健康経営度調査のフィードバックシートとは?
健康経営度調査の評価結果〈フィードバックシート〉とは?
健康経営度調査の評価結果〈フィードバックシート〉をご存知ですか?「健康経営度調査票」を提出した方であれば、提出後、必ず目にしたはずです。このシートには、「健康経営」の視点から、健康経営の偏差値、課題、変化といった非常に重要な情報が盛り込まれています。
令和5年度の健康経営度調査に伴うフィードバックシートは、大規模法人部門の場合2023年12月中旬に回答企業に速報版が送られます。本記事では令和5年度健康経営顕彰制度における健康経営度調査票の変更点および、2023年3月8日に発表された健康経営優良法人2023認定法人の評価結果(フィードバックシート)について徹底解説していきます。
目次
1.健康経営度調査とは
「健康経営度調査」は経済産業省により2014年から例年実施されています。企業が実際に「健康経営」に取り組んでいるかの状況分析をするもので、「健康経営銘柄」選定や「健康経営優良法人(大規模法人部門)」認定のための情報を得ることも目的の一つです。調査回答を以て、次年度の健康経営銘柄や健康経営優良法人・ホワイト500の選定が行われるため、健康経営度調査がどれほど重要性の高いものかを理解できます。
調査へ回答し、健康経営優良法人の認定基準に適合することで、日本健康会議により「健康経営優良法人」であることが認定されるのが特徴です。つまり健康経営優良法人の認定を目指すのであれば、調査に参加するのが第一歩となります。
調査に回答すると、各施策の偏差値等を記載した評価結果(フィードバックシート)が個別に送付されます。基本的にフィードバックシートの送付は大規模法人部門が対象ですが、中小規模法人に認定された上位500社(ブライト500申請法人)にも送付されます。
1.1 調査対象
大規模法人部門に該当する企業が主な対象となります。なお、令和3年度より中小規模部門の申請書も健康経営度調査と内容が重なる箇所がかなり多くなっています。日本の企業に求められる健康経営の要件が標準化されてきたと言えるでしょう。
出典元:健康経営優良法人認定制度における大規模法人部門と中小規模部門の区分け
1.2 内容について
健康経営に必要な要素は年々変化しているため、調査票の内容もそれにあわせて変わっていきます。ただし、基盤となる大きな傾向はあります。
【5つのフレームワーク】
- 経営理念・方針
- 組織体制
- 制度・実施実行
- 評価・改善
- 法令遵守・リスクマネジメント
5つのフレームワークは、経営の根幹から施策の実行までが上記に連動しているか、などの観点から定められたものです。全てのフレームワークが均等に評価されるのではなく、「重みづけ」(ウエイトバック集計)が行われています。「重みづけ」は健康経営の社会的な変化にあわせて設定されます。
2.調査票の入手から申請までの流れ
健康経営優良法人の認定を受けるには、以下の認定フローの通り進めていきます。2.1 調査票の入手方法
調査表は電子媒体で入手することになります。経済産業省から調査を委託された企業より、専用URLの案内が連携されます。
① 自動的に届く企業
上場企業であれば、調査が受け付け開始された時点で、「調査依頼状等案内」が電子メールや郵送で届きます。
非上場企業の場合は、前回、回答済みであったり、調査表発送依頼が行われていれば、電子メールが届きます。
② 新規で申し込む企業
新規で申込を行う企業・法人は、経済産業省のWEBサイトからURLにアクセスし、法人名など企業情報を登録します。
【新規ID発行 令和5年度】健康経営優良法人2024の申請用IDの発行サイト
上記のサイトよりメールアドレスを登録すると、専用URL、ID、パスワードが書かれたメールが送付されます。
2.2 申請スケジュール
健康経営度調査は、例年8月下旬から開始されることが多いです。10月下旬まで調査期間が設けられており、提出後、フィードバックシートが認定事務局から送られてくる流れです。なお、2021年度健康経営度調査から、健康経営度調査の提出と申請がセットになっておりますので、健康経営度調査提出後は特に申請等の追加作業はありません。
2.3 調査票サンプル
調査票は、「従業員の健康の保持・増進」を担う部門(人事や労務部門が該当することが多いです)が回答しなくてはいけません。項目によっては経営陣や保険者にも協力いただくこともあるでしょう。とても細かく記入する必要があるため、調査開始時期からスケジュールを意識して取り組む必要があります。2023年秋に申請する調査票のサンプルは以下の通りです。サンプル:令和5年度 健康経営度調査(大規模法人部門)
サンプル:健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)認定申請書
2.4 健康経営度調査評価結果(フィードバックシート)
令和4年度、開示に同意した2,238法人分(うち上場企業726社)の「令和4年度健康経営度調査に基づくフィードバックシート」が以下に掲載されています。
2023年度健康経営度調査 評価結果(フィードバックシート)
自社が全体比較してどのレベルにあるかもフィードバックシートからよくわかります。評価項目ごとに全体やトップ企業の点数と比較して自社の点数を確認できるため、非常に参考になります。まさに、健康経営の「成績表」と言えるでしょう。
経済産業省のWEBサイトには、「よくある質問(Q&A集)」といったコンテンツもあります。調査に挑戦する前に、事前に情報を仕入れておくことをおすすめします。
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健康経営を推進するうえで必要な「健康経営度調査」「健康投資管理会計ガイドライン」などを活用して、企業の健康経営の第一歩からPDCAを回していくお手伝いをするコンサルティングサービスです。
3. 2022年と2023年の調査票の変更点は?
