ウェルネス経営を実現している企業の導入事例やポイントを紹介
近年、「ウェルネス経営」という言葉を経営理念に取り入れて、従業員の健康管理や維持・向上に取り組んでいる企業が多く見受けられます。しかしながら、取り組み内容を見てみると、「ウェルネス経営」も「健康経営」を広く捉えことで概念的にはそれほど変わらず、明確な違いがなくなりつつあるのも特徴のひとつです。
本記事では、敢えて「ウェルネス経営」という言葉を経営理念に取り入れ、社内外に発信している企業の取り組み事例を主に紹介いたします。また、そのような企業はウェルネス経営を実現するために、どのようなポイントに注力しているのかも解説いたします。
目次
1.ウェルネス経営が注目される背景
『ウェルネス(wellness)』という言葉の概念は、アメリカの公衆衛生学者のハルバート・L・ダン博士が提唱したのが始まりとなります。そこでは、国民一人ひとりが健康でいるためには、社会でそれを支えるシステムが必要であるとし、病気を予防するだけではなく、生きがいや心の豊かさなどを総合的に把握していくことが重要であると提言しています。
日本でも、ウェルネス(健康経営)への取り組みを推進するため、2015年から経済産業省が「健康経営銘柄」の選定を行い、2017年には「健康経営優良法人」の認定を開始しています。さらに、経済産業省は2021年度から実施している、健康経営の取り組みに関する調査において、優れた成果を挙げている企業の取組内容や情報開示を促進し、健康経営に対する社会的評価が、更に高まることを目指しています
※2022年3月15日に公開された最新の情報はこちらをご確認ください。
出典元:経済産業省「令和3年度健康経営度調査に基づく2,000社分の評価結果を公開しました」
このように、国が率先となり推し進める取り組みや社会情勢の変化、そしてテクノロジーの進化などの影響で、ブラック企業とか過労死など過度な働き方となっている企業も、以前と比較すると減少傾向にあります。特に労働時間に対する考え方は、大きく変化しています。
それは、単に長時間働くのが良いことではなく、より効率的に働くことが求められるようなってきたのです。現在は、残業時間の上限規制も行われるようになり、長時間働くことが、必ずしも業績の向上につながるものではないという考えのもと、効率的に働くことが求められるようになってきました。
ウェルネス経営を前向きに行っている企業は、従業員の健康管理に積極的に関わっています。その関わりとは、企業が従業員に対して投資をしていることです。投資とは、従業員が気持ちよく、長く働くことができる環境を整備することで、その投資が働きやすい職場環境の構築へとつながってくのです。
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2.ウェルネスと健康の関係とは?
本記事の冒頭において、日本では「ウェルネス経営」も「健康経営」を広く捉えることで
概念的にはそれほど変わらず、近年は明確な違いがなくなりつつあると解説しました。ただし、「ウェルネス」と「健康」という言葉で比較すると、ある程度言葉による意味合いが異なってきます。
前章で述べたアメリカのハルバート・L・ダン博士が、1961年に「ウェルネス」を提唱し、その後、1977年に全米ウェルネス協会が発足されたのに伴い、ウェルネスという言葉が広く普及するようになりました。ここでダン博士は、「輝くように生き生きとしている状態」がウェルネスの根源であると定義しています。
「健康(ヘルス)」は肉体的・精神的に健康であり、病気ではないことを意味していますが、それに対し、「ウェルネス」はもっと範囲が広がり、健康のための「手段」という意味合いが強くなっています。これは、病気の治療や予防という範疇を超え、生き生きとした生活を送るための行動に重点を置いていることともいえます。
またウェルネスを構成するのに、次の「7つの要素」があると言われています。
①感情のウェルネス
②知性/認知能力のウェルネス
③身体のウェルネス
④職業上のウェルネス
⑤社会的なウェルネス
⑥精神のウェルネス
⑦環境のウェルネス
3.日本におけるウェルネス経営推進
日本の健康経営は国を挙げて発展してきたことがご理解いただけたでしょうか。本章では国に後押しされ、健康経営に取り組んできた企業は、具体的に何を期待して推進してきたのか、また、健康経営に取り組むことにより、浮き彫りとなった諸々の課題についても解説します。
3-1 ウェルネス(健康)経営による赤字減少、業績アップへの期待
2022年、経済産業省は健康経営を開始した年を「0」とした場合、5年前から5年後までの売上高営業利益率の業種相対スコア〔注1〕の平均値を比較しました。
