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2024/03/01 (公開:2022/09/09)

アクティブレストのススメ ~デスクワークの疲労をとるために会社ができることとは~


アクティブレストのススメ  ~デスクワークの疲労をとるために会社ができることとは~

「アクティブレスト(active rest)」という言葉を直訳すると「積極的休息」という意味になります。疲れた時に、横になるなどして完全に休養するのではなく、あえて体を適度に動かして血流を良くし、疲れの軽減を目指す考え方です。さらには、アクティブレストを取り入れることで、疲労回復効果を高めることができるともいわれています。

 

アクティブレストの方法は最初にアスリートの世界で普及しました。スポーツ選手が試合後に早く疲労を取り除いて、次の試合や練習の準備に入るための効果的な疲労回復法として取り入られたのです。その目的は以下のことが考えられます。

 

  • 運動中に発生した疲労物質をすばやく分解し、代謝を促すようにするため
  • ダメージを受けた筋肉の再生を促すため
  • 一過性の脳貧血を予防するため

 

「なかなか疲れが取れない」とか「しっかり休んでいるのに身体がだるい、重い」などと感じた時に、しっかり睡眠をとろう、ゆっくりお風呂に入ろう、栄養補給しよう、などといろいろ試しても、すっきりしない場合は、疲れを取るために身体を動かす「アクティブレスト」が効果的かもしれません。近年はアスリートに限らず、フィットネスクラブや健康経営の一環として企業でも取り入れられています。

 

         

1.疲れが取れないのは、運動していないせい?



しっかり睡眠をとり、自宅などで静かに休養をとっているのに、なかなか疲れがとれない、体が重いなどを経験されている方も多いのではないでしょうか。そのような時は、軽く体を動かして疲れを解消するという方法を試してみてはいかがでしょうか。

 

ただ、なぜ静かに休むだけでは疲れが取れないのでしょうか。会社でのデスクワークや、立ち仕事の場合、同じ姿勢をキープするのに、筋肉も同じ部分だけが継続的に使われることとなります。それにより、一部の筋肉に慢性的な疲労が溜まり、筋肉の「硬化」が起こりやすい状態になります。具体的には、肩こりや腰痛、倦怠感など、さまざまな不調の原因です。筋肉が硬化すると血の巡りも悪くなり、体内に老廃物が蓄積するようになってしまいます。

 

そのような状態になってしまった場合、体を動かさないで静かに休養するだけでは、筋肉の硬化や血液の循環も改善されません。筋肉をほぐすためには、適度な運動をしたり、全身の血液の循環を良くするためには、酸素や栄養を体全体に行き届かしたりしなければなりません。そのような時にアクティブレストを取り入れることが効果的なのです。

 

              

2.アクティブレストとは?

アクティブレスト(積極的休養)とは、疲れている時こそ積極的に体を動かして、疲労回復効果を高める方法のことです。運動することによって、血行がよくなり疲労物質が排出され、疲労回復の効果が高まると言われています。「アクティブレスト(積極的休養)」の対義語として、安静・休養・睡眠などを意味する「パッシブレスト(消極的休養)」という言葉もよく用いられます。

 

アスリートの中には、試合翌日に「アクティブレスト(軽い運動・練習)」をとり入れ、その翌日に完全休養「パッシブレスト」をしている人も少なくないようです。

 

アスリートに限らず、会社で働く従業員も休憩時間をゆったり過ごすだけでなく、軽い運動などをすることで、凝り固まった筋肉をほぐし、疲労物質の排出を促進できます。さらに、新陳代謝を活性化させることにより、体全体をリフレッシュさせ、休憩後の業務の効率化や生産性向上にも期待できます。

 

ただ、アクティブレストで気を付けなければならないことは、やりすぎは禁物であるということです。アクティブレストは疲労がたまった時こそ運動をする、という考えですが、過度な運動はかえって疲労感を高めてしまいます。

アクティブレストはウォーキングやサイクリング、スイミングなどの有酸素運動が効果的とされていますが、息切れがするほどの運動は、一層疲れを増幅させてしまいます。人と普通に会話ができる、ほどほどの状態に抑えておくことが、効率的な休養のコツとなります。有酸素運動のあとには、ストレッチなど筋肉を伸ばしたりするとアクティブレストの効果はさらに高まります。



              

3.アクティブレストの効果

アクティブレストを取り入れることで、さまざまな効果が期待できます。たとえば、疲労回復やカロリー消費の促進、さらに心身のコンディションも整えやすくなります。本章では、アクティブレストがどのようなことに効果があるのか、具体的に解説します。

          

