福利厚生はいらない?現代の福利厚生事情と効果的な見直し方法を解説
「せっかく導入した福利厚生制度なのに、従業員からの反応がイマイチ…」
「予算をかけて福利厚生制度を充実させているが、利用者が年々減っている」
そんな悩みを抱えている人事担当者は少なくありません。
近年、従業員からの「福利厚生はいらない」「賃金で還元してほしい」という声も増えており、特に従来型の福利厚生制度は「時代遅れ」「使いにくい」という指摘も多く聞かれます。
本記事では、福利厚生が「いらない」と言われる理由から、効果的な制度の見直し方法まで、人事戦略に役立つ実践的な情報をお伝えします。

目次
1.福利厚生が「いらない」と言われる理由

福利厚生制度への不満が高まっている主な理由は以下の4点に集約されます。
- 利用率が低い
- コストが増加している
- ニーズが変化している
- 賃上げへの期待が高まっている
1-1 利用率が低い
福利厚生制度の最大の課題は、制度が存在していても実際に利用されないことです。
手続きが煩雑で時間がかかると、従業員は利用する意欲を失ってしまいます。たとえば、申請書類が多数必要だったり、承認までに何週間もかかったりする制度では、せっかくの福利厚生も活用されません。
さらにテレワークが普及した近年は、「オフィスに行かなければ利用できない」制度は敬遠され、形骸化するケースが増えています。オフィス内売店や社員食堂といった施設型の福利厚生は、リモートワーク中心の働き方では利用機会が大幅に減少しています。
実際、多くの企業では独自の福利厚生制度の利用率が低下しており、手続きの煩雑さや実用性の低さが主な原因として挙げられています。特に手続きが煩雑な制度ほど敬遠される傾向が強くなっているのです。
1-2 コスト増加
利用されない制度でも、企業側にはさまざまなコストが発生します。
福利厚生制度の導入には初期費用だけでなく、制度の周知、利用申請の受付、給与処理や勤怠管理との連動、契約継続手続きなど、運営・管理コストが継続的にかかります。
特に中小企業にとって、利用されない制度に予算や工数を割く余裕はなく、費用対効果が低い制度を維持することが負担となっています。
1-3 ニーズの変化
働き方やライフスタイルの多様化により、従業員が求める福利厚生も変化しています。
たとえば、リモートワークの普及で通勤手当の重要性が低下する一方、自宅での仕事環境を整えるための補助が求められるようになりました。
また、個人向けサービスが充実したことで、「会社の制度を使うより個人で選んだ方が便利」、「保養所より、自分の行きたい場所を選びたい」と感じる人が増えてきました。
つみたてNISAやiDeCoなど、個人が自由度高く使える制度の普及も「企業の福利厚生は時代遅れ」と言われる背景のひとつです。
現代は多様性が尊重される時代であり、従業員は「決められた制度を使う」のではなく、選択肢の中から自分に合うものを選びたいと考えるようになっています。
1-4 賃上げの必要性と期待
近年の物価高を背景に賃上げの必要性はますます高まっており、企業にも社会にも「賃上げをするべき」という空気が広がっています。
最低賃金の全国平均も、2023年に43円、2024年に51円、2025年には過去最大の63円と大幅に引き上げられており、春闘でも賃上げ要求が強まっています。
こうした状況から「福利厚生にお金をかけるくらいなら、賃金で還元してほしい」という声が出るのは自然な流れです。会社の資金には限りがあるため、従業員が「直接手取りが増えた方が嬉しい」と考えるのも無理はありません。
しかし、賃上げと福利厚生は単純にどちらか一つを選ぶものではありません。
特に若手社員は基本給が低い分、家賃補助・通勤手当・生活関連の補助・特別休暇などの福利厚生によって生活が支えられているケースが多くあります。
もし福利厚生分をすべて賃金に上乗せする方式に変更すると、基本給の高い人ほど多く受け取る、若手や新入社員ほど相対的に不利になる、ということが起こりえます。
福利厚生制度は、一定の条件はあるものの基本的には公平に利用できる制度です。だからこそ、 単純に「福利厚生を削って賃上げに回す」べきではなく、企業全体として制度の目的とバランスを見直す必要があります。
