健康経営の第一歩!健康経営宣言・健康宣言とは

健康経営宣言は、健康経営を実践するための第一歩です。
健康経営度調査が開始して10年たちますが、毎年右肩上がりに調査への参加企業が増えており、2025年の制度変更によりますます中小・零細企業へのすそ野拡大が図られました。
これから健康経営の取り組みを始めるにあたって、健康経営宣言の策定を検討中の方は、ぜひご一読ください。
1.健康経営宣言(健康宣言)とは
1-1 健康経営が推進される背景
健康経営宣言とは、その企業が健康経営にどういった意思・思いを持って取り組むのか、社内外に公表されている宣言を指します。
そもそも、健康経営とは、企業が従業員の健康を保持・増進するための取組みをおこなうことにより、将来的に経営面においても大きな成果が期待できるだろうという考えのもと、従業員の健康管理を経営的視点から考え、従業員の健康管理・健康づくりを実践することを意味しています。
近年はその健康経営に取り組む企業が増えており、その中でも優良な企業を「見える化」し、「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる企業」として社会的に評価を受けることができる環境を整備することを目的にした顕彰制度が経済産業省を中心にできあがりました。
1-2 健康経営優良法人認定の2つの部門
健康経営に係る認定はおもに2つの対象法人に分かれます。② 健康経営優良法人【大規模法人部門】(上位500社:ホワイト500)
③ 健康経営優良法人【中小規模法人部門】(上位500社:ブライト500 上位1,000社:ネクストブライト1000)
出典元:ACTON! 健康経営
1-3 健康経営宣言は「健康経営優良法人」認定要件の1つ
この健康経営優良法人を認定取得するための必須項目の一つが「健康経営宣言」となります。
経済産業省の「健康経営銘柄選定における必須要件兼健康経営優良法人(大規模法人部門)認定要件」の資料の1番最初にある項目が「1.経営理念・方針」で、その評価項目に入っているのが「健康経営宣言」です。
ここでは企業の経営者が経営理念の中に「健康経営」について明文化し、企業全体で取り組んでいることを社内外に発信することが、健康経営優良法人認定(大規模法人部門)の認定のために重要視されています。
また、中小規模法人部門においては、自社の健康経営宣言ではなく、原則、保険者(加入する健康保険組合)の「健康宣言事業」への参加が必要となります。加えて、経営者自身が手本となる必要があるため、経営者の健康診断(人間ドック含む)受診を認定要件としています。
1-4 保険者が実施する「健康宣言事業」
中小企業においては健康経営の実践において基礎となるコラボヘルス推進のため、原則、保険者の健康宣言事業への参加が必須となります。
加入している保険者(健康保険組合)が健康宣言事業を実施していない場合に限り、各自治体が実施する健康宣言事業への参加または、自社独自の健康宣言の実施をもって代替することを可能なため、まずは、保険者(所属している健康保険組合)に健康宣言事業の参加要件を確認しましょう。
以下は、健康経営優良法人2025(中小規模法人部門)認定申請書に記載されている諸注意事項です。
出典元:ACTON! 健康経営
◆健康経営の実践において基礎となるコラボヘルス推進のため、原則、保険者の健康宣言事業への参加が必須となりますが、加入している保険者が健康宣言事業を実施していない場合に限り、各自治体が実施する健康宣言事業への参加または、自社独自の健康宣言の実施をもって代替することを可能とします。
◆保険者が実施する健康宣言事業の参加要件は各保険者によって異なるため、加入している保険者に事前にご確認ください。
◆全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合は、各支部で健康宣言事業を実施しているため、選択肢「3」「4」を選択すると不適合となります。
◆健康保険組合の場合は、各都道府県連合会で健康宣言事業を実施しているため、選択肢「3」「4」を選択すると不適合となります。
◆東京都に所在している医療保険者のうち健康企業宣言東京都推進協議会による銀の認定取得を健康経営優良法人申請の要件としている保険者に加入している場合は、銀の認定が必要になるため、取得していない場合は選択肢「5」に該当し、不適合となります。
