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2024/03/01 (公開:2022/08/24)

出産手当金とは?条件や申請方法など事業者が知っておくべき内容を解説


出産手当金とは?条件や申請方法など事業者が知っておくべき内容を解説

「出産手当金が取得できる条件は?」

「出産手当金の申請方法を事業者の目線から知りたい」

上記の疑問を持つ事業者もいることでしょう。健康経営が叫ばれる近年、産休や育休の取得も一般的になりました。

 

ちなみに、「産休手当金」と「出産手当金」が混同してしまう方もいますが、両方とも原則、健康保険に加入している女性が出産のために会社を休んだときに受け取れる給付金のことを差し、正式名称は「出産手当金」です。

 

本記事では、事業者が知っておくべき出産手当金の知識を徹底解説します。従業員が産休を取得できる条件や、申請方法を紹介。産休中の従業員への健康診断をはじめとした待遇も解説します。産休を理解したい事業者は、ぜひご覧ください。


         

1.出産手当金は産休中の従業員の生活を保障する制度



出産手当金は会社の健康保険に加入している従業員が、出産日以前42日間~出産以降の56日間まで受給できる給付金です。出産前に従業員が受け取っていた給料の2/3が支給されます。

 

手当金は従業員が加入している健康保険から支払われ、事業者は費用を負担する必要はありません。なお、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法で、従業員の産休を事業者が不当に断ることは禁止と定められています。従業員が出産手当金を希望する場合は、事業者は速やかに申し込みの手続きをしましょう。 

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2.出産手当金を取得する条件



出産手当金を取得するには、以下3つの条件を全て満たす必要があります。

  1. 妊婦本人が健康保険や協会けんぽ、共済組合などに加入している
  2. 妊娠4カ月(85日)以降の出産だった
  3. 出産のために休職しており、期間中に給与を受け取っていない

出産手当金には、健康保険の加入期間の条件がありません。入社直後に妊娠が発覚した場合でも、健康保険に加入していれば申請が可能です。「出産」には中絶や流産なども該当します。ただし、出産手当金を受給している期間に給与があると、手当からその金額が差し引かれるので注意しましょう。

              

3.出産手当金が取得できない条件



以下の条件のいずれかに当てはまる場合は、出産手当金を受け取れません。

 

  1. 会社の保険ではなく国民健康保険に加入している
  2. 妊婦本人が被保険者ではない
  3. 健康保険の任意継続中である
  4. 産休中に出産手当金の日額以上の給与が支給された


出産手当金の受給は、会社の健康保険に加入していることが条件です。国民健康保険や扶養家族で夫の保険会社に加入している場合は、出産手当金の対象外です。

 

退職後に一定条件のもと保険に加入し続ける任意継続も、出産手当金は受け取れません。ただし、出産のために退職した場合は、任意継続の被保険者であっても証明書があれば受給可能です。


        

4.事業者が覚えておくべき出産手当金のポイント5選



以下では、事業者が覚えておくべき出産手当金のポイント5選を紹介します。

 

  1. 従業員が退職しても受給できる
  2. 従業員の希望により2回に分けて受給できる
  3. 条件を満たせばパートも受給できる
  4. 出産一時金と出産手当金は両方受給できる
  5. 産後は育休手当が受給できる

 

それぞれ詳しく解説します。

     

4-1 従業員が退職しても受給できる

以下の条件を満たしていれば、出産手当金は退職済みでも支給されます。

  • 退職の当日に仕事を休んでいる
  • 退職日が産前・産後の休暇中である
  • 退職日までに1年以上継続して健康保険に加入している

出産手当金には加入期間への条件はありませんが、退職後に給付金を受け取る場合には1年以上の加入実績が必要です。また、出産手当金の給付期間である「出産日以前42日間~出産以降の56日間まで」の期間に退職していなければなりません。給付期間中に引継ぎなどで出社すると、受給対象外になるので注意しましょう。

           

4-2 従業員の希望により2回に分けて受給できる

出産手当金は、以下の期間中なら複数回に分けて受給できます。

 

産前

 出産日より以前の42日間

 ※予定日より出産が遅れた場合は、出産予定日以前の42日間+出産までの日数

 ※多胎妊娠の場合は98日間

産後

 出産日の翌日以降56日間

 

