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2024/03/01 (公開:2022/11/15)

働き方改革は中小企業には難しいのか?取り組み方や考え方について


働き方改革は中小企業には難しいのか?取り組み方や考え方について

さまざまな業界や企業で「働き方を改善する動き」があります。しかし、特に中小企業ではまだまだ働き方改革に取り組めていないのが実情です。働き方改革をどう進めれば良いのだろうと悩む経営者も多いことでしょう。

 

本記事では、働き方改革の取り組みや考え方を解説します。中小企業において、働き方改革を実現する方法を知りたい人にはピッタリの内容です。ぜひ参考にしてください。

 

         

1.働き方改革とは?

働き方改革とは、働く人々が個々に応じた柔軟な働き方を「選択」できるようにする取り組みです。

 

少子高齢化による人手不足は、今後さらに進むと言われています。総務省によると、2050年には総人口が約9,500万人、生産年齢人口が約5,000万人に減少するとのことです。

 

国力の低下を避けるためにも、人々が柔軟な働き方を選択でき、生産性を高める必要があります。そのためにも、企業が働き方改革に取り組むことは重要です。

出展元:総務省「我が国における総人口の長期的推移」

  

              

2.働き方改革関連法における11の変更点



働き方改革を実現するために、働き方改革関連法が整備されました。以下では、11の変更点を解説します。

          

2-1 時間外労働の上限規制

2019年4月1日から、時間外労働の上限規制が開始されました。具体的には「残業時間は月45時間、年360時間まで」になりました。

 

なお、特別の事情がなければ、上限の超過は認められていません。残業時間の規定である月45時間を超えられるのは、1年に6ヶ月までです。なお、中小企業への適用は1年間猶予され、2020年4月1日から適用されています。

出典元:厚生労働省「時間外労働の上限規制わかりやすい解説」

 

        

2-2 勤務時間の調整導入

労働者の働き過ぎを防ぐために、勤務時間の調整が実施されました。具体的には、前日の終業時間と翌日の始業時間との間に「一定のインターバル」を設けなければいけません。

 

たとえば、終業時間と始業時間との間に「12時間のインターバル」を確保するとします。前日の最終就業時間が20時の場合は、翌日は8時に始業。最終就業時間が22時の場合は、10時から始業をおこない、始業時刻を後ろ倒しにします。

適切なインターバルがあれば、労働者の働き過ぎを防止することも可能でしょう。

出典元:厚生労働省「勤務間インターバル制度をご活用ください」

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2-3 年次有給休暇の取得



2019年4月より、企業が労働者に対して年5日の有給休暇を取得させることが義務付けられました。

 

厚生労働省の令和2年の調査によると、年次有給休暇の取得率は56.6%と昭和59年以降過去最高です。しかし、仕事や同僚の負担への気遣いもあり、企業によっては取得率がなお低調なところもあります。

 

年次有給休暇の取得をさせなかった場合は、今後罰則が科される可能性があるため、積極的に取り組んでいかなければなりません。

出典元:厚生労働省「令和3年就労条件総合調査の概況」



   

2-4 月60時間超の残業の割増賃金率引き上げ

2023年4月より、中小企業における1ヶ月の労働時間が60時間を超えた場合の割増賃金率が引き上げられます。具体的には、25%から50%まで引き上げられ、これは大企業と同じ水準になります。

 

法改正前は、中小企業では月60時間を超過してもしなくても、残業割増賃金率は25%のままでした。しかし、2023年4月からは、労働時間が増えるほどコストも増大します。そうならないためにも、今のうちから社内や部署内で、効率化を図った動きが必要です。

出展元:厚生労働省「月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」


   

2-5 労働時間の把握

企業がすべての働く人の労働時間を把握することが、法改正で義務付けられました。労働時間を把握することで、労働者の働き過ぎを防ぐためです

 

特に働き方改革がまだ進んでいない中小企業は、労働時間が過剰になる可能性があります。長時間労働が続くと生産性が落ちるばかりか、社員の心身に影響を及ぼすことも。

 

