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2024/03/01 (公開:2023/05/24)

日本の長時間労働が問題視されている理由とは? 企業が知っておくべき3つのリスクを解説


日本の長時間労働が問題視されている理由とは? 企業が知っておくべき3つのリスクを解説

突然ですが、皆さんの先週の時間外労働は何時間でしたか?

もしマネージャー層の方であれば、先月の自部署の時間外労働の平均は何時間でしたか?
 

ほんの数時間?それとも10時間どころかもっと残業していますか?日本では、欧州諸国と比較して時間外労働(40時間/週以上)者の構成割合が高く、特に49時間/週以上働いている労働者の割合が高いとされています。なぜ長時間労働者の割合が多いのでしょうか。日本の長時間労働の問題点と現状、解決策までを一気に見ていきましょう。

         

1.注目されるtwitter社の長時間労働


2022年、Twitter社を買収して新CEOに就任したイーロン・マスク氏ですが、いきなりTwitter社員に長時間労働することを指示したとして話題になりました。Twitter社員に対するメール内で、「従業員は週に少なくとも40 時間オフィスにいること」を求める新ルールを施行するとし、さらにスピーチでは「従業員は、週80時間の勤務に備える必要がある。」と言ったとされます。

 

これがどんな状態かというと、労働時間が週40時間なら平日換算1日8時間労働ですが、週80時間だと倍の16時間働かなくてはなりません。土日を入れても1日11時間以上です。

 

週80時間労働が、かなりきつい勤務であることは、働いておられる方なら即座に想像がつくと思いますが、では、感覚値ではなく、なぜこの長時間労働が問題なのか、説明ができますか。以下で分解して問題点を見ていきます。

              

2.日本の時間外労働の法的規定を確認


まず、日本の時間外労働は、法律上どのように規定されているか基本を押さえておきましょう。日本では、労働基準法32条で「使用者は、原則として、1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけない」と規定されています。

 

労働基準法第36条の定めにより、時間外労働協定(いわゆる36協定)を労使で結ぶ場合でも、「残業時間の上限は、原則として月45時間・年360時間とし、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできないとされています。

 

さらに特別な事情を考慮しても、残業年720時間、複数月平均80時間、月100時間の残業を超えると罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)の対象となります。つまり、実際に週80時間労働をさせた場合、半分の週40時間が時間外労働になりますから、4週間の残業時間は120時間。月100時間の上限に抵触し即刻アウトということになります。

 

Twitter社に関する報道は極端としても、日本ではいまだに長時間労働が問題になるケースが後を絶ちません。法律で規制されているのは、逆に「規制しないとこれ以上の長時間労働が発生する」証左でもあります。では、なぜ長時間労働が問題なのでしょうか。次の章で解説していきます。


             

3.長時間労働が続くとどうなる?企業リスクを3段階に分けて解説!



長時間労働が続けば、労働者の身心の負担が増え、また回復する力も落ちていくことから、健康問題が発生することは、誰にでも分かりますね。従業員本人の健康問題だけでなく、長時間労働による健康問題がどのように企業に影響を与えるか、段階を追ってみてみましょう。



          

3-1 リスク① プレゼンティーズムによる生産性の損失

まず、一番短期的に影響が出る部分として、長時間労働を続ける社員のパフォーマンスが落ちるということがあります。これが「プレゼンティーズム」による悪影響です。

「プレゼンティーズム(presenteeism)」とは、日本語では「疾病就業」と訳され、「従業員が職場に出勤はしているものの、何らかの健康問題によって業務の能率が落ちている状況(つまり企業や組織の側から見れば間接的ではあるが、健康問題のコストが生じている状態)を指して」いるとされます。

引用元:平成29年7月厚生労働省保険局「データヘルス・健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン」パンフレットP21


メンタルヘルス不調、アレルギー、偏頭痛、生活習慣病などが例として挙げられていますが、長時間労働での睡眠不足、疲労がたまった状態で業務の能率が落ちている状況もこのプレゼンティーズムです。

心身ともに健康問題のない場合のパフォーマンスに比べると、明らかに質・量が劣り、生産性が落ちます。

 

企業の健康関連コスト全体のうち、医療費の占める割合は15.7%なのに、このプレゼンティーズムの割合はなんと77.9%にもなるという厚生労働局保険局のデータもあります(上記 平成29年7月厚生労働省保険局「データヘルス・健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン」パンフレットより)。

