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2024/03/01 (公開:2023/05/17)

働き方改革で残業時間はどう変わるのか?規制によって予想される問題について


働き方改革で残業時間はどう変わるのか?規制によって予想される問題について

「働き方改革の残業時間の規制って何?」

「残業規制によって何か問題は起きないの?」

上記の疑問を抱く経営者も多いことでしょう。2019年から始まる残業規制により、労働時間を厳しく管理しなければならなくなりました。

 

本記事では、働き方改革関連法で施行された残業規制について、押さえておきたいポイントや企業が行うべき施策を解説します。従業員の労働管理で不安や疑問がある人は、ぜひ最後までご覧ください。

 

         

1.働き方改革関連法で残業時間の上限規制はどう変わる?




働き方改革関連法によって、残業時間に上限が設けられました。具体的な上限は以下の通りです。[注1]

 

 残業時間の上限(原則)

 45時間/月

 360時間/年

臨時の事情で労使が合意する場合でも、
 超えてはいけない残業時間

 月100時間

 複数月平均80時間

 年720時間

 月45時間を超えて良いのは年6ヵ月まで

 

違反時は罰則を受ける可能性もあるため、注意が必要です。詳しい上限規制や罰則は以下で解説します。

[注1]厚生労働省「時間外労働の上限規制」


   

1-1 残業時間の上限規制は2019年から?

残業時間の上限規制は2019年4月から施行されています。ただし、業種によっては以下の猶予期間が設けられています。[注1]

 

該当業種や企業

上限規制の実施開始時期

中小企業

2020年4月以降

建設事業

自動車運転業務

医師

砂糖製造業

2024年4月以降

上記を除く全ての企業

2019年4月以降

 

政府による働き方改革推進により、多くの企業を対象に、2019年から残業時間の上限規制が実施されました。業務内容によって月45時間を超える恐れがある場合には、36協定の特別条項を結ぶことで上限を超えた残業が可能です。

 

月45時間を超える場合は、通常予見できず、やむを得ず残業をしなければならない理由を具体的に定める必要があります。「業務上必要なため」などどのケースにでも当てはまるような理由は、残業の常態化を招く恐れがあるため認められません。

 

ただし、36協定を結んでも、月45時間を超える残業は年6ヵ月までです。

 

1-2 違反時の罰則はどうなる?

月45時間を超えた残業や36協定の範囲を超える残業は、労働基準法違反です。上限を超えて従業員を働かせてしまうと、以下の罰則を受けてしまう可能性があるので注意しましょう。[注1]

 

  • 6ヶ月以下の懲役
  • 30万円以下の罰金

 

新規事業に取り組んでいる企業や成長産業においては、どうしても残業時間が増えてしまうこともあるかもしれません。ですが、従業員の健康を損なう恐れがあるだけでなく、法律違反の結果、罰則を受ける可能性がある長時間労働は避けるべきでしょう。



2.具体的な残業(時間外労働)について


残業時間には、法定内残業と法定外残業の2種類があります。残業は労働基準法に定められており、適切に把握しなければなりません。以下では、時間外労働の具体的な内容を詳しく解説します。

 

          

2-1 法定内残業

法定内残業とは、所定労働時間を超えるものの法定労働時間を超えない範囲での残業のことです。

 

労働基準法では、1日の労働時間は8時間と定められています。一方で、所定労働時間とは出勤から退勤までの休憩時間を除く労働時間であり、企業が任意で定めています。つまり、法定労働時間と所定労働時間は必ずしも一致するとは限りません。

 

仮に所定労働時間が7時間だとすると、1時間までの残業は法定内残業になります。法定内残業に対しては、割増賃金の支払い義務はありません。
   

 

2-2 法定外残業

 

法定外残業とは、1日の労働時間のうち8時間を超える分の労働時間を指します。労働基準法では1日8時間を超えた労働は法定外残業となり、割増賃金の支払いが必要です。

 

割増賃金の額は、契約上の賃金の25%です。労働時間が月60時間を超える場合には、超過分に50%の割増が必要です。大企業ではすでに適用しており、中小企業にも2023年4月から適用が始まりました。[注2]

 

過度の残業は従業員の健康を損なうだけでなく、企業のコスト増大の要因となるので、コストコントロールの観点からも残業は減らさなければなりません。 

 

[注2]厚生労働省「月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」



 

3.残業時間の規制によってどんな問題が発生する?