3-1 効果① 血流改善による疲労物質の排出

 

アクティブレストでは、軽度の全身運動を行うことで、呼吸循環器系を刺激するようになります。それにより、全身に酸素と筋肉が行き届きやすくなり、疲労物質を排出することが可能となります。

 

人の全身には、動脈や静脈などの血管が張り巡らされており、筋肉のポンプ機能によって動脈や静脈などの血管は動いています。「動脈血」は酸素や栄養を運び、「静脈血」は二酸化炭素や老廃物を運ぶという役割を担っており、全身の血液を循環させています。

 

疲労などによりポンプの役割を持つ筋肉の動きが悪くなると、静脈血によって運び出されるはずの疲労物質などが、体内に停滞してしまい、筋肉痛やだるさなどの症状を引き起こす原因となってしまいます。アクティブレストでは、この「静脈血」の血流も改善できるため、老廃物の体内への蓄積を防ぐことができるのです。

 

前章でも、アスリートが試合翌日にアクティブレストを取り入れる人が少なくないと述べましたが、試合翌日に運動することで、疲労回復効果のある成長ホルモンが分泌され、質の良い睡眠がとれ、血流改善により疲労物質が押し流され、ストレスホルモンが低下することでストレスが発散され、疲れがとれる循環が生まれます。

 

            

3-2 効果② 継続的な運動による代謝アップ

アクティブレストを習慣化し、軽い運動を継続的に行えるようになると、基礎代謝の向上が期待され、体質の改善につながります。何もしないでいるよりも、アクティブレストに取り組むことは、確実にカロリーを消費し、少しずつ筋肉量も増え、運動不足解消に十分な効果がでます。

 

1日10分程度の軽い運動で、基礎代謝をアップすることが可能なため、日々忙しい人や運動が苦手な人でも取り組みやすいでしょう。ジムやスポーツクラブに通う必要もないため、習慣化しやすいかもしれません。

                      

3-3 効果③ イライラやストレスの改善

軽い運動をすることで、幸せホルモンという「セロトニン」が分泌されます。「セロトニン」は、心のバランスを保つ役割の神経伝達物質で、心のバランスを整える効果が期待できるため、アクティブレストを行うことで、ストレスが軽減されるとも言われています。

 

逆に、過度な運動などにより「セロトニン」が分泌されず不足すると、自律神経バランスが乱れ、心身の不調や不眠などに陥ったりしやすくなり、ストレスを感じやすくなります。よって、息切れしない程度の軽い運動は、適度なセロトニン分泌を促し、自律神経のバランスを整えるため、ストレスの改善に有効的でもあります。


        

4.具体的なアクティブレストの方法

アクティブレストを実践するには、以下3つの要点を満たした運動をすることです。

  • きつくハードな運動はしない
  • 気楽に継続できる
  • 心地よく感じられる

 

アクティブレストは頑張らず、意気込まなくても大丈夫です。きついと感じるほど運動をしてしまうと、逆にストレスを感じて疲労がたまってしまうこともあります。気持ちが安定し、体が温かくなるのを感じられ、心地よくなる程度の運動にとどめるのが、アクティブレストの基本となります。

          

4-1 ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動

アクティブレストでは、息が上がらない程度の軽いジョギングやウォーキングなどの有酸素運動がおすすめです。アクティブレストが目的なので、いきなり頑張って長時間歩いたり走ったりすることは禁物です。まずは20分程度、体がぽかぽかと温かく、少し心拍数が上がる程度から始めてみましょう。

 

運動に対する感じ方は個人差があるため、自信に合ったテンポやリズムを意識しながら、余裕をもって取り組むことが大事です。有酸素運動をすることで、セロトニンが分泌され、血行も良くなり、体の隅々まで酸素や血液が行き渡り、心身の不調やストレス解消にも効果的です。

 

重要なことは、「心地よい疲労」を自覚し、回復していく休養方法を上手に見つけていくことです。

           

4-2 ストレッチもおすすめ

長時間ずっと同じ体制を続けていると、筋肉は凝り固まってしまいます。そのような時は手軽にできるストレッチもおすすめです。背筋や肩、腕などを伸ばしたりしたり、屈伸などをしたりして、血流を良くし、固まってしまった筋肉をほぐすのが効果的です。深呼吸を深く繰り返しながら、ゆっくりと行うのが良いでしょう。

           

4-3 仕事中にできるアクティブレスト

オフィス勤務の方、特にデスクワークを続けていると、どうしても体中が凝り固まってしまいますよね。そのような時に、仕事中でも積極的に体を動かし、筋肉を伸ばすなどして、意識的にアクティブレストを取り入れることで、筋肉など凝り固まってしまう状態を防ぎ、さらに仕事も効率的にはかどることでしょう。

