健康経営優良法人に認定された企業の実態は?認定制度についても紹介
「健康経営を本格的に始めたいが、制度の実態はどのようなものなのだろう?」このような疑問を抱えている企業は多いのではないでしょうか。
健康経営に関する関心は年々高まっており、健康経営優良法人認定制度に申請する企業の数も増加傾向にあります。
しかし「健康経営優良法人に認定されることは本当に意味があるの?」と考えている方もいるでしょう。本格的に健康経営に取り組む前に、制度の実態がどのようになっているかを把握しておくべきです。
本記事では、健康経営優良法人認定制度について基本的なことを解説し、具体的な取り組み事例を紹介します。また、健康経営において不可欠な従業員の意識や、社内に健康経営を浸透させるポイントについても見ていきます。
最後まで読むことで、健康経営優良法人の実態がつかめるでしょう。
1.健康経営の認定制度
健康経営は、経済産業省が定義する概念です。
従業員などの健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することとされています。
参考:健康経営|経済産業省
健康経営に関する認定制度には、健康経営優良法人と健康経営銘柄の2つがあります。また、健康経営優良法人は「大規模法人部門」「中小規模法人部門」の2つに分かれています。以下では、それぞれの制度について見ていきます。
1.1 健康経営優良法人(大規模法人部門)
健康経営優良法人2024の大規模法人部門の認定要件は、以下の通りです。
参考:健康経営銘柄2024選定基準及び健康経営優良法人2024(大規模法人部門)認定要件|ACTION!健康経営
2024年には2,488社が認定されました。以下に主な企業を一部抜粋します。
- イオン北海道株式会社
- 伊藤組土建株式会社
- 岩田地崎建設株式会社
- 株式会社HBA
- 株式会社NTTネクシア
- 株式会社カナモト
- 医療法人渓仁会
- 社会福祉法人渓仁会
- 国分北海道株式会社
- 札幌トヨペット株式会社
- 札幌ヤクルト販売株式会社
- 医療法人新産健会
- 株式会社スズキ自販北海道
- 株式会社ソフトコム
- 株式会社第一岸本臨床検査センター など
参考:認定企業一覧|ACTION!健康経営
1.2 健康経営優良法人(中小規模法人部門)
健康経営優良法人2024の中小規模法人部門の認定要件は、以下の通りです。
参考:健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)認定要件|ACTION!健康経営
2024年には16,233社が認定されました。以下に主な企業を一部抜粋します。
- アーク株式会社
- アートシステム株式会社
- 株式会社アーバンクリアサポート
- 株式会社iフォースラボ
- アイ・リンク株式会社
- AURA ARCHITECTS株式会社
- 株式会社アシスト・インターナショナル
- 株式会社アットマークテクノ
- 株式会社アミノアップ
- 株式会社イーエス総合研究所
- 株式会社池田熱処理工業
- 勇建設株式会社
- 株式会社石山組
- 板谷土建株式会社
- 今井金商株式会社 など
参考:認定企業一覧|ACTION!健康経営
1.3 健康経営銘柄
健康経営銘柄は、証券取引所の上場会社の中から健康経営に優れた企業を選定し、紹介するという制度です。健康経営銘柄の認定制度は、日本再興戦略に位置づけられた「国民の健康寿命の延伸」に関する取り組みのうちの1つです。
評価にあたっては、さまざまな観点で健康な取り組みが行われているかチェックされます。例えば以下のような項目です。
- 法令遵守状況
- 健康経営が経営理念や方針に位置付けられているか
- 健康経営に取り組むための組織体制が構築されているか
- 健康経営の具体的な制度や施策が実行されているか
- 健康経営の取り組みの評価や改善が行われているか
- 石油資源開発株式会社
- 株式会社ヤクルト本社
- 明治ホールディングス株式会社
- サントリー食品インターナショナル株式会社
- 味の素株式会社
