「病院にどのような制度を用意すれば、職員が満足して働けるのだろう」
「ほかの医療機関では具体的にどんな福利厚生を取り入れているのか知りたい」
医師や看護師をはじめとする医療従事者は、夜勤や長時間労働などによる負担が大きくなりやすい問題を抱えています。そのため子育てや介護、専門性を高めるための支援制度などがどの程度整備されているかは重要です。それらの充実度によって、求職者が「この病院で働きたい」と思うきっかけが生まれることも少なくありません。
本記事では、病院が導入するべき福利厚生の基礎知識からメリット、導入時のポイントや事例まで幅広く解説します。
福利厚生は、給与以外で従業員やその家族の生活を支援する目的で病院が用意する仕組みの総称です。
法律で加入義務のある「法定福利厚生」と、病院が独自に導入できる「法定外福利厚生」の2種類に分かれています。いずれも従業員やその家族の負担を軽減するのが目的です。
法定福利厚生には、以下のようなものが含まれます。
一方で法定外福利厚生は、法律の制約がない分、病院の実情や職員のニーズに合わせて自由に設計可能です。
福利厚生を導入し充実させる主なメリットとしては、以下の4つが挙げられます。
福利厚生は単なる手当や補助制度ではなく、病院がスタッフをどれだけ大切に思っているかを示す指標でもあります。
夜勤や土日勤務が多い医療現場では、負担軽減制度や家族支援の仕組みが整った職場を求める傾向が強くあります。
医局や外来での連携がスムーズに進むよう、研修体制や資格取得支援などの制度が整っていると、スキルアップへの意欲が高い人材が集まりやすくなるでしょう。
医療は専門性が高く、スタッフの力量が医療サービスの質に直結します。優秀な人材の確保と維持により、病院全体の評価向上につながります。
院内保育や食事補助といった福利厚生が充実していると、職員の働きやすさを重視する姿勢が伝わり、モチベーションや満足度の向上につながります。
仕事とプライベートのバランスが取りにくい職種だからこそ、院内での相談体制は従業員の安心感を高めます。
満足度が高まると、患者対応や医療サービスにもポジティブな影響がおよびます。結果として医療現場全体が活気づき、病院としての信頼度が上がる好循環が生まれます。
医療の現場では、結婚や出産、親の介護など人生のイベントによって退職の道を選ぶ方も少なくありません。
育児支援制度があれば出産後の復職をスムーズに進められますし、介護休暇や時短勤務などがあれば、ベテラン人材が離職しなくて済む可能性が高まるでしょう。こうした仕組みを整えることで、職場を離れざるを得ない状況を最小限に抑えられる点が大きなメリットです。
離職率が低下すれば、新たに人材を募集し育成するコストも抑えられます。
関連記事:社員定着率を上げる!働きやすい職場作りに効果的な子育て支援制度の導入術
従業員を大事にする病院は、患者や地域社会からも高い評価を得やすい傾向があります。スタッフが充実した環境で働けているほど、医療サービスの質が上がりやすく、結果として患者満足度も高くなるからです。
働きやすい制度を整えることで、近隣にお住まいの方に「この病院は安心できる」と認識されやすくなるでしょう。
福利厚生の充実を通して病院の評判やブランド力を高めることは、患者とスタッフ双方にメリットがあります。
病院の福利厚生と一口にいっても、その内容は多岐にわたります。
以下では、病院で提供される代表的な15の福利厚生を順番に紹介します。どのような制度があると働きやすいかを改めて考えるきっかけにしてみましょう。
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通勤にかかる費用を病院側でサポートする通勤手当は、医療従事者の負担を減らすうえで重要な制度です。
とりわけ郊外や公共交通が不便な場所にある病院では、通勤費用がかさむ場合があるため、通勤手当の有無が就業先を選ぶ際の大きな決め手になることも少なくありません。
制度を活用する際には、月々の上限額や支給方法などのルールを明確に示しておくことが望ましいでしょう。
住宅手当は、家賃や住宅ローンの一部を病院が負担してくれる制度で、特に若手スタッフにとっては経済的負担を軽減できるありがたい仕組みといえます。
病院によっては単身用社宅を提供したり、敷金礼金や引っ越し費用まで補助したりと、独自のサポートを行っているケースもあります。
住宅手当を充実させることで人材の流出を防ぎ、長期的に勤務してもらいやすい環境を作るきっかけとなるでしょう。
配偶者や子どもなど扶養家族を抱えている従業員に対し、病院が扶養手当を支給するケースがあります。
育児や介護などの費用がかさむステージでは、扶養手当があるかどうかで家計のやりくりが大きく変わることもあるため、求職者にとっては病院を選ぶ際の大切な比較ポイントです。
