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2023/10/23 (公開:2023/06/27)

働き方改革の罰則、企業と労働者の両面から見たメリット・デメリットを解説


働き方改革の罰則、企業と労働者の両面から見たメリット・デメリットを解説

ウェルナレでは、「働き方改革」に関する多くの記事を掲載してきました。ほとんどの記事では日本の労働課題の解決策として「働き方改革」は効果的で、従業員のモチベーションが上がり、労働生産性の向上も期待できるなど、実施のメリットを中心に解説してきました。

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「働き方改革」を推進するにあたり、現在国によって各種法案が制定、順次施行され、それら各法案に合わせて罰則なども設けられるようになりました。本記事では「働き方改革」に関する法律の内容について、さらに遵守しなかった場合はどのような罰則を受けるのかなど詳しく解説していきます。

 

         

1.働き方改革の背景と現状

「働き方改革」とは、従業員たちが、それぞれの置かれた環境などの事情に応じ、多様で柔軟な働き方を自ら「選択」できるようにするための改革です。すでに日本が直面している「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」や「長時間労働の常態化」「労働生産性の低さ」などを背景に、「働き方改革」の導入により各種取り組みの実行が急務となっています。

 

厚生労働省は、働く人々の置かれた事情に応じて、多様な働き方を選択できる社会を実現することで、成長と分配の好循環を構築し、働く一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにするために、2018年(平成30年)7月6日に「働き方改革関連法」を公布しました。

 

そこでは以下3点を目的に主要な法律が一括改正され、現在順次施行されています。

 

 ①長時間労働の是正 「時間外労働の上限規制」

 ②多様で柔軟な働き方の実現 「年次有給休暇の時季指定」

 ③雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保 「同一労働同一賃金」

出典元:厚生労働省「働き方改革って 何だろう?」

 

              

2.働き方改革に対する企業の課題・注意点



厚生労働省は、現在の日本は「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立など、働く人のニーズの多様化」などの状況に直面しており、次の2点を目指していくことを重要な課題としています。

 

 ①投資やイノベーションによる労働生産性の向上

 ②就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ること

出典元:厚生労働省『「働き方改革」の実現に向けて』


これらの課題を解決するため、現在は「働き方改革」が大企業から中小企業に広がり順次施行されている状況ですが、次の4項目に関しては特に注意すべき点です。働き方改革関連法にともない改正された「労働基準法」や「労働安全衛生法」を順守するために、どの企業も早急に取り組まなければならない内容となっています。

          

2-1 36協定の労働基準監督署への届け出と時間外労働の上限の規制

36(サブロク)協定を締結した後でも、「年720時間、複数月平均80時間、月の時間外労働100時間未満」と時間外労働の上限が設定され、1日当たり4時間程度の残業が限度となっています。これ以上の時間外労働が常態化している企業の経営者や管理者は、早急に改めなければなりません。

 

        

2-2 割増賃金の支払い義務

1日8時間、1週間で40時間を越える時間外労働において、2023年4月以降は労働基準法が改正され、大企業も中小企業も、60時間以下では25%、60時間超は50%の割増賃金を支払うことが規定されています。それまで中小企業は60時間超であっても割増賃金率は25%であったため、これまで長時間労働が常態化している企業などは、割増賃金の支払いが滞りなく行われているか、改めて社内の状況把握が必要です。

 

          

2-3 有給休暇取得の義務化

有給休暇が年10日以上ある労働者に対して、企業は年次有給休暇が発生した日から1年以内に、5日間の有給休暇を、時季を指定して与えなければいけません。特に所定の労働日数を超えていれば、パートやアルバイト従業員も対象となるため、注意しなければなりません。



   

2-4 フレックスタイム制の労働時間の調整が1ヶ月から3ヶ月に延長

フレックスタイム制は、一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者が日々の始業・終業時刻、労働時間を⾃ら決めることのできる制度です。労働者は仕事と⽣活の調和を図りながら効率的に働くことができます。

ただし、清算期間全体の労働時間が、週平均40時間を超えないこと、さらに1か月ごとの労働時間が、週平均50時間を超えないことを満たさなければなりません。いずれかを超えた時間は時間外労働となります。よって、フレックスタイム制であっても割増賃金の支払いが発生するため注意しなければなりません。

              