参考:健康経営銘柄|経済産業省 令和5年度 健康経営度調査(従業員の健康に関する取り組みについての調査)経済産業省 「健康経営銘柄2024」の公表について|JPX
2.健康経営優良法人に認定された企業の取り組み
経済産業省は、健康経営優良法人に認定された企業の事例を詳しく紹介しています。ここでは、健康経営優良法人2023の中小規模部門に認定された企業の中から、3社をピックアップし、具体的な取り組みを紹介します。
参考:健康経営優良法人2023 中小規模法人部門
2.1 株式会社ケィテック
株式会社ケィテックは、技術エンジニアリング業を営んでいる愛知県の企業です。
健康経営に取り組み始めたきっかけは、仕事から残業時間が膨大になり、メンタル不調が課題になってきたからです。
特徴的な取り組みとしては、具体的な健康指標を10項目定め、それぞれにインセンティブを与えたことが挙げられます。以下のそれぞれの項目の達成度に応じてポイントを配分し、QUOカードを申請する制度を実施しました。
- 健康意識調査
- スポーツ施設の利用
- 朝昼晩の食事摂取
- 毎日の睡眠時間
- ウォーキングチャレンジ
- 半年の有給休暇取得日数
- 健康セミナーの視聴
- 6ヶ月後の体重
- 禁煙達成
- 社員運動会への参加予定
健康経営の実践にあたっては、従業員のアンケートを取るなど社内コミュニケーションを重視しました。さまざまなイベントを企画するようになり、会社に意見を言える従業員が増えたのも成果の1つです。
2.2 南双サービス株式会社
南双サービス株式会社は、就労人口不足が懸念されている中、幅広い人材確保と育成を経営課題に掲げていました。そのために、企業のイメージアップや離職防止などの効果がある健康経営に注目するようになったといいます。
特徴的な取り組みとしては、会社で継続できる健康施策を重視したことが挙げられます。例えば「姿勢を正しくするだけで腹囲が減る」というアドバイスを参考に、全社で姿勢矯正クッションを導入しました。普段の業務中でも7割の従業員が使用するようになりました。
また、ベジファーストに関する知識にも注目。野菜の摂取を習慣づけられるようにと、会社の一部費用補助のもとで、仕出し弁当に生野菜をつけて提供しています。
結果として従業員の健康意識は向上しました。社内で取っている健康アンケートにおいては、7割以上の従業員が食生活に気を遣うようになったと回答しています。
2.3 株式会社アロー
株式会社アローは、自社の事業の一環として、顧客企業に集団での運動指導を提供してきました。必然的に、顧客企業の健康経営担当者と意見を交わす機会が多くなり、現場の悩みをより深く知ることになりました。これがきっかけで、健康経営の取り組みが始まったそうです。
特徴的な取り組みとしては、ロコモテストや片脚立ちといった体力テストをオンライン環境下で行う「オンライン運動会」が挙げられます。年に1~2回のペースで実施しており、現在では自社提供コンテンツの1つとして、他社や地域住民と一緒に楽しむイベントに成長しています。
健康経営のために実践した結果、ブライト500に認定され、健康経営に関する企業からの依頼案件が増えました。特に大規模の会社からは「健康経営の考えを分かった上で関わってくれるのがよかった」という感想が多数寄せられました。企業のブランドイメージが向上したと実感しているようです。
3. 健康経営に関する従業員の意識
健康経営を実践し、健康経営優良法人に認定されるためには、従業員の意識改革が欠かせません。ここでは健康経営の取り組みのうち、必要と感じる従業員が多いものとそうでないものを紹介します。3.1 必要と感じる従業員が多い健康経営の取り組み
必要と感じる従業員が多い健康経営の取り組みには、以下のようなものがあります。
- 健康診断の実施
- ストレスチェック
- ワークライフバランスの推進
- 福利厚生
自分ごと化しやすい施策は、重要度が高いと感じる傾向にあります。例えば健康診断の場合は、実際に病気が見つかることがあるため、成果が分かりやすい施策といえます。
3.2 不要と感じる従業員が多い健康経営の取り組み
不要と感じる従業員が多い健康経営の取り組みとして挙げられるのは、以下のようなものです。