具体的な施策としては、タイムカードと勤怠管理システムを連動させることが有効です。

 

出展元:厚生労働省「労働時間の適正な把握 のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」

   

2-6 「フレックスタイム制」の清算期間の延長



改正前は、フレックスタイム制の清算期間は1ヶ月が上限だったのに対し、改正後は3ヶ月まで延長されました。

 

たとえば、繁忙期の6月に長く働いた分、8月の労働時間を短くできるといったことが可能になります。

 

フレックスタイム制の自由度がより増したため、働く人は必要なときに必要な分だけ働けます。社員のワークライフバランスを保つためにも役立つ制度なので、導入する価値はあるでしょう。

 

出典元:厚生労働省「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」

 

2-7 高度プロフェッショナル制度の導入

少ない労働時間で成果が出せる人には、高度プロフェッショナル制度を用意すると良いかもしれません。具体的な対象者は以下の通りです。

 

  • 高度な専門知識や技術が必要な仕事に従事している
  • 業務内容が明確かつ合意している
  • 年収が1,075万円以上である

これらに当てはまる労働者は、在宅勤務や労働時間を調整できるため、働き過ぎを防げます

 

しかし、労働時間を調整できる反面、成果を出せなければ働き続ける必要があります。制度を取り入れた結果、かえって負担とならないように、経営者は適切な休憩や休日を取れる仕組みを考えなければいけません。

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出典元:厚生労働省「⾼度プロフェッショナル制度わかりやすい解説」


 

2-8 産業医・産業保健機能の強化

労働者のメンタルヘルスに関するサポートを目的に、産業医・産業保健機能の強化が求められています。


 

2-9 不合理な待遇差の禁止



仕事内容が同じ労働者は、雇用形態によって待遇差がつけられません


 

2-10 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化

経営者は、労働者から待遇に関する説明を求められた場合、説明する責任を負います。


 

2-11 行政による事業主への助言・指導等や裁判外紛争手続(行政ADR)の規定の整備


裁判をせずに解決する行政ADRが追加されたことで、非正規労働者が企業を訴えやすくなりました。


              

3.中小企業が中々働き方改革へ取り組めない理由は?



働き方改革の推進を迫られている中、なかなか実現できない中小企業も多くあります。その理由には、以下の3つが挙げられます。

 

  • 人手不足
  • 賃金の高騰と採用難
  • 残業規制による失注の可能性

それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

          

3-1 人手不足

大手企業と比べて、中小企業は常に人手が足りているわけではありません。単に労働時間を削減するだけでは、生産性が下がり経営に影響が出るでしょう。中小企業における人手不足の詳細を、以下で解説します。

 

①  「残業ありき」で業務体制や人員配置が行われている


中小企業では、残業を前提とした業務体制や人員配置を行っているところが多くみられます。従業員も残業をする前提で1日のスケジュールを組んでいるので、時間を切り上げにくいこともあります。

この状況で働き方改革を実施しても、実際は仕事が終わらず、数字合わせで定時退社としながら、残業をするといったことも考えられます。


② 人材が定着せず、離職率が高いため最適化や効率化ができない



人材が定着しなければ、業務の効率は上がらず、働き方改革も進めづらくなります。働き方改革を実施するには、今までよりも少ない労働時間で、今までと同等かそれ以上の成果を出す必要があります。

 

しかし、現在の労働環境が劣悪なら人が定着せず、働き方改革の下準備が進まない状況が続くことになるでしょう。

 

OJTと言いながらも「教える環境も時間もない」のが現実


人手不足の企業では1人1人のタスクが多い傾向にあります。そのため、上司が新人の教育に十分なリソースを割けられないことも現状です。

 

新人が育たなければ、企業全体としての生産性も上がりません。また、上司も教育にいつまでもリソースを取られることになるため、さらにタスクが増える悪循環に陥っている企業もあります。

