6月病の特徴は? 予防方法や改善方法について解説

『6月病』と聞くと、5月病を連想したり、間違いじゃない?と感じてしまう方もいるでしょう。6月病は俗称であるためです。
実は「ぎっくり腰」「肩こり」は正式な病名ではなく、同じく有名な俗称です。また、五十肩も総称のひとつですが、40代の患者へ医者が申し伝えるときにショックを与えないように、「四十肩」という俗称が生まれたという説もあります。ただし俗称とはいえ、今や国民病とも言えるものである以上、世間的に認知もされ、さまざまな対処法や治療法が確立されてきました。
本記事では、昨今よく知られるようになってきた『6月病』をご紹介します。
※この記事では誤読を避けるため、「五月病:5月病」「六月病:6月病」と記載します。
目次
1. 6月病とは
先述どおり、6月病とは正式に病名として医学的に定義されたものではなく、あくまで俗称/総称です。この点は5月病と同様です。
この時期には急な環境変化が伴い、春は人が動く季節、と一般的に認識されていますが、日本の多くの企業は人事異動や組織改定、ジョブローテーションなどを新年度として春に行います。昇進や降格といった環境の変化も伴い、「もう課長なんだから…」「管理職ならこれをしっかりやって欲しい」といった周りからのプレッシャーがかかりやすい季節でもあります。
つまり、既にストレスや重荷を大いに感じている人が陥り、適応障害の一種として 心身に支障が出てしまうのが6月病なのです。
2.6月病と5月病の症状の違い
それでは、6月病は5月病と何が大きく異なるのでしょうか。
新卒生の卒業→入社といった大きなイベントは、日本では通例として毎年 春に行われます。この時期の社会人に多く見られる心身の不調を総称し、5月病と呼んでいます。
学生から社会人となり、期待を胸に新卒生は必死に環境に馴染もうと努めます。多くの企業がちょうどこの時期に新社会人研修を終え、各部署や現場に配属となり、ゴールデンウィークを経て少し落ち着いたころ、ここで生じやすいのが「無気力」「喪失感」「空虚感」です。これにより心身への症状が生じることを5月病と呼びます。
それに対し6月病は、新社会人のみを対象とするのではなく、誰にでも起こり得るものです。この時期特有の、人事異動や業務内容の変化に必死についていこうとする社会人、またその家族も、心身の防御反応のひとつとしてさまざまな症状が心身にあらわれるのです。
ただし留意しなければならないのが、新社会人で定義する5月病とは異なり、6月病は社会人の誰にでも起こりうる以上、既に心身に相当量のストレスを抱えたものが爆発する一歩前であるとも言えます。うつ病など具体的な症状が発生する前に、5月病に比べ、早急な対処を進めないと、取り返しのつかない事態に発展するおそれがあるのです。
3.6月病チェックリスト
それでは、6月病の兆候はどのような症状となって身体にあらわれるのでしょうか。
“カラダ” “心” “生活” の3つに分けて紹介します。
3-1 “カラダ”の変化
カラダにあらわれる症状は、最も 自身が気づきやすい兆候のひとつです。明らかに普段とは違う症状として、以下のものが挙げられます。
・睡眠障害 (寝つきが悪い / 夜中に何度も目が覚める)
・だるさ (寝ても疲れが取れない / 起きたときからだるさを感じる)
・めまい
・消化器症状 (空腹時・満腹時を問わない吐き気 / 便秘・下痢・軟便・腹痛)
・食欲の低下 (食欲不振・美味しく感じない)
・風邪に似た諸症状 (動悸 / 苦しさ / 頭痛)
慢性的にこのような症状が出やすい人もいます。だからこそ気付けずに悪化するケースも多くあるようです。同じ症状でも明らかに頻度が増えていたり、複合的にさまざまな症状が見受けられるようになったら要注意です。
3-2 “心”の変化
心にあらわれる症状は、周りへの振舞い方によっては気づいてもらえないため、自身で異変に気付き、認知する必要があります。自覚しやすい症状として、以下のものが挙げられます。
・気持ちの浮き沈み (表情が浮かない / 不安感)
・情緒不安定 (急に泣きそうになる / 焦燥感にかられやすくなる / イライラ)
・気乗りしない (意欲や興味が湧かない / 面倒さを強く感じる)
・集中できない (他のことに気が散るようになる)
ここで挙げた項目は、日常生活にも大いに可能性としてあり得ます。少しくらいサボりたくなってしまう、ドラマや映画を観て「うるっ」ときてしまう、そんなことは誰にでもあることです。ただし、明らかに今までに無いくらい大きな変化を感じたら、その変化に一層気を払いましょう。 “心”の変化の予兆かもしれません。
3-3 “生活”の変化
カラダと心の変化は、普段の生活にも影響を及ぼし始めます。
・注意力や判断力が落ちることにより、仕事に支障が出始める
・やるべきことを先延ばしにしてしまう
・人の誘いを断るようになる
・楽しいと思えることが少なくなり、趣味に割く時間が減っていく
・家から出るのが億劫になる
