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なぜ今「労働時間規制緩和」が話題なのか?働き方の未来と企業が目指すべき方向性


なぜ今「労働時間規制緩和」が話題なのか?働き方の未来と企業が目指すべき方向性

「残業時間の上限規制が厳しすぎて、繁忙期の対応に困っている」

「柔軟な働き方を求める従業員が増えているが、現行制度では対応しきれない」

そんな声が企業の人事担当者から聞かれる一方で、「長時間労働が復活するのではないか」という不安も広がっています。

 

労働時間規制の緩和をめぐる議論が活発化しています。企業の生産性向上や人手不足への対応という期待がある一方、過労死リスクの増大や労働環境の悪化を懸念する声も強まっています。

 

本記事では、なぜ労働時間規制緩和が話題になっているのか、その背景から賛否両論の具体的な主張、そして企業が本当に目指すべき方向性まで、実践的な視点で詳しく解説します。


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1.なぜ今「労働時間規制緩和」が話題なのか?

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労働時間規制の緩和が注目を集めている背景には、2025年新政権の方針表明と働き方改革関連法の見直し時期が重なったことがあります。

 

1-1 現在の労働時間規制

日本では2019年施行の「働き方改革関連法」により、時間外労働に厳格な上限が定められています。

従業員として雇用される場合は、原則として月45時間・年360時間以内労働が基本で、特別な事情がある場合でも月100時間未満(休日労働を含む)、26か月平均80時間以内、年720時間以内という制限があります。

 

これらの上限を超えて働かせると罰則の対象となり、雇用する企業には厳しい法的責任が問われることになります。裁量労働制や高度プロフェッショナル制度といった例外制度も設けられていますが、その適用対象は現状ではごく一部の専門職に限られているのが実情です。

参考:時間外労働の上限規制(厚生労働省)


 

1-2 規制緩和の背景

2025年に入り、労働時間規制緩和が大きな議題として浮上した直接のきっかけは、高市早苗首相の指示が報道されたことにあります。高市首相は「私自身もワーク・ライフ・バランスという言葉を捨て、働いて働いて働いて働いて働いて参ります」と発言し、従来の働き方改革とは一線を画す姿勢を示しました。「働いて働いて働いて働いて働いて参ります」という部分は、2025年の流行語大賞にまで選ばれ、多方面で物議を醸すことになりました。

 

高市首相は「働きたい改革」としての方針を掲げており、デジタル化・副業解禁と合わせて労働制度改革を打ち出しました。2025年1021日には上野厚労相に対し、「心身の健康維持と従業員の選択を前提にした労働時間規制の緩和」を検討するよう正式に指示しています。

 

背景には深刻化する人手不足への危機感や、残業上限により副業を余儀なくされる人々の存在、「もっと働きたい」という声があることも指摘されています。また、2019年施行の働き方改革関連法の見直し時期に当たり、厚労省が約40年ぶりの大幅改正となる労基法改正案を公表したことも大きな要因です。

 

参考:労働時間規制の緩和は必要か(野村総合研究所)



2.労働時間規制緩和の具体的な内容と論点

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現在検討されている労働時間規制緩和の具体策は、大きく2つの方向性に分けられます。一つは「残業時間の上限ルールを柔軟化すること」、もう一つは「裁量労働制等の適用範囲を拡大すること」です。

前者は繁忙期の柔軟な対応や本人希望に応じた追加労働を認める仕組みを、後者は成果で評価する働き方をより多くの労働者に適用できるようにすることを想定しています。

 

最大の論点は、労働者の健康確保と柔軟な働き方実現との両立です。現行の残業時間上限は過労死認定基準と同水準であり、安易な引き上げは過労死ラインを超える働きを容認することになるため強い批判を招く恐れがあります。日本経済新聞社とテレビ東京の世論調査では緩和賛成64%・反対24%と賛成意見が上回ったとの結果も報道される一方、上野厚労相は「過労死ラインであることを踏まえて検討する必要がある」と慎重な姿勢を示したとされ、連合など労働組合からも強い反発を招いています。


3.規制緩和賛成派の主張(メリット)

規制緩和に賛成・推進する立場からは、主に企業の競争力強化と生産性向上という観点でメリットが主張されています。

  • 企業の競争力強化
  • 「生産性向上」「イノベーション創出」

 

3-1 企業の競争力強化

労働時間規制の緩和は労働力不足の緩和につながると期待されています。柔軟に働けるようになれば人手不足で対応できなかった業務をこなせるようになり、企業全体の生産量・サービス提供力が高まります。特に専門性の高い人材が、裁量労働制等の適用範囲を拡大することで時間の制約なく能力を発揮できれば、企業の競争力強化につながるとされています。

 

3-2 「生産性向上」「イノベーション創出」

労働時間の規制緩和は生産性の向上やイノベーション創出にもつながり得るとされています。働き方を柔軟化し労働者の自主性・裁量を高めることで、効率的な働き方や創意工夫が進むと期待できます。副業・兼業の推進も複数の仕事を通じた自己研鑽や新規ビジネス創出の可能性があり、個人のスキル向上とキャリア形成を後押しするとの見方もあります。


