経営者視点を持つ人材を育成するために今から取り組むべきこと
「経営者視点を持つ、後継者候補を育成したい」
「候補者の選定や求める人材像は、どうやって決めればいい?」
などとお悩みの経営者も多いのではないでしょうか。自社を継続的に発展させるには、経営者的な視点を持つ人材育成は必須です。
この記事では、経営人材を育成するために、会社が取り組むべきことを徹底解説。経営人材の定義をはじめ、具体的な育て方や候補者の選定法も紹介します。経営人材を自社で育てたいと考えている人は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
1.経営人材育成の重要性と必要な理由
経営人材がなぜ必要であるか、何のために育てるのか、まだよくわからない経営者もいるかもしれません。企業にとって経営人材が必要な理由は、主に以下の3つです。
- 企業の慢性的な人手不足
- 優秀な人材の流出
- 企業を取り巻く環境の急速な変化
1-1 女性の社会参加
多くの企業は人口減少の波に飲まれ、慢性的な人材不足に陥ると予想されています。「令和2年版高齢社会白書(全体版)」によると令和元年の時点で、日本の総人口は1億2,617万人です。
ところが、令和11年に人口は1億2,000万人に、令和35年には9,924万人に減少する見通しです。令和47年には9,000万人を切ると予測されています。[注1]今後は人材の獲得競争の激化が見込まれるでしょう。
[注1]内閣府「令和2年版高齢社会白書(全体版)」
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2020/html/zenbun/s1_1_1.html
1-2 優秀な人材の流出
人材が流動的になったことも、経営人材の育成が重要視される理由の一つです。一度入社した会社でも、主に下記の理由から新卒の人材が31〜36%の確率で流出する傾向にあります。[注2]
- 給料が少ない
- 人間関係に不満を抱いている
- キャリアデザインの創造が見込めない
- 業務に対する姿勢が確立できない
また、昨今では転職が当たり前になり、優秀な人材が簡単に流出してしまうリスクもあります。次代の経営者を育成するためには、社員が長く働きやすい環境を整えることも重要でしょう。
[注2]厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況を公表します」
1-3 企業を取り巻く環境の急速な変化
企業を取り巻く環境が大幅に変化した点も、経営人材を育てる必要性が増した理由の一つです。特にグローバル化・IT化の需要が急速に高まっており、適応できない企業は今後競争力を維持することは難しいでしょう。
グローバル人材・IT人材の市場人気は高く、優秀な人材の引き抜きは難しい状況にあります。そのため、社内で経営人材を早い段階から育成し、グローバル化やIT化に対処しておくことも大切です。
2.経営人材を育成するために企業・経営陣がやるべきこと
経営人材を育成するために、企業・経営陣が実施するべきことは、以下の4つです。
- 求める人材像を明確化する
- 候補者を選定する
- 育成計画を立て、機会を与える
- 経営戦略に関する研修
それぞれ詳しく解説します。
2-1 求める人材像を明確化する
経営人材を育てる際には、会社が求める人材像を必ず明確化しましょう。経営戦略や自社の社風などを踏まえ、どんな能力が自社に必要かを割り出すことがおすすめです。
自社に必要な人材像は、経営者の選り好みだけで決定するべきではありません。人事部や関連部署にも相談し、現在の会社に必要な人材像をイメージすることがポイントです。採用・育成部門へ、理想とする人材を落とし込む作業も忘れずに実施しましょう。
2-2 候補者を選定する
求める経営人材の要素が決まったら、条件を満たした候補者を社員の中から選びましょう。候補者を上手く選定するためには、普段から客観的な視点で人材の品定めをしておく必要があります。
人材の情報収集はもちろん、社内面談やミーティングを増やして、従業員の中から候補に合った人材を選んでください。客観的な人材情報を得るために、人事部門などに協力を仰ぐのもよいでしょう。
2-3 育成計画を立て、機会を与える
人材の選定が終わったら、育成計画を候補となる社員に共有しましょう。教育計画を策定する際は、様々な仕事の経験も含めて考えることが重要です。そして、教育・経験の両面から機会を与えましょう。
候補者の育成は担当に一任せず、経営者も直接かかわることが大切です。経営に関わる立場として、経営者自身も候補者とコミュニケーションを取りましょう。経営者本人が前向きな姿勢を示すことで、候補者が会社経営に携わる立場になる自覚を持ちやすくなります。
2-4 経営戦略に関する研修
経営人材の育成には、筋道を立てた経営戦略をインプットする研修を取り入れるべきです。多くの経営人材候補は、経営に関わった経験がない次世代の要員が対象です。そのため、経営戦略について学ぶ機会を与え、トップマネジメントの基礎を植え付ける必要があります。
自社の経営戦略・方針を植え付けるには、社内研修を通して行うのがおすすめです。社外研修では自社のビジョンやマインドを伝えにくいため、おすすめできません。ある程度の地固めができた後で、汎用性の高いマネジメントスキル研修などを外部講師に委託し、受講させることも必要です。
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3.経営人材に求められることとは?
経営人材に求められることは、主に以下の7つです。
- 事業のビジョンを描く
- 事業の目標を定める
- 収益性を高める
- 企業の社会的な責任を果たす
- 事業の成長線を描き出す
- 将来の経営人材を育てる
- 企業風土を変革する
経営人材には「事業成長に関する意思決定」能力が強く求められます。多くの売り上げを計上するよりも、事業の今後を見据え、磨き上げていく視点・行動力が必要といえるでしょう。
3-1 経営人材育成のスピードは速くなっている?
