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2024/01/15 (公開:2022/01/25)

パーソナルスペースとは? 職場での注意点について解説


パーソナルスペースとは? 職場での注意点について解説

「この人、距離が近いな」と、感覚的に思ったことはありませんか?

実は、人と人との距離感は、パーソナルスペースとして心理学的にもある程度定義づけられています。最低限知っておくことにより、今よりもっと円滑な人付き合いや、逆に いやな思いをさせることを減らすことにつながるかもしれません。

本記事では、感染症対策を経て改めて注目される“パーソナルスペース”について紹介いたします。

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1. パーソナルスペースとは

コロナ禍でソーシャルディスタンスという新しい言葉が叫ばれ、人と人とが話すときに 一定の距離を空けるように意識されるようになりました。これは単純に飛沫防止や“三密”防止に効果があるため、物理的距離を取るようにしましょう、という考え方から来ています。

それとは別に、実は何年も前から「パーソナルスペース」という概念があるのはご存じでしょうか。他人が近づいてくると不快に感じる空間や距離(=心理的距離)のことを指す言葉です。

動物が自分自身の縄張りを侵されると威嚇や警戒をするのと同様、人間もあまりに近寄られ過ぎると不快感を覚えます。またその距離は、関係性によっても異なってくるでしょう。それを定義したのがパーソナルスペースです。
 

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2. 4つの定義

それでは、そのパーソナルスペースは、どのように定義されているのでしょうか。

アメリカの文化人類学者 エドワード=T=ホール(Edward Twitchell Hall, Jr.) により1966年に提唱されたパーソナルスペースは、対人距離を4つに、またそれぞれを近接相、遠方相、の2つに分類しています。また、日本の建築学者 西出和彦氏も対人距離を同様に4つに分類しています。距離数値としては前者と概ね違いはありませんが、その見解についてはそれぞれ異なりますので、各項目に記します。

     

   

2.1 密接距離

ごく親しい人に許される空間

 近接相:0~15cm (抱きしめられる距離)

 遠方相:15~45cm (頭や腰、脚が簡単に触れ合うことはないが、手で相手に触れられるくらいの距離)


※絶対的に他人を入れたくない(=排他的である)範囲で、会話などはここまで近接して行わないとされる距離
 

2.2 個体距離

相手の表情が読み取れる空間

 近接相:45~75cm (相手を捕まえられる距離)

 遠方相:75~120cm (両方が手を伸ばせば指先が触れあうことができる距離)

※日常会話の距離。このゾーンでは 会話することが強制的であるような距離圧力を受けるため、会話無しではいられない(それでも会話が無いときには、何らかの「居ること」に対する理由を要する)。

 

2.3 社会距離

相手に手は届きづらいが 容易に会話ができる空間

 近接相:1.2~2m (知らない人同士の会話、商談時に多く用いられる距離)

 遠方相:2~3.5m (公式な商談で用いられる距離)


※会話をするための距離。会話をしないでこのゾーンに居続けることも可能だが、距離圧力としてはどちらとも言えないゾーンであり、しばらく会話なしでいると居心地が悪くなるとされる距離。

2.4 公衆距離

複数の相手が見渡せる空間

 近接相:3.5~7m (両者の関係が個人的なものではなく、講演者と聴衆と言った場合の距離)

 遠方相:7m以上 (一般人が社会的な要職にある人物と面会するような場合におかれる距離)


※知り合いであるかどうかが分かり、3~7mの距離では、知り合いを無視することはできない。相手の顔の表情も分かる距離。普通、あいさつが発生する距離を指す。

         

3. 人によるパーソナルスペースの違い

パーソナルスペースには当然個人差が生じます。ただし、どのような理由や要素で個人差が生じるのかについて知っておくと、理解が深まり対策や向き合い方も変わってくるでしょう。
            

3.1 性別による違い

男女によっての違いは非常に分かりやすいと言われています。

男性は狩猟本能によるものなのか、「前方向に広く 後ろ方向に狭い」とされています。つまり、楕円を描くようにパーソナルスペースが形成されています。

対して女性は子を守るという本能によるのか「前後左右一律に」、つまり正円を描くようにパーソナルスペースを設けるため、偏りがないとされるのが特徴です。ただし、男性に比べてパーソナルスペースが小さいともされます。

よって、同性間や異性間、集団数など、組み合わせによっても変わってくることから、信頼度や人数など、その場での関係性を配慮することが求められます。

           

3.2 年齢・成長による違い

赤ちゃんの発育や成長は、科学的および統計学的にその仕組みが多く明らかになっています。そのうちのひとつに、パーソナルスペースの変化も挙げられると言われています。目や耳といった感受器官の発達、および自我の芽生えに併せ、段々とパーソナルスペースが形成されていきます。赤ちゃんや子どもは、自らが興味・関心を示したものに対して警戒心が薄まる習性があることから、身の回りの危険などよりも そちらに興味が行くとされているためです。