2.法定福利厚生は必須
福利厚生の見直しを検討する際には、法定福利厚生と法定外福利厚生の違いを正しく理解したうえで進めることが重要です。
法律で義務付けられた法定福利厚生(健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険など)は、企業が必ず提供しなければならない制度です。これらは従業員の基本的な生活保障を担う重要な仕組みであり、企業規模や業種を問わず適用されます。
法定福利厚生費は人件費の約15%を占めるとされており、企業にとって決して小さくない負担ですが、法的義務である以上、削減することはできません。
一般に求人情報などで「福利厚生なし」と記載されている場合は、法定外福利厚生がないという意味であり、法定福利厚生が存在しないというわけではありません。この点を誤解しないよう注意が必要です。
したがって、企業が見直しの対象とすべきは法定外福利厚生の内容や運用方法ということになります。
ここにこそ企業ごとの創意工夫の余地があり、従業員満足度の向上と経営効率化の両立を図ることができます。
3.法定外福利厚生がない企業が今後厳しくなる理由
求人の場面で「(法定外)福利厚生なし」と掲げている企業は、今後ますます厳しい状況に直面すると考えられます。
理由を端的に表すならば、「選ばれなくなる」ということに尽きるでしょう。
日本社会は少子高齢化が進み、現在も深刻な人手不足が続いています。人口が増える見込みは当面なく、人材獲得競争はすでに激化しており、今後もこの傾向は続くと見られます。
そのような環境で、同業種・同職種の求人が並んだ場合、「福利厚生が充実している企業」と「福利厚生がまったくない企業」のどちらに求職者が集まるかは明らかです。
たとえ、福利厚生がない企業の給与が、福利厚生のある企業の2倍だったとしても、多くの求職者は不安を感じます。
「福利厚生がないということはブラックでは?」「給料が高い分、労働環境が過酷なのでは?」「見えない残業があるのでは?」と疑念を抱かれても仕方がありません。
また、給与のみを魅力に応募してきた人材は、他社のほうが給与条件で上回ればすぐに転職してしまう可能性が高く、結果として定着につながりません。福利厚生がなければ、企業は「給与以外の訴求ポイントがない」状態となり、人材確保における競争力が著しく弱まります。
福利厚生は、企業が従業員に対してどのような姿勢で向き合っているかを示す指標でもあります。「従業員のために工夫してくれている」という安心感は、企業への信頼や愛着にもつながり、結果的に離職防止にも寄与します。逆に、この点が欠如している企業は見切りをつけられやすい、ともいえるでしょう。
さらに、人手不足が深刻化するなかでは、シニア層・子育て中の女性・外国籍の方など、多様なバックグラウンドを持つ人材が社会で活躍するようになっています。
そういった層では、単純に給与が高い点ではなく、「働きやすい環境」が重視されるのは当然といえます。本来であれば、適切に利用できる休暇や制度が整っていれば働き続けられるはずの労働者が、両立が難しいという理由で離職してしまうと、結果として企業は多様な人材から選ばれにくくなってしまいます。
このような理由から、福利厚生が不十分な企業は、今後ますます人材確保が困難になることが予想されます。
そのような状況に陥る前に、法定外福利厚生の導入に向けた準備を進めておくことを強くお勧めします。
4.法定外福利厚生がないことで生じるデメリット
法定外福利厚生がない企業が今後厳しくなることは前章でお伝えしたとおりです。では、具体的にどんなデメリットが生じるのか、本章ではそのポイントを4つに整理してお伝えします。
4-1 求職者が企業選択をする際に選択肢から外れやすくなる
働く意義や働く人の背景が多様化した現代では、法定外福利厚生がない会社は、求職者から見て、競合他社から見劣りし、選択肢から最初に外されやすくなります。
マイナビ2026年卒 大学生キャリア意向調査3月<就活生のワークライフバランス意識>において、企業に対し安定性を感じるポイントの第一位は「福利厚生が充実している」で、全体の57.3%もの学生がその選択肢を選んでいます。