その結果、健康経営を開始する前の5年以内では、売上高営業利益率の業種相対スコアは負を示し、業種相対で利益率が低い状況であることを反映してしました。一方で、健康経営を開始した後の5年間では、業種相対スコアは正の値を示す傾向にあったと報告しています。
〔注1〕業種相対スコアとは、業種内において健康経営を推進した企業の利益率が相対的に高いか低いかを把握する指数を意味します。
この調査結果からもわかるよう、健康経営に取り組むことは、企業の業績が向上することが期待されます。
出典元:令和4年6月 経済産業省ヘルスケア産業課「健康経営の推進について」
3-2 健康への投資は3倍の投資効果がある
アメリカでは健康経営の実証と研究が進んでおり、Johnson & Johnson社では世界のグループ企業250社、約11万4000人に健康教育プログラムを提供し、健康投資に対する効果を試算しました。その結果、健康経営に対する投資1ドルに対して、3ドル分の投資リターンがあったとされています。引用元:令和2年9月 経済産業省ヘルスケア産業課「健康経営の推進について」
3-3 調査によって分かった健康経営のリターン
経済産業省は、健康経営と企業業績・株価の関係性を調査するため、過去の健康経営度調査の回答結果の分析を行いました。その結果、健康経営度調査のスコアが高い企業ほど、相対的に高いリターンを低いリスクで獲得できる傾向が見られたと報告しています。
以下の表は、健康経営度調査スコアの上位から20%ずつ、5つの組に企業を分けたもので、業種での偏りが生じないよう、業種別に組み分けを行ったうえで統合しています(スコア5分位)。また、シャープレシオとは、リスク1単位当たりの超過リターンを測るもので、この値が高いほど、同じリスクで高いリターンがとれることを意味しています。
≪健康経営と企業業績・株価の関係性≫
健康経営度調査のスコア5分位別のシャープレシオ比較出典元:令和4年6月 経済産業省ヘルスケア産業課「健康経営の推進について」
3-4 現在の国内における健康経営の課題
現在、日本企業の健康経営への取組みは、一見順調に進んでいるように見えますが、課題も浮き彫りになってきています。
それは、中小企業への普及の課題です。大企業においては、どの企業も健康経営を推進するメリットを認識したうえで、競うように様々な取り組みをおこなっています。よって「健康経営」の認知度は上がってきているのですが、「健康経営」の意味や内容まで把握している中小企業の経営者は、まだ低い水準にあるようです。健康経営の認知度向上に向けて、更なる周知が必要と思われます。
健康経営の認知度についての調査結果
<調査対象:全国の企業経営者10,065社>
引用元:大同生命保険株式会社 『中小企業経営者アンケート「大同生命サーベイ」2021年9月度調査レポート』
3-5 具体的な政府の取り組み
経済産業省では、中小企業等への健康経営のノウハウ提供を目的として、健康経営優良法人2022の取り組み事例集を作成しました。さらに、健康課題をテーマ別に中小企業におけるブライト500認定法人の事例を紹介し、健康経営優良法人の認定取得に対する地方自治体によるインセンティブ措置の具体例も掲載し、支援を行っています。出典元:経済産業省『健康経営優良法人2022(中小企業部門) 認定法人 取り組み事例集』
政府ではありませんが、東京商工会議所ではウェブサイトの『健康経営倶楽部』にて、健康経営アドバイザー制度や健康経営の取組サポート制度などのプログラムを展開し、健康経営を実践する企業をサポートしています。そのほかにも、協会けんぽの各支部や全国の市区町村でも、中小企業に向けた健康経営の取組み支援を行っています。
※出典元:東京商工会議所『健康経営倶楽部』
4. ウェルネス(健康)経営の今後の方向性
経済産業省は、健康経営の今後の方向性として、以下3つの項目をあげ推進しています。
- 健康経営の深化に向けて、自社従業員だけでなく、サプライチェーンや社会全体へとスコープを拡大。
- 健康経営に取り組むことが当たり前となり、評価する基準作りや質の担保を民間が主導する社会を目指す。
- 健康経営を国際的に発信し、日本企業の国際ブランドに。
また、健康経営の未来像として、過去から現在、さらに未来に向けて3つのフェーズに分類し、国の役割と民間の役割を明確にし、官民一体となって健康経営へ取り組む指針を打ち出しています。
引用元:令和4年6月 経済産業省ヘルスケア産業課「健康経営の推進について」
5.ウェルネス経営のメリット
ここまで、ウェルネス(健康)経営が注目されている背景から、国が率先してきた健康経営の取り組むべき理由、そして未来像を見てきました。本章では、ウェルネス(健康)経営に取り組むことで得られる、企業のメリットを具体的に解説いたします。
5-1 メリット① 従業員の健康不良による退職・休職の未然防止
