健康経営のその先へ~注目されるウェルビーイング戦略とは~
近年、「健康経営」に取り組む企業が増えております。皆様の会社でもすでに取り組まれているところも多いのではないでしょうか。健康経営は、すべての企業が取り組む必要のある経営の考え方になりました。そのような社会環境の中で、健康経営より先進的な取り組みとして注目されているのが「ウェルビーイング経営」です。 本記事ではウェルビーイングの考え方から、ウェルビーイング経営の事例、実践する上でのノウハウをご提供いたします。
※この記事は、2021年8月17日に開催されたウェビナー『健康経営のその先へ~注目される"ウェルビーイング" 戦略とは?~』の内容をもとに作成しています。
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目次
1. 企業を取り巻く現状とウェルビーイング経営について
ウェルビーイング経営とは何かをご説明する前に、注目されるようになった時代背景から見ていきましょう。
1.1 外部環境の変化について
ご存じのとおり2020年、日本だけでなく、世界全体で未曽有の疫病が蔓延しました。その影響もあり働き方や生活が多く変化したのは、皆様も身をもって体験されたかと思います。このような外部環境の変化、変化への対応は今後も継続していくと想定されます。
新型コロナウイルスが蔓延する前から中長期的に会社を成長させるための施策等を講じていた企業も、優先順位が大きく変わったのではないでしょうか。限られた予算、人手の中で本来やらなくてはいけないことが後回しになっていたり、そのことで人事部門の担当者様の業務負荷も大きくなっているかも知れません。 しかし、こうした状況に手探りの状態で対応していては、従業員の不安や不満も蓄積してしまう一方です。なんといっても、日本は急速に進む超高齢化社会です。現在、約6,400万人いる労働人口も40年後には4割減少してしまうと言われています。 今後も加速化する人手不足の労働市場で、企業が生き残るために注目されるようになった考え方がウェルビーイング経営です。
1.2 ウェルビーイングとは
ウェルビーイングは「心身ともに、さらに社会的にも健康な状態を指し、満足した生活を送れる状態にあること」と定義されています。 さらに詳しくウェルビーイングを見ていくと、次の5つの要素が重要となります。
① Positive emotion ・・・嬉しい、楽しい、感謝、希望などの感情を持てている状態
② Engagement ・・・仕事などに集中して積極的に関わりを持てている状態
③ Relationship ・・・人との関係などに恵まれている状態
④ Meaning ・・・仕事や人生に意味や意義を持てている状態
⑤ Accomplishment ・・・目標に向かって自己実現できている状態
出典元:心理科学研究所
URL:https://wwwr.kanazawa-it.ac.jp/wwwr/lab/lps/perma_profiler/perma_profiler.html
上記5つの要素を満たした従業員は「イキイキ」働いているのが容易に想像できます。ウェルビーイング(Well-Being)は翻訳すると「幸福」と訳すことができます。世界的にも注目されている考え方で、アメリカ企業でも積極的に取り入れられています。 ウェルビーイングを企業経営に落とし込み、従業員一人ひとりに潜在能力を発揮してもらうことで、企業としての中長期的なパフォーマンスを高めようとするマネジメント、考え方がウェルビーイング経営です。
1.3 ウェルビーイング経営が求められる理由
ウェルビーイング経営が求められる理由は、環境変化と労働力人口減少の中で企業を持続可能にし、成長させ続けるためです。経営資源の中でも重要な位置づけである、優秀な人材の維持・確保を実現するためには必要不可欠な考え方なのです。その理由は大きく2つあります。
1つ目は、社会における価値観の変化です。昨今、日本だけでなく世界全体で働き方だけでなく、生き方そのものについての価値観が多様化しています。一昔前までの、自己犠牲的な働き方が見直され「自分らしく働ける環境づくり」が求められるようになってきました。そのような社会においてウェルビーイング経営は高く評価されており、労働市場における社会的企業価値の向上に繋げることができます。
2つ目は、冒頭でも触れた慢性的な人手不足です。新型コロナウイルスの影響もあり、一部業界では一時的に買い手市場に転換したかのように見えていますが、終息後は「人材減・求人増」になり、人材獲得競争が激化します。そのような状況では、高給与・好待遇だけでは優秀な人材の確保ができなくなります。採用市場においてもウェルビーイング経営が評価されるようになり、実践している企業に優秀な人材が集まってくるようになります。また、ウェルビーイングな状態で潜在能力を発揮している従業員が多い企業は生産性も高くなります。量と質の両方で優秀な人材確保を実現することができるのです。
1.4 ウェルビーイング経営のポイント
ウェルビーイング経営のポイントは、2つあります。