 

もちろん77.9%のうち、全てが長時間労働によるものではありませんが、休養が十分に取れない長時間労働下では、ちょっとした不調も長引いたり悪化したりすることもあるため、その影響は大きいと言えるでしょう。

            

3-2 リスク② アブセンティーズムによる採用費・人件費の増大

プレゼンティーズムの状態を放置すると、だんだんに「アブセンティーズム」へ移行します。「アブセンティーズム(absenteeism)」は、英語の「absent(欠勤、欠席)」を語源とし、心身の不調により、遅刻や早退、欠勤や休職など、勤務自体が行えない状態を指します。

プレゼンティーズムではパフォーマンスは落ちても勤務はしているのに比べ、アブセンティーズムになると、その時間は全く勤務自体をしないため、目に見えて影響が発生します。

長時間労働のせいでアブセンティーズムの状態である従業員がいる場合には、その分のマンパワーが不足するため、他の従業員の業務量が増加したり、カバーに回った従業員までが長時間労働になり、アブセンティーズムの連鎖を引き起こしたりすることも考えられます。

また、長期休職からの離職リスクは高く、少し前のデータですが、病気休職制度利用者の復帰率は51.9%で、約2人に1人は退職してしまっていることから、そこまで進んでしまった場合、新たな人材の確保に採用コストが必要となります。

出典元:独立行政法人労働政策研究・研修機構 ~「メンタルヘルス、私傷病などの治療と職業生活の両立支援に関する調査」調査結果~


さらに、長時間労働が発生しているような職場だと、採用した人材も定着しづらく、さらなるコスト増も考えられます。


   

3-3 リスク③ 過労死・労災による企業ブランドの毀損

長時間労働は、究極、過労死や、メンタルへの影響による自殺に繋がりかねないのも、報道で知られているところです。

下記の図を見ていただくと、労災認定された案件で、脳・心臓疾患など、過労死につながる重大な疾患発生率は、残業が月80時間を超えるといきなり増えて来ます。「過労死ラインは80時間」といわれる所以です。

精神疾患件数は、時間外労働時間が少なくても発生していますが、残業が月40時間未満の場合の自殺率は13.5%(令和3年)ですが、40時間を超えた場合は令和2年、3年とも、どのレンジでも17%を超えており、自殺される方の割合が高くなっていることが分かります。

■脳・心臓疾患の時間外労働時間別 労災補償支給決定件数

時間外労働

(1ヵ月平均)

令和2年(2020年)度 

令和3年(2021年)度 

合計※1

うち死亡者

死亡割合

合計※1

うち死亡者

死亡割合

   ~45時間

0

0

0

0

0

0

 45~60時間

0

0

0

0

0

0

 60~80時間

17

5

29.4%

29

11

37.9%

 80~100時間

79

28

35.4%

63

22

34.9%

 100~120時間

45

16

35.6%

38

12

31.6%

 120~140時間

19

7

36.8%

10

2

20.0%

 140~160時間

12

2

16.7%

7

2

28.6%

 160時間~

6

2

33.3%

9

3

33.3%

合計

194

67

34.5%

172

57

33.1%

※1:脳・心臓疾患の発症前1か月間の時間外労働時間を評価して支給決定された件数と、発症前2か月間ないし6か月間における1か月平均時間外労働時間を評価して支給決定された件数を合計

※以下のデータより編集部が抽出・作成

出典元:厚生労働省 令和3年度「過労死等の労災補償状況」別添資料1 脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況

 

■精神障害の時間外労働時間別 労災補償支給決定件数

時間外労働

(1ヵ月平均)

令和2年(2020年)度

令和3(2021年)年度 

件数※2

うち自殺者

自殺割合

件数※2

うち自殺者

自殺割合

  ~40時間

108

10

9.3%

104

14

13.5%

 40~60時間

45

11

24.4%

24

6

25.0%

 60~80時間

26

13

50.0%

38

8

21.1%

 80~100時間

28

12

42.9%

44

14

31.8%

 100~120時間

56

10

17.9%

41

7

17.1%

 120~140時間

24

6

25.0%

28

7

25.0%

 140~160時間

12

6

50.0%

10

3

30.0%

 160時間~

30

6

20.0%

35

6

17.1%

合計

608

81

13.3%

629

79

12.6%

※2:精神障害発症原因の心理的負荷の評価期間における1か月平均の時間外労働時間数を算出し、区分したもの

※以下のデータより編集部が抽出・作成 

出典元:厚生労働省 令和3年度「過労死等の労災補償状況」別添資料2 精神障害に関する事案の労災補償状況


このような労働災害事案が発生し、それが長時間労働の放置によるものなど労働基準関連法に違反したものであった場合は、厚生労働省労働基準局監督課により企業名や違反内容が公表されます。違反企業としての公表を受けることにより、企業の社会的地位は毀損(きそん)されます。