また、同じくマイナビ2026年卒大学生就職意識調査では、就職する企業を選択するポイントで一番に「安定している会社」が選ばれており、その割合は51.9%と、半数を超える結果となりました。
この2つの結果からみれば、学生は「福利厚生の充実した会社=安定した会社」を就職先に選ぶ傾向が強まっており、福利厚生のない会社はそもそも選択肢に入らないことが考えられます。
求職者が同業他社、同一地域の企業を比較する際、法定外福利厚生が整っていない企業は、優位性を欠くだけでなく、見劣りしてしまう可能性があります。
そのため、比較対象となる競合企業と同等レベルの福利厚生を整備しておくことは、採用で勝つというよりも、まずは選ばれるためのスタート地点に立つために必要な対策といえます。
4-2 人材確保が難しくなる
少子高齢化により働き手の数自体が減少しているうえ、転職が一般化した現代では、福利厚生が整っていない企業は、人材確保が困難になるでしょう。
現在、多くの企業が人手不足に直面し、継続的に採用活動を続けています。その中で自社を選んでもらうためには、求職者に企業の魅力を示す必要があります。しかし、福利厚生制度が整っていない場合、アピール内容に具体性が欠け、裏付けの弱い企業という印象を与えてしまい、応募者の減少につながる恐れがあります。
また、福利厚生がない企業では、多様な働き方に対応できる制度が不足している状態になります。現職の従業員が、生活状況や体調、家庭の事情に応じて柔軟な働き方を希望しても対応ができなければ、離職につながる可能性があります。
さらに、離職者からの口コミなどで、福利厚生が不十分で働き続けられなかったという評価が広まれば、その後の採用活動にも悪影響が及ぶでしょう。
厚生労働省の「令和5年若年者雇用実態調査の概況」でも、初めて勤務した会社を辞めた主な理由(3つまでの複数回答)として、28.5%が「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」と回答しています。
残業や休暇取得への不満だけでなく、フレックス制度・短時間勤務制度など労働時間を柔軟に調整できる仕組み、病気休暇・リフレッシュ休暇・慶事休暇などの特別休暇があれば、離職を防げたケースも多かったと考えられます。
4-3 従業員のモチベーション・労働意欲・生産性が低下する
福利厚生による大きな効果のひとつは、現在働いている従業員に対して、よりよい働き方を提供することでモチベーションや労働意欲を高め、結果として生産性の向上につなげる点にあります。
しかし、福利厚生がなかったり不十分であったりすると、その逆の効果を招きかねません。すなわちモチベーションや労働意欲が高まらず、生産性の向上も期待できない状況に陥ってしまいます。
また、福利厚生が充実している企業に勤める知人の話を聞いたり、ユニークな福利厚生制度がニュ-スで取り上げられたりすることもあるでしょう。
そのような場面で、福利厚生が整っていない企業の従業員にとっては、話題そのものが転職を考えるきっかけになったり、そこまで至らなくとも、企業に対する小さな不満を抱いたりする可能性があります。こうした不満が積み重なり、最終的に離職という判断に至った場合、生産性が大きく低下することにもなりかねません。
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4-4 負のループに陥り、業績が悪化する可能性がある
負のループに陥れば、最悪人手不足倒産の可能性すらあります。
福利厚生が整っていない状態が続くと、企業は負のループに陥り、最悪の場合、人手不足倒産に至る可能性も否定できません。
たとえば、福利厚生がないことにより、
従業員が離職する
→採用が思うように進まず後任が決まらない
→残った従業員に業務負荷が集中する
→負荷の増大により、さらに従業員が離職する
といった悪循環に陥ることが考えられます。
このような状態が続けば、
これまで回っていた現場が人手不足により立ち行かなくなり、結果として業績悪化につながります。状況によっては、人手不足倒産という事態を迎えることもあり得ます。
帝国データバンクの調査によれば、2025年の人手不足倒産は427件に達しており、前年度と比較して24.9%(85件)増加しています。