一見ポジティブな施策に見える残業規制ですが、施行によって以下の思わぬ問題が発生する可能性が考えられます。

 

  • 残業代の削減で給料が少なくなることも
  • 隠れて行うサービス残業が増えてくる
  • 業務量が不均等になる

 残業規制は従業員にとって喜ばしい政策に見えますが、上記の問題に注意して運用しないと逆に従業員の不満を溜めてしまう恐れがあります。今後どのような問題が起きるのか、あらかじめ確認しておきましょう。3つの問題のポイントを以下で解説します。


          

3-1 残業代の削減で給料が少なくなることも

残業規制により、従業員に支払われる給料が少なくなる可能性があります。従業員の中には、給料に占める残業代の割合が多かった方もいるでしょう。ところが、残業時間の規制によりいわゆる「青天井」の長時間の労働ができなくなりました。

 

労働時間の規制ができたことで、所定労働時間内に終業するよう指導されます。一方で、従業員は業務効率化を求められながら、業務量自体は減らない場合もあります。また、会社の意向で業務効率化に努めた結果、短時間で同じアウトプットを出しても受け取る給料が少なくなるため、モチベーションの維持が難しくなる可能性があります。

 

各企業はこうした問題に対応するため、成果に対してインセンティブを与える成果主義重視の評価制度の整備が必要になるでしょう。

 

            

3-2 隠れて行うサービス残業が増えてくる

先述の通り、残業時間が減っても業務量が減らない場合、終業後や昼休みにサービス残業をする従業員が増えてしまう可能性があります。

 

サービス残業は労働基準法にて違法行為であり、罰則に処される可能性があります。さらに、サービス残業が常態化すると残業規制そのものが形骸化する恐れもあるでしょう。それでは残業規制はもとより、働き方改革も意味をなさず、会社の体質を改善することはできません。

 

残業規制を適用する際は、各部署の業務整理や棚卸しなど、残業規制を運用する前に社内でしっかりと調整する必要があります。

  

3-3 業務量が不均等になる



残業規制により、すべての社員が所定労働時間を守って業務を終える必要があります。しかし、どの従業員も同じ生産性で仕事を処理できるわけではないため、アウトプットには差があるでしょう。

 

これまでは残業によって帳尻を合わせられていた部分があるかもしれません。しかし、残業規制によって業務時間が限られると、生産性の高い社員にそうでない社員の仕事が回ってくる可能性があります。

 

業務量の均一化など従業員に不満を感じさせないための対策を、検討する必要があるでしょう。


        

4.企業が実施するべき施策とは



残業規制に従うだけでは職場環境の改善には不十分であることがわかりました。上手に働き方改革を進めるには、以下のポイントが効果的でしょう。

 

  • 従業員の労働時間を管理把握すること
  • ツールやシステムを利用して残業代削減に取り組むこと

 以下で詳細を解説するので、人事・労務のご担当者はぜひご確認ください。


   

4-1 従業員の労働時間を管理把握すること

 

残業規制の適用により、従業員の労働時間の管理がより重要性を増します。労働時間をしっかり管理しないと、法律に抵触する可能性がこれまでより高くなるためです。労働時間の管理把握で必要なポイントは以下のとおりです。

 

  • 客観的な記録で把握する
  • 残業時間発生時には上長の承認を必要とする

従業員の労働時間を的確に把握するには、客観的なデータによる管理が必要でしょう。自己申告で管理する方法では、サービス残業を誘発しかねません。正確な労働時間を把握するためにも、データ取得ができる方法で管理をしましょう。

 

残業の際は上長による承認を必要とさせるフロー作りもおすすめです。社員が自己判断で残業するのではなく、上長の確認を通すことで不要な残業を減らせます。

 

   

4-2 ツールやシステムを利用して残業代削減に取り組むこと

 

労働時間の管理把握には、ツールやシステムを使うのがおすすめです。ICカードを使った記録やパソコンのログイン時間などで、勤怠の記録ができるシステムがあります。

 

ツールを上手く活用できれば、従業員の労働時間を把握でき、残業時間のコントロールが可能です。また、業務管理ツールを使うことで、効率よく業務を進められるでしょう。ITの力を利用することで、業務の効率化および残業時間・残業代の削減が期待できます。



5.残業時間以外に義務付けられた働き方改革関連法と罰則は?


本記事の1章と2章で、残業時間の上限規制や具体的な時間外労働の詳細について説明しました。働き方改革関連法案では、残業時間の上限規制の他にも、罰則規定が設けられた項目があります。本章では以下3つの項目について解説します。

 

  ①最低5日の年次有給休暇取得の義務

  ②フレックスタイム制に関する義務違反

  ③産業医による面接指導の義務化

 

5-1 最低5日の年次有給休暇取得の義務



労働基準法では、従業員の心身のリフレッシュを図ることを目的として、一定の要件を満たす従業員に対し、毎年一定日数の年次有給休暇を与えることを規定しています。年次有給休暇は、原則として、従業員が請求する時季に与えることとされていますが、職場への配慮やためらい等の理由から取得率が低調だったため、年次有給休暇の取得促進が課題となっていました。

 

