インフルエンザなどの予防接種は福利厚生で補助できる?経費の取り扱いから導入事例まで徹底解説
「従業員の健康管理のために各種予防接種の費用補助を福利厚生に取り入れたいが、経費として認められるのだろうか」
「インフルエンザの予防接種費用を会社で負担する場合、どのように経理処理すればいいのか」
そんな疑問をお持ちの人事・総務担当者の方も多いのではないでしょうか。
インフルエンザをはじめとする各種感染症の予防接種は、一定の条件を満たせば福利厚生費として経費計上することが可能です。従業員の健康を守りながら、適切な経理処理を行うことで、企業にとっても従業員にとってもメリットのある制度として運用できます。
本記事では、予防接種を福利厚生として導入する際の注意点から、経費計上の条件、具体的な仕訳の方法、また実際に導入している企業事例まで、実務に役立つ情報を詳しく解説します。
目次
1.インフルエンザなど感染症の予防接種は福利厚生に取り入れることはできる?

結論から言えば、インフルエンザをはじめとする各種予防接種の費用補助は福利厚生として取り入れることが可能です。
予防接種は健康保険の対象外であり、居住する地域や年齢で公的な補助がある場合もありますが、通常、大人の任意接種は全額自己負担となります。
たとえばインフルエンザの場合、医療機関によって異なりますが一般的に3,000円〜5,000円程度の費用がかかります。麻しん(はしか)任意接種が1回あたり約5,000円~12,000円(麻しん風しん混合の場合は約12,000円前後)です。
企業が従業員の予防接種費用を負担することで、従業員の経済的負担を軽減しながら、職場全体の感染症予防につなげることができます。
また、インフルエンザ・麻しん(はしか)以外にも、新型コロナウイルス、帯状疱疹、風しん、百日咳など、大人になってからでも接種が推奨されるワクチンは複数あります。こうした予防接種を包括的に福利厚生として提供している企業も増えています。
2025年度はインフルエンザの流行が例年になく早く、また爆発的に広がったため、従業員の家族、特に子どもが感染して家庭に広がったり、感染しなくても学級閉鎖等で自宅待機を余儀なくされたりと影響が大きくなりました。またインフルエンザと一緒に新型コロナ感染症、百日咳などの感染症にも罹るケースもニュースになりました。
こうした感染予防の対策は、今後も必要性が高まっていくことでしょう。
1-1 強制的にインフルエンザなどの予防接種を受けさせることはできない
福利厚生として予防接種を導入する際に注意すべき点は、従業員に接種を強制することはできないということです。
インフルエンザをはじめとする予防接種は「任意接種」であり、法的な強制力はありません。そのため、従業員に予防接種を強制的に受けさせる行為はハラスメントに該当する可能性があります。
予防接種には副反応のリスクがあり、発熱や倦怠感、接種部位の腫れなどが生じる場合があります。また、アレルギー体質の方や特定の持病を持つ方は、医師から予防接種を控えるよう指示されているケースもあります。こうした個別の事情に配慮し、あくまでも希望者が任意で接種できる環境を整えるにとどめることが重要です。
「予防接種をしないと他の従業員に迷惑がかかる」といった圧力をかける行為も避けなければなりません。
福利厚生として予防接種の機会を提供しつつ、接種するかどうかは従業員本人の判断に委ねる姿勢、またそれを尊重できる企業の風土が求められます。
2.インフルエンザなどの予防接種は経費にできる?
予防接種の費用は、一定の条件を満たせば「福利厚生費」として経費計上することができます。
ただし、条件を満たさない場合は従業員への「給与」とみなされ、源泉徴収の対象となるため注意が必要です。

2-1 経費として認められる場合
予防接種費用を福利厚生費として経費計上するには、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。
1つ目は「業務上の必要性があること」です。
予防接種が業務遂行上、従業員の健康管理に不可欠であると認められる必要があります。医療・介護従事者や接客業など、多くの人と接する機会が多い業種では、業務との関連性が高いと判断されやすくなります。
2つ目は「全従業員を対象としていること」です。
福利厚生は、正社員・契約社員・パート・アルバイトなど、すべての雇用形態の従業員が平等に利用できることが原則です。特定の役員や部署のみを対象とした場合、福利厚生費として認められません。なお、体調不良などで接種できない従業員がいても、接種の機会を平等に提供していれば要件を満たしていると判断されます。
3つ目は「社会通念上妥当な金額であること」です。
予防接種は健康保険適用外のため全額自己負担ですが、通常の医療機関で受ける場合、インフルエンザなら3,000円〜5,000円程度が相場です。この範囲内であれば、常識的な金額として認められます。
2-2 経費として認められない場合
以下のようなケースでは、予防接種費用は福利厚生費として認められず、「給与」として扱われる可能性があります。
まず、会社の指示ではなく従業員個人の判断で予防接種を受けた場合です。会社として全従業員に接種の機会を提供し、案内している必要がありますので、個人的に予防接種を受けた場合の費用まで、会社が経費で負担し、福利厚生費に経費計上することはできません。
次に、特定の役員や一部の従業員のみを対象とした場合です。合理的な基準なく対象者を限定すると、その人たちへの給与とみなされ、源泉徴収の対象となります。
なお、派遣社員や出向者については、自社で直接雇用する従業員ではないため、原則として自社の福利厚生費として計上することはできません。派遣元や出向元の会社と費用負担について事前に取り決めておく必要があります。
