人事・総務向け「ウェルビーイング経営」
サポートメディア(運営:イーウェル)

  1. TOP
  2. 福利厚生 働き方改革
  3. 人的資本経営とは?その意味と動きを簡単解説!
2023/01/06 (公開:2022/07/13)

人的資本経営とは?その意味と動きを簡単解説!


人的資本経営とは?その意味と動きを簡単解説!

「人的資本経営」という言葉をご存じでしょうか?企業における人材を「資本」として捉えることで、価値の最大化を目指し、長期的な企業価値向上の原動力とする経営のあり方を指します。

 

「人的資本」という言葉は、もともと先天的、あるいは後天的な教育により、高い技能や技術を獲得することで、経済的価値を持った人材や特性を指していました。近年においては、単なる経済的収益のみにとらわれず、その人材の健康度や幸福度といった総合的な観点でとらえる傾向があります。

 

ヨーロッパやアメリカにおいては、成長の源泉として、人的資本情報を企業に対して開示するよう要請を強める流れが加速しています。この流れは日本でも上場企業を中心に広まっています。

 

日本では、経済産業省が「優れた人材は資本であり、人材の価値を引きだすことが中長期的に企業価値の向上をもたらす経営のあり方である」として、「人的資本経営」の概念を公表し、日本全体での推進を主導して図ろうとしています。

 

具体的には、早ければ、2022年夏には、人材への投資に関するいくつかの項目の有価価証券報告書への記載が義務付けられるようになります。つまり、「人的資本」への取り組みそのものが「企業価値」であり、投資判断材料となり得るのです。

 

単なる人材投資への動きだけでなく、人事施策や組織戦略を根本から変化させていこうという「人的資本経営」。この記事では、より多くの企業が「人的資本経営」への理解を深め、その一歩を踏み出せるように、わかりやすく解説していきます。

 

※出典元: パーソルキャリア「d’s JOURNAL」

https://www.dodadsj.com/content/220325_human-capital/

 

         

1.なぜ「人的資本経営」が求められる様になったのか?その背景

まずは「人的資本経営」について、なぜ必要とされるようになったのか、背景への理解を深めていきましょう。 

          

1-1 有形(製造)資産から無形(知識)資産への転換


企業におけるビジネスモデルは、デジタル化への急速な変化を迎え、製造業中心から無形の知識資産中心に変わりつつあります。その流れはものづくり大国である日本も例外ではありません。

以前:企業はモノへの設備投資によって、生産性を向上し資本力とする形

近年:IT産業に代表される、無形の財産を活用して生産性を向上し、資本力とする形

求められる資産の形が変わることで、企業で働く人に必要なスキルや経験、考え方も変わってきます。形のあるモノの影響が少なくなってきた中では、より人材に求められる要素は拡大しているといえます。知識資産が重要な時代においては、人への投資がそのまま企業の実力に反映されるといっても過言ではありません。だからこそ、企業の評価基準で「人的資本」が重要視されるのです。




※引用元:パーソル「記事・トピックス」
https://www.persol-group.co.jp/service/business/article/4099/
          

1-2 ESG投資の観点からの人的資本経営

無形資本への注目度の高まりも影響し、世界的な潮流として、国家および企業の運営において、SDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・企業統治)といった、持続可能性(サステナビリティ)が重要視されています。人的資本経営は、このESG投資の判断軸のひとつにもなるでしょう。

 

今後の企業運営においては、ガバナンスや社会性の高さ、環境への配慮などの非財務情報が、従来の利益性の高さ(財務状況)という観点と併せて「価値」と認識されるようになります。ESGのS(社会)では、労働環境改善、女性活躍など人的資本への考え方が反映されます。働く人の環境を改善し、エンゲージメント向上や教育にコストを振り分けることで、企業の総合力が向上すると考える投資家も増えています。



※引用元:ニッセイアセットマネジメント ESG投資の潮流と「望ましい人的資本の開示」

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/wgkaisai/hizaimu_dai2/siryou4.pdf

 

2.経済産業省の「人的資本経営」推進について

データと指

海外、そして日本をとりまく環境が大きく変化し、人的資本経営が注目されている背景はご理解いただけたと思います。具体的な動きはすでに始まっています。アメリカの証券取引委員会「SEC」は「人的資本」についての情報開示を義務付けることを2020年の段階で発表しています。

日本においてもそうした潮流をキャッチする形で、経済産業省にて「人的資本経営の実現に向けた検討会」を設置し、経営戦略に連動された人材戦略の実践と、それによる持続的な企業価値向上が可能なのか、議論を続けてきました。さらに経済産業省より2020年9月に「人材版伊藤レポート」が公表され、「人材」が経営にもたらす影響を重要視する姿勢を内外に示しています。

