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2024/03/01 (公開:2023/03/16)

「従業員の健康・ウェルビーイング向上による人的資本経営の実践と開示」セミナーレポート


「従業員の健康・ウェルビーイング向上による人的資本経営の実践と開示」セミナーレポート


株式会社イーウェルでは、2023年1月19日(木)に、経済産業省およびロート製薬株式会社をゲストにお招きし、昨今の人事・経営領域でブームとなっている「人的資本経営」をテーマにしたセミナーを、東京日比谷の会場とリモートによるハイブリッド形式にて実施いたしました。

 

当日ご参加できなかった方、またご興味をもたれた皆さまに向けて、当日の内容をまとめましたので、ぜひご覧ください。

         

1.『ご挨拶』 
 株式会社イーウェルHRソリューション本部
 本部長 梶村 幸輝




本日はお忙しい中、弊社主催のセミナーにご参加いただきまして、誠にありがとうございます。

昨今のキーワードである人的資本について、経済産業省様とロート製薬様、そして山梨大学の西久保教授にもご参加いただき、非財務情報の見える化指標の中での健康経営の取り組み、そして、ウェルビーイング視点に焦点を当て、その課題と打ち手についてヒントを探るという企画となっております。

 

本日ご参加の皆様、および所属されている組織のウェルネスがより向上することを「ウェルアップ」と言いますが、そのウェルアップに向けて、本日のセミナーが良い発見や気づきの機会になっていたたければと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。


 


             

2.レポート:『”人的資本経営”に向けた健康経営の広がり』
 経済産業省 ヘルスケア産業課 総括補佐 藤岡 雅美 氏

本セミナーの第1部では、経済産業省 ヘルスケア産業課の藤岡氏に、「人的資本経営」に向けた健康経営の広がりについてご登壇いただきました。以下にその内容をまとめております。



   

2-1 藤岡氏の経歴

京都大学で保健師看護師の免許を取得後、経済職として経済産業省に入省し、現在藤岡氏が在籍しているヘルスケア産業課の立ち上げや、健康経営銘柄(法人認定制度)の立ち上げなどに従事。その後、働き方改革を担当されたり、厚生労働省に出向するなどして、ヘルスケアに多く携わっています。

 

2-2 「人への投資」について

人的資本経営の大命題である「人への投資」については、現在、産業人材課が中心に推進しています。日本生命保険協会が実施したアンケートによると、投資家は「人への投資」が中長期的な視点で大事であるとする方が最も多い中で、企業として重視するものは設備投資という結果となっており、このギャップをどう考えていくか、今後、人への投資にどのようにシフトしていくかは過渡期にあります。

そのような中で経済産業省は、2020年にどのような形で人に投資し実践していくのかを「人材版伊藤レポート」としてまとめ、2022年には「人材版伊藤レポート2.0」としてアップデートして公表しています。


2-3 「人材版伊藤レポート2.0」とは

現在、政府全体において、経営戦略と連動した人材戦略の実践については「人材版伊藤レポート2.0」、人的資本の情報開示については「非財務情報可視化研究会」における可視化指針が策定され、その両輪で人材政策を推進しています。

 

人材版伊藤レポート2.0のポイントは、各企業のCHROがしっかり戦略を立て、人材の生え抜きや新卒一括採用に限定しない別のアプローチ方法を追求し、具体的にどのように取り組んでいくのかなどを検討するものとなっています。また、リスキル、留学さらには出向留学や兼業副業などの経験を重ねる中で、人的資本形成にはウェルビーイングも大事であると位置づけられています。

 

人材版伊藤レポート2.0では、3つの視点と5つの要素を提示しています。

3つの視点とは以下の通りです。

  1. 経営戦略と人材戦略を連動させるための取組
  2. 「 As is To be ギャップ」の定量把握のための取組
  3. 企業文化への定着のための取組

 