第二次性徴の発現がピークとなる12歳ころよりパーソナルスペースを意識し始め、そこから年齢を重ねるのに併せ、段々と大きくなっていくとされますが、そこから40歳をピークに小さくなっていくとも言われています。 

          

3.3 国民性による違い

Journal of Cross-Cultural Psychology で発表された研究(※)によると、42か国・9,000人に対して、見知らぬ人・知人・親しい友人とそれぞれどれくらい距離を保つと快適かを調査した結果、パーソナルスペースの広さには、文化の差と相関性があることが分かっています。

中国やインドといった人口密度の高い国では、電車に乗るときや行列をなすときにも、非常に近い距離でいるのが多いことで有名です。必然的に、調査結果も上位層にランクインされているようです。

逆に 北欧(フィンランド・ノルウェー・デンマーク・スウェーデン など)ではパーソナルスペースが非常に広いことで知られています。これは、シャイで控えめで主張したがらない国民性が関係しているとも考えられています。

 

日本人は欧米に比べればあまりスキンシップを取りたがらない国民性とされますので、比較的 パーソナルスペースは広いと言われています。ただし、満員電車で感じるように、密着度合いで言えばトップクラスであるものの、住居も土地や家の広い国に比べれば小さいことから、北欧ほどはパーソナルスペースが広くないのも納得がいくでしょう。

 (※)引用元:https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/0022022117698039

                    

3.4 価値観による違い

抽象的ではありますが、人それぞれの価値観によってもパーソナルスペースは大きく異なります。パーソナルスペースの近い人同士が話すときには、関係性なども無いままに非常に近接して話すこともある反面、そうでない人同士が話すときには非常に大きく距離を取る場合もあります。

注意しなければならないのは、双方のパーソナルスペースが大きく異なる場合です。「近すぎる」「遠い」とそれぞれ感じることになりますが、各々理解を示して適切な距離を取ることが大切です。

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4.パーソナルスペースの3つの活用方法

パーソナルスペースに種類があること、また それぞれによっても違いがあることについてここまで紹介してきました。それでは、理解が深まったところで、ここからは“どう活用していくか”を具体例を挙げて紹介していきます。
            

4.1 仕事での活用

仕事を進めるうえで、相手とのパーソナルスペースを考慮しながら上手く距離を置くと、コミュニケ―ションを円滑に進めることができます。


①リーダーシップを取りたい場合

相手と物理的に距離を取りましょう。テーブルでは、全員が見渡せる、または立場相応に距離を取ることができる場所が最適です。

②親密になりたい場合

相手との距離を120cm以内(=個体距離)にすることで、心理的な距離が近い状態でコミュニケーションを図れます。テーブルでは、並列を意識し横に座るのが最適です。

③大切な報告をする場合

対面で、かつ一定の距離を置くことで、フォーマルな印象を与えられます。目に見える環境の中、およびパーソナルスペース内に他人を入れないことも大切です。

            

4.2 環境整備への活用

パーソナルスペースを効果的に活用できるのは、日常の行動ノウハウだけではなく、環境を作ることに役立てる、という点もあります。

大きく費用などをかけずにすぐに実践できるもののひとつに、席の配置が挙げられます。例えば、リーダーシップを発揮し組織の統率を図りたい場合には、角テーブルを用いるのが効果的です。上座にリーダー・上長が座るという、オフィスでは一般的なこの席次も、メンバーに対してリーダーシップを取りやすい効果が得られます。ただし同じ角テーブルでも、自分と相手の2人だけで議論する場合、座る場所が重要になってきます。角を挟んで45度方向に向かい合えば、精神的な衝突を防ぐことができるとも言われています。対して、真正面に対面する際には、相手を説得する、大切な身の上話をする、などのフォーマルな場で有効です。

逆に、ミーティングスペースなどでは、参加するメンバーと同格に、仲良く意見交換ができることが、活発な議論や良い案出しの機会になり得ます。その場合には、参加者同士が対等かつ平等な位置関係で座れる丸テーブルがおすすめです。角テーブルであっても、並列、つまり隣に座ることで、公平な立ち位置と感じられるため、スムーズに作業を進められます。

これらは、集団研究などを専門に行っていたアメリカの心理学者 スティンザー氏によって提唱された、会議中の心理法則をまとめた『スティンザー効果』によっても実証されています。

            

4.3 プライベートでの活用

友人関係、親族付き合い、恋人関係、いずれの場合であっても、適切な距離感はその関係それぞれで異なるものです。つまり、一概に一律な距離感ではいけないということです。どれくらい親しいのか、どのような間柄なのかを意識して距離を取るようにしましょう。

また、その逆もまた然り、より親しくなりたいのであれば 距離を詰めていくのも大切です。距離感を意識し過ぎるあまり、まったくもって近寄らないとなると、「この人は私のことが苦手なのかな…」と余計な不安感や不信感を感じさせてしまうことにつながります。

         

         