重大事案だった場合、最悪マスコミの報道で「ブラック企業」との烙印が押され、不買などの社会的制裁、企業間取引停止など、大きな不利益を被ることになりかねません。このような大きなリスクを抱える前に、長時間労働につき、企業として早めに対処することが大切です。

        

4.日本で長時間労働が常態化している原因とは?現状と分析



実際に労働基準監督署から、「長時間労働が疑われる事業場」として、令和3年(2021年)度は32,025事業所が監督指導を受けています。

出典元:厚生労働省「長時間労働が疑われる事業場に対する令和3年度の監督指導結果を公表します」

令和元年(2019年)度は32,981事業場、令和2年(2020年)度は24,042事業場でした。

令和2年度にはコロナ禍での緊急事態宣言などでやや減少したとはいえ、結局令和3年度で前のレベルまで件数が戻っています。

これだけ多くの企業が、毎年労働基準局の指導を受けています。なぜ長時間労働がなくならないのか?原因を整理していきましょう。 

          

4-1 原因① 組織に問題がある場合:人員不足、業務量が多い

労働時間が増えてしまう原因としては、とにかく人手が足りない場合が多くを占めています。人手が圧倒的に不足しており、想定していた業務を勤務時間内に終わらせることができず、結果的に長時間労働になる場合です。


日本では少子高齢化に従い、人手不足が顕著来なって影響を及ぼしています。帝国データバンクの22年度調査では、正社員の人手が不足している企業の割合が45.9%で、前年比7.0ポイント/前々年比17.3ポイントも増加しているという結果が出ています。非正社員も27.3%の企業が不足と回答しています。

出典元:TDB Economic Online「人手不足に対する企業の動向調査(2022年4月)」


そもそも人手が足りない職場は、長時間労働になりやすく、誰か一人が体調不良となると、残ったメンバーはさらに長時間労働をして業務をこなさざるを得ない悪循環を引き起こすこともあり得ます。

          

4-2 原因② 人に問題がある場合:マネジメント不足

管理者が部下の業務量や労働時間を把握していないなどのマネジメントの不足も、長時間労働の原因です。人手不足の問題ともつながりますが、人が足らず、管理者がプレイングマネージャーとして業務している場合は、特にマネジメントをする工数が減少します。

経済産業省委託事業として株式会社日本経済新聞社が行った平成28年度の調査では、「自社の長時間労働の原因について、あなたはどのように考えていますか。」という質問に対し、「管理職(ミドルマネージャー)の意識・マネジメント不足」という回答が最多の44.2%でした。

出典元:株式会社日本経済新聞社「平成28年度産業経済研究委託事業(働き方改革に関する企業の実態調査)報告書


業務のマネジメントができていないと、自部署の処理範囲を超えた業務を抱え込んで気づかないこともありますし、部下からSOSが上がるまで長時間労働が継続します。

また「仕事ができる」と言われる人のところには、「できる人に任せたい」として業務が集中する傾向があるため、長時間労働をする人が偏っている場合も、管理者がなかなか業務調整に踏み込めない場合があります。

           

4-3 原因③ 企業文化に問題がある場合:長時間労働をよしとする企業文化

「いつも残業してがんばっているね」

こんな言葉を周りで聞くことはないでしょうか?