経営人材の育成には、ある程度のスピード感が求められます。「リクルートマネジメントソリューションズ」の調査によると、経営人材の育成する上での一番の課題はスピード感とのことです。[注3]
企業を取り巻く環境が目まぐるしく変化するため、環境下で必要な人材の育成を素早く行う必要が出てきているといえるでしょう。
[注3]リクルートマネジメントソリューションズ「経営環境の激しさごとに見る経営人材育成の課題」
https://www.recruit-ms.co.jp/research/journal/pdf/j201208/m28_research.pdf
3-2 現場をいかに巻き込めるかが課題?
経営人材の育成には、現場の協力が必要不可欠です。しかしながら、現場の協力を得られないという悩みも、経営者には多く見られます。
現場のライン長や、対象となる経営人材の上司に、理解を示してもらえないケースが多くあるようです。人材育成に必要な予算を、会社が出し渋ることもあります。経営人材を育成するためには、いかに現場の協力を得て巻き込んでいけるかが重要ということは明白でしょう。
4.経営人材育成の基本的なプロセスとポイント
経営人材を育てる基本的なプロセス・ポイントは、以下の4ステップです。
ステップ1:ゴールを設定する |
どんな人材がいつまでに何人必要かを決める |
ステップ2:人材を選抜する |
社内の人材をリストアップし、育てるべき人材を決める 必要に応じ社外人材の選抜(ヘッドハンティング)なども行う |
ステップ3:人材を育成する |
選抜した人材に研修を施す 成長につながるよう異動や配置の変更も併せて行う |
ステップ4:人材を評価し見直す |
育成した候補者を評価し、登用すべきか決める 必要に応じ、継続育成やプール、見直しなども行う |
人材をやみくもに登用するだけでは、優秀な経営人材の育成はできません。育てた人材を最後に評価し、必要に応じ継続して育成したり、プールしたりすべきです。候補者をモニタリングして配置の入れ替えを検討するのも、経営人材育成には必要な行為といえるでしょう。
5.経営人材の育成のためにはまずは準備から
経営人材を育成する準備は、以下の3ステップです。
- 自社に必要な人材を明確化
- 候補者を選ぶ
- 育成計画や手段を検討する
自社を支える人材を定義するためには、まず自社の強み・弱み・機会・脅威を分析する「SWOT分析」を使うのが効果的です。時間をかけ事業や人材面の強みや弱みを洗い出し、候補者に該当する人材を明確化しましょう。
明確化した人物像に当てはまる人材を、部門長や人事評価の優秀者リストから割り出します。選定者は、経営陣が周囲の意見を聞きつつ直接選定できるようにしましょう。
選定した候補者のデータを基に育成計画を立てます。候補者の特性に合った育て方を選定し、早くかつ正確に育成しましょう。
6.経営人材の具体的な育成方法は?
経営人材を育成する方法は、主に以下の6つです。
- OJT
- e-ラーニング
- ジョブローテーション制度
- 目標管理制度(MBO)
- コーチング・ティーチング
- メンター制度
各育成方法の特徴やメリット・デメリットを徹底解説します。
6-1 OJT
「オン・ザ・ジョブ・トレーニング」の略称であるOJTは、現場で指導を受けつつ経験を積む研修方法です。OTJには、以下のメリットがあります。
- 実践的なスキルが習得できる
- 少ないコストで導入できる
- 教育担当者も育成も同時に行える
実際に業務を遂行しつつ研修できるので、候補者が実践的なノウハウを積めます。しかし、教育担当者の負荷が増えるため、彼らの業務をカバーする必要がある点には注意しましょう。
6-2 e-ラーニング
e-ラーニングは、インターネットを利用した学習研修です。利用すればスマートフォンやパソコン、タブレットなどで、いつでもどこでも研修を受けられます。時間帯に縛られず研修ができ、多くの候補者に同じ質の教育を施せる点がe-ラーニングのメリットです。
しかし、e-ラーニングでは実践的な研修ができません。業務の土台を作るために導入し、実務などの前に知見を深めておく目的で使うことが効果的です。
6-3 ジョブローテーション制度
人材育成の目的に応じ、一定の期間ごとに人材を異動させる制度が「ジョブローテーション制度」です。候補者に幅広い業務経験を積ませられる点が、ジョブローテーション精度の大きなメリットです。
ジョブローテーション制度を経験した候補者は、多角的な目線で業務を行えることが期待できます。役職に就いたときにも、現場での経験を元に、仕事をこなせる効果が期待できるでしょう。
6-4 目標管理制度(MBO)
MBOは候補者本人に目標を立てさせ、その達成度を評価する制度です。自分自身で達成したい目標を企業と共有し、自己評価をさせることで自律的な人材の育成を目指します。
自らが目標を立てることで、社員は工夫や努力をしながら仕事をするでしょう。どうすれば目標を達成できるか考えて行動するようになるため、MBOは自主性の高い社員を育てやすくなるメリットがあります。
6-5 コーチング・ティーチング
コーチングとティーチングは、人員育成において非常にポピュラーな手法です。基礎知識やルールなどをティーチングで教えつつ、ヒントを投げかけるコーチングを施すのが、教育現場では一般的といえます。
土台の整った人材を育てつつ、能力開発できる点がコーチング・ティーチングのメリットでしょう。しかし、上司は慎重に選ぶ必要性があります。教え方がうまい上司を選定することが育成を成功させるコツです。
6-6 メンター制度
メンター制度は、ベテランの社員が、若手の社員をマンツーマンで指導する制度です。きめ細かい指導ができるため、仕事のノウハウや業務報告、スキルの伝達もスムーズに行える点がメリットです。
業務報告だけでなく、候補者の心のケアも行いやすいでしょう。マンツーマンで指導する上司の負担が増えないよう、経営者側は気を配り人員配置を進めてください。イーウェルで提供している福利厚生、健康経営などのサービスをご紹介!
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