コラボヘルスとは?健康経営推進にも効果的に活用できるあたらしい取り組み
経済産業省の調査によると、「健康経営」を推進する企業が年々増加しています。
一方、厚生労働省は健康保険組合をはじめとする医療保険者に対して「データヘルス」を推進しており、現在では、企業が実施する「健康経営」と健康保険組合等が実施する「データヘルス」とを一体的に推進する「コラボヘルス」が重要とされ、その相乗効果が期待されています。
本記事では、コラボヘルス導入のメリットや効果、ポイントをご紹介します。
目次
1.コラボヘルスとは?
コラボヘルスとは、健康保険組合等の保険者と事業主(企業)が積極的に連携し、明確な役割分担と良好な職場環境のもと、加入者(従業員・家族)の予防・健康づくりを効果的・効率的に実行することです。
引用元:厚生労働省保険局『コラボヘルスガイドライン』より
1-1 コラボヘルスの概要
コラボヘルスとは、従業員とその家族が健康であり続けられるために、健康保険組合と企業(事業主)が積極的に協力・連携し、疾病予防・健康づくりを効果的・効率的に実行することです。コラボヘルスを実践するには、健康保険組合、企業、従業員の3者の協力が必要不可欠となるのです。
厚生労働省は平成27年より、保険事業者を対象に健康医療情報の電子データの分析を利用した「データヘルス」を推進してきました。そして平成29年には「未来投資戦略2017」が閣議決定され、「保険者のデータヘルスを強化し、企業の健康経営との連携(コラボヘルス)を推進する」と提言しています。これは、個人の健康診断の結果などを、疾病予防や健康増進に有効に安全に活用する健康保険組合と企業の協働関係の期待を表しています。
平成29年の厚生労働省保険局による「データヘルス・健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン」では、健康保険組合などの保険者に対して、次の6点が求められています。
- 事業主等に対して加入者の健康状況や健康課題を客観的な指標を用いて示すことなどにより、保健事業の必要性についての理解を得るよう努めること
- 事業主等に保健事業の内容・実施方法・期待される効果等を事前に十分に説明した上で、保険事業に参加しやすい職場環境を醸成すること
- 事業主等から加入者に保健事業への参加勧奨をしてもらうこと等について、事業主の協力が得られるよう努めること
- 職場内禁煙等、加入者が健康づくりに自主的に取り組みやすい環境が職場において実現するよう、事業主等に働きかけること
- 事業主等と役割分担等を含めて十分な調整を行い、効率的な実施に努めること
- 事業主が実施する労働安全衛生法に基づく事業との積極的な連携に努めること
※コラボヘルス研究会「企業と健康保険組合の連携を最適化」
さらに、このコラボヘルスのカギとなるのが、「データ活用」となります。具体的には、健康保険組合と企業が持っている様々なデータを、疾病予防や健康増進を目的に活用することです。ここで用いられるデータとは、個人の健康診断の結果や診療に関するデータ、有給休暇の取得状況や欠勤日数など、企業側が持っている人事労務データなどが考えられます。
1-2コラボヘルスが注目される背景
データヘルス推進において、コラボヘルスが注目される背景には、3つの要因が考えられます。
① 特定健康診査・特定保健指導制度の導入
現役の勤労者時代の健康状態が結局高齢者になってからの医療費に影響を及ぼすとの基本的な考え方に立って、現役世代に対す生活習慣病対策として打ち出されたものです。
② 保険者機能を発揮するためのインフラ整備
レセプト(診療報酬明細書)の電子化が、近年ようやく、ほぼ100%のレセプトが電子請求の形態となり、電子化されたレセプト情報と電子化された健康情報を活用することにより今までできなかった有益な分析や活動を保険者が行うことが可能になります。これがデータヘルス(計画)の発想です。
③ データヘルス推進のために事業主との連携
データヘルスを推進していくうえで、事業主(企業)と保険者(健康保険組合)の連携が一層重要になってきます。
このように、企業と健康保険組合が協同で健康投資活動を行うことで、効果的なリソース配分が可能となり、効率的な健康投資につながるとされています。日本健康会議の中でもコラボヘルスが重要な目標の一つとして定められています。
2.「データヘルス」とは?