扶養家族がいる方に安心して働いてもらえるよう、職員の家庭背景を踏まえて手当や制度を整えることが、病院全体の安定した運営につながるでしょう。
食事補助制度があると、院内食堂で安価に食事をとれたり、栄養バランスの整ったメニューを手軽に利用できたりすることで、負担を和らげる一助となります。
日々の業務を支える基盤として、健康管理は欠かせません。リーズナブルかつ栄養面に配慮した食事が提供されることで、スタッフが忙しいシフトの合間でもしっかり栄養摂取できるのは大きなメリットといえます。
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将来に備えた貯蓄や資産運用をサポートするため、財産形成手当を導入している病院もあります。
計画的に貯蓄ができるようサポートすることで、若手スタッフを中心に将来への安心感を高められるのが魅力です。
医療は高度な技術と長期的なキャリア形成が必要とされる分野でもあるため、経済的な基盤を整えておくことで、スタッフが安心して仕事に打ち込める環境作りにつながっていきます。
育児や介護に関わる支援制度が充実していると、勤務と家庭の両立が可能になり、スタッフが離職を選択せずに済むケースが増えます。
具体的には保育所の併設や保育料の補助、育児休業や介護休業の延長が挙げられるでしょう。子どもの体調不良時に預けられる病児保育などを整備している病院もあります。
手厚いサポートを用意しておくことで、幅広い年代の人材が安心して長く働ける体制を築けます。
医療の現場では、心身のストレスが蓄積されやすいといわれます。精神的に負担が大きい職場だからこそ「調子が悪くなったらすぐに相談できる」という安心感がモチベーション維持につながります。
心が疲れきる前に早期に対処できれば、結果的にスタッフの離職を防ぎ、組織全体のパフォーマンスを高める効果も期待できるでしょう。
法律で定められた健康診断に加え、人間ドックやがん検診の補助があると早期発見や予防につながるため、スタッフからは喜ばれやすいでしょう。
なかにはジムやフィットネスクラブの利用料金を一部補助するなど、体力を維持するための取り組みを推進しているケースも見られます。
健康増進制度を充実させることは、結果的に病院全体の医療品質向上につながるでしょう。
医療において多くの場合、キャリアアップや専門分野の追求には資格取得が欠かせません。
そこで資格取得支援制度を導入し、学費の補助や受講のための休暇付与などを行う病院も増えています。
制度が整っていれば、積極的にスキルアップしたい人材が集まり、病院全体の医療レベルが底上げされるでしょう。
継続的な学びを支える研修や教育の制度があれば、スタッフが知識技術をアップデートしやすくなり、患者への対応力を高められます。
病院内で定期的に行われる研修はもちろん、外部団体のセミナーに参加する際の費用補助や出勤扱いなどを行うことで、従業員が学び続けることを後押しできます。
研修制度を充実させることで、病院の専門性やサービスの質を高められるだけでなく、スタッフのモチベーション維持にも役立つでしょう。
病院が費用を負担して実施する、社員旅行という福利厚生を導入するところもあります。
夜勤や休日勤務があるため、一斉に休みを取るのは難しいかもしれませんが、部署ごとや複数のグループに分けて旅行を企画することで参加しやすくなるでしょう。
社員旅行は、チームワークの活性化やコミュニケーションの円滑化につながります。
病院が提携している保養所や宿泊施設、スポーツジムや映画館といった各種サービスを割引価格で利用できる制度は、スタッフの余暇を充実させる効果があります。
忙しい医療従事者ほど、オフの時間が貴重です。割引が適用される施設が増えれば「こんな施設にも行けるんだ」とポジティブな感情も生まれていき、仕事の疲れをリフレッシュしやすくなるでしょう。
職員同士の親睦や気分転換のために、クラブ活動やイベントの費用を一部負担する制度を採用する病院もあります。
スポーツや趣味のクラブ活動から院内の季節行事まで、職員主導のイベントをサポートすることで自然とコミュニケーションが深まり、業務連携の向上も期待できます。
クラブ活動が盛んな病院は職員の評判が広がりやすく、求人の際にも「働きやすい環境が整っている」といった好印象を与えることが期待できるでしょう。
保育費の補助や院内保育所の設置など、子育て支援が充実していれば、出産や育児を機に退職する医師や看護師を減らすことが可能となります。
夜勤対応が必要な病院にとっては、24時間保育対応や病児保育などの制度があるだけで、スタッフが安心して働ける環境となるでしょう。
病院側のサポートがあると家庭の負担が軽くなり、集中して医療業務に取り組めるようになるため、生産性向上にもつながります。
夜勤や残業の多い医療現場では、時短勤務制度を導入することでプライベートの仕事の両立をしやすくなります。
