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2024/03/01 (公開:2022/03/31)

360度評価とは?導入のメリットや成功事例を紹介


360度評価とは?導入のメリットや成功事例を紹介

昨今、多くの企業で「360度評価」が導入されつつあります。そもそも360度評価とは何かを理解し、そのうえで適切に導入することで、企業内の人事評価体制をプラスの方向で大きく変えることができるかもしれません。この記事では、360度評価のメリット・デメリット、またその手法や事例について紹介いたします。

         

1.360度評価とは

多くの企業で導入が進む「360度評価」。従来までは直属の上長や人事による単一的な人事評価であったのに対し、仕事上関わりのあるさまざまな部署の担当者やその上長、また取引先などの、さまざまな外部指標を総合的に評価示準とするのが360度評価です。では、360度評価を導入する企業が増えているのはなぜでしょうか。その目的や特徴を紹介いたします。

          

1-1 360度評価の目的

「直属の上司では気付けない 当人の特徴を得る」ことが360度評価の最たる目的です。気づいて欲しいこと、また 当人も気づいていないような良い点・悪い点に多方面かつ複数の視点で気付くことにより、客観的に評価を得られていると感じること、それによって企業への信頼感が高まることがねらいです。

          

1-2 360度評価の特徴

直属の上長という一方的な評価によって自身の価値が決められてしまう従来までの評価制度は、立ち返って考えてみれば合理的であるとは言えません。対して360度評価では、複数視点で評価をしていくことが一番の特徴です。当人や直属の上長では判断しづらかった、目に見えていなかった評価に気付くことができる、今までにありそうでなかった評価制度であることもまた特徴です。

                

2.360度評価のメリット

多くの企業で導入が進んでいるのには、以下のようなメリットがあるからです。ここでは、実際にどのようなメリットがあるのかについて紹介していきます。

          

2-1 客観的評価が得られる

自身や直属の上長だけでない、客観的な評価が得られることが、360度評価の良い点のひとつです。狭い範囲で評価を得ようとすると、得られる情報が主観的になってしまうおそれがあります。“周りから見てどうなのか”“客観的に見ると非常に優秀である/優秀でない”といった客観的評価や比較によって、優れた人材を見つけ出すことが副次的な効果として期待できます。

          

2-2 評価が一極集中することを防ぐ

業務だけでなく、評価も属人化することがあります。例えば、所属する部署内に、長く居る上長などがいると、評価は一点に集中するおそれがあります。また、中間管理職と上長が元々の上下関係にある場合など、年功序列をベースとした大企業や、組織間の上下関係が強い企業では、さらに評価の一点集中を招きやすい環境下にあります。360度評価では狭い組織関係でのみの評価と異なり、業務に関わる多くの人が評価に参加します。よって、評価が個人の主観や贔屓などにのみ決定されることなく、幅広い判断基準により総合的に判断されることが良い点であると言えるでしょう。

          

2-3 業務内容や人間関係を把握できる

関わりのある部署から評価をもらうことにより、意外な人間関係の発見や、部署間の連携を発掘し、今後の部署同士の連携を図ることを検討できるようになります。また、組織内で 明らかに周りからの評価数が多い/少ないといった差が出るときには、業務の個人への集中度合いや、人間関係構築力の差などに気付くことができるため、業務体系を見直すきっかけにもなり得ます。

              

3.360度評価のデメリット

非常にメリットが多く見える360度評価ですが、もちろん 導入に伴うデメリットやハレーションも想定しなければなりません。ここではメリットに対し、注意しなければならないデメリットを紹介します。

          

3-1 社員にハレーションを及ぼす

急に人事評価制度が変わることは、会社にとって非常に大きなハレーションを生みます。中長期的に評価制度を制定したばかりの企業では、なおのこと導入には慎重になる必要があります。評価制度にどのような良い点と悪い点が存在するのか、どのような目的で導入し、どのように組織改善や育成に役立てていきたいのかなどについて、きちんと説明する義務が企業側には存在します。また、説明資料の作成など、人事担当者の大幅な工数増が一時的に見込まれることもまた大きな壁となり得るでしょう。

