働き方改革の問題点は?解決するための手順や注意点をご紹介
「働き方改革をする上で、何か問題は発生しないのだろうか?」
「働き方改革を実施する上での課題の解決策を知りたい」
などとお悩みではありませんか。
本記事では、働き方改革の3つの柱を詳しく紹介します。同時に、働き方改革に際して企業が直面する問題も解説。問題が発生した際の解決手順まで紹介しているので、着手を検討中の方は、ぜひ参考にしてください。
1.働き方改革とは?
働き方改革とは、働く人それぞれの事情に合わせて、多様な働き方を選択できる社会を実現するための取り組みです。働き方改革を推進する主な目的は、以下の通りです。[注1]
- 長時間労働の是正
- 多様で柔軟な働き方の実現
- 雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保
労働人口の減少を避けられない事実として受け止め、1人1人の生産性を高めるための取り組みが、働き方改革と言えます。以下では、前提知識として働き方改革の3つの柱を解説します。
[注1] 厚生労働省「働き方改革~ 一億総活躍社会の実現に向けて ~」
1-1 3つの柱① 長時間労働時間を是正
労働時間の是正については、法令に法って定められたものが多いことが特徴です。働き過ぎを防ぎ、働く人々の健康を守ることで、ワーク・ライフ・バランスの実現を目指しています。
主な内容は、以下の通りです。[注1]
- 残業時間の上限規制
- 「勤務時間インターバル」制度の導入促進
- 年5日間の年次有給休暇の取得義務
- 月60時間超の残業の割増賃金率引上げ
- 労働時間の客観的な把握義務
- 「フレックスタイム制」の拡充
- 「高度プロフェッショナル制度」を創設
- 産業医・産業保健機能の強化
近年は長時間労働を是正する取り組みを行っている企業が増えていますが、業界・業種によって偏りがあります。長時間労働による問題を減らすためにも、今後は社会全体での改善が必要です。
1-2 3つの柱② 多様で柔軟な働き方の実現
多様で柔軟な働き方とは、具体的には働く人に合わせて労働時間や勤務場所を自由に選択できる働き方です。 日本社会では、少子高齢化にともなう生産年齢人口の減少が避けられません。そのため、一人でも多くの人が長期間快適に働ける環境の整備が求められています。
主な具体例は、以下の通りです。
- 出産・育児に対応した育児休暇制度や職場環境の整備
- 副業・兼業の推奨
- 介護休職制度の充実
- 定年の延長や再雇用制度
多様な働き方が求められる理由には、少子高齢化だけでなく労働者の価値観の変化も挙げられます。多様な働き方の実現は、求職者への魅力付けという観点でも重要です。
1-3 3つの柱③ 正規・非正規間の格差解消
正規雇用と非正規雇用の間にある不合理な待遇の差をなくすことも、働き方改革の目的のひとつです。かつては雇用形態の違いのみによって、重量院の待遇が変わることが多くありました。しかし、それでは非正規雇用者が納得して働くことが難しいでしょう。
正規・非正規間の格差是正の主な具体例は、以下の通りです。
- 不合理な待遇差をなくすための規定の整備
- 労働者に対する、待遇に関する説明義務の強化
- 行政による事業主への助言・指導等や裁判外紛争解決手続(行政ADR)規定の整備
「不合理な待遇差をなくすための規定の整備」については、パートタイム労働者・有期雇用労働者、派遣労働者にわけられています。詳細は「同一労働同一賃金ガイドライン案」に書かれているので、併せてご覧ください。[注2]
[注2] 厚生労働省「同一労働同一賃金ガイドライン」
2.企業が直面している働き方改革による問題
働き方改革の実現に当たり、企業が直面している問題は主に以下の5つです。
- 人件費やツール導入などコストがかかる
- 高度プロフェッショナル制度の乱用
- 管理職の負担が増加する
- 生産性・業績が一時的に低下する
- 施策が浸透し取り組んでも社内に浸透しない