企業の戦力としてバリバリ働いている従業員が、病気やメンタルダウンなどの体調不良により、勤務継続が難しくなり休職してしまうことは、企業にとってもダメージでもあり、大きな損失となります。さらに、残った従業員が休職者の業務を代替することで、労働時間の増大などによる負荷となり、退職へと導くことになってしまう可能性もあります。
ウェルネス経営に取り組むことは、労働環境が改善され、体調不良を起こすリスクが減り、このような負の連鎖を阻止することが可能となります。結果的にウェルネス経営は、従業員の健康被害などのリスクを下げる効果が期待できることから、休職者や退職者の発生を防ぐことにつなげられるのです。
5-2 メリット② 効率的な業務の遂行
労働環境が改善されると、健康状態も改善されると前述しました。さらに健康な身体と頭脳を維持することができると、業務に能力を注ぎ、効率的に対応できるようになります。これは単に業務効率が上がることだけではなく、アウトプットの質にも影響し、大きく向上します。
つまり、ウェルネス経営に真剣に取り組むことは、仕事のパフォーマンスが発揮できる環境を提供することでもあり、従業員としても業務を円滑に進めることができるようになります。従業員は、効率的に業務を遂行したという達成感や成功体験により、自信と成長へと繋がり、今後の自社の発展に大きく寄与することができるようになります。
5-3 メリット③ 企業ブランドのイメージ向上
第1章で解説した通り、2017年の「健康経営優良法人」の認定開始、および2021年度の「健康経営の取り組みに関する調査」において、優れた成果を挙げている企業の取り組み内容や情報が開示されるようになりました。
ここで挙げられた各社は「ウェルネス経営」を積極的に取り組み、従業員の健康を重視している会社であるという印象を与えやすくなります。その結果、従業員が安心して働ける環境が整い、従業員を大事にしている会社というイメージも強くなります。このことは、求職者へのアピールポイントにもなり、採用活動を効率的に進めたい企業にとっては、優秀な人材を採用しやすくなるメリットにもなります。
5-4 メリット④ 医療費の適正化に寄与
従業員が病気などにより通院し、医療機関に支払う医療費については、健康保険組合も負担することとなっています。2021年度の健康保険組合全体が抱える赤字額は6,700億円でした。この医療費を適正化することで、削減に導くことが急務な課題となっています。
その課題を解決するには、ウェルネス経営に取り組み、従業員が健康を維持できるようになれば、医療機関にかかる機会を減らすことができ、企業が負担する医療費を適正化することも可能となるのです。
以上見てきた通り、企業にとってウェルネス経営は、多くのメリットがあることをご理解いただけたのではないでしょうか。また、企業がウェルネス経営に取り組むことで、企業だけでなく、従業員にとってもメリットが得られます。主に以下のようなメリットとなります。
≪ウェルネス経営を導入することによる従業員のメリット≫
- ロイヤルティの向上
- 生活習慣病の予防・改善
- モチベーションの向上
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6.ウェルネス経営を実現するためのポイント
企業の規模に関係なく、メンタルヘルス等の不調が原因で退職を余儀なくされる従業員は、どの時代でも、少なからず存在します。ただ、この事実を当たり前に考えるのではなく、企業を支える大切な人材を失ってしまうという危機感を持つことが、ウェルネス経営の重要ポイントとなります
企業は従業員に長く働き続けてもらうため、健康投資をすることが重要であると説明してきましたが、本章では、ウェルネス経営に取り組む際、何を目指すべきなのか、どのようなことに注意すべきかポイントを押さえて解説いたします。
6-1 ポイント① 成果の可視化
ウェルネス経営に取り組むには、第一歩として、すでに蓄積されている従業員の健康データを分析して、可視化することが重要となります。例えば、データ分析により食事や睡眠に配慮している人は、仕事への取り組み姿勢が前向きで、職場でのコミュニケーションが良好だという結果が、可視化できることとなります。
従業員の年齢や職位などの偏りを考慮し、生活習慣のデータと業績データを掛け合わせると、ウェルネスに意識を向ける群の方がどれだけの割合でいるのかという実績を抽出することができます。可視化の結果、どのような取り組みをすると効果的か、などの検討からはじめると、ウェルネス経営の道筋が見えてきます。
6-2 ポイント② 目指すゴールは「健康」だけではなく社会貢献
まずは企業自体が元気で健康でなければ、社会貢献はできません。多くの企業が元気で社会貢献することで、社会全体も元気になり、幸福へと導かれていきます。ウェルネス経営の目的は、従業員の「健康」だけがゴールではなく、従業員一人ひとりの豊かな生活、それが社会全体に広がることです。そのためには社会貢献の重要性を考えていくことも必要となります。