3.「働き方改革」関連の罰則に関する法令の概要

「働き方改革関連法案」の改定が今まさに推進されている状況ですが、罰則規定が設けられた項目が5つあります。具体的にどの項目に対して、どのような罰則となっているのか表にまとめました。

 

項目

法令

対象

罰則

1

残業時間の上限規制

労働基準法

第三十六条

第百十九条

【原則】残業時間の上限

月45時間・年360時間

【特別条項】

・年720時間以内

・複数月の平均80時間

(休日労働を含む)

・月100時間未満

(休日労働を含む)

違反した場合は、「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」という刑事罰が科される

2

割増賃金の未払い

労働基準法

第三十七条

第百十九条

60時間を超える時間外労働に対して、割増率50%以上の割増賃金の支給が定められている。2023年4月まで猶予期間あり

違反した場合は、「6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金」という刑事罰が科される

3

フレックスタイム制の違反

労働基準法

第三十二条の三

第百十九条

精算期間内の総労働時間の条件を満たしていれば、出退勤時間や出勤日を本人が自由に決定することができる制度

【精算期間】1ヵ月から3か月に延長

違反した場合は、「6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金」という罰則が科される

4

年次有給休暇の取得義務

労働基準法

第三十七条

第百十九条

年間10日以上の有給休暇を付与される従業員に対し、年5日は時季指定の上取得させなければならない

違反した場合は、「6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金」という罰則が科される

5

医師の面接指導

労働安全衛生法第六十六条の八

月100時間の時間外労働を超えた時点で、医師による面接指導の義務付け

違反した場合は、「50万円以下の罰金」という罰則が科される

 

「働き方改革」では、長時間労働を是正するために厳しい罰則を設けていますが、この罰則を受ける対象者は企業となります。よって企業は、従業員に対して違法な過重労働をさせないよう、労働時間について正確に把握し、適切に管理する義務があります。

 

なお現在は、「高度プロフェッショナル制度」については導入義務がなく、罰則規定もありません。高い専門性と高度なスキルを持つ人材を対象としており、労働時間や休日、割増賃金などの規則が適用外となっています。ただし、「働き方に関する規則」が全くないわけではなく、労働安全衛生法上の観点から、労働時間が週40時間を超えた時に、その月の労働時間が100時間以上となった場合には医師の面接指導が義務付けられており、違反すると50万円以下の罰金が課されることとなっています。

 

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4.企業側から見た罰則のメリット



「働き方改革」による徹底した労務管理は、法令による罰則から回避できるだけでなく、企業にとっても様々なメリットがあります。本章では、国が定めた働き方改革に適用することにより、どのようなメリットがあるのかを具体的に解説します。

          

4-1 時間管理による業務の可視化

企業が働き方改革を目的に適切な労働時間の管理ができるようになると、時間外労働で発生する人件費や業務量を適正な基準で可視化できるようになります。それまで、職場ごとに任せていた従業員の労働時間の管理を会社主導で行うことで、部門間の業務量の違いや正確な労働時間が把握でき、残業時間が突出して多い部署や個人が特定できるようになります。この現状をもとに業務内容の見直しを推進し、効率化や人員の配置転換などを進められるようになります。

           

4-2 労働環境の改善

「働き方改革」を推進することで、従業員に「働きやすい」職場であると感じてもらう事が、労働環境の改善へとつながります。たとえば、在宅勤務やリモートワークの導入、フレックスタイム制の活用により、育児や介護との両立が可能な労働環境の整備、有給休暇の取りやすい環境によりリフレッシュでき、業務の効率化が期待できるようになります。

 

さらに、それまで手作業でおこなっていた単純な作業などを、各種ツールやシステムを導入し活用することで、従業員たちの残業時間の削減につなげれば、「働きやすい」職場と感じてもらえることでしょう。さらに、従業員エンゲージメントの向上にも期待でき、離職率の改善にもつながります。

           

4-3 企業イメージの向上

企業が労働時間の管理に取り組むことにより労働環境が改善され、「働きやすい」職場が徐々に出来上がっていきます。従業員は職場に対して満足するとともに離職率が改善し、さらには優秀な人材を採用しやすくなります。それにより企業の業績も向上し、ワーク・ライフ・バランスも促進されている会社ということで、全てにおいて健全な会社であるという評判が定着することで、社会的信用を得ることができるようになります。

 