5つの要素は以下の通りとなり、これらの要素を健康経営も含めて実践していくべきとしています。

  1. 動的な人材ポートフォリオ計画の策定と運用
  2. 知 ・ 経験 の ダイバーシティ・インクルージョンのための取組
  3. リスキル・学び直しのための取組
  4. 社員エンゲージメントを高めるための取組
  5. 時間や場所にとらわれない働き方を進めるための取組

2-4 「価値向上」と「リスク」マネジメント

人材育成やスキルに関する開示はイノベーションや生産性といった戦略的な「価値向上」の軸に力点が置かれている一方で、ダイバーシティや身体的・精神的健康に関する開示は、「価値向上」とともに、企業の社会的責任に対する「リスク」のマネジメントの双方の観点から捉えられる開示事項と考えており、企業戦略においてどのようなバランスで捉えていくのかが重要です。

 

労働安全衛生の関係では、「リスク」マネジメントの観点で捉えられることが多いですが、健康経営では、「価値向上」の部分を大きく打ち出した考え方です。




2-5 働き方改革の本質

働き方改革第二章として、単なる長時間労働是正から企業の経営戦略に昇華していかなければならないなかで、高い付加価値を生み出すために「生産性」と「エンゲージメント」をどのように高めていくかという議論が重要です。

生産性を高めるためにマニュアルを整備し、業務管理をしっかりしていくと、型にはめられ身動きのできない業務環境になってしまいます。それが果たして「従業員の働く幸せ」に繋がるのかという疑問に突き当たります。企業も成長して、従業員の働く幸せにも繋がること、つまり企業と従業員の方向性を合わせていくことが「生産性向上」であり、「エンゲージメント」や「働き方改革」の次のステップとして重要なことです。 


2-6 人への投資と健康

「業務を型にはめず、従業員の健康増進をはかり、イキイキと自分の仕事に没頭できる環境を整えるにはどうしたらいいのか」これが健康経営の本質です。経済産業省では、健康経営を推進するために、東京証券取引所と一緒に健康経営銘柄の選定や、健康経営優良法人の認定などを行っています。

 

上場企業では約8割(時価総額ベース)の企業が健康経営に参画し、中小企業も約1万5000社が参画しています。一方で、日本には350万社の企業があることを踏まえると、更なる拡大の余地があり、さらに取り組みを推進していきます。また、健康経営に関する各ステークホルダーからの評価にも使ってもらうため、今後も様々な設計を続けていきます。


健康経営のインパクトを「資本市場」「労働市場」「その他」などの各マーケットとの連携とみていくと、「資本市場」では健康経営の取組状況を投資家向けに発信する企業が増加しています。また、機関投資家においては投資先企業の健康経営を評価する動きが拡大している状況です。

 

「労働市場」では、ハローワーク求人票の中に健康経営優良法人ロゴマークの利用が可能となり、また、大手就職・転職サイトで は、特設ページやウェビナー等により健康経営に関する普及啓発を強化していただいています。「その他」の市場では、金融機関が健康経営の取り組企業に対して低金利融資を実施し、そこで働く従業員が安価に住宅ローンを組めるといったサービスなどが出てきています。

 

経済産業省としては健康経営の今後の展開については、以下の3つを検討しています。

  1. 現在、健康経営を支える様々な産業群があるため、健康経営への支援サービスをどのように作り、国際的にこれをどう位置づけるのか、マーケットの広がりをつくっていく。
  2. 健康経営の高度化(更なる普及と)に向けて、その健康経営が「生産性」や「エンゲージメント」とどのようにつながっていくのかを、国としても示していく。
  3. 健康経営を自立化させる目的で、民間主体での制度設計を数年で移行していく。

 

2-7 これからの健康づくり

健康経営は健康づくりを目的にするのではなく、従業員を健康にすることによって企業はどうなりたいのか、その従業員の人生をどうしたいのか、というように、その先をしっかりディスカッションしていかないと、「健康」そのものの価値がきちんと見えてきません。

 

ヘルスケア政策全体でも、「医療」と「日常」を一体化し、日常生活の中で健康になっていく社会像を作っていくことをビジョンとして取り組んでいます。それに向けて、これからの健康づくりの視点として、以下の3つを重要視しています。