 

①30分に1回程度背伸びする

トイレに行ったり、お茶を入れに行ったり、同じ姿勢を続けないよう、意識的にこまめに動くのも効果的です。

 

②積極的に階段を使う

あえてエレベーターやエスカレーターは使わないで、階段を使ってみましょう。雨の日などウォーキングや散歩ができない時の代替として、屋内で手軽に血流改善効果が得られます。

 

③1,000歩(10分程度)多めに歩く

会社帰りは、1駅手前で降りて歩いたり、普段より遠回りしたりするなどして、歩く距離を長めにすることをおすすめします。まずは、いつもの1日の歩数よりも1,000歩(約10分)程度多めに歩くことからはじめてみましょう。お昼休みなど、ちょっと遠めのお店に外食に行くのもいいかもしれません。



※引用元:PRESIDENT Online 「アクティブ・レスト」のすすめ

          

4-4 デスクワークは疲労がたまりやすいのか?



デスクワークの際は、脳はたくさん使いますが、体はあまり動いていません。そのような時、脳のメカニズムに起因し、脳が疲れたと感じると、体全身も疲れている感覚になってしまいます。そのような時、アクティブレストを取り入れて軽い運動をすると、自律神経を整え、筋肉の緊張緩和や血流促進により疲労回復につながります。

 

新型コロナウィルスがだいぶ落ち着いてきたものの、継続して在宅勤務やテレワークを推奨している企業が多い中、以前よりパソコンの利用頻度が増え、家でもじっとしながら脳を使う習慣が多くなっていることと思います。じっとしているのに体全体が「疲れた」「だるい」という感覚が多くなり、仕事に集中できない時は、ぜひアクティブレストを取り入れて軽い運動をしてみましょう。


        

5.健康経営の一環としてのアクティブレストとは

 

近年は「健康経営」に注力し、健康宣言の取り組みの一つにアクティブレストを明言している企業も増えてきました。特に短期間で成果や業績をあげるためには、前日の疲れを翌日に持ち込まない「賢く休む」という方法が注目されています。本章では、健康経営の一環として、アクティブレストを効果的に取り入れる方法について解説します。

          

5-1 ウォーキングイベントの導入

テレワークの影響で、体を動かす機会が激減して運動不足になってしまった従業員が増加したる場合、ウォーキングアプリなどを活用して、誰が最も多く歩いたかを競い合うイベントなどが人気です。個人ごとの競争のほか、部署やグループ対抗にすると、参加しない個人がいることでグループの成績が下がってしまう仕組みにすることで、連帯感も生まれます。

先ずはじめのうちは、ある特定の休日の数日だけを対象日にして、その数日間でどれだけ歩いたかを競争させ、トップの人たちには豪華な賞品をプレゼントする、などというインセンティブを付与する方法で始めてみてはいかがでしょうか。次回のイベントは自分もプレゼントが欲しいという意欲がわくかもしれません。そのイベントが浸透したところで、期間を3か月間とか徐々に長くしていくのもいいかもしれません。

           

5-2 オフィスヨガの導入



ノー残業の日などの終業後に、ヨガの講師を招いて、オフィス内でヨガ教室を開催することも、大変人気の高いイベントです。仕事のすぐ後ということで、アクティブレストとしても有効のため、疲れを癒すことができます。また、ヨガは、リラックス効果があるため、ストレッチと同様に血液循環にも期待できます。

           

5-3 10分ランチフィットネス® の導入

福岡県を拠点に活動する10分ランチフィットネス協会では、「アクティブレストで企業に活力を」を理念に、ランチ休憩中の10分間でできる運動プログラムを各企業に提案しています。

具体的には、企業が休憩時間を活用して、週1、2回10分運動を職場単位で実施する企業の健康経営のために独自開発されたプログラムです。身体を動かしながら疲労回復させるアクティブレスト(積極的休養)の方法で、従業員の疲労やストレスを軽減し、企業の活力と生産性を向上させる効果があります。

導入した企業は、着替える必要がなく、運動が苦手な人でもできるという気軽さが好評で、「気分が良くなり、午後の就業にも元気に臨めた」という従業員の声もあがっています。さらに、10分ランチフィットネスの場が従業員同士のコミュニケーションの場ともなり、職場の交流活性化や人間関係の改善への

効果も実証されています。

 