「データヘルス」とは、健康保険組合が、組合員の検診結果やレセプトデータ(組合員が医療機関にかかったデータ)を元として分析し、組合員の健康状態に基づいた保健指導や予防・健康づくりを行う活動のことです。この背景は、組合員の健診やレセプトデータの大半が電子化されて分析に使用可能となったことです。
データ分析に基づく保健事業であるデータヘルスを推進することで、健康保険組合がどのような健康支援ができるかを効果の測定と検証により見出していくことが可能となります。
2-1 健康保険組合の役割
健康保険組合は、「公法人」として日本人の健康維持の中心的役割を担ってきました。
「公法人」であることは、健康保険組合が組合員だけでなく、社会制度(社会保障、社会連帯)に対して責任を有することを意味しています。したがって、健康保険組合は、保険を給付するだけではなく、保険料の徴収や、高齢者医療への納付金・支援金の支払いの義務を負っています。
さらに、平成28年6月に閣議決定された「日本再興戦略2016」では、「健康経営やデータヘルス計画を通じた企業や保険者等による健康・予防に向けた取組を強化する」とされ、特定健康診査や特定保健指導をはじめとした被保険者等の健康の保持増進のための効果的・効率的な保険事業の実施等、保険者機能のより一層の強化が求められています。
2-2 データドリブンでの施策実行
データドリブン(Data Driven)とは、売上データやマーケティングデータ、WEB解析データなど、データに基づいて判断・アクションする事です。今まで、ビジネスにおいて様々なデータに基づいて判断・アクションするということは行われていましたが、近年、医療やヘルスケア業界においても、急速な“データドリブン化”の動きが起きており、大きく注目度が高まっています。
データヘルスの運用により、組合員の健診やレセプトデータの大半が電子化され、分析に使用可能となったことで、近い将来にはデータヘルスにおいてもデータドリブン化が進むことが期待されています。日常生活の中で取得できるデータが新たな「予防医療」を可能にし、病気発症後の治療においても、ライフスタイルや環境などのデータが参照されるようになり、さらなる健康支援が可能となっていくことでしょう。
2-3 コラボヘルスの推進
厚生労働省が推進する健康保険組合が主体となる「データヘルス」と、経済産業省が推進する企業が主体となる「健康経営」は、省庁の垣根を越えて“車の両輪”として推進してきました。
康保険組合等が実施する「データヘルス」と企業(事業主)が実施する「健康経営」とは、当初から健康保険組合等と企業が一体で取り組むこと(コラボヘルス)が重要視されていました。
2-4 コラボヘルスを取り上げる理由
近年、「コラボヘルス」が大きく取り上げられるようになってきた背景として、以下の3点が挙げられます。
- 特定健康診査・特定保健指導制度の導入
- 保険者機能を発揮するためのインフラ整備
- データヘルス推進のために事業主との連携
3.コラボヘルス導入の目的
引用元:コラボヘルス研究会
また、コラボへルス導入のメリットは以下の3つがあります。
① 企業の業績アップとブランド価値向上
② 医療費の削減
③ 効率的な健康管理の維持
4.コラボヘルス導入で得られる健康経営やデータヘルスの効果
コラボヘルスの実践事例から健康経営やデータヘルスの効果をご紹介します。
4-1 花王健康保険組合の実践事例_特定保健指導の実施率向上と対象者の減少
花王グループは、特定保健指導は事業主側の産業看護職が実施しているが、平成23年度からはグループ企業に積極的支援の継続支援部分の一部を委託し事業主側の看護職はメタボ予備群への動機付け支援を開始した。 その結果、特定保健指導の実施率が向上し、特定保健指導者の対象者の減少につながった。 事業所ごとに健康づくり計画を立てて実施する健康づくり事業に対して健康保険組合は費用補助で支援している。
引用元:コラボヘルスガイドライン「第4章 コラボヘルスの実践事例
引用元:コラボヘルスガイドライン「第4章 コラボヘルスの実践事例」
4-2 (株)フジクラ/フジクラ健康保険組合の実践事例_運動機能の改善と生産性向上
生産性との関連でプレゼンティーイズムをもたらす要因を分析した結果では、フジクラグループ全体では身体活動の低下が大きく影響を及ぼしていることがわかった。 ただし、事業所で活動を展開するにあたっては、健診結果や日々のバイタルデータなど蓄積された各種データを事業所別に分析している。たとえば、歩数データひとつとっても、デスクワーク中心の事業所と製造工場とでは歩く時間帯がまったく異なるなど、事業所ごとの生活習慣の特性があるからである。 分析例を挙げると、腕力や下肢筋力、柔軟性等の運動機能に着目して事業所ごとに行った分析結果からは、車通勤の多いA事業所では下肢筋力の低下が、デスクワークが中心のB事業所では柔軟性の低下が課題として抽出され、運動機能の低下は事業所の環境特性と密接に関連していることが明らかになった。 その結果を踏まえ、A事業所に対しては、楽に効果的に歩けるノルディックウォーキングの導入や自転車通勤しやすい環境を整備する、デスクワークが中心で柔軟性が低下しているB事業所に対しては、姿勢のチェックやストレッチができるスペースを事業所内に整備するなど、事業所の環境や業務の特性と運動面での特徴を踏まえて解決策を立案し実行した結果、1年後の運動機能検査ではA事業所の下肢筋力が大きく改善した。 このように、同社ではデータを駆使して、事業所の健康課題を解決するための最適な方法を導き出し、健康づくりに取り組める環境整備を推進している。
引用元:コラボヘルスガイドライン「第4章 コラボヘルスの実践事例」
引用元:コラボヘルスガイドライン「第4章 コラボヘルスの実践事例」