  1. 健康は本人の責任ではない
  2. 社会的・環境的要因 への着目
  3. 健康 は ability である

 個人を健康にするためには、個人を取り巻く環境として企業を変える必要があり、更に、企業を変えるためには、その取り巻く環境である資本市場や労働市場など社会を変えていくことで、行動変容の連鎖を促していくことが重要です。この連鎖をどう作っていくのか意識しながら、政策の立案や実施を進めていきます。

▼当日のセミナー資料をご覧になりたい方は、以下のボタンより資料をダウンロードしてください


 

            

3.レポート:『人的資本に向き合い、個人と会社が共に成長する「Well-being経営」の実践』 
 ロート製薬株式会社 取締役 CHRO 髙倉 千春 氏



本セミナーの第2部では、ロート製薬株式会社 取締役CHROの髙倉氏にウェルビーイング経営の実践と事例について登壇いただきました。以下に内容をまとめております。

 

          

3-1 経歴、投資家からの視点

キャリアのスタートとして農林水産省に入省し、その後アメリカに留学、帰国後は外資系のコンサルティング会社、その後外資系医薬品メーカーでグローバル人事等を行い、前職では味の素㈱で世界の多様性を活かす人事改革・人事マネジメントを推進しました。この頃に経産省との付き合いが始まりましたが、当時は長時間労働や生産性の問題など「働き方改革」を先駆的に推進し、人的資本経営の取り組みが始まったという流れがありました。

 

経産省「人的資本経営実現に向けた検討会」委員として人材版伊藤レポート」の報告書作成に参画。現在、「人的資本経営コンソーシアム」の企画委員を務め、日本における人的資本経営の実装に向けて尽力しています。検討会の特徴として機関投資家が数名入っており、「人材」の問題が市場においてどうみられているのか、「人的資本経営」の議論における機関投資家の視点を少しご紹介したいと思います。

企業は持続的な企業成長から「持続的な企業価値創造」が求められる時代となり、単に売上や利益を出すということではなく、ESGやサステナブルなども経営課題となっています。これらを担うのは人であり、多様な人材や多様な視点が必要です。この多様性を束ねる求心力として経営理念の浸透、そして経営理念と事業戦略との連携、そして人材マネジメントとの連動が重要です。

 

また、人の心に火がつかないと、資本の価値はでません。社員一人ひとりの持っている特性が非常に大事であり人事戦略の要、当社では‘社員全員エンパワーメント’として「ウェルビーイング経営」を推し進めているところです。

            

3-2 ロート製薬での「ウェルビーイング経営」の取り組み

 

ロート製薬は多様なニーズに応える多様な人材を求めており、その多様性を束ねる求心力である経営理念として、2019年に『経営ビジョン2030 Connect for Well-being(コネクトフォーウェルビーイング)』を制定しました。このビジョンを実現するには、「Connect(つなげていく)」がキーワードであり、「ヘルス&ビューティ」「食」「再生医療」等の事業と事業のコネクト、社内外の組織と組織、人と人のコネクトが重要と考えています。

 

当社の統合レポート「Well-being Report 2022」でも重要マテリアリティとして「企業価値向上に向けた人的資本の最大化」を掲げています。「個人と会社の共成長」を目指し、個人がいきいきと自発的に働き、チャレンジし、ジョブを創出すること、会社はその機会や場を提供することを重要視しています。

 

社員にいきいきと働いてもらう具体的な取り組みとして、社員の人間そのものを尊重し、早い段階で複業や兼業を取り入れました。社外の複業である「社外チャレンジワーク」や社内の兼業「社内ダブルジョブ」などを行う社員が増えています。

 

また、個のキャリア開発支援として「明日ニハ」と命名した社内起業家支援プロジェクトを行っています。社員がやりたい事業を経営幹部や他社員に提案する場、機会を設けています。他の社員はロート独自の社内健康通貨(ARUCO)を通じてクラウドファンディングのように出資することができます。全社員一丸となって新しいものを起こしていこうという風土をつくっています。

 

