1. TOP
  2. 働き方改革
  3. 働き方改革が必要な理由とは?取り組む目的や改正された法律を紹介
2024/03/01 (公開:2023/07/19)

働き方改革が必要な理由とは?取り組む目的や改正された法律を紹介


働き方改革が必要な理由とは?取り組む目的や改正された法律を紹介

「働き方改革の必要性は?」

「働き方改革に向けた法改正の内容が知りたい」

これらのような疑問を持っている方もいるのではないでしょうか。

 

本記事では、そもそも働き方改革とは何であるのか、また必要とされる理由を徹底解説。働き方改革を実現するために実施されている、法改正についても紹介します。これを読めば、働き方改革の目的や必要性がよくわかるでしょう。働き方改革について理解を深めたい人は、ぜひ最後までご覧ください。

 

         

1.なぜ働き方改革が必要なのか




働き方改革が必要となっている背景として、真っ先に挙げられるのが深刻な労働力不足です。日本の生産年齢(15~64歳)人口は、1995年をピークとして減少を続けています。今後も減少傾向は続くと考えられており、2050年の生産年齢人口は2021年から約30%減少すると予測されているほどです。[注1]

 

生産年齢人口の増加が見込めない状況では、労働力の確保が困難になるのは避けられません。これまでのように労働力を確保できないとしたら、限られた人員で大きなアウトプットを出す必要があります。そのため、働き方改革が提唱されるようになりました。
 

[注1]総務省「生産年齢人口の減少」
            


2.そもそも働き方改革とは?目的は?

働き方改革とは、働く人が多様で柔軟な働き方を、自分で選択できるようにするための改革です。具体的には、長時間労働の是正や、雇用形態によらない公正な待遇確保を掲げています。[注2]

 

生産年齢人口の減少や、労働者が持つニーズの多様化などの課題を解決するためには、生産性向上や就業機会の拡大が欠かせません。働き方改革によって生産性の向上や、就業機会の拡大などが実現できれば、働く人がより良い将来を思い描けるでしょう。

 

働き方改革は、大企業だけの問題ではありません。雇用の7割を占めている中小企業や小規模事業者も、積極的に働き方改革を進める必要があります。

[注2]厚生労働省「働き方改革」



3.働き方改革が必要とされる理由



働き方改革が必要とされる具体的な理由として、以下の5つが挙げられます。

 

  • 労働力不足への対応
  • 労働生産性の低さへの対応
  • 多様な働き方への対応
  • 柔軟な働き方への対応
  • 雇用形態の違いによる格差への対応

それぞれ詳しく解説します。


          

3-1 労働力不足への対応

労働力不足となっている原因として、以下の2点が挙げられます。
 

  • 生産年齢人口の減少
  • 労働環境の悪化

生産年齢人口の減少については、企業の取り組みだけでどうにかなる問題ではないでしょう。高齢者の割合が増加している現状を踏まえて、積極的に高齢者を雇用するのも働き方改革の一つです。年齢を問わずに働ける制度の導入と、作業環境の整備などが求められます。

 

労働環境の悪化も労働力不足に直結します。「ブラック企業」という名称が生まれて久しいですが、労働環境の悪い職場からは人材は離れていきます。それに人員不足が加わると、企業の存続にかかわるでしょう。


            

3-2 労働生産性の低さへの対応

日本の労働生産性はOECDに加盟している38か国中、時間当たり労働生産性で27位、1人当たり労働生産性で29位です。G7に参加している主要先進7か国の中では最下位に位置しています。[注3] 労働生産性の低さを改善するためにも、働き方改革は必要です。

 

具体的な取り組みとして挙げられるのが、IT技術の積極的な活用です。IT技術を有効に使えば、さまざまな業務を効率化し労働生産性の向上が期待できます。長時間労働の是正も、労働生産性を高めるうえで重要でしょう。

[注3]日本生産性本部「日本生産性本部、「労働生産性の国際比較 2022」を公表」 


 

3-3 多様な働き方への対応



多様な働き方を用意すれば、より多くの人材が働きやすくなります。近年はテレワークやフレックスタイム制が注目を集めています。場所や時間の制約を取り除くことで、より多くの人材が活躍できる環境を整えられるでしょう。

 

また、副業・兼業の禁止は推奨されません。本業への支障が懸念されるかもしれませんが、会社への束縛を強める印象を与え、満足度低下など逆効果になる可能性もあります。

 