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5.コラボヘルス導入から期待できるメリット
コラボヘルスを導入することによって、大きく3つのメリットがあると考えています。
コラボヘルスを導入する前に知っておいた方がいい内容でもありますので是非ご参考にしてください。
まずはどのようなメリットがあるのか解説します。
5-1 メリット① 業績アップとブランド価値向上
企業にとっては、従業員の生産性が企業の業績に直結します。従業員が健康でいることで、個々のパフォーマンスを上げることができ、健康に関するコストが削減されます。企業単体・健康保険組合単体での施策で行う以上の効果を、コラボヘルスで実現が可能です。
コラボヘルスを取り組んでいることは、従業員の健康や働き方を重視していることであり、企業自体のブランド価値を上げる効果も期待できます。
5-2 メリット② 医療費の削減
健康組合にとっては、組合員が属する企業と協力する事で、組合員への指導が容易になります。健康保険組合の最大の課題である医療費の削減効果が見込めることとなります。
5-3 メリット③ 効率的な健康管理の維持
社員にとっては、健康管理がしっかり行われている環境の中で効率的に働けるようになります。会社や組合からの指導によって、効率的に自らの健康を保つことが可能です。
6.コラボヘルス導入の際のデメリット(注意点)
コラボヘルスの導入は良いことだけではありません。ここでは導入の際に注意しなければならないこと、デメリット(注意点)を解説しますので、導入に興味を持たれた方は合わせて認識しておいてください。
6-1 デメリット① リソースの確保
まだ新しい概念のため、導入し実践していくためにリソースがある程度かかります。
特に別の事業体である企業と健康保険組合の密な連携が必要となるため、担当部門・担当者がコラボヘルス事業に注力する必要があります。
6-2 デメリット② データの取り扱い
健康データ(PHR)という、個人情報の中でも機微情報のため、データの扱い方に十分な注意が必要となります。個人情報の利用の許諾や高セキュリティ環境下でのデータの取扱など、実行に細心の留意が必要となります。
6-3 デメリット③ 検証が必要
まだまだ新しい概念のため、事例や進め方の方法論などが整っていません。
仮説検証を繰り返し、当該企業と健康保険組合にとって最適な道を探っていく覚悟が必要となります。
計画策定から実行の支援まで「データヘルス計画支援サービス」
コラボヘルス研究会をはじめとした分析ノウハウ・施策ノウハウをもって、 分析に基づくソリューションをご提案できます。
7.コラボヘルス導入時のポイント
コラボヘルス導入時のポインと、推進していくうえでの重要なポイントをご紹介します。
7-1 ポイント① リソースの確保
導入し、実践していくにはリソースがある程度必要になってきます。企業と健康保険組合の密な連携が必要となるため、担当部門・担当者がコラボヘルス事業に注力する必要があります。
7-2 ポイント② データの取り扱い
レセプトや健康情報という、個人情報の中でも機微情報のため、データの扱い方に十分な注意が必要となります。個人情報利用の許諾や高セキュリティ環境下でのデータの取扱など、実行に細心の注意が必要となります。
8.コラボヘルス推進のポイント
ここでは、コラボヘルスを推進するためのポイントをご紹介します。
8-1 推進ポイント① 社長・役員などに直結した組織体の推進体制の構築
コラボヘルスを推進していくうえで、トップダウンとボトムアップの両軸で動くのがポイントです。組織を動かす経営層(トップダウン)と実働部隊の担当者(ボトムアップ)にむけ、企業においては、人事部や総務部、健康管理室、健康保険組合、労働組合との連携が不可欠です。また社長・役員等経営者と中心として横断的な推進体制を構築することが重要です。
8-2 推進ポイント② 産業医や保健師等の外部専門事業者による関与
S職場における労働者の安全と健康を確保するための実働部隊が、産業医や保健師、総括安全衛生管理者などの産業保健スタッフです。このような専門事業者ともしっかり連携することも重要です。
出典元:厚生労働省保険局「コラボヘルスガイドライン」
引用元:コラボヘルスガイドライン「コラボヘルス推進体制の例」
8-3 推進ポイント③ 健康無関心層への働きかけ
コラボヘルスの実効性のあがる取り組みを実施しても、従業員の意識が低ければ健康経営は名目だけの取り組みになってしまいます。従業員が心身ともに健康な状態で働くことで生産性があがり、健康経営の効果となります。
重要なのは、PDCAサイクルを回し継続するまでに5つの段階があります。「無関心期」→「関心期」→「準備期」→「実行期」→「維持期」です。それぞれの段階に応じてアプローチすることで実効性がありますが、需要なのはどんな取り組みでも一定数は必ずいる従業員の無関心層への働きかけです。
無関心層への取り組みは、例えば健康インセンティブなど従業員へのポイント付与する施策などの活用の有効的です。 コラボヘルス研究会をはじめとした分析ノウハウ・施策ノウハウをもって、 分析に基づくソリューションをご提案できます。計画策定から実行の支援まで「データヘルス計画支援サービス」
9.まとめ
事業主(企業)と健康保険組合の連携で、データ分析をはじめメリットや効果が期待できますが、充分な対話や役割分担がないことやトップや管理職の本気度が伝わらずに推進していることにより、あまり効果が出ていないこという声も散見されます。
効果を出すためには、コラボヘルス導入時のポイントに注意し、企業と健康保険組合で持ち合わせているデータをうまく活用し、従業員の健康状態の全体像を見て、課題を共有し、双方同じ場で議論していくことが大切です。
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