            

3-2 評価対象者の選定方法を定めなければならない

評価制度に自身の所属部署以外が絡む以上、その選定にはより慎重になる必要があります。理由として、選定する第三者を自由や適当な酌量で定めてしまうことにより談合が生まれるおそれがあるためです。つまり、“仕事上どのような関わりがあり、どのような関係性にあるか”を把握するためのスキームが必要になるのです。とはいえ、上長や人事担当者も、誰が誰とどう関わっているかを完璧に把握することは現実的に不可能です。よって、当人へのヒアリング、およびその精査などのステップを、評価開始前に進めていく必要があるでしょう。

        

3-3 継続的実施を必要とする

360度評価を導入する以上、一度きりの実施で終えずに、継続的に同じ評価基準で人事評価を実施していく必要があります。単発で終えてしまうと、ただ そのときの評価が得られるだけであり、変遷を測ることができないためです。実施後に当人へ結果をフィードバックし、具体的にどのように改善を進めていくか、また 次年度にはどう改善されたか、次に何を目指していくか、といったサイクルを実現するためにも、どのように、どのタイミングで実施していくかを事前にきちんと定めておく必要があります。


        

4.360度評価の方法

それでは、実際に360度評価を行ううえで、3つの視点に分けて評価元・評価基準を考えてみましょう。

          

4-1 現場+上長の評価

従来どおり、当人の所属する部署内での評価は絶対的なものとして必ず必要になります。現場意見として、所属する部署内でどのような業務をこなしたか、どう貢献したかなどは、上長もバイアス無く偏ることなく判断ができる要素でしょう。主観的にならず、部署内全体として見たときにどうであったか、適切に判断し評価を下す必要があります。

           

4-2 自己評価(プロセス評価)

自身の行動がどうであったか、適切に目標を達成できたか、業務過多であると感じていないかなどは、当人が感じることをきちんと汲み取る必要があります。結果として目立った業績が無くとも、次年度につながる行いや知識・ノウハウの吸収ができたのであれば、それは立派なプロセスになり得ます。そのためには、組織や部署にとってどのようなプラス要素があったのか、評価の要素となるようにきちんと意見を吸い出せる環境を作っておく必要があります。

           

4-3 第三者評価

4-1と4-2では、今までの評価軸にも組み込まれている企業が多いでしょう。ここで+αされる要素が360度評価の肝となります。関係する周りの評価を取り入れるため、関係した他部署の上長や業務担当者、また関係する企業とのメールでのやり取りなど確認します。このような外的要素を積極的に取り入れることにより、どのような関係性構築が行えたか、どう貢献したか、他部署へどのようなプラス影響を及ぼすことができたか、またはマイナス要素を及ぼすことになってしまったかなどについて把握することができます。

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5.360度評価の成功事例

360度評価を非常に上手く取り入れ、業績向上や人材育成に活用している企業を3例、ご紹介いたします。

          

5-1 アイリスオーヤマ株式会社

生活家電で有名なアイリスオーヤマ株式会社。上司、同僚、部下、それぞれ5人ずつ、あわせて15人程度が1人を評価する、非常に完成度の高い360度評価を実施しています。自分の上司のことも、公表しないことに注意し、忌憚ない意見を提出します。人事の評価に偏りが出ないよう、外部に委託して点数をつけるなど、人事すら評価を見ていないことが特徴です。

2003年、評価結果を人材育成に活かし、本人が評価に対して納得すること、フィードバックにより自身の強みや弱みに気づき自己成長につなげるために導入したこの制度は、今もなお社内で高い満足度を維持しているようです。評価だけでなく、成長のための一因として360度評価を活用する事例のひとつです。

           