5.労働者側から見た罰則のメリット

企業の中には罰則を受けないために「働き方改革」に着手し、結果的にプラスとなることが多くありますが、従業員にとっても、企業から制度の遵守を強いられて当初は戸惑う方も多くいるでしょう。しかし、さまざまな取り組みをしていく中で、多くのメリットが生まれてきます。

          

5-1 安心して働ける環境の実現

安心して働ける環境の一つとして、「同一労働・同一賃金」があげられるでしょう。「同一労働・同一賃金」とは、正規雇用や非正規雇用など雇用形態の異なる労働者の待遇や賃金格差をなくすという考え方です。この格差がなくなることで、従業員は会社に対して満足感や信頼感を抱きやすくなります。

 

 非正規雇用の従業員と正規雇用の従業員との待遇の格差を無くすことで、雇用主への安心感と共に業務に対する意識が改善され、責任感やモチベーションが生まれます。さらに、この会社で長く働きたいという気持ちが増幅され離職率を抑止し、企業の業績アップや生産性向上にも貢献するようになります。

           

5-2 労働時間の適正化とワーク・ライフ・バランス

「働き方改革」により労働時間が適正化され、従業員は時間外の残業に費やす時間が短くなります。仕事に要していた時間が減少することで、プラベートの時間が長くなり、それがワーク・ライフ・バランスの実現につながることとなります。

 

従業員が自由に使える時間が増えることで、それまで着手できなかった英会話などの自己開発や習い事に時間を当てることが可能となったり、友人や家族との食事やコミュニケーションに時間を使ったり、余暇やスポーツに打ち込むことで、心身のリフレッシュができるようになります。

 

また、「働き方改革」では、年5日以上の有給取得の義務化も定められているため、従業員は有給休暇が取りやすくなり、ワーク・ライフ・バランスがさらに実現しやすくなるでしょう。

        

6.企業側から見た罰則のデメリット

国としては現在進行形で「働き方改革」を強化・推進している状況ですが、企業にとっては全てが良いこととは限らないようです。罰則を受けないために制度整備に着手しようとしている企業にとっては、デメリットもあるようです。

          

6-1 生産量・利益の減少

「働き方改革」を意識しすぎると、業務量に変化はないのに長時間労働の極端な是正を行うようになります。やみくもに短い労働時間で以前と同じ作業を求めるとミスや失敗が多発し、それに伴いチェックややり直し、報告書作成などに時間を要すようになり、結局、生産量が減少することも考えられます。

 

 また、業務効率化など生産性の向上に取り組まないまま、労働時間を減らしただけで以前と同じスピードで業務を行えば、1つの業務が完了するまでの日数が長引くこととなります。その結果、新しい仕事や事業にも着手できない状態となり、明らかに生産量も利益も減少するでしょう。会社としては様々なチャンスを逃すことにもつながり、これでは会社の運営を立ち行かなくなってしまいます。

           

6-2 対応コストの増加

働き方改革により業務内容を見直すこととなると、今まで人の手で行っていた時間がかかる事務作業を、RPAなど効率化させるためのツールを導入したり、アウトソーシング会社に委託したりすることが考えられます。また、「働き方改革」には業務効率化など生産性の向上、および職場環境の改善や、従業員の置かれている状況に配慮し、リモートワークの推進なども必要になってきます。

 

 しかし、これらを実現するには、新しいシステムなどの導入や運用が不可欠であり、導入費や教育費・運営用費などの様々な費用が発生します。将来的には労働時間の短縮になりますが、初期段階では大きなコストが発生することも考慮しなければなりません。

 

 働き方改革の「同一労働・同一賃金」の施行により、雇用形態を理由に賃金を低く設定することも禁止されています。現在の日本の物価高・賃上げへの風潮の中で、企業は非正規雇用者に対しても正規雇用者と同等の賃金を支払わなければならず、労働コストが高騰しています。それらを鑑みると、システム投資を初期段階で実施するのも一つの方策かもしれません。

6-3 管理職や担当部署の負担増


「働き方改革」とは、さまざまな業務の見直しを図ることでもあるため、各部門の管理職も業務の見直しに携わることとなります。働き方改革が成功するまでは、PDCAを回して試行錯誤しながら、業務改善に取り組まなければならないため、管理職の負担が増加するケースがあります。

 

また、働き方改革の推進は社内規約の見直しでもあります。法務や労務関連の担当者は通常業務を行いながら、規約変更をしていくために多くの手間や時間がかかります。企業にとっては人件費などのコスト増などにより大きな負担となるでしょう。 