包括的な学びのプラットフォーム「ロートアカデミー」を設置し、学びの循環をおこしています。また適所適材、適時適量、人の想いをいかに仕事につなげるかを重視して「動的人財マネジメント」を実行しています。

 

各個人のウェルビーイング度合いは、半期に一度の自己評価によりウェルビーイングポイント(WBP)として10段階でスコア化し数値化、定量化しています。ポイントが低いから悪いとか高いから良いという問題ではありません。例えば、問題意識が高い人が低くつけている可能性もあります。フォローアップワークショップなどアセスメント後の施策運用につなげています。

 

   

3-3 ロート製薬の健康経営の取り組み

ロート製薬はヘルスケアカンパニーとして健康やウェルネスについては本業ですので、「まず社員自身が健康であってこそ、世の中へ健康やウェルビーイングなどの価値、より良い商品やサービスを提供できる」という考えのもと、2023年に向けた健康目標値を設定し、取り組んでいます。

【参考】ロート製薬HPより


この健康社内通貨「ARUCO」コインは健康増進に加え、みんなで感謝を伝え合う「Thank you(39)ARUCO」というものにも使われています。感謝の言葉を贈ると送信者・受信者両方にコインが付与されるもので、それぞれが尊重し合い働く環境を良くしようという風土醸成にも活用しています。

 

 

3-4 まとめ


ロート製薬は昨年(2022年)10月に20年ぶりに人事制度を改定し、個人と会社の自律した共成長を目指し「“全員戦力化”の土台となるWell-being経営」を推進しています。当社は「石垣経営」と例えることがありますが、多様な個性をもつ一人ひとりはそれぞれ形も大きさも、その厚みも異なる石であり、その個性を活かしながらロートという組織の石垣を共に創り盤石なものにしていくのです。

 

        

4.レポート:『ウェルビーイング視点を取り込んだ施策紹介』
 株式会社イーウェル ウェルビーイング経営推進室 室長 林 邦彦





本セミナーの第3部におきましては、株式会社イーウェル ウェルビーイング経営推進室 室長の林より、人的資本経営可視化と情報開示に向けて、特にウェルビーイング視点を取り込んだ施策の事例について紹介いたしました。

 

まず、人的資本経営の実現には、5つのプロセスをしっかり回していくことが重要だと考えています。

  1. 自社でどのような指標を測定していくのかという考え方(ノーメジャーノーコントロール:測定されないものは経営判断を下せない)
  2. 計画・実践していくこと
  3. 評価・改善していくこと
  4. その実践(2・3)を可視化していくということ
  5. 4をふまえて、どのように情報開示していくのかということ

 

情報開示の指針の中には、開示が望ましい19項目が出ており、非常に幅広い内容となっています。ただし、全ての項目を開示する必要はなく、自社の重点項目をもう一度振り返りながら、そこに即した独自性のある開示項目を検討していくことが望ましいとしています。

 

有価証券報告書の中の人的資本に関しては、必須開示項目として、「人材育成方針」と「社内の環境整備方針」があげられています。「社会の環境整備方針」の内容は、任意開示項目とされていますが、その中の「健康経営の投資」と「ウェルビーイング視点の取り込み」が非常に重要なファクターであり、組織の活性化や企業業績の向上に向けて、さまざまな施策や健康経営やウェルビーイング視点などを取り込んでいくことではないかと考えています。

 

この2つの項目の1つ目「健康経営」の投資は、もともとは労働安全衛生の「健康的に働く」という健康経営の考え方を基盤として、それにプラスしてウェルビーイング経営の視点の幅が広がってきたと言われています。2つ目の「健康的にイキイキと働く」という範囲までを「ウェルビーイング経営」というキーワードで捉え、実践されている企業も多くあります。こうした取り組みを経営企画部門やIRも含めて非財務情報の開示戦略に、どのように落とし込んでいくかということが、取り組みの全体像と考える必要があると思います。

 

