレスが緩和されやすくなります。運動不足は身体の不調だけでなく、気分が落ち込みやすくなってしまうなど、精神面にも影響が出ることが分かっています。
④仕事環境が整っていない
転職などにより初めて在宅勤務を経験する人も少なくないため、「自宅に仕事ができる環境が整っていない」「机や椅子が長時間作業をするのに向いていない」というケースがあります。また、家族に気を遣いながら仕事をせざるを得ないといった人も多く、集中できないことでストレスを感じてしまいます。
4-7 テレワークの課題解決の対策
社外からでもコミュニケーションを図れる、データの利用が可能、各種管理の徹底が図れる仕組み「ネットワーク利用可能なシステムの導入」ではないでしょうか?その課題を解決する対応として、「社外ツールの活用」が早急に必要と考えられるようになったのです。選択型福利厚生「カフェテリアプラン」
企業が従業員に一定のポイント(補助枠) を付与し、従業員は企業ごとに設計されたメニューの範囲内で自由に選び、 利用できる選択型の福利厚生制度です。
5.課題解決に有効なDXのすすめ
5-1 DXに関するメリット
では、社外ツールを活用し、DXを推進すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。以下に4つのメリットを挙げます。
①コミュニケーションの向上
素早い情報共有、業務の効率化、時間の有効活用、組織の活性化
②健康管理の徹底
健康診断関連業務の削減、予防対策の実施、健康相談の開催
③職場環境の整備
業務効率化、ペーパーレス化、データの蓄積・閲覧、業務スピードアップ
④業務管理等の徹底
わかりやすい進捗管理、タスク・カテゴリー整理、タスク漏れ防止、勤怠管理
5-2 注意すべき点
DXを進めるには、注意すべき点もあります。その内容をご紹介いたします。
①導入コスト
システム開発やプログラム導入の費用、パソコンやタブレットなどの機器購入費用、維持管理費用。
場合によっては、推進するための人材の採用費用なども必要になる。
②障害リスク
緊急事態に備えて、トラブル発生時の対応策も考えておく必要がある。
③職場環境
製造業などの企業では、難しい問題もある。管理部門についても、一人が同じ業務を長年継続している、過去の勘と経験で業務が進められている職場などデリケートな問題もある。
5-3 DXを進めるポイント
DXを実行するにあたり、4つのポイントをご紹介いたします。
①経営層のリード
経営層が先頭に立ち、強い意志を持って積極的に取り組む姿勢を示すことが第一歩となる。
②段階的な導入
最初からすべてに取り組むのではなく、優先順位を決めて、何から取り組んでいくのか計画的に進めることが大切。
③ハード・ソフト環境整備
導入内容が決定すれば、必要なシステムやネットワークの導入、使用するパソコンやタブレットの導入など環境の整備を進めます。機器などの導入には、実際にご利用される内容にあった使いやすいものを準備されると良いのではないでしょうか?
④重要性の理解
いくら経営層が積極的に取り組み、段階的な計画を立て、準備を進めても、従業員や担当者に準備・利用されなければ目的は達成されません。その為にも、利用する従業員への説明は大変重要になります。
DXを進めるためには、メリットや注意点などを理解、確認した上で、ポイントを押さえながら、DXを推進することが不可欠となるのです。
6.先進企業の取り組み事例
前述の通り、働く人のストレスが悪化している中で、従業員様の体調不良や離職を少しでも減らすために、会社には「従業員のサポート」を目的とした取り組みが求められてきています。ここからは、先進的な取り組みを実施されている事例をご紹介いたします。
6-1 オンライン海外ツアー
A社では、毎年恒例となっていた社員旅行がコロナ禍により中止となりましたが、部署や事業所を越えたイベントを通じて、エンゲージメント向上につなげていきたいという思いからオンライン海外ツアーを実施しました。
旅行気分をさらに味わえるようにと、外国料理のお弁当やお菓子なども事前に準備し、参加者全員が楽しめる機会となったようです。
6-2 オンライン雑談
B社では、リモートワークの導入に伴い、従業員間のコミュニケーション、特に日常的な雑談が減少していることを課題視していたことから、昼休憩の時間を活用してオンライン雑談会を実施しています。雑談なのでもちろん参加や退室は自由で、よい気分転換につながっていると好評のようです。
6-3 オンライン交流会
C社では、新入社員が入社時からリモートワークになり、モチベーション低下が懸念されていたため、新入社員が既存社員と交流を持てるような質問会や昼食会をオンラインで実施しています。オンライン上であっても、何度か交流を持った既存社員がいると安心感につながります。
6-4 オンラインカウンセリング
D社では、リモート勤務が続くことで心身の疲れやストレスを感じる声が社員から挙がっていたため、外部のメンタルサポートプログラムを企業側が費用を負担して実施しています。対面でのカウンセリングに比べて心理的なハードルも低く、またいつでもどこでも相談できるといったメリットもあり、利便性も高い制度です。
7.まとめ
本記事では、DXの推進が働き方にどのような進化を与えているのかなど、現在注目されているDXについて解説しました。コロナ禍で変化した働き方改革として、加速する業務のDXが、会社とテレワークをつなぐ「外部ツール」の活用が不可欠となり、さらにDXのメリットや注意点、ポイントを押さえたうえで、働き方改革を進めていくことが重要であることがご理解できましたでしょうか。
今後も継続されるテレワークに関して、デジタルツールの利用はますます増加して行いくと考えられています。企業のご担当者には、継続的に充実を図っていく必要があることをご理解いただければ幸いです。
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