また、東京商工リサーチのデータでは、2024年の人手不足倒産のうち、「従業員退職」を理由とするものは全体の約25%、「求人難」が理由のケースも約39%を占めています
参考:2024年度「人手不足」倒産 最多の309件 小・零細企業が押し上げ、年度初の300件台|東京商工リサーチ TSRデータインサイト
これらを踏まえると、従業員が1人離職するだけでも企業への影響は非常に大きく、最終的に倒産に至る可能性も十分にあることがおわかりいただけると思います。
5.従業員から「いらない」と思われている福利厚生

多くの企業で従業員から敬遠されがちで、利用率が低くなる傾向にある福利厚生として、以下のようなものが挙げられます。
利用率が低い傾向にある福利厚生
- 社員旅行・レクリエーション
- レジャー施設の優待券
- オフィスコンビニ
- 託児所・育児支援
- 出産お祝い金・育休手当
社員旅行が最も不人気な理由は「休日にまで会社の人と関わりたくない」「気を使うだけでリフレッシュにならない」といった声によるものです。運動会やバーベキュー大会などのレクリエーションも同様で、価値観が多様化した現代では、こうした取り組みをプライベートな時間の侵害と捉える人が増えています。特に若い世代では、会社の同僚との私的な交流よりも、家族や友人との時間を重視する傾向が強くなっています。
レジャー施設の優待券についても、利用できる施設が限定的で利便性に欠けることが課題として挙げられます。オフィスコンビニに関しても、市街地に立地するオフィスであれば周辺に一般的なコンビニが存在するケースが多く、品ぞろえや利便性の面で外部店舗のほうが優れている場合もあります。そのため、立地や業種により敷地内に売店が必要な工場などを除き、企業として設置する必要性が低下しているケースも見られます。
託児所・育児支援については、子育て世代には非常に重要な福利厚生である一方、独身者や子どものいない世帯にとっては直接的なメリットを感じにくく、公平性に欠けるとの意見が出ることもあります。また、子どもを連れてオフィス近くまで通勤すること自体のハードルが高いため、企業内託児所を設けている企業は限定的です。ただし、近年の育児支援に関する法改正を受け、企業には何らかの形で保育や育児を支援する取り組みが求められており、この流れ自体は今後も変わらないと考えられます。
さらに、前章で触れたように、手続きが煩雑な制度も敬遠される傾向にあります。
現代の従業員は、使いやすさと実用性を重視しており、形式的な福利厚生よりも実際の生活に役立つ制度を求めているのです。
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6.効果的な福利厚生の見直し方法
福利厚生制度を見直す際には、やみくもに制度を削減するのではなく、戦略的なアプローチが重要です。従業員満足度を維持しながらコスト効率を高めるためには、データに基づいた判断と計画的な制度設計が欠かせません。
ここでは、実際に多くの企業で成果を上げている見直し方法を紹介します。
6-1 従業員のニーズ把握
制度見直しの第一歩は、従業員のニーズを正確に把握することです。
定期的なアンケート調査を実施し、「本当に必要な福利厚生は何か」「不要だと思う制度はあるか」など率直な声を集めましょう。
質問内容はできるだけ具体的にし、匿名回答を可能にするなど本音を引き出す工夫が重要です。年代別・職種別・家族構成別にニーズを分析することで、より実態に即した制度設計が可能になります。
また、現在提供している各制度の利用状況データも詳細に分析し、利用実績が低いものは見直しや廃止の候補として検討します。
6-2 コストパフォーマンスの高い制度の導入
限られた予算で最大の効果を得るため、従業員満足度が高く、比較的低コストで導入できる制度を優先的に採用しましょう。
コストパフォーマンスの高い福利厚生制度の例
- 食事補助:社員食堂、食事代補助、無料ドリンク等
- 住宅補助:住宅手当、家賃補助
- リフレッシュ休暇:特別休暇、長期休暇取得の推奨
- 健康増進支援:人間ドック補助、スポーツクラブの法人会員
- 選択型制度:カフェテリアプラン、福利厚生代行サービス