働き方改革は、国家や企業、個人にとって多くのメリットがあります。しかし、何事も新しいことを始めるにあたっては、問題が発生するものです。それぞれの問題を詳しく見ていきましょう。
2-1 人件費やツール導入などコストがかかる
コストが上がる要因には、年次有給取得の義務化と、同一労働同一賃金の2つが挙げられます。有給休暇で休む人がいれば、誰かがその穴埋めをしなければなりません。年5日の取得義務化によって、従業員の有給休暇の取得情報を管理するコストも発生するでしょう。
同一労働同一賃金の義務化は、正規・非正規の格差問題を解決するため打ち出されました。今まで非正規雇用で人件費を削減していた企業は、同じ手段でのコスト削減はできなくなります。
業務効率化のために、ツールを導入する企業も多いです。人事や会計に関するソフトウェアは日々進化しており、業務効率化のために導入する企業が増加しています。抜本的な働き方改革を実施する場合は、ITの活用も視野に入れる必要があるでしょう。
2-2 高度プロフェッショナル制度の乱用
⾼度プロフェッショナル制度は、特定の条件を満たす労働者には、労働基準法による労働時間や賃金などの規定が適⽤されない制度です。具体的な条件は、以下の通りです。[注3]
- ⾼度の専門的知識等がある
- 職務の範囲が明確である
- ⼀定の年収要件を満たす
上記に当てはまる労働者にとっては、柔軟に働けるメリットがある一方で、次のようなデメリットがあるので運用には注意が必要です。
- 長時間労働の横行
- 残業手当・深夜手当がなくなる
- 評価基準が設定しにくい
働き方改革実現のためにできたものですが、逆手にとって労働者に不利益がこうむる運用が行われる懸念があります。
[注3] 厚生労働省「働き方改革の目指すもの」
2-3 管理職の負担が増加する
働き方改革で稼働時間が削減されたつけが、管理職に回ってくる恐れがあります。労働基準法41条2号で定められている「管理責任者」には、同法の労働時間、休日に関する規定は適用されません。[注4]
そのため、一般社員の稼働抑制によって消化しきれなかったタスクが管理職に回ってくることが考えられます。しかし、管理職といえども会社としては過度の労働は抑えたいところです。結果として、未消化のタスクを家に持ち帰る、サービス残業が発生するなどの問題が発生するでしょう。
単に労働時間を減らすだけでなく、タスクの量も減らさないと本当の意味での稼働抑制にはなりません。
[注4] 厚生労働省「労基法41条2号の管理監督者の該当性」
2-4 生産性・業績が一時的に低下
働き方改革の実施によって、一時的に生産性や業績が低下する恐れがあります。働き方改革によって生産性・業績が一時的に下がる要因は、以下の通りです。
- 労働時間削減による一時的な売上の低下
- 新体制に向けて採用した人材の教育期間の発生
労働時間の削減は比較的容易にできますが、生産性の向上は一朝一夕では実現できません。生産性の向上が減った分の労働時間に追いつくまでは、一時的に企業としてのパフォーマンスは落ちるでしょう。
また、教育期間中は、新人はベテラン社員よりもパフォーマンスが上がらないのはある意味当然と言えます。労働時間を減らすなら、生産性を上げるための施策も同時に打つ必要があります。
2-5 施策に取り組んでも社内に浸透しない
働き方改革を行うとしたら、多くの場合経営層主導のトップダウン型となるでしょう。しかし、トップダウン型の進め方では、下が付いてこない可能性が往々にしてあります。
たとえば、ノー残業デーを作ったとしても、従業員は他の人の顔色を窺ってなかなか制度を利用しないことが考えられます。
働き方改革においては、ただ制度を作る、ただ呼びかけるだけでは効果はありません。従業員がしっかりと施策の重要性を理解し、協力しようと思える環境づくりが必要です。一度職場に根付いた空気を変えることは簡単ではないので、長期的な目線で取り組む必要があるでしょう。
3.働き方改革の問題点を改善する手順とは?
