コラボヘルスを活用した健康経営を効果的に推進するポイント

経済産業省の調査によると、「健康経営」を推進する企業が年々増加しています。
一方、厚生労働省は健康保険組合をはじめとする医療保険者に対して「データヘルス」を推進しており、現在では、企業が実施する「健康経営」と健康保険組合等が実施する「データヘルス」とを一体的に推進する「コラボヘルス」が重要とされ、その相乗効果が期待されています。
本記事では、コラボヘルス導入のメリットや効果、ポイントをご紹介します。
目次
1.コラボヘルスとは?
コラボヘルスとは、健康保険組合等の保険者と事業主(企業)が積極的に連携し、明確な役割分担と良好な職場環境のもと、加入者(従業員・家族)の予防・健康づくりを効果的・効率的に実行することです。
引用元:厚生労働省保険局『コラボヘルスガイドライン』より
1-1 データヘルス推進おけるコラボヘルスが注目される背景
データヘルス推進において、コラボヘルスが注目される背景には、3つの要因が考えられます。
① 特定健康診査・特定保健指導制度の導入
現役の勤労者時代の健康状態が結局高齢者になってからの医療費に影響を及ぼすとの基本的な考え方に立って、現役世代に対す生活習慣病対策として打ち出されたものです。
② 保険者機能を発揮するためのインフラ整備
レセプト(診療報酬明細書)の電子化が、近年ようやく、ほぼ100%のレセプトが電子請求の形態となり、電子化されたレセプト情報と電子化された健康情報を活用することにより今までできなかった有益な分析や活動を保険者が行うことが可能になります。これがデータヘルス(計画)の発想です。
③ データヘルス推進のために事業主との連携
データヘルスを推進していくうえで、事業主(企業)と保険者(健康保険組合)の連携が一層重要になってきます。
このように、企業と健康保険組合が協同で健康投資活動を行うことで、効果的なリソース配分が可能となり、効率的な健康投資につながるとされています。日本健康会議の中でもコラボヘルスが重要な目標の一つとして定められています。
2.コラボヘルス導入の目的
引用元:コラボヘルス研究会
また、コラボへルス導入のメリットは以下の3つがあります。
① 企業の業績アップとブランド価値向上
② 医療費の削減
③ 効率的な健康管理の維持
※詳細についてはこちらをご覧ください
『コラボヘルスとは?健康経営とのつながりや導入のメリット・デメリットを解説』3.コラボヘルス導入で得られる健康経営やデータヘルスの効果
コラボヘルスの実践事例から健康経営やデータヘルスの効果をご紹介します。
3-1 花王健康保険組合の実践事例_特定保健指導の実施率向上と対象者の減少
花王グループは、特定保健指導は事業主側の産業看護職が実施しているが、平成23年度からはグループ企業に積極的支援の継続支援部分の一部を委託し事業主側の看護職はメタボ予備群への動機付け支援を開始した。 その結果、特定保健指導の実施率が向上し、特定保健指導者の対象者の減少につながった。 事業所ごとに健康づくり計画を立てて実施する健康づくり事業に対して健康保険組合は費用補助で支援している。
引用元:コラボヘルスガイドライン「第4章 コラボヘルスの実践事例
引用元:コラボヘルスガイドライン「第4章 コラボヘルスの実践事例」
3-2 (株)フジクラ/フジクラ健康保険組合の実践事例_運動機能の改善と生産性向上
生産性との関連でプレゼンティーイズムをもたらす要因を分析した結果では、フジクラグループ全体では身体活動の低下が大きく影響を及ぼしていることがわかった。 ただし、事業所で活動を展開するにあたっては、健診結果や日々のバイタルデータなど蓄積された各種データを事業所別に分析している。たとえば、歩数データひとつとっても、デスクワーク中心の事業所と製造工場とでは歩く時間帯がまったく異なるなど、事業所ごとの生活習慣の特性があるからである。 分析例を挙げると、腕力や下肢筋力、柔軟性等の運動機能に着目して事業所ごとに行った分析結果からは、車通勤の多いA事業所では下肢筋力の低下が、デスクワークが中心のB事業所では柔軟性の低下が課題として抽出され、運動機能の低下は事業所の環境特性と密接に関連していることが明らかになった。 その結果を踏まえ、A事業所に対しては、楽に効果的に歩けるノルディックウォーキングの導入や自転車通勤しやすい環境を整備する、デスクワークが中心で柔軟性が低下しているB事業所に対しては、姿勢のチェックやストレッチができるスペースを事業所内に整備するなど、事業所の環境や業務の特性と運動面での特徴を踏まえて解決策を立案し実行した結果、1年後の運動機能検査ではA事業所の下肢筋力が大きく改善した。 このように、同社ではデータを駆使して、事業所の健康課題を解決するための最適な方法を導き出し、健康づくりに取り組める環境整備を推進している。
