働き方改革の進め方とは? 成功のためのポイントをご紹介
「働き方改革に取り組んでみたいけれど、進め方が分からない」
「働き改革に取り組んでいる企業の事例を参考にしたい」
などとお悩みではありませんか。
本記事では、働き方改革を進める方法を具体的に解説します。働き方改革は経営層だけで行うものではなく、従業員と共に実施していくものです。働き方改革を実施する手順を一つひとつ紹介するので、働き方改革に取り組みたい経営者はぜひご覧ください
目次
1.働き方改革の概要と背景
厚生労働省によると、働き方改革は以下の目的を達成するための取り組みとされています。
- 働く人の置かれた個々の事情に応じて、多様な働き方を選択できる社会を実現する
- 上記の社会を実現することで、成長と分配の好循環を構築する
- 働く人一人ひとりが、より良い将来の展望を持てるようにする
このようなビジョンが提唱された背景には、以下の課題があります。
- 少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少
- 育児や介護との両立など、働く人のニーズの多様化
働き方改革を推進する最大の背景は、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少および人手不足です。生産年齢人口とは、一般的に15歳以上65歳未満のことです。[注1] 生産年齢人口は、2065年に約4,500万人となる(2020年と比べ約2,900万人の減少)と予想されています。[注2]
これらの課題を解決するには、労働者の生産性向上が欠かせません。それに伴い、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境作りも重要です。
[注1]衆議院「生産年齢人口の定義と高齢者の就労状況との関係に関する質問主意書」
[注2]総務省「国勢調査」「人口推計」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」「出生中位(死亡中位)推計」
2.働き方改革の具体的な進め方とポイント
働き方改革は経営者側からのみの判断で、トップダウンで断行するものではありません。実際に社員の働き方を変えていくには、現状を分析して課題と目的を明確にした上で、全社員で改革に取り組む必要があります。
以下では、社員もうまく巻き込みながら、効果的に働き方改革を実施するためのポイントを解説します。
2-1 社内の状況をヒアリングする
働き方改革に際して、まずは社内が抱えている問題を明確にする必要があります。社内アンケートやヒアリングを通じて、課題を明確化しましょう。社員の生産性が上がらない原因には色々ありますが、一例として次のようなことが考えられます。
- 会社の組織
- 仕事の流れ
- 職場の環境
- 個人の仕事に対する意識
現状の把握には「衛生委員会」が活用できるでしょう。常時使用する労働者数が50人以上の事業者には「衛生委員会」設置が義務付けられています。なお、厚生労働省の「働き方・休み方改善ポータルサイト」では、自己診断や他社の事例の確認ができます。
2-2 働き方改革の方針を決める
社内の課題が明確化されたら、働き方改革でどのように解決するかの方針を決めます。目的達成のためには、その過程で達成すべき目標を決めましょう。数値で確認できるような具体的な目標は、PDCAサイクルの活用にも役立ちます。
また、働き方改革によって得られるメリットをまとめておきましょう。会社だけでなく、社員にもどのようなメリットがあるかを明らかにすることで、全社一丸となって改革に取り組めます。
2-3 仕組みを見直す
働き方改革の方針と、そのために達成すべき目標を決めたら、目標を実現するための具体的な施策を考えましょう。現状発生している課題に対して、仕組みをどのように変えれば解決できるかを考えます。
実際にいくつか具体的な目標を挙げてみましょう。
- 育児休暇の取得促進
- 長時間労働の削減
- 在宅勤務(テレワーク)の導入
- 短時間勤務の制度化
- 賃金の引き上げ
例えば、賃金引き上げに対する施策としては次のような事が考えられます。
- 裁量労働制の導入
- サービス残業の防止
- 給与体系の見直し
2-4 施策を周知し、社員に改善を促す
具体的な施策が決まったら、社員に内容を周知し、働き方改革を実行してもらいましょう。実行を周知するだけでは、なかなか社員は動いてくれません。そのため、それぞれの施策について責任者を決め、実行の責任を持たせましょう。2-5 改善活動を継続する
施策を実行に移したあとは、定期的な効果検証と改善活動が重要です。事前に設定した数値目標の達成度をもとに、効果の良し悪しを判断します。成果が得られない場合には、その原因を分析すると共に、新たな施策を考えましょう。
短期間で働き方改革のゴールには到達しないものです。長期的な視野を持って、根気強く改善活動を続けることが重要です。
3.参考になる働き方改革を実施している企業