・気持ちがふさぎ込み、人にすぐ謝らずにいられなくなる
・タバコやお酒に頼りがちになる
どれも非常に危険な結果につながるのに加え、大事な会議中、運転中、家族と過ごす時間、これらはどれにも影響を与えるものばかりです。
4.6月病の原因
6月病が引き起こされる原因の大半は、先述どおり、環境の変化に伴う場合が非常に多いとされています。ただし、「病は気から」とも言うように、実は“なんとなく”の体の不調によっても引き起こされるものという考え方も近年では定着し始めています。
梅雨の時期になると、頭が痛くなったり気分が悪くなったりする方もいるのではないでしょうか。近年注目されている「気象病」というものです。当然、非常に概念的なものであり、さまざまな条件が積み重なり発症するものであるため、医学的に解明はされていません。ただし、非常に多くの人がこれを経験していることから、気圧や気候による影響も無いとは言い切れないという見方も広がっています。
一説には、梅雨の時期は寒暖差が激しい(雨天時は涼しく、晴れ間には蒸し暑い)ことが、自律神経に影響しているとされます。「交感神経」が優位になると脳の血管が収縮し、逆に副交感神経が優位になると脳の血管が拡張しますが、気圧や気温の変化に身体がストレスを感じることにより、頭痛や筋肉痛、疲労やだるさが起きやすい、とされているようです。
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5.6月病の3つの改善方法
6月病はいわば「適応障害」です。根本解決には至らずとも、今すぐにできる改善方法を、ここでは3つ紹介いたします。
5-1 軽い運動をする
意図せず動ける程度の、軽い運動を意識してみましょう。
・普段歩かずにエスカレーターを使ってしまうところで意識して歩く
・帰り道は少し遠回りをしてみる
・休みの日には掃除機を念入りにかけてみる
・洗車を自分でしてみる
国立健康・栄養研究所により発表された『健康づくりのための運動指針2006』では、身体活動の強さと量を表す単位として「METs」が示されました。安静時を1とし、運動だけでなくさまざまな生活動作もひとつの身体活動とみなされるため、忙しかったり、意欲の無い人もこの基準をベースに生活を組み立てれば、普段よりも体を動かすことにつながります。
≪日常生活に取り入れられる運動の例≫
5-2 とにかく“人と会う”
「人と会いたくなくなってしまう」「会っている暇があるなら体を休めたい」と深刻に思い、動きたくなくなってしまう前に、積極的に一人でも多くの人と会いましょう。級友や元同僚、親族など、知り得るコミュニティに連絡してみれば、会いたいと思えるようになるものです。
昨今の状況では、以前より少しは人に会いやすくはなったものの、なかなか遠方の人には会いづらいものです。そんなときにはWebを介して話をするのもおすすめです。ビデオ通話や電話でも、人と接することで、普段過ごすコミュニティでは話せないような話がアウトプットでき、ストレス解消や明日への活力へつながります。
5-3 薬局へ相談する
「病院に行くほどでも無いが、なんとなく不調を感じる」。そう思う方は、不調が本格的になる前に、一度薬局へ足を運んでみるのも良いでしょう。中でも漢方薬は、西洋薬が病気の原因に対して直接的に作用するのに対し、身体を一つの巡りとし、そのバランスの崩れに対し、過不足を補い、巡りを良くすることにより、本来あるべきバランスに戻そうとするものです。
つまり、6月病のような「心とカラダ、それぞれの乱れ」に対しアプローチできる、効果的な方法のひとつであると言えます。
・鎮静/催眠効果のあるもの
・自律神経の働きを調節し、精神安定に作用するもの
・弱った胃腸の働きを整えるもの
・肝臓を落ち着けるもの/働きを助けるもの
などの働きにより、心とカラダに作用するものが数多くあります。
ただし、漢方薬は巡りを良くするものとはいえ、薬であることに変わりはありません。服用薬や基礎疾患のある場合、薬剤師や専門の漢方認定薬剤師、または場合により かかりつけ医に相談することも併せて検討しましょう。
6.6月病の予防方法
6月病をまず認識したうえで、それに対する予防策を講じることで、リスクは低くすることができます。人により個人差はありますが、その一例を紹介いたします。
6-1 週末の予定を計画する
週末に休みが取れる場合、シフト制で単発の休みがある場合、どちらの場合であっても、大きな予定を立てることは社会人にはなかなか難しいものです。ときには旅行などでリフレッシュすることや、何人かの予定を調整し合いながら会う予定を立てることも良いですが、細かい予定をひとつでも入れてみる、というかたちであればぐっとハードルが下がります。
≪細かい予定の例≫
・家の水回りの掃除をする
・近所のスーパーに買い物に行く
・観たかった映画を観に行く
・銭湯やサウナに行く
大きな予定を入れずとも、数時間で済ませられるような細かい予定を時間で区切って入れてみることで、休みの日の過ごし方にメリハリが出るようになります。また、目的意志を持って動くことにより、段々と計画性が持てるようにもなるでしょう。