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◆各自治体と保険者が共同で実施している健康宣言事業の場合、自治体独自の健康宣言事業ではなく加入保険者で実施する健康宣言事業に参加している扱いとなるため、選択肢「3」を選択すると不適合となります。
※ふじのくに健康づくり推進事業所宣言、とやま健康企業宣言、うちなー健康経営宣言など
◆都道府県・市区町村等、各自治体にて実施している健康宣言事業については、法人が所在する自治体にご確認ください。
2.健康宣言の重要性
健康経営宣言は、前述の通り、健康経営を推進する目的や目標、取り組み姿勢を社内外へ発信するものであるため、様々な取り組みの拠り所となります。また、健康経営推進にあたってはトップコミットメントの重要性が指摘されており、経営者の健康経営に対する意思表示でもあります。
大規模法人部門においては、健康経営宣言を単純に明文化し社内外へ発信するだけにとどまらず、健康経営の実施により期待する効果や具体的な取り組み等のつながりを整理し公開することや、推進目的と体制、成果指標の開示も求められます。

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3.健康経営宣言のメリット
企業が健康経営宣言をおこなうことは、企業が積極的に健康経営に取り組んでいることを表明していることの証明となります。3-1 人材の定着や採用における差別化が図れる
従業員にとっても、社外のステークホルダーにとっても健康経営の取り組みが認知される手段の第一歩として重要な位置づけです。従業員に対しての投資を意味する健康経営は、労働人口の減少や高齢者の増加などにより医療費が増大している現代社会で、大変重要なテーマとなっています。
健康経営宣言と合わせて、健康経営の取り組み内容を社内・外へPRすることで、帰属意識向上による人材の定着や、採用面における他社との差別化が図れます。
3-2 金融機関から融資の優遇を受けられる
また、協会けんぽの各支部の健康宣言事業への参加や、健康経営優良法人の認定を受けることで、運転資金融資の優遇が受けられるケースもあります。出所:北日本銀行 健康経営融資https://www.kitagin.co.jp/corporation/loan/kenkokeiei_loan/
出所:四国銀行 健康経営サポート融資https://www.shikokubank.co.jp/corporation/finance/kenkokeiei.html
健康経営に取り組むメリットはこちらを参照ください。
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4.健康宣言の発信方法
令和4年度健康経営度調査によると、健康宣言をしている企業の割合は回答企業の92%にものぼり、企業の多くが経営理念の中で健康宣言について明文化しています。さらに85.3%が会社全体の目的体制を社外公開しています。
出典元:経済産業省「令和3年度ヘルスケアサービス社会実装事業(需要環境整備等事業)調査報告書」
4-1 社内への発信
従業員への一方的な周知だけでなく、従業員自身の理解を促していくことも重要であるため、従業員同士での意見交換の促進や従業員自身が自社の健康経営に携わるなどの取組をするとより良いとされています。なお、令和6年度の中小規模部門の調査票によると、以下のような取り組みが推奨されています。
- 従業員に対する個人宛通知や文書回覧を通じて周知している
- 掲示板やイントラネットに掲示して従業員に周知している
- 従業員全員がいる場面(例:朝礼、全社会議等)での文書配布等により周知している
- 従業員の誰もが目にする場所に掲示して周知している
- 自社のHP等に公開していることを従業員に周知している
- 自社のFacebook等のSNSを通して発信していることを従業員に周知している
- 加入保険者のHPに公開されていることを従業員に周知している
4-2 社外への発信
社外のステークホルダー(株主・取引先・求職者等)に健康経営の取り組みについて理解を促すために、健康経営宣言(保険者の健康宣言)だけでなく、健康経営を通して解決したい経営課題や成果指標、推進体制なども併せて発信することが理想です。まずは、できるところから少しずつ取り組んでいくとよいでしょう。