        

7.労働者側から見た罰則のデメリット



働き方改革により時間外労働に上限が設けられるようになると、従業員は限られた時間でこれまでの業務を終わらせる必要が出てきます。そうなると、効率化や生産性が求められるようになり、従業員にもろもろの負荷が襲いかかる可能性もでてきます。本章では、働き方改革により従業員がどのような負の影響をうけるのか、デメリットについて解説します。

              

7-1 過度な負担の増加

「働き方改革」によって時間外労働の是正が義務付けられ、従業員は限られた労働時間で業務をこなすために、効率よく働くことを求められます。このような状況で常時勤務を継続すると、肉体的にも精神的にも疲弊し大きなストレスとなり、ミスや失敗を連発して、結果的に生産性が低下してしまいます。また、それが原因で精神疾患を発症し通院を余儀なくされたり、離職に追いこまれたりする可能性もあります。

 

 さらには、仕事ができ作業スピードが早い従業員に業務が集中したり、特定の従業員への負担が増加し、仕事の遅い従業員への嫌がらせが発生するなどし、社内の人間関係がギスギスしたり、雰囲気の悪い職場となってしまう可能性もあります。

              

7-2 意欲の低下

働き方改革により残業時間が減少すると、残業代も減少し収入も少なくなります。それまでは身体を酷使して遅くまで仕事をしても、残業代という見返りがあったから頑張ってこられた従業員もいるかもしれません。しかし、それまでと同等の収入が得られなくなることで、会社のために頑張ってきたことやモチベーションというものが失せてしまうことも考えられます。

 

 また、労働時間に上限規制ができることにより残業ができなくなり、当日中に終了できなかった仕事を持ち帰るケースも発生します。そうした状況で余暇の時間が削られてストレスがたまり、徐々にやる気を失せ業務効率が低下するなどの悪循環に陥ってしまうことも考えられます。

              

7-3 企業との信頼関係の悪化

企業の経営層が現場の状況を把握しないまま、一方的に「働き方改革」を導入すると、現場に混乱をきたす可能性もあります。また、経営層が決定した「働き方改革」に無理をして従うと、特定の従業員だけ業務量が増えて不公平が生まれ、現場の雰囲気が悪くなってしまいます。それらの積み重ねで、従業員たちは会社への不満や不信感を抱くようになり、退職に至る可能性もでてきます。


8.罰則に対する中小企業のポイント



日本国内雇用の約7割を担う中小企業・小規模事業者においても、2020年4月から時間外労働の上限規制が導入され「働き方改革」は実施すべきという認識が強化されています。ただし「建設事業」「自動車運転の業務」「鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業」の4業種においては、長時間労働の是正が困難であると判断され、2024年3月31日まで猶予期間を設けられています。

 

このように働き方改革関連法の法改正が進んでいる最中ですが、中小企業の経営者の中には、未だに「働き方改革は大企業がやるもの」という誤った認識をもっている方がいるかもしれません。さらには2024年4月1日より、ほとんどの業種において上限規程が設けられるようになります。よって誤った考えを払しょくし、迅速に働き方改革に着手しなければ、近い将来、罰則の対象になりかねません。

 

最後に、中小企業における働き方改革のポイントをまとめました。

 

ポイント①

 職場環境の改善などの「魅力ある職場づくり」が人手不足解消につながることから、人手不足感が強い中小企業・小規模事業者においては、業務効率化による生産性向上に加え、職場環境の改善による「魅力ある職場づくり」が重要です。

ポイント②

 改革に取り組むに当たっては、雇用者と従業員との距離が近く「意識の共有がされやすい」など、中小企業・小規模事業者だからこその強みもあります。

ポイント③

 「魅力ある職場づくり」→「人材の確保」→「業績の向上」→「利益増」の好循環をつくるため、「働き方改革」を進めてより魅力ある職場をつくりましょう。

 

中小企業の経営者の中には、「働き方改革」は罰則を受けないために仕方なく取り組むものと思われている方がいるかもしれません。しかし、段階的にでも働き方改革に取り組みながら、自社に合った働きやすい職場づくりを目指すことで、より優秀な人材を確保でき、自社のさらなる成長が期待できるでしょう。

 

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監修者 株式会社イーウェル HRソリューション本部
メディア企画部コミュニケーション企画グループ

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