医師や助産師の証明欄は、2回目以降の記入は省略できます。1回目の申請が産後にされ、出産日などを申請書上で証明できることが条件です。

          

4-3 条件を満たせばパートも受給できる



出産手当金はパートやアルバイト、派遣社員でも受給できます。
出産手当金は正規・非正規を問わず、会社の保険に加入している人が対象となるからです。ただし、以下3つの条件をすべて満たさなければなりません。

 

  1. 健康保険に加入している
  2. 妊娠4カ月(85日以降)以降の出産
  3. 給付期間中は給与を受け取っていない

 

労働時間が正社員の3/4を下回るアルバイト社員は健康保険の加入義務がないため、出産手当金が受給できないことがあります。

         

4-4 出産一時金と出産手当金は両方受給できる

出産したときには、出産一時金が支給されます。出産一時金は、出産手当金を受給しながらでも申請が可能です。妊娠4カ月(85日)以上での出産であれば、新生児1人につき42万円が健康保険から保障されます。

 

申請は従業員が医療機関または協会けんぽに対して行います。退職後であっても、以下の2つの条件を満たせば申請可能です。

 

  • 健康保険に1年間の加入実績がある
  • 退職後6カ月以内の出産

 

出産一時金は、従業員が利用した医療機関に直接支払われます。医療機関に支払い済みの場合には、従業員が手当を受け取ることも可能です。ただし、その場合は申請時に出産費用の領収書などを提出しなければなりません

         

4-5産後は育休手当が受給できる

出産手当金の受給期間である産後56日間が経過すると、育休手当が受給できます。出産手当金や出産一時金と違い、男女ともに申請が可能です。育休手当は雇用保険から支払われ、以下の4ステップでハローワークに申請します。

 

  1. 育休が始まったら、事業主がハローワークに育休手当を申請する
  2. ハローワークから支給決定通知書と支給申請書が交付される
  3. 支給の決定日から約1週間後に従業員の口座に手当が振り込まれる
  4. 2カ月ごとに事業者が支給申請書をハローワークに提出する

 

育休手当は、新生児の1歳の誕生日まで受給が可能です。


        

5.出産手当金の計算方法



出産手当金は、以下の計算式で求められます。

 

【支給開始日の以前12カ月間の各標準報酬月額を平均した額】/30日×(2/3) 

支給開始日とは、出産手当金が最初に支給された日のことです。ただし、会社にいた期間が12カ月を下回ることがあります。その場合は、以下2つのうち低い額が給付金額です。

 

①各月の月給の平均額

 支給開始日の月より前の月給の平均額

②標準的な月給の平均額

 支給開始日が平成31年3月31日まで:28万円

 支給開始日が平成31年4月1日以降:30万円

 

        

6.出産手当金の申請方法を3ステップで紹介



出産手当金は、以下3つのステップで申請できます
。従業員の産休をスムーズに申請できるよう、事業者側もしっかりと確認しましょう。

 

  1. 従業員が申請書を用意する
  2. 事業者が健康保険組合か協会けんぽに申請書を提出する
  3. 事業者が年金機構に社会保険の免除を申請する

 

それぞれ詳しく解説します。

          

6-1 従業員が申請書を用意する

原則、従業員自身が「健康保険出産手当金支給申請書」を用意します。申請書は、全国健康保険協会のHPからダウンロードが可能です。申請書には医師の証明欄があるので、従業員から医療機関に証明を求めます。

 

従業員と医療機関で記入が完了したら、申請書を事業者が受領します。事業者は従業員に関する以下4つの情報を、申請書に記入しましょう。

 

  • 勤務状況
  • 給与の種類
  • 賃金計算
  • 賃金支給状況

 

事業者の証明をしたら、申請書は完成です。

           

6-2 事業者が健康保険組合か協会けんぽに申請書を提出する

事業者は「健康保険出産手当金支給申請書」を、加入している健康保険組合か協会けんぽに郵送します。書類の記入欄に不備がないか、郵送前に確認しましょう。

 

出産手当金を申請できる期間は、産休開始の次の日から2年以内です。期限を過ぎると受給できる金額が下がったり、給付金が支払われなかったりします。出産手当金を申請していない従業員には、早めの手続きを促しましょう。

            