5-2 株式会社クレディセゾン

信販会社であるクレディセゾンは、独自の「夢中力アセスメントプログラム」を導入しました。これは、“仕事で活躍をするには、目の前の仕事に夢中になるか、夢中になれることを仕事にするしかない”という理念を「夢中力」と表現し、自分の「夢中力」がどの程度なのかを一点的ではなく多点的に評価するものです。

  • 兄貴・姉御系
  • 切り込み隊長系
  • 異彩オーラ系
  • インテリガテン系
  • こだわり職人系
  • ナントカします系
  • メンバー思い系
の7つのキャラクターから『夢中力タイプ』を導き出します。この360度評価制度は全正社員が実施対象です。複数ある評価結果と、社内のハイパフォーマーの行動パターンから分類します。それぞれに合った目標管理の項目に組み込んでいくものとして活用することにより、自分が周りからどのように見えるかを知り、自分自身で目標を決め、周りの評価者およびその評価が客観的に理解できるようになります。

           

5-3 アサヒビールグループ

360度評価は管理職育成に絞って活用するのも良いでしょう。
上手く活用・導入しているのが、ビールなど飲料メーカーとして有名なアサヒビールです。“人と職場の活性化”を目標に、従業員の主体性に基づく“対話”を重視した人事制度の仕組みを整えています。そこで、課長、部長、支社長、工場長といった管理職を公平に評価するツールのひとつとして導入したのが360度評価制度です。

この評価結果をもとにグループコーチングを実施することで、マネジメントスキルの向上に役立てています。自己評価だけでなく、上司、同僚、また管理職ならではである“部下”からの評価を取り入れることにより、その差に気づくとともに、評価後に実施する研修の講師、同じ管理職メンバーのアドバイスを参考に、自分自身のマネジメントの課題を見つめ直すことで、マネジメント力の向上に役立てているようです。

また、収集をするだけでなく、部下を評価する上司を対象として、制度の正しい理解と評価スキル向上を目的とした研修(全所属長研修、新任所属長研修、など)を実施しています。

        

6.360度評価の導入時に失敗しないための注意点

ここまで聞くと、360度評価を導入することによる良い点が非常に多く見えてきます。すぐにでも導入を検討したいところではありますが、導入にあたっては失敗例にも着目する必要があります。この章ではその注意点を確認していきます。

          

6-1 短期的な費用対効果が優れない

360度評価は長期的、および継続的に行って初めて効果が結果となって顕れます。つまり、一度だけの実施や短期的な実施では得られる効果が薄いということです。かかる費用や工数などを明確にしておき、そこに対し一定の理解を得られるよう準備を進めていく必要があります。どのくらい大切であるのか、同時に重要性をきちんと伝え、制度で得られた効果を将来的にどのように活用していくかなどを説明することにより、経営層の理解を得るべきでしょう。

           

6-2 現場への負担や工数が増える

制度として、どのようにヒアリング対象を選定するのか、何にどのように記すべきなのか、誰がどの程度の工数を割いて、現存の評価制度をどう置き換えるか、共存させるか、などを定め、協力体制を敷いておく必要があります。というのも、導入により現場への負担が増えてしまうことはどうしても免れないためです。増えてしまうことはどうしても避けられない、その代わりにこういった効果が得られる、といった理由をきちんと説明し、納得してもらうほか解決策はありません。人事側としての現場へのサポートが必要となります。

           

6-3 導入に納得しないおそれがある

これは、説明が不十分だった際に予測される、悪いハレーション例のひとつです。どうして導入するのか、将来的に会社がこのようなビジョンを思い描いている、といったことをきちんと説明する場を設け、かつサポートする体制があることを説明していく必要があるでしょう。それでも納得が得られない場合、制度の導入体制を見直すか、導入自体を見直すこともまた求められます。

        

7.職場内で気をつけるべき3つの注意点

導入にあたっての注意点だけでなく、導入後にも注意すべき点を押さえておきましょう。上長と人事のみが知り得る評価に一般の従業員が関わることになるため、プライバシーなどに関するセンシティブな要素を特に重要視し、情報の管理をはじめとした注意点を紹介します。