            

3-2 賃金の高騰と採用難

少子化による売り手市場が続いている昨今、企業は熾烈な人材の獲得競争を勝ち抜く必要があります。加えて、働き方改革の追い風もあり、最低賃金を上げなければなりません。

 

うまく採用できたとしても「人件費分の利益をどのようにつくるのか」をセットで考える必要があります。中小企業にとっては、ハードルが高いでしょう。


   

3-3 残業規制による失注の可能性



働き方改革が実施されると、残業規制をする必要があるため、企業によっては経営に影響があるかもしれません。

 

残業ありきで受注をしていた企業にとっては、機会の損失を生む可能性があります。働き方改革による残業時間削減によるコストカットと、機会損失による売上減少をうまく相殺させようとすることは、多くの企業にとって簡単なことではないでしょう。


   

4.最悪なのは働き方改革を理由に給料を下げてしまうこと

働き方改革を行ううえで、最悪であり、絶対にやってはいけないことは、働き方改革を理由に、従業員の待遇を悪くすることです。

 

「働き方改革のせいで、給料が下がった!」という声も、実は聞こえてきています。

どういうことでしょうか。
 

          

4-1 実態は、経営が苦しい企業が残業代を削減する隠れ蓑

例えば、「○○時間以上は残業代を払わないぞ」、「残業が○○時間を超えた従業員は、評価を下げる」など、会社で明文化されていなくても、上司が部下に言っていないでしょうか。また、業務改善もしないうちから「ノー残業デー」を導入し、個人または部署の業務量を勘案せずにその日は全員強制的に帰らせる、というようなことをしていませんか。

 

経営が苦しい企業にとっては、残業代を無理やりにでも削減させることができるので、ついやってしまいがちな施策です。見かけ上、残業時間も少なくなるので、内情を知らない外部にも「働き方改革によって成果が出た」と言えてしまいます。

 

しかし、従業員にとってはどうでしょうか。一見残業なしで帰ることができていいように見えますが、結局その前後にしわ寄せが来て、より遅くまで残業しなければ納期に間に合わなくなり、一度タイムカードを押してから隠れてサービス残業を行うなど、良くないルーチンにはまってしまうことが考えられます。

従業員も「結局は残業代を払いたくないからだ」と感じるでしょう。

 

上記の例のような「うわべだけの働き方改革」では、結局従業員にさらに無理な働き方をさせたり、サービス残業・隠れ残業を横行させたりすることになり、個々に応じた柔軟な働き方を「選択」できるようにする取り組みから遠ざかります。良い人材が定着せず、生産性も一見上がったように見えても実は上がっていないという結果になります。

 

経営が厳しい企業にしてみれば、「できるだけ残業代を削減したい」というのは理解できます。

しかし、せっかくの働き方改革の中身がこのようなことになれば、従業員のモチベーションが下がり、そもそも狙ったのとは真逆の効果になるため、十分に注意が必要です。

      

4-2 働き方改革=働きたい人はしっかり働ける、が正しい

本記事の最初で、働き方改革は「個々に応じた柔軟な働き方を『選択』できるようにする取り組み」と紹介しました。

 

つまり、仕事と私生活のバランスを取りたい従業員と、仕事を頑張りたい従業員のどちらでも対応できる環境を作っていくのが働き方改革なので、働きたい社員の残業代を削ることは、本来の趣旨から外れ、働きたい従業員のやる気まで削ぐ、最悪の対応と言えます。

 

もちろん残業も法律で定められた範囲内で行うことが大前提ですが、必要な範囲での残業には、残業代を正しく支払うことが、経営者には求められます。

     

4-3 ダラダラ働かせないための施策も重要

その反面、正規の就業時間中からダラダラ働き、時間外に業務を持ち越せるようにしたり、もう業務が終わっているのに雑用やおしゃべりでなかなか帰らなかったりして、「残業代目当て」の働き方をしている従業員も、中にはいるでしょう。