2023年8月、日経リサーチ健康経営優良法人認定事務局において「令和5年度 健康経営度調査 今年度の概要と主な変更点」が発表されました。本章では評価項目ごとの変更点をまとめています。
3.1 経営理念・方針
①方針の明文化、健康経営の経営戦略への位置づけ
認定要件では、健康経営の推進に関する全社方針の明文化(Q17)を必須要件とし、次の3点を評価しています。
- 経営戦略に健康経営を位置づけ、健康経営で解決したい経営上の課題を特定しているか
- 特定課題に対して、健康経営の効果、取り組みとのつながりを整理・図示・公開しているか
- 経営層の承認を得ているか
②社外公開
会社全体の健康経営の推進について、「目的」と「体制」の両方が開示されている事(Q19)を必須要件としています。開示媒体(SQ4)もご回答する必要があります。更に、健康経営の開示を促すことを目的として、以下の内容などを評価しています。
- 健康経営の戦略を開示しているか、健康経営の効果をストーリー立てて説明しているか
- 関連する各指標の実績値を開示しているか など
またホワイト500の必須要件として、健康関連の最終的な目標指標のうち、特にパフォーマンス指標について開示を促す事を目的として、アブセンティーイズム、プレゼンティーイズム、ワーク・エンゲイジメントいずれかの直近の実績値および測定方法を開示することとなりました。
③自社従業員を超えた健康増進に関する取り組み
ホワイト500では必須の認定要件として、自社従業員を超えた健康増進に関する取り組みを求めています。
- 取引先の健康経営の取り組み等の把握・考慮(Q22)
- 取引先の健康経営の取り組みの支援(Q23) ※「取引先」の定義を明確にしています。
④グローバルでの健康経営実施
今年度は評価の対象ではないですが、健康経営の国際展開の状況を把握するため、海外での健康経営の取り組み状況を調査しています。3.2 組織体制
①体制構築
社内で健康経営を推進する上で、責任体制の構築が重要視されるため、経営トップまたは担 当役員が責任者であること(Q26)を必須要件としています。さらに、具体的な実施を進める上では、専門性による高い質を担保した体制の構築の両面が重要とされているため、産業医または保健師と従業員の健康課題を協議していることなど(Q30)を必須要件としています。
②健保組合等保険者との連携
健保組合等保険者とのコラボヘルスによる健康経営を推進するために、以下2点を必須要件としています。
- 健保組合等保険者に対して健診データを提供していること(Q32(a))
- 健保組合等保険者との協議を実施していること(Q33)
3.3 制度・施策実行
①健康課題に基づいた具体的な目標の設定
健康経営の具体的な施策を進めるには、予め数値目標を設定し、PDCAサイクルを構築して実施することが重要です。そのために、まずはPDCAのPの要素として、従業員の健康課題を踏まえた 「具体的な推進計画の策定」 「数値目標、達成期限の設定」(Q37)を必須要件としています。
②従業員の健康診断の実施(受診率100%)
健康経営実施の前提として、一般定期健康診断受診率( Q38(a) )100%が認定要件の選択項目の1つです。2022年度末時点の人数(Q3で回答)を基に、受診者数などを回答してもらい、受診率を自動算出します。新型コロナでやむをえず2022年度内に受診できなかった人は、2023年度に受診した場合に限り、2022年度の健診受診者数に含めることができるようになりました。
③育児または介護と仕事の両立支援
個別事情に応じた働き方への支援等が重要となっている状況を踏まえて、育児または介護と仕事の両立支援策(Q46)を認定要件に追加しています。適切な働き方の実現への取り組み(Q45)と両方の実施が必須です。また、各種支援制度の利用率(Q46SQ1、SQ2、Q47)についても調査していますが、今年度は評価の対象ではありません。
④特定健康診査および特定保健指導の実施率
特定健康診査および特定保健指導の実施率を把握することを認定要件としていますが、さらに、企業(事業主)単位の特定健診・特定保健指導の実施率(Q51SQ1)を調査し、評価対象としています。
⑤女性特有の健康課題への対応
女性特有の健康課題への対応をより一層求めるため、女性の健康課題に関する認知向上のための取組状況を問う設問(Q57)、行動変容促進の取組を問う設問(Q58)の2点について、いずれかの実施だったものが、両設問の実施に認定要件を変更しています。
⑥受動喫煙対策
受動喫煙対策(Q65)は必須要件となりました。工場や学校なども含む全ての事業場において、屋内屋外ともに、全面禁煙または分煙の措置を行う必要があります。