 

日本では長く、「滅私奉公」型の正社員労働が標準とされ、年功序列により、結果ではなくそのプロセスを重視する評価を行ってきました。

 

それにより、ワークライフバランスを重視し、集中して業務を時間内にこなし、定時でさっと帰る社員より、効率はともかく、残業して長時間会社にいる社員を「がんばっている」と評価してしまう企業文化が残っている場合があります。

 

平成30年度の内閣府委託事業「企業等における仕事と生活の調和に関する調査研究報告書」によると、「長く働くことよりも、効率よく働くことがよしとされる」という設問に対し、「あてはまる」「まああてはまる」という回答は、正社員男性で32%、正社員女性で33.9%です。残りの65%以上の従業員は、長く働くことも良しとされている、と考えていることになります。

出典元:内閣府委託事業「企業等における仕事と生活の調和に関する調査研究報告書(平成31年3月)」Ⅳ.個人アンケート調査結果(PDF形式:2.67MB) P198



5.テレワークは見直されつつある?



イーロン・マスク氏に話を戻すと、マスク氏はテレワークについても否定的な立場に立っています。Twitter社ではなく、もともとCEOだったTesla(テスラ)社でのことですが、「テレワークを希望する人は、最低でも(あくまで「最低」だ)週40時間、オフィスにいるか、あるいはTeslaを去るかしなければならない」と発言したと報道されています。

 

週40時間は、すでに触れたとおり、日本の1週間の労働時間上限(時間内)ですので、最低週40時間オフィスにいるということは、実質的にテレワーク制度の撤廃とも取れます。近年コロナ下において増加してきたテレワークですが、長時間労働の観点からはどうでしょうか。確かに労働時間管理がしにくい側面から、テレワークでの長時間労働を懸念する声はありました。

 

テレワークが多くの企業で採用される前、2015年の調査ですが、テレワークのデメリット(複数回答)として「仕事と仕事以外の切り分けが難しい(38.3%)」の次に「長時間労働になりやすい(21.1%)」が挙がっていました。

 

これを引用する2019年厚生労働省「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」も、「長時間労働等を行う労働者への注意喚起」という項目で長時間労働につながりやすい点に注意を促しています。

出典元:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「情報通信機器を利用した多様な働き方の実態に関する調査結果」P51
出典元:厚生労働省「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」


ただ、令和2年国土交通省実施の調査結果を見ると、テレワークを実施してよかった点の2位は「時間の融通が利くので、時間を有効に使えた(59.4%)」となっており、また労働時間に関してもテレワーク実施により労働時間が減った労働者は約35%で、増えた労働者26%より多くなっています。実際には、テレワークを活用することで、長時間労働にも一定の削減効果があると言えそうです。

出典元:国土交通省「令和2年度テレワーク人口実態調査結果」 33頁


それでは、マスク氏のように、テレワークを見直した企業は多いのでしょうか。国土交通省のテレワーク人口実態調査結果の令和3年度版では、企業に雇用される労働者中、テレワークをしている労働者は、2020年の23%からさらに増えて27%となっています。

出典元:国土交通省「令和3年度テレワーク人口実態調査結果」 11頁

テレワークには課題もありますが、長時間労働の抑制には有効であり、かつテレワーカーの割合も増加傾向にあるため、うまく活用し続けていくべき制度だと言えます。
    

        

6.長時間労働への対策



ここまで、長時間労働の問題点と、その原因を見てきました。また、テレワーク等でもうまく活用すれば長時間労働を減らせることが分かりました。ここからはさらに踏み込んで、企業全体でどうしたら長時間労働を削減できるか、考えていきます。具体的には、4章の長時間労働の原因について、ひとつずつ対策をするイメージです。

          

6-1 対策① トップからのメッセージ発信

長時間労働をよしとする企業文化をなくすのが、まず企業で対策するのには手っ取り早いでしょう。企業文化は、長い時間かけて醸成して来たものですから、一朝一夕には変わらないと思われがちですが、年功序列が残っている企業体質だからこそ、トップが明確な方針を打ち出し、継続的に発信していくことで変わりやすいと捉えることもできます。

 

「長く働くことよりも、効率よく働くことを評価する」ということをトップからはっきりと打ち出し、定期的に続けて発信しましょう。そして、その方針に沿って効率化を進め残業削減をしたメンバーを評価することにより、社内にメリットを提示してください。

 

また、残業しないで定時退社するように促しつつ、それをトップが実践してみせることも重要です。声掛けだけしてトップの行動が伴わないのでは、「形だけなんだな」「真に受けて実際に定時退社したら評価が下がるのでは」という誤ったメッセージが従業員に伝わりかねません。トップからのメッセージは、明確に分かりやすく、継続的に行い、実際に発信者が実践することが大切です。 