          

7-1 評価の目的を定かにする

360度評価の主な目的は、「対象者の能力を評価する」のではなく「対象者の職場での行動状態を観察、本人にフィードバックし成長を促す」ことに主眼が置かれています。フィードバックにより、自身の日常業務および対人関係での行動や立ち振る舞いに気づきを与え、成長を促すことこそが目的なのです。評価内容により人事異動や昇降格に反映させるのには不向きであるため、得られた評価をどう用いるのかなどは、本来の目的から逸れないように注意を払う必要があります。

           

7-2 談合が起きないよう配慮・日ごろからの行動変容

「自分の評価はおそらく君に行くと思うので、良く話しておいてくれ」といったような事前の談合が起きないよう配慮する必要があります。つまり、周辺人物だけに予測や偏りが生じないよう注意をしながら評価者を定めるための示準を設けるべきということです。“自分は常にだれかに評価されている、だからこそ日々の積み重ねでどう上司や部下と接しよう”と考えさせる、行動変容の誘引こそが360度評価のねらいでもあるため、周辺人物への談合や圧力が発生しないよう配慮が求められます。

そのために、日常より誰に対しても感謝を伝えたり、“ありがとう”の気持ちを気軽に伝えられる仕組みを導入することで、働く従業員は上下関係なくフラットな関係性を築くことができるでしょう。次の一年に向けて行動変容を起こすきっかけになる仕組みを導入することでエンゲージメントも高まります。評価制度の導入と同時に、このような仕組みをともに導入することもまた、将来的な組織改善には求められています。

           

7-3 評価元の特定を避ける

誰が誰をどう評価したのか、といった情報が漏れることは絶対に避けなければなりません。「〇〇さん、私のことをこう評価したでしょう」といった逆恨みが発生し、日常業務やこれからの職場上の付き合いに影響を及ぼすような事態も招きかねません。情報を取得するルート、通達するルート、得た情報をどう管理するのか(アクセス権限を限定するなど)、想定されるリスクを洗い出し、管理体制をきちんと整えておく必要があります。

        

8.まとめ

最近聞かれるようになってきた360度評価は、その重要性や得られるメリットから、導入する、導入を検討する企業が非常に増えています。従来までは単一的かつ一方的であった評価が、ビジネス上で関わる多くの人との関係性をベースにすることで、今まで見えなかった評価が見えるようになり、意外な人材発掘につながる可能性があります。

ただし同時に、得られるメリットだけでなく、導入することによって発生するおそれのあるデメリットやハレーションにも目を向ける必要があります。そのために必要なのは、“次の一年に向けた行動変容を起こすための仕組み”の導入や活用です。日ごろより感謝を伝えたり、適切に評価される、誰かが見てくれている、といったことが目に見えるようになれば、評価者も評価を受ける側も、少しでも良い影響をもたらそうと行動が変わっていきます。ひとつずつ、良い行動を起こせるような仕組みと、それを適切に評価する制度、その2つが正しく回るように制度を定めていけば、個人の成長だけでなく、組織力の向上もまた見込めるでしょう。

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著者情報

株式会社イーウェル ウェルナレ事務局

「人も、企業も、ウェルビーイングへ。」をテーマとして、企業の健康経営や福利厚生の支援を行う株式会社イーウェルが運営する、BtoB(人事総務向け)オウンドメディア「ウェルナレ」の編集部。
2021年7月にメディアリリース後、毎年60回以上、有名企業様とのコラボセミナーや官公庁の専門分野に特化した方を招いてのカンファレンス、大学教授による福利厚生勉強会の開催や専門家記事の掲載などを実施し、多くの方に好評いただいております。
人事部署や経営者が、会社のウェルビーイングを向上されるためのヒントを探して、日々活動しています。

 

    

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