こうした動きと並行し、2021年には、東京証券取引所がコーポレートガバナンス・コードの改訂を行い、人的資本についての開示を強化する旨が発表されています。

さらに、2022年の5月には、2023年を目途に、有価証券報告書へ(一部の項目ではありますが)人的資本の情報開示を義務付ける方針を打ち出してきました。経済界においても、人的資本経営の流れは待ったなしで推進されている様相が見て取れます。

価値観が多様化する中で、「組織」と「個人」の関係性を見直し、多様な価値観を持った人材を企業活動に取り入れる為に、働き方や、従業員教育、エンゲージメントに福利厚生などを再構築していく必要が出てきます。


人材戦略に求められる3つの視点・5つの共通要素

引用元:経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会報告書 ~人材版伊藤レポート2.0~」(3P・5Fモデル)

https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinteki_shihon/pdf/report2.0.pdf

               

3.人的資本経営の情報開示(義務化の流れ)

ひらめき

人的資本の価値向上に取り組んでいる企業は、その取り組み情報を開示することで大きなメリットを得られます。

現状では、メリットの域を超えて、「義務化」への動きも進んでいる事から、早急に人的資本経営を検討しなくてはならない状況です。今後は、人材の採用や育成、さらに活躍を促進するという自社の動きを、データ化して世の中に示していく必要が出てきました。

ESG投資の観点からも、透明性のある情報を、適切にステークホルダーに開示することが求められています。今後、多くの指標がもたらされる中で、企業内の取り組みを実践し、可視化し、さらにステークホルダーからフィードバックを得ることで、より高い次元に移ることができるようになります。

「効果的な人的資本経営をしている」と投資家が判断できる企業は、より多くの応援を得やすくなるといえます。


        

4. 人的資本経営を進めるポイント

「人的資本経営」推進の重要性を紹介してきました。ここで企業の経営者や人事担当者を悩ますのは、「一体、何から始めたらよいのか」という部分だと思います。以下では、人的資本経営を進めるにあたってのヒントとなる要素を列挙していきます。


           

4-1 人的資本経営は何が重視されるのか?~基本的な考え方~

「人材」を大切にする、という考え方自体は、古くから日本企業に根差した考え方であり、「弊社は社員を大事にする経営をしています」という企業は多いでしょう。ただし、人的資本経営を進めるにあたって、非常に重要なポイントは、人材への投資を「感覚的」「主観的」に行うのではなく、データをもとにした「戦略的」「客観的」にして経営の主要素として盛り込む必要があるということです。

近年、デジタル化および、デジタル技術の活用によるビジネス改革(DX)が各企業により推進されており、企業の人材データの活用も10年前、20年前とは比べ物にならないほど環境が整っています。データを集め分析することで、経営戦略に連動した人材戦略、KPI設定、モニタリング、分析、レポーティングといった「戦略的」「客観的」な動きに繋げる、ということをまず念頭に入れてください。

実際、「伊藤レポート2.0」における「3P・5Fモデル」にも「As is-To beギャップの定量把握」という表現が盛り込まれています。理想(目指す姿)と現実(現在の状況)をデータの根拠とし、ギャップ把握しようということです。

           

4-2 「ISO30414」-人的資本の国際的情報開示ガイドラインを知ろう

次に、国際的な基準となっている「人的資本」の指標を見ていきましょう。

人的資本経営の分析指標として有名なものは、国際標準化機構(ISO)の設けているガイドライン「ISO30414」(アイエスオーサンゼロヨンイチヨン)です。企業が外部および内部のステークホルダーに「人的資本」に関する報告を行うための指標を挙げたものになります。

人的資本経営を目指すにあたり、組織における人的資本の効果を見える化し、さらに透明性をもたらすことが目的に作られています。具体的には、11の項目(以下列挙)と、それに紐づいた58の指標があります。

人的資本エリア

概要

1.コンプライアンスと倫理

ビジネス倫理規範へのコンプライアンス測定指標

2.コスト

採用・雇用・離職等労働力のコストに関する測定指標

3.ダイバーシティ

労働力とリーダーシップチームの特徴を示す指標

4.リーダーシップ

従業員の管理職への信頼等の指標

5.組織文化

エンゲージメントや満足度における従業員意識・従業員定着率の測定指標

6.組織の健康,安全

従業員の健康、労災等に関連する指標

7.生産性

人的資本に対する生産性(利益や売上)と組織パフォーマンス貢献度への指標

8.採用・異動・離職

人事プロセスを通じ適切な人的資本を提供する企業の能力を示す指標

9.スキルと能力

個々の人的資本の質と、育成内容を示す指標

10.後継者計画

該当するポジションに対しどの程度承継候補者が育成されているかを示す指標

11.労働力

従業員数等の指標


※出典元:
・ISO30414『Human resource management — Guidelines for internal and external human capital reporting』)
・パーソルキャリア「d’s JOURNAL」https://www.dodadsj.com/content/220325_human-capital/
・NRI「 ISO30414(人的資本に関する情報開示のガイドライン)」 https://www.nri.com/jp/knowledge/glossary/lst/alphabet/iso30414

 

上記項目からは、「人的資本経営」のキーワードが見えてきます。今までの人材戦略においても重視してきた内容が多いと思いますが、これを指標化する、ということを考えると、「うちでは現状できているのだろうか?」と考えてしまう方も多いのではないでしょうか?