           

6-2 対策② 管理職のマネジメント力をアップする研修

長時間労働の原因を「管理職(ミドルマネージャー)の意識・マネジメント不足」だと考えている従業員が多いのは、前述したとおりです。とはいえ管理職にも得意不得意や経験値の差があります。また、視点が違うため、一(いち)プレイヤーとして成績が良かったとしても、マネジメント能力が高いことには直接結びつきません。

 

管理職のマネジメント力をアップするため、中間管理職の研修を行い、底上げを図ることは、全従業員を対象に労働時間削減について研修するよりもハードルが低いのではないでしょうか。その際、部下をマネジメントするスキルだけでなく、コミュニケーションスキル、特に傾聴力を磨くことも、従業員の状況を把握し、見極めるためには必要です。

 

中間管理層が的確なマネジメントを行い、全体業務を差配していけるよう、ぜひ総合的な研修を検討してください。
 

6-3 対策③ 労働時間、業務の見える化や共有

 

最後の対策は、とにかく人手が足りないことへの対応です。人手が足りないなら補充すればいいという単純な話ではないのはお分かりと思います。簡単に補充ができるようなら、人手不足にはなっていないでしょう。

 

ここでできる最大の対策は、誰が仕事を抱えているかの実態把握です。マネジメントにもつながる話ですが、誰が仕事を抱えていてどのくらい長時間労働をしているのかが分からないと、まずすべき対策が分かりません。

 

Aさんばかりが長時間労働になっているのであれば、Aさん以外でもできる業務がないか、それは他のメンバーで分担し、Aさんの業務が減らせないか検討ができます。これをすることで、Aさんがプレゼンティーズムやアブセンティーズムになることの予防、またもしなってしまった場合の影響を少なくすることができます。

 

メンバー全員の残業が多いなら、会社として他部署で仕事を引き取れないか、そもそも受託している業務が会社規模に比して大きすぎるのではないか、なども俎上に載せていくべきです。

 

これにはまず、正確な勤怠を把握すること、サービス残業など隠れて行っている実態がないか調査することになります。ただ、ここで注意したいのは、トップからの「長く働くことよりも、効率よく働くことを評価する」というメッセージばかりが強く先行しすぎている場合です。

 

従業員が「とにかく残業していない方が評価される」という認識になってしまっていると、残業を隠して少なく申告するケースが発生し、正確な実態が把握できません。隠された分の業務は、結局長時間労働の火種となってくすぶり、業務整理できたと思った頃に再燃する可能性が高いです。

 

上司から「とにかく残業を削減しろ」と言われるだけだと、業務が終わっていないのにタイムカードを押し、また仕事に戻るということを考えたりします。結果、長時間労働は是正されていないのに、外見上は目標達成になり、大きな事故や担当者の休職などが発生するまで、上司が気がつかないない状態になることは、やはり避けたいですね。

 

トップメッセージを明確に打ち出すという本章6-1の内容とのバランスが難しいですが、全体方針は維持しつつ、部分では効率化できていない業務を洗い出し改善することを主眼とした調査を進めるのがいいのではないでしょうか。


        

7.まとめ


長時間労働を取り巻く現状、課題、対策までを見てきました。少子高齢化している日本の社会では、この先ますます人手の確保が難しくなり、一人当たりの業務量が増えることが予想される一方、獲得した人材を確保し続けるために、生産性の低下を引き起こす長時間労働は是正し、業務を効率化していく必要があります。

 

人事や経営に携わる方は対策を進めるために、従業員が長時間労働で疲弊しきってしまう前に、早めの原因特定を行いましょう。

 

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著者情報

株式会社イーウェル ウェルナレ事務局

「人も、企業も、ウェルビーイングへ。」をテーマとして、企業の健康経営や福利厚生の支援を行う株式会社イーウェルが運営する、BtoB(人事総務向け)オウンドメディア「ウェルナレ」の編集部。
2021年7月にメディアリリース後、毎年60回以上、有名企業様とのコラボセミナーや官公庁の専門分野に特化した方を招いてのカンファレンス、大学教授による福利厚生勉強会の開催や専門家記事の掲載などを実施し、多くの方に好評いただいております。
人事部署や経営者が、会社のウェルビーイングを向上されるためのヒントを探して、日々活動しています。

 


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