- 健康に関する研修
- 運動機会増進施策
- 喫煙対策
- 食生活改善施策
上記のような、何を得られるか分かりにくいものは、不要と感じる従業員が多い傾向にあります。従業員に重要性が伝わらない施策については、直接的なメリットを感じられるような工夫が必要でしょう。
4.社内に健康経営を浸透させるポイント
健康経営の理念を社内に浸透させるポイントとして挙げられるのは、主に以下の5つです。
- 健康経営の目標を明確にする
- 従業員のタイプを分析する
- 継続しやすい仕組みを作る
- 効果を検証する
- 専門家に協力を依頼する
4.1 健康経営の目標を明確にする
健康経営を進めていくには、具体的な目標を掲げることが大切です。
- 来年の医療費を5%削減する
- 3年後に喫煙率を10%にまで低下させる
- 来年の有給休暇取得率を70%まで向上させる
何のために行うものなのかを明確にしないまま打ち出しても、従業員にはなかなか浸透しません。意味と価値を従業員一人一人の意識にしっかり染み込ませることで、健康経営は実践的なものとなります。
4.2 従業員のタイプを分析する
従業員のタイプに合わせて、健康経営の施策を選定することが重要です。
例えば、普段から健康意識の高い従業員であれば、特に健康経営の重要性を説かなくても協力的になってくれるでしょう。しかし、そうでない従業員は分かりやすい価値を提示しないと、アクションまでに時間がかかるかもしれません。
自社の従業員にどのタイプが多いのかを把握することや、従業員ごとにアプローチ方法を変えることなどが有効です。
4.3 継続しやすい仕組みをつくる
従業員が健康経営の施策に継続的に参加したくなる要素を「継続ドライバー」といいます。継続ドライバーをしっかり構築し、継続しやすい仕組みをつくることで、企業全体の健康経営への道筋が開けていきます。
継続ドライバーの具体的な例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 有形無形のインセンティブを用意する
- お互いに励まし合えるコミュニティをつくる
- ゲーム性のある競争やストーリーで、楽しく取り組める状況をつくる
自社のムードや従業員の気質に合致する継続ドライバーを用意できれば、健康経営はスムーズに進むでしょう。
4.4 効果を検証する
さまざまな施策を行ったけれども、効果が出ているか分からないのでは、従業員のモチベーションは保てません。したがって、定期的に効果を検証することが重要なポイントとなります。
例えば、セミナーやイベントの参加後にアンケートを取り、結果をストレスチェックや健康診断と掛け合わせてチェックします。参加者の健康状態や健康意識にポジティブな変化が見られるのであれば、積極的に伝えるべきでしょう。
4.5 専門家に協力を依頼する
経営陣や人事担当者だけでは、健康経営に関する知識はほとんどの場合、不十分といわざるを得ません。
そのため、健康経営を十分浸透させるには、専門家に協力を依頼するのが確実です。医学的、経営的な視点から指導してもらえることで、スムーズに健康経営に取り組めるでしょう。
5.まとめ
健康経営を実施するうえで認識しておくべきことや、健康経営優良法人の実態について解説しました。
健康経営は、長期的な視点で企業を成長させるために有効な施策です。しかし頭ごなしに命じたところで、従業員の理解は得られないでしょう。健康経営の有用性をしっかりと説明し、取り組みやすい環境を用意することが大切です。
健康経営の取り組みについてお悩みの企業様は、株式会社イーウェルの「健康経営推進支援サービス」をご利用ください。貴社の健康経営の第一歩からPDCAを回すサポートをいたします。 健康経営を推進するうえで必要な「健康経営度調査」「健康投資管理会計ガイドライン」などを活用して、企業の健康経営の第一歩からPDCAを回していくお手伝いをするコンサルティングサービスです。健康経営の第一歩からPDCAの循環まで「健康経営推進支援サービス」
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