6-3 ポイント③「働く」ことの意味を再認識
現在、現役で働いている人の中には、新卒入社して働き始めた人、仕事にも慣れチームリーダーにもなれてバリバリ働いている人、定年後でもベテランの力を発揮して頑張っている人など、様々な働き方や役割の人が混在しています。
ウェルネス経営とは、働きやすい環境で心身ともに健康的に働けることですが、中には負荷がかかり、「仕事はつらいもの」と考える人も少なくありません。「働く」時間でいかに健康的で楽しくいきいきとするかということを、皆で考えたり、辛いことを共有し、少しでも良い職場環境にしていくことも、ウェルネス経営の重要なポイントとなります。
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7.ウェルネス経営の導入事例
本章では、「ウェルネス経営」という言葉を用い、推進している企業の事例を紹介します。どの企業も、各業種の課題に合わせた特色のある取り組み内容で、非常に興味深い事例となっています。
7-1 事例① 株式会社丸井グループ
丸井グループのめざす「ウェルネス経営」は、「ウェルネス」の視点を通じて新しい価値を創り、社会全体を「しあわせ」あふれる場所にしていくことです。
「丸井グループのサービスによって心が豊かになる」。そういった目に見えない価値や信頼を創りあげていくには、イキイキと活力にあふれ、自らが「しあわせ」を感じられる社員が増えることにより、ワークエンゲージメントの高い組織へと変わり続けていくことが重要と考えています。
そうすれば、社員にとっても社会にとっても価値となり、「しあわせ」な社会の共創に貢献できることを掲げています。
①活力のウェルネス
丸井グループでは、今よりもっと活力高くイキイキとすることを重視し、社員一人ひとりが意識や行動を変え生産性をアップさせることで、企業価値向上と社会へのお役立ちにつなげることをめざし、活力を高めるためのウェルネス活動を強化しています。
【強化・活動内容】
- 今よりもっと活力高く、経営戦略としての「ウェルネス」
- 自ら手を挙げて参加する組織風土がウェルネス活動を加速させる
- プロジェクトメンバーを起点にWell-being活動を拡げる
- トップ層へのアプローチ「レジリエンスプログラム」
②ウェルネス活動と組織の活力向上の可視化
丸井グループは、ウェルネス活動の取り組みによる効果を分析することで、ウェルネス活動と組織の活力の関係の見える化を図っています。活動が活発化している事業所では、ワークエンゲージメントを高める指標が伸長するなど、ウェルネス経営の取り組みが会社全体の活性化につながっていることが数値としても見えてきました。
【具体的な取り組み】
- 全社員の67%が、社内のウェルネス活動に参加
- ストレスチェックを職場の活性化に活用
- 組織の活性度調査(組織健康度調査)のハイブリッド運用
出典元:丸井グループ「サステナビリティ」
7-2 事例② 楽天グループ
楽天では、従業員一人ひとりの心と体の健康の発展と維持を目的とした取り組みとして、ウェルネスを推進しています。2018年に新設されたウェルネス部が中心となり、社内における従業員の健康意識の向上と実践を精力的に推進しています。
前段として、2017年頃に楽天の組織体制の中にコーポレートカルチャーディビジョンという組織が創設され、その後、CWO(チーフウェルビーイングオフィサー)という役職も設けられました。従業員のみならず、楽天全体に関わる人の「ウェルビーイング」を高めていくことを目的としており、楽天グループのあり方や、従業員の行動指針・価値観を示す「楽天主義」に基づいて活動しています。
その組織の配下にあるウェルネス部は、2018年12月頃に人事部とは別の組織として開始しています。三木谷社長が「楽天創業以降、自分たちが脇目もふらず仕事に専念していた時代から、企業は成長と多様化により、組織の規模が大きくなった。今は、従業員の体調という面にこれまで以上に目を向ける必要があるフェーズになってきた」という言葉がきっかけとなっています。
人事部は、従業員の身に何か起きた時に対応するという労務管理および事態を予防する機能(健康診断や予防接種など)を持っていますが、ウェルネス部は、個人の健康意識の醸成や組織としての健康増進に関する推進体制の強化のために発足しています。
引用元:Rakuten.Today「Rakuten Innovation」
【具体的な取り組み】
かつては、カフェテリアメニューの改善やジムを活用したフィットネスを推進していましたが、新型コロナウイルスの影響で出社する従業員が大幅に減り、多くのことがオンラインにシフトしました。
それに伴い、今まで行っていたことをより多くの人に実施することが可能になりました。ウェルネスサーベイを踏まえて把握した睡眠不足や体重管理、運動不足というような課題に対して、従業員の健康リテラシーを向上させることを目的に、オンラインのセミナーを行いました。