健康経営の取り組みには4つのステップがあり、人的資本経営もほぼ同じようなステップになります。

  • ステップ1:健康経営をまだ始めていない企業
  • ステップ2:は始めたばかりの企業、
  • ステップ3:PDCAを回している企業
  • ステップ4:効果や評価を社外開示している企業


この中で、最後のステップ4が最も大変なのではないかと思っております。それは、健康経営推進の効果は中長期に現れると言われており、健康経営を実践して保持増進し、業務パフォーマンスが上がり、業績向上に紐づくというところまでが、中長期の考え方になるからです。



弊社イーウェルでは実際にどのような施策をしているかについては、社内の健康経営施策を「計画策定」と「施策実行」の2つに分けてます。まず、目標を過去3年間のものを踏まえて立てていき、当年度の目標に対してどこまで到達するかどうかを検討し、施策をやる前にベースラインの調査と、終わった後にエンドラインの調査というのを行っています。

 

施策には2つあり、1つ目は歩数キャンペーン、2つ目は健康リテラシーを高めるための生活習慣に紐付くような運動食事睡眠セミナーというものを企画して、実際、社員に参加してもらっています。このような施策をしていく中で、非常に参加率が高い組織と参加率が低い組織があり、つまりそれは仮説として、無形資源と言われている管理職のリーダーシップというものがすごく影響を与えていると考えています。施策のやり方ももちろん重要ですが、さらに管理職のリーダーシップを発揮すると、その施策の効果が表れてきます。それを踏まえて、一体感の醸成を目的に組織間競争というのを組織毎に比較しながら進めています。

 

このような施策を実施する際、インセンティブなどをつけながらやっていると思いますが、それに加えてリーダーシップの醸成支援という主旨で、週次単位で比較をしながら自分の組織がどのくらいに位置づけられているのかということを、管理職も自分ゴトとして進めていくということが重要だと考えています。

 

実際の結果として、歩数登録者が2年間で約4倍に増え、さらに、平均歩数が6000歩未満の社員と6000歩以上の社員では、生産性におけるプレゼンティーイズムである労働機能障害の項目が下がることが、社内のデータから判明しています。それから興味深いことに50歳を超えた社員に関しては、歩数の差がすごく大きくなり、それによって検診結果に影響を与えているということもわかってきました。

 

弊社の健康経営の推進において、自社の健康課題をどのように改善して導いていけばいいのかという具体的な目標設定ですが、弊社は比較的IT部門やコールセンターで働く従業員が多いため、運動習慣が少なめと認識しており、どのようにしたら改善できるのかということを毎年考えながら進めています。

 

健康経営の中身を開示されている大和証券グループ様は、経営課題にウェルビーイングというワードを入れながら、その向上に向けて具体的に施策を実行されていると認識しています。昨今、解決したい経営課題や人事課題に、ウェルビーイング向上というキーワードを入れている企業が、非常に多くなっており、ロート製薬様をはじめとして、各企業様がウェルビーイングをとらえながら、それを向上させようとしている企業が増えてきていることを実感しています。



続いて、ウェルビーイング視点をどのように取り込んでいるのかという企業の事例と、それに向けての具体的な取り組み方法を、当社の事例も含めて説明します。

 

1つめは有価証券報告書に開示しているオムロン様です。健康経営の取り組みをしていることを有価証券報告書にしっかりと書いています。そして2つめは、某電力会社様の事例ですが、統合報告書に健康経営の取り組みや、福利厚生の取り組みについて記載しています。

これは従業員向けに発信していることもありますが、一方で、就活生も目にすることもあるかと思います。実は、就活生が就職先企業に期待することのトップ3というのが、従業員の健康や働き方への配慮、そして福利厚生の充実、企業理念・使命への共感となっています。この人的資本経営とそれを支える健康経営に関係している項目でもあります。

何を開示するのかという考え方の中で、経営戦略と人事戦略に紐づく形で、いかに戦略的な福利厚生へと導いていくかだと理解しております。具体的には従業員の健康や働き方改革をさらに推進することを目的として、選択制福利厚生制度のカフェテリアプランをどのように効果に結びつけているかという考え方です。