6-3 事業者が年金機構に社会保険の免除を申請する



社会保険料は従業員の分だけでなく、会社が負担する分も免除されます。産休する従業員から申し出があったときは、会社が管轄の年金機構で免除の手続きを行ってください。

 

「産前産後休業取得者申出書」は日本年金機構HPで入手可能です。従業員の産休の期間中に、以下いずれかの方法で提出しましょう。

 

  • 電子申請
  • 郵送
  • 年金事務所への窓口持ち込み
申請よりも早く産休が終了する場合は、「産前産後休業取得者変更(終了)届」を年金機構に提出しなければなりません。

        

7.産休中の社員への待遇に関する4つの注意点



事業者は産休中の社員の待遇に関して、以下4つに注意する必要があります。

 

  1. 健康診断やストレスチェックは不要
  2. 休業中の給与の支払い義務はない
  3. 社会保険料の徴収はしない
  4. 年末調整は必要

 

それぞれ詳しく解説します。

          

7-1 健康診断やストレスチェックは不要

産休に入った従業員の、健康診断やストレスチェックは不要です。健康診断やストレスチェックは、働くうえで健康の問題がないか調べるための検査です。会社で働いていない人に実施する義務はありません。

 

ただし、産休・育休を終え、勤務を開始しようとする従業員には健康診断を速やかに行う必要があります。これは労働安全衛生法で規定されています。産休・育休中でも従業員が希望する場合は、自己負担で健康診断などを受けることが可能です。

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7-2 休業中の給与の支払い義務はない

産休中の従業員の給与を支払う義務はありません。労働基準法に産休中の給与に関する規定がないためです。

 

また、出産手当金は従業員が受給期間中に給与を受け取らないことを条件として給付される手当です。給与と出産手当金を同時に受け取ると、以下のデメリットがあります。

 

  • 給与を支給すると、その金額分だけ出産手当金の金額が差し引かれる
  • 給与が出産手当金の金額を超えると、出産手当金そのものが支給されない

 

福利厚生の一環として産休中の給与の支払いを検討している場合は、この点に留意が必要です。

           

7-3 社会保険料の徴収はしない



産休中は、従業員の社会保険料の支払いが免除されます。
会社が負担する社会保険料も同様に免除です。

 

社会保険が免除される期間は、産休と育休の期間中です。なお、期間中に給与が発生した場合も免除されます。ただし、社会保険が免除されている期間は「保険料を納めた期間」の扱いになるため、従業員の不利になることはありません。出産日が予定からずれた場合には、変更届が必要です。

           

7-4 年末調整は必要

出産手当金を受給している従業員にも、年末調整は必要です。年度の途中で産休に入り年収が下がった場合、所得税は実際の所得より多く徴収されているでしょう。多く徴収された税金を還付するためには、産休中の年末調整が必須です。出産手当金をはじめ、出産手当金や育休手当には所得税などが課税されません。

 

年末調整が間に合わないと、休業中の従業員が確定申告しなければなりません。従業員のために、この点も把握しておきましょう。


        

8.まとめ:出産手当金を理解し従業員をサポートしよう



出産手当金は会社の健康保険に加入している従業員が、条件付きで受給できる給付金です。正社員・パート問わず受給可能なので、積極的に活用しましょう。

 

出産手当をする際には、健康保険への申請はもちろん社会保険の免除も必須です。従業員の産休時に事業者が行うことはたくさんあるので、専門のコンサルに依頼するのがおすすめです。手当や申請方法を熟知しているプロがいれば、事業への支障なく産休手続きを行えるでしょう。

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著者情報

株式会社イーウェル ウェルナレ事務局

「人も、企業も、ウェルビーイングへ。」をテーマとして、企業の健康経営や福利厚生の支援を行う株式会社イーウェルが運営する、BtoB(人事総務向け)オウンドメディア「ウェルナレ」の編集部。
2021年7月にメディアリリース後、毎年60回以上、有名企業様とのコラボセミナーや官公庁の専門分野に特化した方を招いてのカンファレンス、大学教授による福利厚生勉強会の開催や専門家記事の掲載などを実施し、多くの方に好評いただいております。
人事部署や経営者が、会社のウェルビーイングを向上されるためのヒントを探して、日々活動しています。

 


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