 

人的資本経営においては、まずこうしたキーワードについて、実施策が具体化されているか、さらにデータ化できているかが重要なポイントとなります。

           

4-3 「伊藤レポート」-日本の「人的資本経営」の考え方を知ろう

前項でも述べた通り、2020年に、経済産業省が、経営戦略と連動した人材戦略の実践について、議論をまとめたものを公表が「人材版伊藤レポート」と言われるものです。さら「人的資本経営の実現に向けた検討会」の設置により、議論を重ね、2021年5月に公表されたものは「人材版伊藤レポート2.0」です。

このレポートには、人的資本経営に対して、どうやって具体化し、実践するかのアイディアが提示されています。ただし、それぞれの項目を単純に満たしていけば人的資本経営化する、という単純なものではありません(もちろん、近づけることはできるでしょう)。

なぜなら、人的資本経営は、その企業の事業内容や環境といった要素によって、どんな施策が有効なのかは、異なるはずだからです。そういった意味で、「伊藤レポート」はあくまでヒントではありますが、非常に重要なものとなります。




※引用元:「人材版伊藤レポート2.0」
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinteki_shihon/pdf/report2.0.pdf

                          

5.人的資本経営とウェルビーイング・健康経営

ウェルビーイング

伊藤レポート2.0においては、「CEO・CHROは、社員の健康状況を把握し、継続的に改善する取組を、個人と組織のパフォーマンスの向上に向けた重要な投資と捉え、健康経営への投資に戦略的かつ計画的に取り組む。その際、社員の Wellbeing を高めるという視点も取り込んでいく」と表記されています。

 

 ※引用元:「人材版伊藤レポート2.0」https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinteki_shihon/pdf/report2.0.pdf

 

人的資本経営を実践するには、従業員のウェルビーイングを高めていくという視点を持ち、そのために健康経営を含む各種施策を行っていく必要があります。ただし、「ウェルビーイング」とは“心身と社会的な健康”を意味する「概念」です。

そのため、伊藤レポートにも「多義的であり、社員一人一人の価値観や働く目的が異なる中で、その意味するところも人それぞれである。個々の企業の状況に応じて、多様な人材が能力発揮できる環境の整備や、自律的なキャリア形成の促進等の試行錯誤を重ねる(要約)」と記載されています。

施策の定量把握においては、一定の基準値を企業毎に設け、As is-To beギャップを測定する仕組みを持ちつつ、各種施策におけるチェックをする必要が出てきます。

従業員ウェルビーイングを可視化する組織診断サービス「ウェルスコア」

従業員アンケートの結果を基に従業員の「ウェルビーイング※」や「満足度」を数値により可視化して組織課題を把握・解決する組織診断サービスです。

6.「人的資本経営」の最新ニュース

 

日本政府は2022年夏ごろ、企業に対して、従業員の育成状況や多様性の確保といった人材投資に関わる19項目の経営情報を開示するよう求めています。企業が従業員について価値を創出する「人的資本」を投資家が適切に判断できるようにするためです。

そのうち一部は2023年度にも有価証券宝庫期初への記載を義務付けるなど、「人的資本経営」の流れは急加速しているといえるでしょう。この開示を通じ、人材の投資を促進し、無形資産の積み上げを行う、という内容が発表されています(日経新聞2022.5.14)


        

7.まとめ

人的資本経営について、基本的な流れをご紹介しました。今後の企業価値を高めるためには必須ともいえる考え方ですが、その研究や実践はまだ始まったばかりです。しかし、2023年度からの有価証券報告書記載義務といい、開示の流れは想像以上に早いといえます。 

急速な流れに対応するためには、デジタルツールの導入や人事コンサルの力も借りることも有効です。ただし、推進する意思はやはり会社のトップ層の理解が最も重要です。この記事に触れた人事・総務担当者の方は、まずは情報収集を行い、社内共有をしてみてください。

 

監修者 株式会社イーウェル ウェルビーイング経営推進室

イーウェルで提供している福利厚生、健康経営などのサービスをご紹介!


Related keywords

Related article

Recommend

メルマガ登録

最新情報や
お役立ち資料を自動受信