1つ目は、ウェルビーイング経営では従業員の「仕事」と「生活」両方のサポートが必要なことです。従業員の課題というと、しばしば働き方や職場コミュニケーションなどといった仕事の課題に目を向けられがちですが、育児・介護との両立や生活習慣、老後の経済的不安、新型コロナウイルスによる生活変化などといった生活における課題の解決も必要になってくるのです。
2つ目は、従業員のウェルビーイングの状態は、人事施策等の成果を的確に表す先行指標になることです。今までは、人事施策を講じてから業績向上や離職率低下などといった組織的成果に現れるまで、時間がかかってしまい、成果までのプロセスも不明瞭でした。人事部門のご担当者様も、人事施策を講じる際、経営層に対して、本当に効果がある施策なのかを示すのに苦労されてきたのではないでしょうか。従業員のウェルビーイングの状態に着目することは、的確な施策を講じる上でも重要です。
2.ウェルビーイング経営の事例紹介
ウェルビーイング経営を実現するためには、仕事だけでなく生活における課題のサポートが必要とお伝えしました。次の5つの観点で従業員の課題解決が必要になると思われます。
① 「仕事」
② 「プライベート」
③ 「健康」
④ 「生活習慣」
⑤ 「経済状況」
今回は5つのカテゴリの内、2つのカテゴリに絞った事例をご紹介します
2.1 生産性向上を実現し過去最高益を達成した事例(IT企業A社)
①「仕事」の課題
こちらの会社は、長時間労働が課題になっていました。システムエンジニアを多く抱え、職種柄、システム保守などといった365日24時間の対応が必要でした。そのため、残業が当たり前の企業風土になっていました。
②講じた施策
《残業時間削減と有給休暇取得促進》
残業時間は月に20時間以内とし、有給休暇は付与される20日分を完全取得するように従 業員に促しました。
《達成度合いに応じてボーナスや懇親費用を支給》
残業時間削減と有給休暇取得向上率に応じて、組織と従業員に対して追加ボーナスや懇親費用の支給を行いました。その費用の原資は、削減された残業代が原資となっておりました。
これらの取り組みの結果、従業員労働時間が減少したのにも関わらず、会社としての業績は過去最高益を達成しました。
2.2 ユニークな育児制度による高復職率達成と『プラチナくるみん』取得事例(化粧品会社B社)
①「プライベート」の課題
B社では女性が多く活躍しており、出産・育児休業後に従業員が退職してしまうことで優秀な人材を手放してしまうことが課題でした。
②講じた施策
従業員が辞めなくて済む方法を考え、早い復帰をサポートするために3つの施策を講じました。
《育産休担当の設立》
人事グループ内に育産休担当を設立し、従業員からの悩み相談を密にできる体制を作りました。
《復職復帰手当の新設》
生後6か月以内で復職した場合
・子供が1歳半になるまで毎月5万円支給
・子供が3歳になるまで毎月1万円支給
《フレキシブルな時短勤務制度の導入》
1か月単位で勤務時間を「6時間」または「7時間」どちらかで選択可能な、柔軟な時短勤務制度を導入しました。
これらの取り組みの結果、育児休業復職率が約93%と高い水準を維持。また、社会的にもPRできる「プラチナくるみん」も取得しました。
本章では、2つのカテゴリの課題解決事例をご紹介しました。しかし、ウェルビーイング経営を実現するためには様々な部署が協力をして、組織としてプロジェクトを進めていく必要があります。
3.ウェルビーイング経営の基本プロセスと課題例
ここまでウェルビーイング経営の概要と、実際に取り組んでいる企業の事例をみてきました。本章では、これからウェルビーイング経営に取り組むには、何から手を付けていけばいいのか、プロセスと取り組む際の課題事例を紹介します。
3.1 基本プロセス
STEP1:ゴールの設計・・・自社の現状に合わせてゴールを設計する
STEP2:現状の把握・・・サーベイを構築・利用し現状を把握する
STEP3:課題の可視化・・・現状を把握した後に課題を分析し優先順位を付け、解決策を立案する
STEP4:課題の解決・・・立案した解決策を一つひとつ実行していく
3.2 課題例
・自社に合ったゴールを設計したいが専門的な知識やノウハウが無い
・そもそも何から始めたら良いか分からない
・サーベイを構築できる人がいない、ノウハウがない
・課題の解決策が適切か判断できない ・課題の優先順位がつけられない
・施策の立案と実行する人手がいない など
企業が100社あれば、100社それぞれの課題が出てきます。各社様々な課題がありますが最も重要で多くの企業が直面する課題は、「ウェルビーイング経営の仕組み作り」と「PDCAの最適化」です。
健康経営の第一歩からPDCAの循環まで「健康経営推進支援サービス」
健康経営を推進する上で必要な「健康経営度調査」「健康投資管理会計ガイドライン」などを活用して、貴社の健康経営の第一歩からPDCAを回していくお手伝いをするコンサルティングサービスです。
4.まとめ
ウェルビーイング経営を進めていく過程で、多くの企業が直面する「ウェルビーイング経営の仕組み作り」と「PDCAの最適化」を実現するためには、根拠に基づいたデータの利活用が不可欠です。まずは、社内で利用可能なデータを収集し、組織の現状を正しく把握・課題の可視化から始めてみてはいかがでしょうか。
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