働き方改革を実施しようとすると、必ずといっていいほど何らかの問題が発生するでしょう。問題が発生したときや、そもそも問題を未然に防ぐための方法を知っておく必要があります。
具体的なステップは、以下の通りです。
- 企業の現状把握と分析を行う
- 目標・ゴールを共有する
- 現状の業務内容を見直す
- 改善施策のプランニングを行う
一つずつ見ていきましょう。
3-1 【ステップ1】企業の現状把握と分析を行う
何よりも先に、自社が今どの状態にあるのかを理解することは重要です。出発地が分からないと、どの方向に向かうべきかが分からないためです。具体的には、業務をフローチャートで可視化し、洗い出すことは効果的です。分析で浮かび上がった課題は、簡略化・自動化等の方法で取り組む施策に優先順位を決めて改善を進めましょう。
働き方改革を実現する方法はいくつもありますが、どの方法を用いるのが良いかは企業によって異なります。自社の立ち位置を理解することで、どこに向かって進めば良いのかが分かります。
3-2 【ステップ2】目標・ゴールを共有する
働き方改革で実現するものは何かを明確にすることも重要です。ゴールを設定しないことは、終わりのないマラソンを走り続けるようなものです。向かうべき場所が明確になることで、社員全員が同じ方向を向いて走りだせます。
目標を設定する際は、従業員が納得できるゴールを設定しましょう。経営層の独断で目標を設定すると、従業員は当事者意識を持てず、協力しづらくなってしまいます。目標を設定する際は、以下の3つの観点で考えましょう。
- なにを
- なぜ
- いつまでに
現状の課題について現場レベルからも意見を吸い上げることで、全員が納得できる目標を設定しやすくなります。
3-3 【ステップ3】現状の業務内容を見直す
現状の立ち位置と目標が分かったら、実際に業務を見直してみましょう。業務内容の見直しで考えるべきポイントは、以下の3つです。
- 一部の業務に偏りがないか
- 無駄な業務がないか
- 効率化できないか
業務の見直しは、ステップ2で共有した目標・ゴールに沿って行いましょう。分析をする際は、現場の意見もしっかりと聞くことが重要です。実際に業務をするのは現場の従業員だからです。
3-4 【ステップ4】改善施策のプランニングを行う
最後は、改善策のプランニングを行います。見つかった問題を解決するために、どのような施策が必要かを考えましょう。過去の施策例から成功例と失敗例を分析すると、改善の参考になります。
計画の実施後は、定期的に評価・改善を行う必要があります現場の意見も吸い上げ、実りのある働き方改革を実現しましょう。
4.働き方改革で経営層が留意すべき注意点
働き方改革で経営層が留意すべき注意点は、2つあります。
- 人はすぐには変わらない
- 現場主導での改革は難しい
多少の不便があっても、人間は現状維持を好む生き物です。現状維持から脱却するには、改革のメリットについて時間をかけてしっかりと理解してもらうことが重要です。ここは根気のいる作業となるでしょう。
また、現場はそれぞれに思惑があるため、合意形成や推進の部分においての障害が多くあります。そのため、働き方改革は自社全体を見渡せる経営層が主導で行う方が向いているでしょう。
5.まとめ
働き方改革とは、現在も進行しつつある日本の労働人口の減少を解決するために掲げられたテーマです。労働時間の是正、多様で柔軟な働き方の実現、正規・非正規間の格差解消が3つの柱とされています。
厚生労働省からも、それぞれの柱に対する指針が打ち出されています。大企業だけではなく中小企業でも、伝統的な日本流の労働環境を一新することは容易ではありません。構造的な改革になるため、実施に当たり企業が直面する問題は少なからずあるでしょう。それらの問題を解決する手順を理解して、着実に働き方改革に挑んでください。
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