人事DXの基礎知識 ~取り組む前に知っておきたいこと~
最近、DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉をよく聞きます。
本記事では「人事DX」にスポットを当て、”そもそもDXとは何なのか?"という基本的な部分から、DXにおける”人事部門の役割や重要性”まで、取り組む前に知っておきたいことまでをご紹介します。
※本記事は、2021年10月21日に開催されたウェビナー『人事DXの基礎知識~取り組む前に知っておきたいこと~』の内容をもとに作成しています。
目次
1.DXとは
DXとはデジタルトランスフォーメーションの略称で、2004年にスウェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって、発表された論文中で提唱された言葉です。その概念は、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」と定義されています。
ちなみに、Digital transformationが「DT」ではなく「DX」と表記されるのは、英語圏では「transformation」の「trans」を「X」と略すことが一般的なため、と言われています。
日本では2018年に経済産業省により「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されています。
この定義によると「データとデジタル技術を活用して」となっておりますが、それはあくまでもDXを行うための手段として位置付けられています。すなわち、単にAIやIoTなどのデジタル技術を活用することが目的ではないということです。 デジタル技術の活用よって「製品・サービスやビジネスモデルを変革する」こと、さらには「業務そのものや組織、プロセス、企業文化・風土」までも変革するとしています。
つまり、変革する対象は、企業の「ビジネスモデル」「製品・サービス」「業務プロセス」「組織文化・風土」など多岐にわたるものであり、企業そのものを大きく転換させる非常に広範な概念であるといえます。そしてこれらにより「競争上の優位性を確立すること」が目的として示されています。
2.2025年の崖問題
なぜ、今のタイミングでDXが注目され、多くの企業が取り組み始めたのでしょうか。
それは、「2025年の崖問題」が大きな理由です。この言葉を聞いたことがある方は多いと思いますが、「2025年の崖」とは、複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムが残存した場合に想定される、国際競争への遅れや日本経済の停滞などを指す言葉です。
今後、システムの老朽化による維持管理費の高額化や、既存システム構築を担った社員の退職によるブラックボックス化、膨大なデータの肥大化・複雑化が進むだけでなく、加速する人材不足により保守運用に人手が回らず、システムトラブルやデータ消失などのリスクが高まると予測されています。経産省のDXレポートでは、2025年までに予想される「IT人材の引退」や「既存システムのサポート終了」などによるリスクの高まりなどが、日本経済の停滞を引き起こすと指摘されています。
多くの企業は、自社の将来の成長や競争力強化のために “DX”を推進する必要性を理解しています。しかし、DXを推進しようという試みは見られるものの、実際のところ、多くはビジネス変革につながっていないというのが現状です。その大きな要因の1つが「老朽化や複雑化、ブラックボックス化している既存の基幹システム」いわゆるレガシーシステムの存在です。
日本の企業の多くが、自社のシステムの内部構造が複雑化し、自分自身で修正できない状況に陥っています。自社のレガシーシステムがブラックボックス化していても、システムが稼働していれば大きな問題とはなりませんよね。そのため多くの企業では、ブラックボックスの解明や新たな構築方法の検討などを、自社の経営課題として取り組まないまま、時間が経過してしまっている状態です。
このようなレガシーシステムは、「コストの増加」や「システム維持費の高額化」「システムトラブル」「市場変化への対応遅れ」など様々な問題を引き起こします。そして、多くのコストや人的リソースがレガシーシステムに費やされることで、新しいデジタル技術に資源を投資できなくなり、企業のグローバル競争力を低下させていく恐れがあります。
日本企業のDXが遅れ、グローバル競争力が低下した場合に与える経済損失は、2025年~30年の間に最大12兆円と推定されています。新しいシステムに乗り換えないと、日本企業は海外と比べ、デジタル競争の敗者となってしまいます。それを回避するためには、各企業や業界がDXを意識的に進めるしかなく、目標として「2025年までに」という期限が定められています。
※出典元:経済産業省 DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/20180907_report.html
3.日本におけるDXの現状と課題
前章では、日本においてDXがなぜ必要なのか、それは「2025年の崖問題」が発生するのを阻止するためである、という根拠をみてきました。本章ではDXに取り組むにあたり重要な「現状」と「課題」について解説いたします。
3-1 日本がDXに取り組む現状
3-2 DX成功のポイントから見る日本の課題
DXの成功には以下の要素が必要と言われています。
① DX成功のポイント
- DXを全社的な取り組みとして行っている
- IT業務の分かる役員がいる
- IT人材が確保できる
- 柔軟な組織文化がある
② 日本の企業文化
- 日本企業では「部署の垣根を超えた意思疎通が難しい
- ITに疎い役員が多い
- 年功序列の文化のため、ITスキルが高い傾向にある若手人材・IT人材が増えない
- 現状を変えたくない一部の従業員が抵抗勢力となる
さらに、 日本の雇用形態にも課題があります。これまでの日本企業は「人に対して仕事を割り振る」メンバーシップ型が主流で、新卒一括採用、年功序列、終身雇用などを前提とした雇用形態でした。そのため、以下のような課題が浮き彫りになっています。
- 仕事が明確に規定されていたいため、属人的な業務が多く発生する
- 業務に合わせてシステムをカスタマイズしてきたため、システムのアップデートや交換が難しい
つまり、既存のレガシーシステムだけでなく、日本特有の企業文化が刷新の足かせに なっているのです。特に、人の経験則に頼っていることが多い人事領域においては、DXが進みづらい状況にあります。
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4.人事DXとは
4-1 人事DXの重要性
DXを成功するには「企業文化や風土の変革」「それらを実行できる人材の確保・育成」「部署を横断した体制構築と社員の理解・協力」が必要不可欠です。そして、会社の“制度を作る”ことは人事の仕事であり、人事業務は考課や採用など“属人化”を防がなければならない業務がほとんどです。そのため、人事分野のDXは最も重要といえます。
4-2 人事DXの業務内容
人事の仕事は「人事企画・採用・育成・制度管理・労務管理」など多岐にわたります。こ れらの業務を棚卸・細分化すれば、本来、人事部門はDX化できることがたくさんあり、 最近では採用・評価・タレントマネジメントなど人事DXをサポートするサービスもたく さん出ています。ここで注意しなくてはいけないのはサポートサービスを導入するだけで はただの“デジタル化”で終わってしまうということです。
DXサポートサービスを活用し、人事業務を効率化することももちろんDXのひとつですが、人事DXはそれだけではありません。
4-3 人事DXの目的
5.まとめ
DXの推進が、結果として「デジタル化」という形で終わらせないためには、新しいサービスを導入する際は、まず、きちんと現状を把握し、目標達成にはどういったデータが必要なのかをよく検討した上で、目的に合ったサービスを選択することが大事です。
正しいステップを踏まなければ、DXは実現せず、ただのデジタル化で終わってしまうのです。
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