※出展元:一般社団法人10分ランチフィットネス協会 http://10mlf.sakura.ne.jp/main/index.html

組合員・従業員の健康データを一括管理「KENPOS」

組合員・従業員の健康情報管理、目標設定、行動記録のPDCAサイクルをまとめて行い、健康維持・増進を支援するWeb・アプリサービスです。

        

6.アクティブレストの導入事例


前章では、健康経営を推進するうえで、具体的にどのようなアクティブレストの施策があるのか解説しました。本章では、健康経営を目的にアクティブレストを導入している企業事例を紹介します。

          

6-1 リコーITソリューションズ株式会社

リコーITソリューションズ株式会社は2022年に「健康経営優良法人2022(大規模法人部門)~ホワイト500~」にて、総合評価として申請企業数2869社の101位~150位圏内に認定されました。その中の「健康維持増進の取り組み」では、以下13の取り込みについて公表しています。

  • 健康診断の実施
  • 精密検査受診率の改善
  • 全国に産業保健体制を整備
  • 社内の非喫煙化を実現
  • 多様な働き方の実現とその効果
  • 重症化を予防するための取組み
  • メンタルヘルス対策
  • 女性向け健康セミナーの開催
  • 各事業所で健康づくりの活動を推進
  • リモートワーク環境下による健康課題に対応したオンライセミナーの開催
  • 鳥取情報産業協会主催「健康経営勉強会」実施
  • 新型コロナウイルス対策
  • 健康経営の推進の効果について 

これらの取り組みの中の「リモートワーク環境下による健康課題に対応したオンライセミナーの開催」では、「アクティブレスト」をテーマとして、積極的に身体を動かすことができるようなプログラムを織り交ぜることで、疲労の蓄積・運動不足の解消などに効果的なオンラインセミナーを実施しました。

※引用元:リコーITソリューションズ株式会社「健康経営」

https://www.jrits.co.jp/about/kenko_keiei.html

           

6-2 フジッコ株式会社

フジッコ株式会社では、次のようなスローガンで「健康企業宣言」をしています。

  『はじめよう 未来につながる 健康貯金』 ※健康スローガン最優秀賞受賞作品

 現在、健康経営優良法人の認定取得を目指して、以下の取り組みを行っています。

 

① 健康診断受診率100%の達成と受診勧奨の実施

② 特定保健指導の実施

③ アクティブレストの実施

④ 教育及び場づくりの実施

⑤ 病気の治療と仕事の両立支援

 

「③アクティブレストの実施」では、ウォーキングなどのごく軽い運動を行い、血流を良くし、全身に酸素をめぐらせ、心身の疲労回復に努めることを公表し、1日1万歩を推奨しています。下の健康経営戦略マップからもわかるように、「あるく部」を創設し、ウォーキングアプリを活用した運動習慣を醸成するため、あるく部員の増加を目指しています。




※引用元:フジッコ「健康経営」

https://www.fujicco.co.jp/corp/sustainability/health-management/


        

7.まとめ

業務が立て込み、残業が連日続いてしまい、疲れがたまってしまった場合など、休日などは、つい家でゴロゴロしたり、昼過ぎまで寝てしまった、という経験が皆さんにもあるかと思います。ただ、そのような時こそ、軽い運動などで体を動かして、疲労回復効果を高めてみてはいかがでしょうか。

本記事で紹介したアクティブレストを、日常生活やオフィスワークなどに取り入れていくと、疲労回復、基礎代謝の向上、ストレスの軽減にもつなげられるようになります。特に新型コロナウィルスの収束が遠い先に感じる昨今、健康を維持することが難しく、体の不調を訴える従業員も増加傾向にあります。

そのような時こそ、適度な運動の習慣化と、従業員同志のコミュニケーションを活発化させることを目的に、アクティブレストのさまざま施策を考えてみましょう。

アクティブレストは運動が苦手な人でも簡単に取り入れられるため、健康に関する不安を解消しやすいと言われています。アクティブレストを導入することで、従業員ひとりひとりが健康的で前向きに明るく働ける環境を築けるかもしれません。

 

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著者情報

株式会社イーウェル ウェルナレ事務局

「人も、企業も、ウェルビーイングへ。」をテーマとして、企業の健康経営や福利厚生の支援を行う株式会社イーウェルが運営する、BtoB(人事総務向け)オウンドメディア「ウェルナレ」の編集部。
2021年7月にメディアリリース後、毎年60回以上、有名企業様とのコラボセミナーや官公庁の専門分野に特化した方を招いてのカンファレンス、大学教授による福利厚生勉強会の開催や専門家記事の掲載などを実施し、多くの方に好評いただいております。
人事部署や経営者が、会社のウェルビーイングを向上されるためのヒントを探して、日々活動しています。

 

    

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