引用元:コラボヘルスガイドライン「第4章 コラボヘルスの実践事例」
引用元:コラボヘルスガイドライン「第4章 コラボヘルスの実践事例」
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4.コラボヘルス導入時のポイント
コラボヘルス導入時のポインと、推進していくうえでの重要なポイントをご紹介します。
4-1 ポイント① リソースの確保
導入し、実践していくにはリソースがある程度必要になってきます。企業と健康保険組合の密な連携が必要となるため、担当部門・担当者がコラボヘルス事業に注力する必要があります。
4-2 ポイント② データの取り扱い
レセプトや健康情報という、個人情報の中でも機微情報のため、データの扱い方に十分な注意が必要となります。個人情報利用の許諾や高セキュリティ環境下でのデータの取扱など、実行に細心の注意が必要となります。
5.コラボヘルス推進のポイント
ここでは、コラボヘルスを推進するためのポイントをご紹介します。
5-1 推進ポイント① 社長・役員などに直結した組織体の推進体制の構築
コラボヘルスを推進していくうえで、トップダウンとボトムアップの両軸で動くのがポイントです。組織を動かす経営層(トップダウン)と実働部隊の担当者(ボトムアップ)にむけ、企業においては、人事部や総務部、健康管理室、健康保険組合、労働組合との連携が不可欠です。また社長・役員等経営者と中心として横断的な推進体制を構築することが重要です。
5-2 推進ポイント② 産業医や保健師等の外部専門事業者による関与
S職場における労働者の安全と健康を確保するための実働部隊が、産業医や保健師、総括安全衛生管理者などの産業保健スタッフです。このような専門事業者ともしっかり連携することも重要です。
出典元:厚生労働省保険局「コラボヘルスガイドライン」
引用元:コラボヘルスガイドライン「コラボヘルス推進体制の例」
5-3 推進ポイント③ 健康無関心層への働きかけ
コラボヘルスの実効性のあがる取り組みを実施しても、従業員の意識が低ければ健康経営は名目だけの取り組みになってしまいます。従業員が心身ともに健康な状態で働くことで生産性があがり、健康経営の効果となります。
重要なのは、PDCAサイクルを回し継続するまでに5つの段階があります。「無関心期」→「関心期」→「準備期」→「実行期」→「維持期」です。それぞれの段階に応じてアプローチすることで実効性がありますが、需要なのはどんな取り組みでも一定数は必ずいる従業員の無関心層への働きかけです。
無関心層への取り組みは、例えば健康インセンティブなど従業員へのポイント付与する施策などの活用の有効的です。 健診結果を活用して階層化ツリーを作成し、一人一人の健康課題に則した解決策(健康改善プログラム)を案内する仕組みです。健康施策を一括管理「健康施策実行支援サービス」
6.まとめ
事業主(企業)と健康保険組合の連携で、データ分析をはじめメリットや効果が期待できますが、充分な対話や役割分担がないことやトップや管理職の本気度が伝わらずに推進していることにより、あまり効果が出ていないこという声も散見されます。
効果を出すためには、コラボヘルス導入時のポイントに注意し、企業と健康保険組合で持ち合わせているデータをうまく活用し、従業員の健康状態の全体像を見て、課題を共有し、双方同じ場で議論していくことが大切です。
監修者 株式会社イーウェル ウェルビーイング経営推進室
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