参加者は毎回400人くらいと、オンラインで開催することで、より多くの従業員に参加してもらうことができました。海外から参加される方もいたり、初めて参加したという方が増えたりと、大きな変化があったそうです。
引用元:Rakuten.Today「Rakuten Innovation」
7-3 事例③ 野村不動産グループ
野村不動産グループは、「ウェルネス経営の取り組み」として、以下のように謳っています。
“野村不動産グループは、職員の心身の健康を何よりも大切にし、すべての役職員が、心身ともに健康で、活き活きと仕事に取り組むことが企業の持続的な成長につながる「ウェルネス経営」を目指します。”
さらに、健康経営宣言においては、以下の通り宣言しています。
“野村不動産において、人財は最大の財産であり、社員が心身ともに健康であることが、未来につながる新たな価値創造の源泉であると考えます。この人財を基軸とする理念に基づき、私たちは、社員の健康保持・増進を積極的に支援する健康経営を推進いたします。”
これらの宣言などからもわかるように、野村不動産グループは、ウェルネス経営に深く取り組み、日々努力していることが伺えます。
ウェルネス経営の概念図
引用元:野村不動産グループ「ウェルネス経営への取り組み」
野村不動産グループは、ウェルネス経営の推進施策として「ウェルネス」「働き方改革」「ダイバーシティ&インクルージョン」の3つの項目に分類し、取り組みを行っています。
【ウェルネス】
①メンタルヘルス不調等に対する段階的予防の徹底
- コミュニケーションの活性化(0次予防)
- 未然防止(1次予防)
- 早期発見・対応(2次予防)
- 再発防止(3次予防)
②生活習慣病の予防などの疾病の発生予防
~生活習慣スコアとして取得しモニタリングしています~
- 継続した運動機会の提供(スポーツジム利用料の費用補助)
- ウェルネス推進強化月間の実施(2018年から毎年12月実施)
- ヘルスリテラシーの向上
- 女性の健康サポートの充実
- 喫煙室の閉鎖
- 新型コロナウイルス感染症対策
- 仕事と治療の両立
③健康経営優良法人2021(ホワイト500)認定
【働き方改革】
生産性と働きがいの向上~誰もが働きやすい環境整備に努めています~
- フレックスタイム制度の導入
- テレワーク勤務制度、サテライトオフィスの導入
- ICTの活用
- 業務効率化への取り組み
- 本部単位での時間外労働削減の取り組み
- 過重労働防止の取り組み
- 各種休暇制度の設定
【ダイバーシティ&インクルージョン】
①多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる環境を提供することで、独創的な新たな価値創造につなげていくダイバーシティ&インクルージョン
- 1on1ミーティングの実施
- 女性活躍推進
- 同好会
②企業のLGBTQに関する取り組みの評価指標「PRIDE指標」で「ブロンズ」を受賞
以上のことからもわかるように、野村不動産グループは「ウェルネス経営」に向けて、様々な取り組みを実践しています。「ウェルネス」「働き方改革」「ダイバーシティ&インクルージョン」の3つの推進施策の詳細を確認したい方は、出典元に記載した「ウェルネス経営への取り組み」のホームページをご確認ください。
以下のホームページの最後には、「ウェルネス推進への取り組み実績」として2017年度から経年での実績が公表されています。さらに2022年度の目標値も掲載されていますので、ご興味のある方はご覧ください。
出典元:野村不動産グループ「ウェルネス経営への取り組み」
8.まとめ
本記事では、多くの皆様が最近注目している大手企業のウェルネス経営の取り組みについて解説いたしました。どの企業も非常に興味深い取り組みをされていますが、健康経営推進部門の方たちの、日々の並々ならぬ多大な努力の結晶と見受けられます。また、この取り組みが最終形ではなく、流動する世情に合わせ、さらに試行錯誤しながら進化していくことになるでしょう。
今後の日本においても、少子高齢化による人材不足が大きな問題となっていますが、健康でいきいきと働くウェルネス経営を推進することこそ、このような日本の労働市場を救う経営手法になると考えられます。まだウェルネス経営に取り組んでいないあるいは取り組んでみたがあまりうまくいっていないと感じている企業担当の方は、従業員一人ひとりの健康管理しっかりと行うことで、より長く働いてもらえることにつながることを信じ、時間がかかる取り組みかも知れませんが、一歩ずつ着実に取り組んでいただくことをお勧めいたします。
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