食事補助は従業員の生活費負担を直接軽減し、健康維持にも役立つため満足度が高い制度です。
住宅補助も特に都市部では高い効果を発揮し、人材確保における競争力の向上に直結します。ただし、社宅や寮など自社施設を保有するような場合は、維持管理コストがかさむ点に注意が必要です。近年では、企業が福利厚生施設を保有するケースは減少傾向にあります。
従業員が自分に合った福利厚生を選択できるカフェテリアプラン型の制度であれば、多様なニーズに効率的に対応できます。自社で多様なメニューを用意することが困難な場合でも、福利厚生代行サービスの活用により、比較的低コストで幅広いメニューを提供することが可能です。
7.福利厚生がない場合に制度を導入する際のポイント
福利厚生制度を新たに導入する際、「できるだけ多くの制度を導入したほうが良いのでは?」と考えがちですが、実際には、ポイントを押さえて進める必要があります。
以下のポイントを押さえて検討しましょう。
- 導入目的は明確に
- 社員の自由な選択・利用を可能に
- 導入費用・運用費用を事前にシミュレーション
7-1 導入目的は明確に
福利厚生制度を新たに構築するにあたっては、「なぜ福利厚生を導入するのか」という目的を明確にし、それに沿って制度を選ぶことが必要です。
福利厚生には多様な種類があります。
「柔軟な働き方ができるようにし、従業員の離職を防止する」という目的であれば、フレックス勤務制度や短時間勤務制度、在宅勤務制度などが有効でしょう。
「採用面でアピール力を強化したい」のであれば、通勤手当、家賃補助などの各種手当や補助、特別休暇制度などが求職者の関心を集めやすい傾向にあります。
目的が明確でなければ、制度導入後に「結局使われない」「手当の公平性で不満が生じる」などの問題が起こりやすくなります。
導入前に、経営層・人事部門で課題を整理し、従業員アンケートなども活用して、実際に望まれている制度を把握することが不可欠です。
7-2 社員の自由な選択、利用を可能に
福利厚生制度は、存在するだけでは意味がなく、実際に利用されることが重要です。
導入にあたっては以下を意識しましょう。
- 手続きが簡単で、誰でも利用しやすい設計にする
- 特定の層しか利用できない制度にならないよう配慮する
- 利用ルールを明確化し、導入後も継続的に周知する
ただ、自社で運用する場合、あまりに多くの制度を導入すると、管理する部署の負担が過大になることがあります。最初は通勤手当・慶弔休暇などの基本的な制度から着手するのも現実的です。
また、多様な働き方や価値観を持つ従業員に対応するには、福利厚生アウトソーシングサービスを利用する方法も有効です。
- 1名あたり月数百円から始められるサービスが多い
- 育児、介護、健康、スポーツ、自己啓発などニーズの高いメニューが揃っている
- 宿泊施設やレジャー施設の優待、映画チケットなど若手社員向けサービスも豊富
近年利用する企業も増加しており、法定外福利厚生を短期間で一気に整えたい企業に有効な手段といえます
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7-3 導入費用・運用費用は事前にシミュレーション
福利厚生制度には、導入費用と運用費用の両方が発生します。事前に十分なシミュレーションを行わないと、導入後に資金や人的リソースが不足し、制度が形骸化してしまう危険があります。
導入費用の例
- 通勤手当・家賃補助の支給額
- レジャー施設優待の契約費や割引負担額
運用費用の例
- 申請受付・審査・給与計算との連動作業
- 特別休暇の勤怠調整
- 優待チケットの管理、契約手続き など
これらの運用業務には、手間と人件費が伴います。
事前準備が不十分だと、制度は導入したが費用が賄えなくなる、受付対応に手が回らず利用できないなどの問題が発生し、最悪導入して数ヶ月で制度の停止・廃止となってしまうことにもなりかねません。
制度の突然の廃止は、従業員の不信感を招き、かえって不公平感や不満につながるため、最低でも年度内は継続できる運用体制を整え、無理なく広げていける仕組みを準備しておくことが重要です。
8.賃上げと福利厚生の充実はどちらが良い?