なお、令和6年度の中小規模部門の調査票によると、以下のような取り組みが推奨されています。
- 事務所入口等、来訪者がいつでも閲覧できる場所に掲示している
- 社外向けに自社のHP等で公開している
- 社外向けに自社のFacebook等のSNSを通して発信している
- 加入保険者のHPで公開している
- 社外向けに各種メディアに掲載している
- 社外向けの求人広告、パンフレット等に掲載している
5.健康経営宣言策定のポイント
これから健康経営宣言を策定するにあたってのポイントをご紹介します。5-1 経営層の理解を促し、トップコミットメントを得る
健康経営は、短期的な費用対効果を得ることが難しく、腰を据えて長期間にわたり取り組む必要があります。
そのため、企業の長期ビジョンに照らしどのような方針で進めるべきか、また社内外からの支持を得るにはどのような発信方法がよいか、経営判断が必要となります。
健康経営を本質的な取り組みとしていくためにも、トップの強い思いを込めて、健康経営宣言をする必要があります。
健康経営を推進する担当者は、健康経営の推進が、中長期的な企業価値向上につながることや、CSRの観点からも重要であることについて、データなどを用いながら説明しましょう。経営層の関与は健康経営の成果に直結しますので、経営層を巻き込み、トップダウンで推進できる体制づくりを促していくことがポイントです。
5-2 自社の課題を把握する
そもそも健康経営によって解決したい課題があいまいであると、健康経営宣言も中身のないものになってしまいます。
そのため、しっかりと健康経営の取り組みを通じて解決したい自社の経営課題を特定し、その課題を解決するための姿勢や方針を明文化しましょう。
自社の課題を特定するには、健診結果やストレスチェックの分析や従業員サーベイなどを活用することで定量的に課題を把握することが可能です。
5-3 健康経営宣言として明文化する
自社の課題を把握できたら、いよいよ健康経営宣言の策定をします。
まずは、課題を分析したうえで自社が目指す状態を定義し、優先的に改善が必要な内容を具体的にしましましょう。
他社比較や産業医・保健師からの意見を参考にするとようでしょう。
【大規模部門 健康経営宣言事例】
各社各様に目指す姿や課題、そして課題解消に向けた取り組みなどをホームページ等で公開しています。
以下の3社は、いずれも2024年の健康経営銘柄やホワイト500に選定されている企業です。
【中小規模部門 健康経営宣言・健康宣言事例】
健康宣言の場合は、STEP別に宣言内容が定められています。
職場の健康づくりに取り組む環境を整える「STEP1」では、必ず「100%健診受診」を宣言するほか、①健診結果活用、②健康づくり 環境の整備、③食、④運動、⑤禁煙、⑥心の健康の6 項目に取り組むことを宣言します。
もう一歩進んで、安全衛生にも取り組む「STEP2」では、①健診・重症化予防、②健康管理・安全衛生活動、③メンタルヘルス対策、④過重労働防止、⑤感染症予防対策、⑥健康経営の6項目に取り組むことを宣言します。
以下の3社はいずれも2024年のブライト500に認定されている企業です。5-4 健康経営宣言・健康宣言を公開する
健康経営宣言・健康宣言の明文化が完了したら、社内外へ向けて公開しましょう。社外に対してはホームページや統合報告書への掲載にて公開する方法が一般的です。社内向けには、イントラネットや掲示版へのポスター掲示、トップメッセージを伝える機会の設定などが手段としてあげられます。5-5 宣言内容の浸透を図る
単純にホームページへ公開するだけでなく、浸透を図るために、宣言内容に基づいた施策の結果報告や、折あるごとに経営層からメッセージを発信するなど、反復継続的な活動を続けましょう6.まとめ
健康経営宣言とは、健康経営優良法人の認定制度に申請する際に必須の評価項目であると同時に、従業員への健康診断の促進やそのほか付随する健康経営施策を積極的に進めていくきっかけや拠り所となるものです。
企業には従業員の理解を促進する取り組みや社外への情報開示内容の充実がより一層求められていきます。一度策定して終わりではなく、取り組み状況を分析したうえで、毎年ブラッシュアップしていきましょう。
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