フルタイム勤務が難しいスタッフでも、時短勤務の選択肢があれば退職を回避し、長くキャリアを積むことが可能です。
医療従事者は専門性が高いため、即戦力となる人材の流出を防ぐことは病院にとって大きな課題です。ワークライフバランス支援を整えることで、その課題を解決し、やりがいを持って働ける環境を作れるでしょう。
福利厚生関連の事例集【ダウンロード用資料】 「WELBOX」導入後の全てを紹介!導入企業一覧も紹介しています。
病院で福利厚生を導入する際には、いくつか押さえるべきポイントがあります。代表的なものとしては以下の5つが挙げられます。
実際に役立つ制度を選択するには、丁寧な準備が求められます。以下の解説を参考にし、自院ではどのような点に注意すべきかを検討してみましょう。
福利厚生を整備しても、実際のニーズに合わなければ意味がありません。したがって現場で働いている医師や看護師、スタッフの声を積極的にヒアリングすることが大切です。
アンケートや意見交換会などを開催し、どこに不便を感じているのか、どんなサポートがあれば助かるのかを把握することから始めましょう。
従業員が「自分たちの声を反映してくれている」と感じると、職場への愛着が深まり、モチベーションにもよい影響を与えるでしょう。
病院によって直面している課題はさまざまです。自院が何を積極的に解決すべきなのかを把握することが重要となります。たとえば以下のような課題解決があり得るでしょう。
何より大切なのは、自院の問題点を分析し具体的な制度をもって解消することです。
法定福利厚生は法律で定められた最低限の範囲にすぎないため、医療現場に特化したサポートを行うには法定外福利厚生を重視する必要があります。
充実度が高いほど、人材確保やスタッフの定着率向上といったメリットが得られます。
給与面だけでなく、福利厚生の仕組みを重視して転職先を探す方も増えているため、競合病院との差別化も重要となるでしょう。
医療の世界は常に新しい知識や技術が求められるため、スタッフの学習意欲を支援する教育制度の整備が欠かせません。
制度があることでスタッフのスキルが向上し、患者に提供する医療サービスにも反映され、病院全体のレベルアップに直結するでしょう。
また評価制度を適切に運用し、努力や実績を正しく認めることも重要です。
院内に社員食堂を作る余裕がない、保育施設を運営するコストが大きいなどの理由で制度を拡充できない場合は、外部サービスを活用するのもひとつの手段です。
家事や育児の支援などを専門に扱う企業と提携し、従業員が割引価格で利用できる仕組みを採用すれば、コストと利便性の両立が図れます。
業者との契約のみで手軽に始められるのもメリット。外部サービスの利用は、手軽さの点でも有効な選択肢といえるでしょう。
ここでは、充実した制度を導入していると評価される病院の事例を3つ紹介します。
各事例を参考に、自院の福利厚生整備に役立つヒントを探してみてください。
北海道札幌市にある手稲渓仁会病院は、ドクターヘリ基地病院にも指定されており、地域の救急医療の要として機能しています。短時間正職員制度や介護休暇制度、24時間対応の院内保育所や職員互助会などが用意され、従業員が安心して働ける環境を整備しているのが特徴です。
また、燃料手当や年2回の賞与支給など、北海道という土地柄を考慮したサポートも設けられています。
宮城県仙台市にある仙台市医療センター仙台オープン病院は、高度な外科手術が可能な医療施設として東北地方で知られています。
職員向けに院内保育園や看護宿舎を用意しているほか、奨学金制度や資格取得支援制度など、キャリアアップを後押しする仕組みが整っているのが特徴です。
さらに社員食堂を設けて栄養バランスをとりやすくしており、忙しい医療現場でも健康的な食事をとる機会を確保できます。
福岡県福岡市にある福岡和白病院は、救急医療から地域がん診療連携拠点病院まで幅広く対応しており、地域に密着した医療を提供しています。
従業員には各種保養施設の割引利用や院内旅行、福岡PayPayドームの年間指定席利用など多彩な特典を用意しているのが特徴です。
さらに提携保育施設を活用することで、子育て中のスタッフが安心して働き続けられる環境を整えています。
病院の福利厚生は、医療従事者が安心して働きながら専門性を高め、質の高い医療サービスを提供する土台となる要素です。
法定福利厚生で定められた最低限の保障だけでなく、育児や介護、資格取得支援など医療業界特有のニーズに合わせた法定外福利厚生が重要となります。
自院が抱える課題やスタッフの声をしっかりと把握したうえで制度を選定し、必要に応じて外部サービスを活用するのも有効な手段です。
病院の福利厚生にお悩みの方は、ぜひイーウェルにお任せください。イーウェルでは、ニーズに合わせた福利厚生サービスを提供し、従業員の満足度向上を叶えます。
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