結局、「福利厚生はいらないから賃上げで還元してほしい」という声には、どのように答えるべきでしょうか。最初の章「福利厚生が『いらない』と言われる理由」で述べたとおり、賃上げか福利厚生かという二者択一で考えてしまうのには、かなり問題があります。
8-1 賃上げのメリット
賃上げの最大のメリットは、従業員の手取り額が直接増えることにあります。
手取りが増えれば生活の質が向上し、将来に向けた備えも可能です。物価上昇が続く環境では、購買力の維持にも直結します。また、給与水準が競合他社より高ければ、人材流出防止・採用力の強化にもつながります。
特に若年層は、自由に使えるお金が増えることへの満足度が高く、モチベーション向上との関係も比較的強い傾向があります。さらに、賃上げは成果や能力に応じて差をつけることができるため、従業員のパフォーマンス向上を促す効果も期待できます。
一方で、賃上げは固定費の恒常的増加となるため、業績悪化時のリスクが大きくなります。また、賃上げの額によっては税金や社会保険料で相殺されてしまい、従業員の手取りがほとんど増えないどころか、場合によっては下がってしまう場合もあります。
企業にとっては人件費負担が重くなり、経営の柔軟性を損なう可能性もあることを考慮する必要があります。
さらに、昨今の賃上げ事情を鑑みると、一度賃上げしたらそれを下げることはかなりの困難を伴ううえ、毎年のように引き上げられる同業他社、または地域内平均の賃金額以上を維持しなければ、人材獲得競争で優位性を保つことができません。
つまり、賃上げは確かに重要ではあるものの、長期的な経営リスクも考慮しながら慎重に運用すべき施策といえます。
8-2 福利厚生を充実させるメリット
近年、福利厚生の充実は「第3の賃上げ®」(※注)とも呼ばれ、従業員の手取り向上を実現する手段として注目されています。昇給やベースアップなどの賃金アップではなく、手当・各種補助・休暇制度などを充実させることで、企業負担を抑えつつ従業員の実際の手取りを増やす施策を指します。
福利厚生充実の主なメリットは以下のとおりです。
- 非課税で受け取れるものが多く、同じ企業負担額でも従業員の実質手取りが増えやすい
- 経営状況に応じて内容や予算を柔軟に調整しやすい
- 健康増進策など、施策によってはさらに生産性向上などのプラス効果を生みやすい 独自制度は企業ブランディングにも役立ち、採用競争力を高める効果がある
- 新入社員・若手社員でも恩恵が受けやすい
デメリットとしては、
- 制度の数が増えるほど運用の手間が増加する
- 定期的な見直しが必要で、管理部門の負担が大きくなる
- BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)として外部委託する場合はアウトソーシング費用が発生する
といった運営上の課題があります。
※注:「第3の賃上げ®」は、株式会社エデンレッドジャパンの登録商標です。
8-3 結局どちらが良いのか
結論としては、賃上げと福利厚生のどちらが良いかを“どちらか一方”で判断すべきではありません。双方を適切に組み合わせることで最大の効果を発揮します。
賃上げをまったく行わないという選択は、「人材獲得競争での敗北」、「従業員流出の加速」につながるため、現実的ではありません。最低限、同業他社や地域水準に合わせた賃上げは必要です。
そのうえで、法定外福利厚生を上手に活用し、従業員に対する企業の思いをアピールし、他社との差別化を図っていくことが、これからの企業に求められる姿勢ではないでしょうか。
9.まとめ
「福利厚生はいらない」という声の背景には、制度の形骸化や、コストに見合った効果が得られていないという課題があります。特に従来型の福利厚生制度の多くは、個人向けサービスの普及や働き方の多様化が進んだことで魅力が薄れ、「時代遅れ」と評価される場面が増えています。
しかし、これは福利厚生制度そのものが不要になったわけではありません。重要なのは、時代や従業員の多様なニーズに合わせて制度をアップデートし続けることです。
成功している福利厚生制度には共通点があります。それは、従業員の実際のライフスタイルに寄り添い、使いやすく実用性の高い内容であることです。社員旅行のような一律の制度よりも、食事補助や住宅手当のように日常生活に直接メリットのある制度のほうが従業員から高く評価される傾向にあります。
賃上げと福利厚生の充実は二者択一で考える必要はなく、両立すべきものです。
企業は自社の経営環境と従業員の声を踏まえ、最適なバランスで推進することで、従業員に選ばれ、組織的に成長を持続できる、という好循環を生み出すことができるでしょう。
そして、制度を定期的に見直し、時代の変化に合わせて柔軟に改善し続けることが、真に価値のある福利厚生制度の構築につながります。
なお、福利厚生制度の見直しや時代に合った制度設計をご検討の場合は、福利厚生のトータルソリューションを提供するイーウェルにご相談ください。パッケージ型福利厚生サービス「WELBOX」をはじめ、従業員ニーズの把握から効果的な制度設計まで、企業の課題に応じた最適な福利厚生制度の構築をサポートし、従業員満足度の向上と企業の競争力強化を実現する包括的なソリューションをご提案いたします。
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