 

このような従業員は、仕事を頑張りたい従業員とは言えませんから、業務をできるだけ無駄なく行い、残業せずに早く帰ってもらいたいものです。

 

そのためには、上司など管理者が、まずは従業員の業務内容と量につき、正しく把握していることが必要です。また、与えた業務をこなすにあたり経験やスキルが足りているか、足りない場合は適切な助言を与えるなど、フォローも必要でしょう。

 

働き方改革が進んでいない企業では、管理者自身も大量の業務を抱えていることが多いため、部下の一人ひとりにゆっくり目を向ける時間が足りないこともあります。まずは残業が多い従業員についてだけでも業務量を確認したり、就業時間後に私語が多い従業員やなんとなく手が空いていそうな従業員がいないか、ちょっと気を配ってみたりすることから始めてみてはいかがでしょうか。


        

5.中小企業の働き方改革問題の解決策は?




中小企業が働き方改革を成功させるためには、以下の取り組みが有効です。

 

  • 会社が抱える課題を分析する
  • ワークフローを見直し
  • 業務効率改善ツールを導入する

それぞれ詳しく解説します。

 

          

5-1 会社が抱える課題を分析する

企業が抱える問題点はそれぞれ異なるため、自社の課題は何かを分析することが大切です。「人手不足で残業をしているのか」「人材を育てる環境が整っていないのか」など企業によって課題は千差万別でしょう。

 

会社全体の問題点を洗い出すよりは、部署やチームごとで細かく分析することがポイントです。少人数のチームを分析するほうが、問題点を洗い出しやすく、解決策も立てやすいためです。

 

成功例ができたら、他の部署やチームに適応するとなお良いでしょう。

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従業員アンケートの結果を基に従業員の「ウェルビーイング※」や「満足度」を数値により可視化して組織課題を把握・解決する組織診断サービスです。

        

5-2 ワークフローを見直す

現行のワークフローに非効率的な部分がないか、見直してみましょう。ワークフローを見直してみると、実はあまり意味のない業務やもっと短時間で済ませられる業務が見つかるはずです。

 

ワークフローを最適化することで、生産性が上がり労働時間もカットしやすくなります。働き方改革を実現するには、生産性の向上が欠かせません。

           

5-3 業務効率改善ツールを導入する



現在手動で行っている業務の多くは、業務効率改善ツールを使って自動化できる可能性があります。以下が具体例として挙げられます。

 

  • 勤怠管理ツール
  • タスク管理ツール
  • コミュニケーションツール

 ワークフローの見直しと一緒に、自動化ツールを導入することで、大きな業務効率の改善が期待できるでしょう。

 


6.エンゲージメントが人材獲得につながる

働き方改革で従業員が気持ちよく働ける環境を整えると、社員のエンゲージメントの向上が見込めます。エンゲージメントが高まれば生産性も上がり、仕事において、社内外の評判も良くなるでしょう。結果として、人材獲得や事業の拡大につながることが期待できます。

 

ウェルナレでは、働き方改革や健康経営についての調査を日々行っています。当分野で20年の歴史を持つイーウェルのノウハウが詰まった資料が手に入りますので、興味がある方はこちらからダウンロードして、ぜひご覧ください。

 

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著者情報

株式会社イーウェル ウェルナレ事務局

「人も、企業も、ウェルビーイングへ。」をテーマとして、企業の健康経営や福利厚生の支援を行う株式会社イーウェルが運営する、BtoB(人事総務向け)オウンドメディア「ウェルナレ」の編集部。
2021年7月にメディアリリース後、毎年60回以上、有名企業様とのコラボセミナーや官公庁の専門分野に特化した方を招いてのカンファレンス、大学教授による福利厚生勉強会の開催や専門家記事の掲載などを実施し、多くの方に好評いただいております。
人事部署や経営者が、会社のウェルビーイングを向上されるためのヒントを探して、日々活動しています。

 


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