5. 職場内で気をつけるべき3つの注意点

この記事を読んでいる方は、オフィス環境でパーソナルスペースをどう活かせるかを考えている方が多いのではないでしょうか。実際に職場内でどのように気を払うべきなのか、具体例を挙げて紹介いたします。



            

5.1 4つの“距離”を把握し使い分ける

第2章で、パーソナルスペースには4つの分類があることを紹介しました。この4つを実際のオフィスシチュエーションに分けて考えてみましょう。


①相談をするとき

この場合、親しい間柄の人に親身になって相談に乗ってもらいたいときには、相手に不快のない範囲で極力近づく必要があります。相手の表情を読み取れる“個体距離”が適切でしょう。

 

②フォーマルで硬さの必要な会議を行うとき

人やお金に関わるような重要な会議体では、フランクに意見出しを行うよりも、ある程度硬さが求められる、統率の取れた会議が多いでしょう。その場合、“社会距離” “公衆距離”などの距離感が適切です。

逆に、意見が活発に行き交うようなブレインストーミングなどの場では、もう少し近い距離、かつ 上下の関係が少なく感じられる円卓などで行うのが最適でしょう。

 

③歓迎会など親睦を深めることを目的とするとき

まだ馴染めておらず距離を感じている人は、物理的な距離が心理的な距離に直結してしまいます。あまり急激に距離を縮めることは望ましくありませんが、かたちとしてある程度近づくことを意識し、“個体距離” から “社会距離” が望ましいでしょう。

            

5.2 オフィスレイアウト

これからオフィス環境の構築を考える方も、既存のオフィス環境をより時代に合ったものにしようと考える方も、オフィスレイアウトは適正なパーソナルスペースを考慮したものにすると、働く人が最大限のパフォーマンスを発揮できる環境になるでしょう。

コロナ対策でデスク対面にアクリル板などで仕切りを設けた方も多いかもしれませんが、図書館の自習室やカフェにあるような、隣との仕切りを設けることもまた、プライベートな空間を作るうえでは効果的です。

 また、フリーアドレス席などは一時期注目を集めましたが、勤務スタイルが多様化する中では、状況に応じてこのような形態を導入するのは、自由にパーソナルスペースを設定することができるという点では非常に効果的です。ただし、このコロナ禍では「着席者の利用追跡ができない」「誰がこの席を使ったか記録しきれない」といった理由により、無理に導入することは非常に危険です。状況や世相を正しく判断したうえで、今後の導入や部分的な活用などを検討していきましょう。

            

5.3 立場やシチュエーションを意識する

上司と部下の関係性は、思った以上に注意深くいなければなりません。良好な関係築きたいと思う気持ちから、無理にでも距離を縮めることはできても、部下からしてみれば 自分から距離を空けることは立場上非常にしづらいものです。部下も一人の人間である以上、パーソナルスペースにずけずけと入り込むことは、不快感や警戒心を抱かせてしまうことに他なりません。

依頼をするとき、叱責をするとき、そうでないオフのとき、と、シチュエーションに合わせ、適正な距離を取ることでパーソナルスペースを侵さないよう気を配る必要があります。叱責するときには詰め寄らずに一定の距離を置き、冷静に伝えるべきことを伝えて考えさせる。褒めるときには普段より無理のない範囲で距離を近づけ、精一杯一緒に喜んであげる。このように、伝えたい内容に合わせて適切な距離を、立場上 上である上司が率先して保ちましょう。

慣れあうこともなく、警戒しあうこともない、適切な距離感を相互理解のもと保つことこそ、職場内で適切なパーソナルスペースを維持し、良好な人間関係を築くための第一歩になり得るのです。


  

6. まとめ

感覚的、本能的に意識する“なわばり”も、心理学的に証明されている「パーソナルスペース」によるものであると認識することで、相互理解が深まり、職場をはじめとした多くの人と良好な人間関係を築くことにつながります。「コミュニケーションを取るのが上手いな」「距離を詰めるのも取るのも上手いな」と思う、皆さんのすぐ近くの方は、パーソナルスペースの取り方が非常に上手いのかもしれません。

正しく知識を取り入れ、お互いにそれを認識しあうことで、職場環境をより良くし、帰属意識やエンゲージメントを高めることにもつながるのです。


  

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著者情報

株式会社イーウェル ウェルナレ事務局

「人も、企業も、ウェルビーイングへ。」をテーマとして、企業の健康経営や福利厚生の支援を行う株式会社イーウェルが運営する、BtoB(人事総務向け)オウンドメディア「ウェルナレ」の編集部。
2021年7月にメディアリリース後、毎年60回以上、有名企業様とのコラボセミナーや官公庁の専門分野に特化した方を招いてのカンファレンス、大学教授による福利厚生勉強会の開催や専門家記事の掲載などを実施し、多くの方に好評いただいております。
人事部署や経営者が、会社のウェルビーイングを向上されるためのヒントを探して、日々活動しています。

 


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