ある企業では、削減された残業手当の一部をカフェテリア制度の原資に還元することにより、健康、育児、介護などといった項目に効果的に使われています。企業様にとっては、このような制度改革の効果は方向性に合致していると感じています。

 

弊社イーウェルとしては、企業理念である「健康社会の実現」に向け、個人と組織の「ウェルビーイング」が実現された社会というものを『心身ともに健康であるとともに、社会的にも満たされている状態』と定義しています。その定義の5つの要素(プライベート、経済状況、仕事、生活習慣、心と身体)を踏まえて、自社の中でもサーベイを展開しています。このウェルビーイングの要素をスコア化したものを「ウイルスコア」と称し、自社のデータ、人事データや外部のデータなどをデータベースの中に入れて、ウェルネスをスコアリングすることで組織の健全性を可視化していきます。その中で組織の状態を見ながら、改善していくというプロセスになっています。

このようなサーベイの指標やKPIを見ていく中で、自社の健康課題やウェルビーイングの課題が見えてくるのではないかと考えています。「ウイルスコア」をイーウェルで実施したところ、生産性に紐づくとされる仕事スコアUPが、面白いことに心と体のスコアが高いというだけではなく、プライベートスコアが高いことも影響があるという分析結果が出てきています。

これまでは、福利厚生のKPIというと利用率に終始しているように思われますが、それだけではなく、ウェルビーイングを高めるKPIは何なのかを考えることで、効果というものが見えてくると思います。今後目指すウェルビーイングの方向性として、2つあります。

1つが企業の中で働く個々人が自律性や主体性を持って仕事をしていくことです。
そしてもう1つが、オーナーシップであり、自分ゴトとして物事を捉えていくことが、人的資本経営の中でも投資効果につながっていくと考えています。さらに、今後そのような行動変容を促すため、個人に向けたレコメンドができるように、これからも考えていきたいと思います。

本日は、測定指標を検討し、計画実践をして評価改善、そして可視化して情報開示していくというプロセスについて説明させていただきました。最後にイーウェルといたしましては、こうした「WEL UP」という考え方、「企業も人もウェルビーイングへ」という考え方を位置づけながら、企業の皆様と一緒に今後の人的資本経営やウェルビーイング経営の推進に寄与していきたいと考えています。

ご清聴ありがとうございました。

▼当日のセミナー資料をご覧になりたい方は、以下のボタンより資料をダウンロードしてください。





5.パネルディスカッション【要旨】
『人的資本のアウトプットについて  ウェルビーイング観点の開示資料の見せ方とは』

ファシリテーター:山梨大学 生命環境学部 地域社会システム学科 教授 西久保 浩二 氏

パネリスト:経済産業省 ヘルスケア産業課 総括補佐 藤岡 雅美 氏

      ロート製薬株式会社 取締役 CHRO 髙倉 千春 氏

      株式会社イーウェル ウェルビーイング経営推進室 室長 林 邦彦

人的資本セミナーの最後に、山梨大学の西久保教授をファシリテーターとしてお迎えし、当日ご登壇された3名の皆さまを交え、パネルディスカッションを開催しました。『人的資本のアウトプットについて ウェルビーイング観点の開示資料の見せ方とは』というテーマで、人的資本の実践的な内容について討論し大いに盛り上がりました。本章ではその模様をレポートにまとめました。


 

          

5-1 人的資本の開示の進め方と取り組み方

まず西久保教授より、昨年8月に内閣官房から人的資本開示指針が示され、当面は上場企業が対象ですが、今後は非上場企業や中小・中堅企業も人的資本経営へとシフトさせざるを得ないと思われるため、そこで「人的資本の開示をどう進めるのか?」、「実践や取り組みをどうするのか?」などについて討論を進めたいという主旨のもと、ディスカッションがスタートしました。

▼全文をご覧になりたい方は、以下のボタンより資料をダウンロードしてください。


 

イーウェルで提供している福利厚生、健康経営などのサービスをご紹介!


「従業員の健康・ウェルビーイング向上による人的資本経営の実践と開示」セミナーレポート


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