3.4 評価・改善
①従業員の生産性や組織活性度の測定
従業員の生産性や組織の活性度を測定する指標として、以下3点の開示と、指標の測定手法等を調査しますが(Q72SQ1)、評価の対象ではありません。
- アブセンティーイズム(傷病による欠勤)
- プレゼンティーイズム(出勤はしているものの、健康上の問題によって完全な業務パフォーマ ンスが出せない状況)
- ワーク・エンゲイジメント(仕事に対する活力・熱意・没頭)
②健康経営の実施についての効果検証
健康経営の推進におけるPDCAサイクルの構築の重要性を鑑みて、健康経営の実施につい ての効果検証(Q73)を必須要件としています。単に施策の実施結果を把握するのみでは不認定となります。
※あくまで効果検証の実施を求めているため、今年度は良い結果が出ていなくても、評価上は不利になりません。
出典元:日経リサーチ 健康経営優良法人認定事務局「令和5年度 健康経営度調査 今年度の概要と主な変更点」
4.フィードバックシートの変更点と活用法
フィードバックシートは、健康経営度調査の結果によりさまざまな課題点を抽出し、健康経営に対する企業の取り組み体制などと照らし合わせながら、さらに効果的な健康経営に取り組むことができるよう、毎年更新されています。本章では2022年と2023年とで変更された箇所を解説します。
4.1 フィードバックシートの変更点
2023年度健康経営度調査のフィードバックシートは、いくつか変更点がありますので解説します。
①総合評価がわかるようになった
従来は側面ごとの偏差値と総合得点のヒストグラムの記載でしたが、側面ごとの偏差値と総合評価の偏差値が記載されるようになりました。結果、より精緻に総合評価がわかるようになりました。また、直近5年の総合評価も振り返りが可能になりました。
② 評価の詳細分析に対応するQ番号が明記された
このことにより、具体的に課題を改善していくポイントがすぐにわかるようになりました。同時に強みが何なのかも具体的にわかるようになりました。
③ 調査票の回答内容の一部が掲載されるようになった
「健康経営の戦略」「情報開示媒体」「重点を置いている具体的な施策とその効果」について、調査票の回答内容が掲載されるようになりました。なお、健康経営度調査で公開について同意した企業のフィードバックシートは経産省のホームページで公表されます。そのため、成績だけでなく具体的な内容も社外に発信していくことになります。
4.2 フィードバックシートの活用法
今回の変更点を踏まえフィードバックシートの活用法について解説します。
まずは、文字通りフィードバックを受けて振り返りに活用することです。総合評価はこれまでの健康経営の取り組みの相対評価の軌跡です。評価の詳細分析は健康経営の取り組みを具体的にブレイクダウンしたものです。社内での取り組み(絶対評価)のみならず、回答企業内や同業種内での評価や評価の変遷を定量的にとらえ、経営層への訴求や自社の強み弱みの把握に深みが増します。
また、今回から具体的なQ番号が示されたため、次年度の取り組みポイントも具体的に把握することが可能となりました。
続いて、フィードバックシート自体が健康経営の外部発信ツールとなりえる点です。試験的に令和2年度の健康経営度調査フィードバックシートは事前に同意を得られたホワイト500認定企業のみ公開されていましたが、令和3年度健康経営度調査より、ホワイト500の条件としてフィードバックシートの公開に同意が必要となりました。
そのため、令和3年度の健康経営度調査フィードバックシートはより多くの企業のものが公開となることが予想されます。これは言い換えますと健康経営の成果や実際の取り組みを経産省の健康経営のページから社外に発信するということになります。
健康経営は企業の持続的成長に必要な取り組みと位置付けられており投資家や求職者からの注目も高まっています。自社媒体のみならず多くの媒体で発信していくことは有効な取り組みです。
5.まとめ
調査票に回答をするだけで、「健康経営とはどんな事をすればよいのか」が理解できる仕組みなっているのが、健康経営度調査であり、さらに評価結果(フィードバックシート)によって、自社の取り組むべき方向性が明確になります。
健康経営について取り組み始めたばかりという企業であっても、まずは調査に参加してみましょう。フィードバックシートをしっかりとチェックし、自社の優れた部分、足りない部分を認識することが「健康経営」の第一歩となります。
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