3.福利厚生でインフルエンザの予防接種を経費計上する場合の仕訳科目
3-1 勘定科目・仕訳科目は「福利厚生費」
予防接種費用を経費計上する場合、勘定科目は「福利厚生費」を使用します。
福利厚生費とは、従業員に対する給与以外のサービスの対価を処理する際に使う科目であり、従業員の生活や労働環境の向上を目的とした費用が該当します。
仕訳例として、従業員50名分のインフルエンザ予防接種費用200,000円を口座振込で支払った場合、「福利厚生費 200,000円 / 普通預金 200,000円」となります。
なお、予防接種は消費税の課税対象となる点に注意が必要です。健康保険適用の医療費は非課税ですが、予防接種は予防医療であり課税取引となります。
3-2 課税・非課税の最終判断は所轄税務署
予防接種費用を福利厚生費として処理できるかどうかの最終的な判断は、所轄の税務署が行います。業種や業務内容、対象者の範囲などによって判断が異なる場合があるため、不明な点がある場合は事前に税務署や税理士に相談することをおすすめします。あわせて読みたい
4.医療費の経費計上について注意ポイント
4-1 経費計上の条件を満たしていることを税務署に説明できるようにする
予防接種費用を福利厚生費として計上する場合、税務調査で指摘を受けた際に、経費計上の条件を満たしていることを説明できるよう準備しておくことが重要です。全従業員を対象としていること、社内規程で制度化していること、接種の案内を全従業員に行ったことなどを記録として残しておきましょう。
4-2 領収書や明細書は適切に保管
経費計上の根拠となる領収書や明細書は、適切に保管しておく必要があります。医療機関からの領収書、従業員への費用支給記録、接種者リストなどを整理し、税務調査に備えて一定期間保管しておきましょう。
5.企業が福利厚生でできるインフルエンザなどの予防接種への取り組み
予防接種を福利厚生として提供する方法は複数あります。自社の状況に合わせて、最適な施策を選択しましょう。
5-1 予防接種の費用を企業で負担する
もっとも一般的な方法は、従業員が医療機関で予防接種を受けた費用について、領収書の提出により企業が全額または一部負担(補助)をする方法です。従業員の個別の事情に配慮しやすく、接種の有無を本人の判断に委ねられるメリットがあります。
また、カフェテリアプランを導入している企業でも、予防接種費用に会社が負担して補助することが割合簡単にできます。
カフェテリアプランは、選択型福利厚生制度ともいわれる、福利厚生の一形態で、まず会社が従業員に既定のルールに基づき予めポイントを配分し、従業員はそのポイントを、設定されたメニューのな中から使いたいメニューを選んで申請することで補助を受ける仕組みです。
カフェテリアプランが使える仕組みが整っていれば、ポイントが使えるメニューに予防接種補助を追加することで、従業員が自分に配分されたポイントを使って接種費用分の申請することもできます。
また、カフェテリアプランのルールで定めておけば、従業員本人だけでなく家族分の予防接種費用も申請対象にできる場合があり、より手厚いサポートを実現できます。あわせて読みたい
5-2 職場で事業所内接種を実施する
医療機関と提携し、職場に医師や看護師を派遣してもらい、事業所内で集団接種を実施する方法もあります。従業員が個別に医療機関を訪れる手間が省け、業務時間内に接種を済ませられるため、接種率の向上につながります。
費用は予め企業が負担する補助分を引いた金額で設定し、さらに給料天引きにして費用徴収の手間をなくす企業も多いでしょう。ある程度の人数規模の企業で採用しやすい方法と言えます。
6.福利厚生でインフルエンザなどの予防接種を実施している企業例
6-1 三和建設株式会社
三和建設株式会社は、2017年から社員の提案制度によりインフルエンザ予防接種の費用補助を開始しました。2019年からは近隣の病院と提携して集団予防接種を導入し、費用を全額企業が負担する体制に移行。その結果、2023年には過去最多となる109名が接種を受け、従業員の健康意識が大きく向上しています。
6-2 ローム株式会社
ローム株式会社は、希望者全員にインフルエンザ予防接種を無償で提供しています。自己負担ゼロで接種できる環境を整えたことで、全従業員の約90%が接種するという高い接種率を達成。同社は「健康経営優良法人」に7年連続で認定されており、予防接種以外にも多様な健康経営施策を実施しています。
6-3 サイバーエージェント
サイバーエージェントでは、季節性インフルエンザの予防のため、社内で無料の予防接種を毎年実施しています。また、風しん流行の兆しがあった2018年には希望者を対象に風しんワクチン接種費用を会社負担とし、2013年には社内でMRワクチン(麻しん風しん混合ワクチン)の集団接種を行うなど、状況に応じて柔軟な対応を行っています。
7.まとめ
インフルエンザをはじめとする予防接種は、一定の条件を満たせば福利厚生費として経費計上することが可能です。全従業員を対象とし、社会通念上妥当な金額であれば、従業員の健康管理と適切な経理処理を両立できます。
2025年度は例年よりもインフルエンザの流行が早く、多くの子育て中の社員が学校や保育園・幼稚園の休校・休園により、仕事との両立が困難な局面に直面しました。こうした状況を踏まえると、企業には柔軟な働き方を可能にする制度や休暇制度の充実に加え、予防接種の早期実施についても検討していく必要があるでしょう。
従業員の健康を守りながら生産性を高めるには、予防接種の補助だけでなく、包括的な福利厚生制度の整備が欠かせません。従業員が安心して働ける環境があってこそ、企業の持続的な成長につながります。
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