6-2 “抗ストレス”な食生活
抗ストレスにつながる食品や栄養素をご存じでしょうか。薬のように直接的に改善につなげるものではありませんが、その効果が有意に認められ、昨今注目されている栄養素があります。
バランスの良い食生活を整えることが最も重要ではありますが、そのうえで 抗ストレスに効果的であると言われている栄養素を、ここでは2つ取り上げて紹介いたします。
どちらも、比較的意識して取りやすい食材に多く含まれています。少し目を向けて摂取してみることが、簡単に食生活の改善につながります。
6-3 生活リズムを整える
休みの日に“寝だめ”をしたり、夜ふかしすることにより、翌日・翌々日とどんどん生活リズムは乱れてしまいます。
防ぐためには、「だらだらしない」ことを意識するのが得策です。前述どおり、休みはきちんとカラダを休めることも大切ですが、予定も適切に入れることで、昼間寝すぎて夜に寝られない、といったリズムの乱れを作らないことにつなげられます。
無理してでも仕事を切り上げ、睡眠負債を作らないように日々過ごすことが、心の健康にもつながるのです。
7.6月病の社員と向き合う際のポイント
それでは、社員が6月病であると認識した場合、どのような手立てを取ってリカバリーしていけば良いのでしょうか。環境を整えるのにも役立つ、3つのポイントを紹介いたします。
7-1 適切に休ませる
休日の過ごし方を意識する以前に、休日をきちんと管理できていない会社も多くあるのが現実です。ですが、人不足を理由に公休出勤を強いると、結果としてその社員の健康を保てずに休職・離職につながり、最終的にさらなる人不足を招いてしまいます。
法律上は割増賃金を支払うことが規定されていますが、きちんと雇用契約どおり、加えて+αの特別休暇を与えていくことは、6月病解消だけでなく 休み方改革にもつながります。
7-2 帰属意識を高める
コロナ禍により、新社会人をはじめとする従業員の帰属意識は薄まりやすくなっています。「自分はこの企業の一員なんだ」「欠かせない人材の一人なんだ」と思わせるためには、縦横関係なく関わりを密にすることが求められています。そのためには、以下のようなコミュニケーションに関わる解決策があります。
・上司や周囲は意識して積極的に話しかける
・昼食を一緒に食べるよう声がけするなど、孤立する時間を減らすよう努める
・悩みがないか会話の中で引き出すなど、聞き手に回る時間を増やす
また、昨今の自粛などが落ち着いたタイミングで、感染症対策をしながらイベント事を企画するのも良いかもしれません。ただし、プライベートへの過剰な干渉は控えるよう、バランスに気を払いましょう。コミュニケーション維持策の一環として企画したイベント事でも、強制すれば仕事の一環と捉えられてしまうおそれがあります。
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7-3 フォローアップ
従業員が今までと異なる部署に配属されたとき、新しい業務に勤めているとき、新社会人が新たに配属されたとき、その従業員にももちろん努力義務はありますが、配属した人事担当部署/管轄する上司にも、従業員の現状やそのときの思いなどにきちんと気を払う義務があります。配属したまま放置するのは無責任ということです。
そのようにならないための組織制度の一環として、定期的なフォローアップの時間を設けることが効果的です。例えば、配属後1か月・2か月・3か月・6か月・1年といったように、期間を定めてフォローを行うよう努めましょう。直属の上司だけでなく、少し上の先輩をメンターとして設定したり、人事担当者や同性の人事担当者が話を聞いてあげるのも効果的です。
≪フォローアップ面談で聞くべき内容の一例≫
・普段の業務に関すること
・上司やグループメンバーとのコミュニケーション
・休みがきちんと取れているか
・現在の業務量が適切か
・次回のフォローアップ面談までに何を実現したいか
客観的に従業員と接することで、今まで見えてこなかった課題を把握し、改善策を講じることが6月病対策にもつながります。
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8.まとめ
この記事では、6月病について紹介いたしました。正式に病名ではなく、総称/俗称であるため実態のつかめないことが、やや難しい部分です。
・どうして起こるのか
・どのような兆候が見られたら危険なのか
・どのように対策を講じれば良いのか
以上のようなことが把握できていれば、十分に向き合うことができます。根性論ではなく、従業員の置かれている現状や環境を客観的に把握し、適切な対応を図ることで、ひとりでも多くの従業員が最大限のパフォーマンスを発揮できる状態を作り出しましょう。
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