4.規制緩和慎重・反対派の主張(懸念点・デメリット) 

一方、規制緩和に対して慎重あるいは反対の立場からは、労働者の健康と生活を守る観点から深刻な懸念が指摘されています。

  • 長時間労働の助長と過労死リスク
  • 賃金体系への影響
  • 健康被害・メンタルヘルス



4-1 長時間労働の助長と過労死リスク

最大の懸念は、規制を緩めることで長時間労働が再び蔓延し、過労死のリスクが高まることです。

労働組合の連合は「これまでの長時間労働是正の取り組みに逆行するもので看過できない」と厳しく批判し、過労死遺族団体からも「緩和ではなく規制強化が必要」との声が上がっています。

 

現状でも外食産業では店長の約3割が週60時間以上働いている実態があり、こうした状況で規制を緩めれば「長時間労働の常態化を招く恐れがある」として、労働現場からは強い不安の声が出ています。

 


4-2 賃金体系への影響

労働時間規制緩和は賃金のあり方にも影響を及ぼす可能性が指摘されています。

裁量労働制の適用拡大により、「時間外手当として支払われていた賃金が支払われなくなる」ケースが増えれば、実質的な賃下げやサービス残業の横行につながりかねません。日本労働組合総連合会も労働時間規制緩和に対し、まずは「時間外労働を行わずとも安心して働き、生活することのできる賃金水準の確保」が先決だと主張しています。



4-3 健康被害・メンタルヘルス

長時間労働の増加は、肉体的な健康被害だけでなくメンタルヘルスへの悪影響も懸念されます。

過労による心身の不調や過労自殺が社会問題となって久しい中、労働時間規制は労働者の「命と健康」を守る最後の砦でもあります。

緩和を議論するのであれば同時に勤務間インターバル制度の義務化など、労働者の休息権を守る仕組みを強化することが不可欠です。過労を防止するには、企業による健康管理体制の整備や産業医・カウンセリングの充実など総合的な対策が求められます。

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5.結局「規制緩和=長時間労働容認」ではなく、ワークライフバランスを尊重

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賛否双方の主張がありますが、重要なのは「労働時間規制の緩和=長時間労働の容認」では決してないという点です。

高市首相の指示書にも「心身の健康維持」と「従業員の選択」という2つの前提条件が記されています。

 

今回の議論は決して「健康を犠牲にしてまで働かせる社会に戻す」ことが目的ではなく、働く人一人ひとりの事情や希望に応じて働き方の自由度を高めるための検討であることが求められています。企業にとっても従業員にとっても「健康」と「仕事の成果」の両立こそがこれからの労務管理の焦点になるでしょう

 

その意味で、首相が自ら「捨てる」と発言したワークライフバランスへの配慮は、発言と裏腹に今後ますます重要になっていくことが予想されます。たとえ規制が見直されることになっても、各企業は「長時間労働を是としない」社会的風潮を維持しつつ、従業員が安心して柔軟に働ける職場環境づくりに注力する必要があります。

 

 

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6.まとめ

「労働時間規制緩和」をめぐっては、柔軟な働き方への期待と、長時間労働復活への懸念がせめぎ合っています。

肝心なのは、労働者の健康維持に十分配慮しつつ、個々の事情に合わせ柔軟な働き方を希求していくことです。企業が真に目指すべきは、従業員一人ひとりが健康で充実した生活を送りながら、高いパフォーマンスを発揮できる職場環境の構築にあります。

 

そのためには、労働時間制度の見直しだけでなく、福利厚生制度の充実が欠かせません。従業員の健康を守りながら生産性を高めるには、健康・ヘルスケア支援、ワークライフバランス支援、メンタルヘルスケアなど、包括的な福利厚生制度の整備が重要です。従業員が安心して働ける環境があってこそ、柔軟な働き方も真に機能します。

 

労働時間規制の議論が進む今こそ、企業は福利厚生制度の見直しと充実を通じて、従業員の健康と生産性の両立を実現する好機と捉えるべきでしょう。

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著者情報

株式会社イーウェル ウェルナレ事務局

「人も、企業も、ウェルビーイングへ。」をテーマとして、企業の健康経営や福利厚生の支援を行う株式会社イーウェルが運営する、BtoB(人事総務向け)オウンドメディア「ウェルナレ」の編集部。
2021年7月にメディアリリース後、毎年60回以上、有名企業様とのコラボセミナーや官公庁の専門分野に特化した方を招いてのカンファレンス、大学教授による福利厚生勉強会の開催や専門家記事の掲載などを実施し、多くの方に好評いただいております。
人事部署や経営者が、会社のウェルビーイングを向上されるためのヒントを探して、日々活動しています。

運営会社:株式会社イーウェル

 

  


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