3-4 柔軟な働き方への対応

従業員にはそれぞれにさまざまな事情や考えがあり、それに応じた柔軟な働き方への対応も必要です。たとえば、働きながら出産・育児を行っている従業員に向けて育児休暇制度を整えれば、復帰しやすい職場環境をつくれます。キッズスペースなどの設置もおすすめです。

 

育児以外でよくみられるのが、働きながら両親などの介護に奔走しているケース。場合によっては、仕事と介護の両立が難しく会社を辞めてしまうかもしれません。介護による退職を防ぐためには、介護休職制度の充実が有効です。


   

3-5 雇用形態の違いによる格差への対応


働き方改革が推進されている理由として、雇用形態の違いによる格差への対応も挙げられます。具体的に求められているのが、正規労働者(正社員)と非正規労働者の格差縮小です。

 

正社員と非正社員が同じ仕事をしていても、受け取れる給料や手当に違いがあるケースが問題視されつつあります。そこで国が推進しているのが、同一労働同一賃金です。雇用形態の違いのみによる不合理な待遇差解消を目指しています。[注4]


格差是正に向けた第一歩として進められている取り組みが、アルバイト・パートの有給休暇制度の構築です。有給休暇を取れるようになればアルバイト・パートとして働きやすくなり、労働力確保につながります。

 

[注4]厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ」

      

4.改正された法律の内容



働き方改革を実現するために、これまでさまざまな法律が改正されてきました。代表的な法改正を詳しく解説します。


   

4-1 月45時間・年360時間の残業時間制限


労働基準法の改正により、残業時間の上限規制が設定されました。長時間労働が常態化すると、労働者の健康に悪影響を及ぼしたり、生活との両立が困難になったりします。具体的には、時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間に制限されます。臨時の特別な事情があり労使が合意する場合に限り、月45時間の超過が可能です。[注5]

月45時間を超えられるのは、1年に6か月までと規定されています。その上で、以下の条件を満たさなければなりません。

  • 時間外労働が年720時間以内
  • 時間外労働+休日労働が月100時間未満、かつ2~6か月の平均で月80時間以内


上限規制に違反した場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されるおそれがあります。

[注5]厚生労働省「働き方改革関連法解説(労働基準法/時間外労働の上限規制関係)」

 
 

4-2 有給休暇の年5日取得義務化

年次有給休暇が10日以上付与される労働者を対象に、有給休暇の年5日取得が義務化されました。正社員だけでなく、管理監督者や非正規社員も義務化の対象です。[注6] 義務化の背景には、有給取得率が低い現状があります。その理由として考えられるのが、職場に対する遠慮です。しかし、取得の義務化により、気兼ねなく請求できるようになると期待されています。

 

義務化に伴い、使用者は労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成したうえで、3年間保存しなければなりません。また、以下のような場合には30万円以下の罰金(①②)、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金(③)といった罰則が科されます。

①労働者に年5日の年次有給休暇を取得させなかった場合
②使用者による時季指定を行う場合において、就業規則に記載してない場合
③労働者の請求する時季に所定の年次有給休暇を与えなかった場合

 

有給休暇を適切に取得させれば、労働生産性の向上も見込めます。

 

[注6]厚生労働省「働き方改革関連法解説(労働基準法/年5日の年次有給休暇の確実な取得関係)」
 

 

4-3 残業60時間を超える場合の割増賃金率が50%に引き上げ



長時間労働を減らすため、中小企業の残業60時間超の割増賃金率が25%から50%に引き上げられました。引き続き、60時間未満の時間外労働には25%の割増賃金率が設定されています。時間外労働とは、1日8時間/週40時間を超えて働くことを指します。[注7]

 

残業時間を正確に把握するためには、勤怠管理システムの導入が有効です。管理システムにより従業員それぞれの労働時間を簡単に把握できれば、業務の平準化にもつなげられるでしょう。勤怠管理システムの導入時には、働き方改革推進支援助成金を利用できます。働き方改革に積極的に取り組むうえで必要となる費用を、一部国が負担してくれるので、積極的に活用しましょう。

[注7]厚生労働省「月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます



4-4 フレックスタイム制の清算期間が1か月から3か月へ延長


法改正により、フレックスタイム制の清算期間が見直されました。フレックスタイム制では、設定された清算期間の中で、労働者が日々の始業時間や終業時間を決められます。今回の改正により、清算期間の上限が1か月から3か月まで延長されました。[注8] 


清算期間の見直しにより、月をまたぐ労働時間の調整が可能です。今回実施された見直しを踏まえて、フレックスタイム制の導入がより多くの企業で進められると期待されています。柔軟な働き方に対応するためにも、フレックスタイム制は有効です。