次は、参考になる働き方改革を実施している企業を4社紹介します。もし似た業種に属していれば、大いにヒントとして活用してください。全く別業種であったとしても、実際に効果のあった働き方改革は参考になるでしょう。
3-1 ヤマトホールディングス株式会社
ヤマトホールディングスでは「ヤマトグループ最大の財産は社員」と位置付けています。「約20万人の社員全員がいきいきと働ける環境をつくる」ため、次の100年も持続可能な成長を続けていくための基盤作りを目指しています。
ヤマトホールディングスの働き方改革とは、誰もがいきいきと働ける環境を整備し、顧客に一層よいサービスを提供し続けていくことです。具体的には、以下の3つの方針を設定しています。
- コンプライアンスの遵守(長時間労働の解消、法定休憩時間の取得など)
- ダイバーシティの推進(子育てや介護等、各ライフステージに合わせた多様な働き方の選択など)
- 業務の見直し・効率化とコミュニケーション(業務におけるムリ・ムラ・ムダの削減、業務の効率化、コミュニケーションの活性化など)
グループとして新しい働き方の方向性を幅広く検討し、労使一体で取り組みを進めています。
3-2 株式会社スープストックトーキョー
スープストックトーキョーは、企業理念「世の中の体温をあげる」をもとに、熱量が上がるような働き方へ制度を見直しています。従業員が顧客への優しい気持ちや、心の余裕を生みだせるような環境整備が目標です。
具体的な施策は、以下の通りです。
- 年間12日の「生活価値拡充休暇」の設置
- 複業を可能にした「ピボットワーク制度」の採用
- 全社員が使える「セレクト勤務制度」の採用
友達に勧められる職場を目指し、3年計画で働き方改革が実施されました。
3-3 トヨタ紡織株式会社
トヨタ紡織は、組織、風土改革チャレンジとして「いきいき働き方改革」に取り組んでいます。「いきいき働き方改革」の成果や「社員のいきいき」を定量的に確認するため、全社共通の指標として「いきいきKPI」を導入し、その向上に向けて、社員が明るく楽しく働くことができる職場づくりや、より柔軟で効率的、創造的なワークルールの整備を行っています。
例えば健康管理上の観点から、「残業時間年間540時間超過者ゼロ」(管理監督者除く)とすることで、長時間労働の抑制を図り、次の具体的な施策を推進しています。
① 資料の簡素化活動
② 会議のスリム化活動
③ デジタルツール活用(RPAなど)
さらに、コアレスフレックスやテレワーク制度など、時間や場所にとらわれない働き方が可能な制度を整え、柔軟な働き方を推進しています。「2025年中期経営計画の達成」と「社員のいきいき」の両立に向け、より一段高いレベルでの「いきいき働き方改革」の推進に、引き続き取り組んでいきます。
3-4 株式会社東急百貨店
東急百貨店は、企業理念の中の「お客様にとって、なくてはならない存在」を実践できる人材を育てるための働き方改革を行っています。社員全員が自らのワークライフバランスを考え、メリハリある働き方を実現することが、そうした人材を創出すると考えています。
具体的な施策は以下の通りです。
- ノー残業デーの職場巡回、人事システムを利用した管理職への注意喚起など、所定外労働の削減
- フレックスタイム制度を活用した、朝型勤務の協力を推進
- 事前に部署単位で人事部に提出させることによる、計画的な年次有給休暇の取得促進
- リフレッシュ休暇、積立年次休暇など、多様な休暇制度
- 育児勤務者同士の情報交換のための懇談会
- グループ会社の土・日・祝日専用の保育施設について積極的な利用促進
4.働き方改革の推進には福利厚生の見直しが重要
福利厚生は、企業側が従業員に提供する「給料や賞与以外の報酬・サービス」です。必然的に、働き方改革の推進には福利厚生の見直しが重要です。一般的には、以下のようなタイミングで福利厚生の見直しをすると良いでしょう。
- 新しい生活様式が誕生し、人々の意識が変わったとき
- 福利厚生に関する、官公庁の発表や法改正・事件事故があったとき
- 福利厚生制度の利用率の低下が確認されたとき
- 就業規則を見直すとき
福利厚生以外にも、就業規則・労働条件の交付など、働き方改革を推進する上で必要な実務はたくさん存在します。
5.まとめ
働き方改革の進め方と、成功のポイントを解説しました。働き方改革の背景にあるのは「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」や「育児や介護との両立など、働く人のニーズの多様化」です。
働き方改革はトップダウンで断行できるものではなく、従業員と共に進める必要があります。まずは現状を把握・課題を明確にし、働き方改革の方針を決めましょう。方針に従って社内の仕組みを見直し、従業員と共に改善していきます。
働き方改革は、PDCAサイクルを繰り返して長期的に改善活動を継続するものです。実例となる企業も参考にしながら、働き方改革を進めましょう。
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