そのため、労働基準法が改正され、2019年4月から、全ての企業において、年10日以上の年次有給休暇が付与される従業員に対して、年次有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定して取得させることが必要となりました。

 

これに違反した場合は、「6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金」という罰則が科されることとなりました。また、使用者は、時季や日数及び基準日を労働者ごとに明らかにした『年次有給休暇管理簿』を作成し、当該年休を与えた期間中及び当該期間の満了後3年間保存しなければならなくなりました。

出典元:厚生労働省「働き方改革関連法に関するハンドブック」
 

5-2 フレックスタイム制に関する義務違反



2019年4月の働き方改革関連法案の改定では、フレックスタイム制に関する法改正も行われました。フレックスタイム制は、一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、従業員が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることのできる制度です。従業員は仕事と生活の調和を図りながら効率的に働くことができるのがメリットとなります。

 

今回の改正によって、フレックスタイム制の清算期間の上限が3か月となりました。これまでは、1か月以内の清算期間における実労働時間が、あらかじめ定めた総労働時間を超過した場合には、超過した時間について割増賃金を支払う必要がありました。

 

逆に実労働時間が総労働時間に達しない場合には、欠勤勤扱いとなり賃金が控除されるか、仕事を早く終わらせることができる場合でも、欠勤扱いとならないようにするため総労働時間に達するまでは労働しなければならない、といった状況もありました。

 

清算期間を延長することによって、2か月、3か月といった期間の総労働時間の範囲内で、労働者の都合に応じた労働時間の調整が可能となりました。これに違反した場合は、「6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金」という罰則が科されることとなりました。


出典元:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「フレックスタイム制のわかりやすい解 説&導入の手引き」
 

5-3 産業医による面接指導の義務化



長時間労働やメンタルヘルス不調などにより、健康リスクが高い状況にある従業員を見逃さないため、産業医による面接指導が確実に実施されるようにし、従業員の健康管理が強化されるよう、長時間労働者に対する面接指導等の実施が義務化されました。実施の流れは以下の通りです。

 

 ①事業者が管理監督者や裁量労働制の適用者を含めた全ての従業員の労働時間の状況を把握

   ↓

 ②事業者が産業医に時間外・休日労働時間が月80時間超の従業員の情報を提供

  ※ここで産業医が情報をもとに従業員に面接指導の申出を勧奨することができる

  または、事業者は時間外・休日労働時間が月80時間超の従業員本人に労働時間の情報通知

   ↓

 ③時間外・休日労働時間が月80時間超の従業員が事業者に面接指導の申出

  ※月100時間超から月80時間超に拡大している

   ↓

 ④事業者が産業医等による面接指導を実施

   ↓

 ⑤事業者が産業医等から従業員の措置等に関する意見を聴く

   ↓

 ⑥事業者が産業医等の意見を踏まえて必要な措置を講じる

   ↓

 ⑦事業者が産業医に措置内容を情報提供

   ↓

 ⑧産業医が勧告を行う場合は事業者からあらかじめ意見を求める

   ↓

 ⑨産業医が労働者の健康を確保するために必要があると認める場合は事業者に勧告

   ↓

 ⑩事業者が産業医の勧告の内容等を衛生委員会等に報告

 

月100時間の時間外労働を超えた時点で、医師による面接指導が義務付けられたため、これに違反した場合、「50万円以下の罰金」という罰則が科されることとなりました。

出典元:厚生労働省「働き方改革関連法に関するハンドブック」

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6.働き方改革の更なる情報を知りたいなら




 

働き方改革における残業規制を解説しました。2019年から施行された働き方改革法案により、残業に対する規制は厳しくなっています。従業員の残業時間の適切な把握が、働き方改革を正しく運用するためにも重要です。

 

残業時間の削減や従業員の労働時間の管理は、一朝一夕では上手くいかないケースが多いでしょう。ウェルナレでは、働き方改革に関する記事を多数配信しています。政府主導の働き方改革の推進に苦労されている方にとって、改革を進める一助となります。こちらの資料ダウンロード一覧より専門家が執筆した記事が閲覧できますので、興味がある方はぜひダウンロードください。

 

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著者情報

株式会社イーウェル ウェルナレ事務局

「人も、企業も、ウェルビーイングへ。」をテーマとして、企業の健康経営や福利厚生の支援を行う株式会社イーウェルが運営する、BtoB(人事総務向け)オウンドメディア「ウェルナレ」の編集部。
2021年7月にメディアリリース後、毎年60回以上、有名企業様とのコラボセミナーや官公庁の専門分野に特化した方を招いてのカンファレンス、大学教授による福利厚生勉強会の開催や専門家記事の掲載などを実施し、多くの方に好評いただいております。
人事部署や経営者が、会社のウェルビーイングを向上されるためのヒントを探して、日々活動しています。

 


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