[注8]厚生労働省「働き方改革関連法解説(労働基準法/フレックスタイム制の改正関係)」



4-5 年収1,075万円以上の労働者は労働基準法の一部対象外に


それぞれの職種に合わせた働き方改革を進めるために、高度プロフェッショナル制度が新設されました。制度の対象となるのは、専門的な業務に従事しており、年収が1,075万円を上回っている労働者です。具体的には、以下のような業務が挙げられます。[注9]

 

  • 金融商品の開発
  • 資産運用の業務
  • アナリストの業務
  • コンサルタントの業務
  • 新たな技術・新たな商品の研究開発

高度プロフェッショナル制度の対象者には、労働基準法により定められた労働時間・休日・割増賃金などの規定が適用されません。ただし、年104⽇以上の休⽇確保措置や、健康・福祉確保措置などを講じる必要があります。

[注9]厚生労働省「働き⽅改⾰関連法解説(労働基準法/⾼度プロフェッショナル制度関係)」



4-6 産業医の権限強化



労働者の健康リスクを見逃さないために、産業医に関して法改正が行われました。具体的には、以下の点が改正されています。[注10]

 

  • 産業医の独立性・中立性の強化
  • 産業医への権限・情報提供の充実・強化
  • 産業医の活動と衛生委員会との関係の強化

 これらの権限強化を通して、産業医の活動環境がより整備されました。産業医により労働者の健康が十分に守られれば、心身の不調で休職・退職する人を減らせます。近年はメンタルヘルスへの注目も集まっており、産業医の重要性は増す一方です。


[注10]厚生労働省「働き方改革関連法解説(労働安全衛生法/産業医・産業保健機能の強化関係)」



4-7 勤務間インターバル制度の導入の努力義務化

勤務終了後から翌日の出勤までに一定時間の休息時間を必要とする、勤務間インターバル制の導入が努力義務となりました。当制度を導入した場合、残業により終業時間が遅くなった翌日は、始業時間も遅らせる必要があります。[注11]

勤務間インターバル制の狙いは、労働者の生活時間や睡眠時間の確保です。ワークライフバランスの向上や、健康維持を目指しています。

勤務間インターバル制度の導入を検討している中小企業事業主は、時間外労働等改善助成金を利用可能です。政府は、助成金などの充実により制度を導入している企業の割合を、2025年までに15%以上に引き上げることを目標としています。


[注11]厚生労働省「勤務間インターバル制度をご活用ください」



4-8 同一労働同一賃金の施行

正規労働者と非正規労働者の格差を是正するために、同一労働同一賃金の実現は欠かせません。実現に向けた取り組みとして、パートタイム・有期雇用労働法が施行されました。[注4]

同法の施行により、待遇に格差を設ける場合には合理的な理由が求められます。同法の目指すところは、不合理な格差を無くしていき、同じ仕事をすれば同じ給料をもらえる社会です。同一労働同一賃金を導入すれば、働く人はさまざまな雇用形態から希望にあった形態を選べます。多様な働き方の実現に大きく貢献するでしょう。


5.まとめ



働き方改革とは、労働者がそれぞれに合った働き方を選択で義務化きるようにするための改革です。働き方改革の実現により、労働生産性の向上や就業機会の拡大が期待されています。

 

働き方改革が必要とされる主な理由は、生産年齢人口の減少です。今後も人口の増加があまり見込めないため、改革を着実に進めていく必要があります。

 

働き方改革の実現に向けて、さまざまな法整備が必要です。改正が進められている法律を各企業がきちんと遵守し、積極的に改革を進めていくことが求められています。

 

イーウェルで提供している福利厚生、健康経営などのサービスをご紹介!

   
株式会社イーウェル 運営会社ロゴ

著者情報

株式会社イーウェル ウェルナレ事務局

「人も、企業も、ウェルビーイングへ。」をテーマとして、企業の健康経営や福利厚生の支援を行う株式会社イーウェルが運営する、BtoB(人事総務向け)オウンドメディア「ウェルナレ」の編集部。
2021年7月にメディアリリース後、毎年60回以上、有名企業様とのコラボセミナーや官公庁の専門分野に特化した方を招いてのカンファレンス、大学教授による福利厚生勉強会の開催や専門家記事の掲載などを実施し、多くの方に好評いただいております。
人事部署や経営者が、会社のウェルビーイングを向上されるためのヒントを探して、日々活動しています。

 


Related keywords

Related article

Recommend

ダウンロード資料
♠最新人気ランキング♠

メルマガ登録

最新情報や
お役立ち資料を自動受信