健康経営優良法人に認定されるには何をすればいいのかわからない、項目が多くて難しいと悩んでいませんか? 健康経営優良法人に認定されると、メリットが多い反面、項目が複雑で実施が難しいですよね。
本記事では、健康経営優良法人認定制度を解説したのち、細かい認定要件・評価項目をわかりやすく解説します。また、具体的に何をすべきかまで紐解いて説明しております。健康経営を実施したい企業様はぜひご覧ください。
目次
健康経営優良法人認定制度とは、健康経営を優良な状態で行っている会社を認定する制度です。目的は、健康経営の度合いを「見える化」し、優良な会社が社会的評価を受けられるようにすることです。
また、法人の規模により部門が分かれることもポイントです。
<大規模法人部門>
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健康経営銘柄に認定されるのは、特に優れた健康経営を行っている上場企業です。毎年8月〜10月に行われる健康経営度調査の回答内容により判断されます。東京証券取引所の上場会社の中から、トップクラスの健康経営を行っている会社のみ選定されるため、投資家へのアピールが可能です。
また、過去の選定回数も表示されます。回数を重ねるほど、継続して健康経営を行っている会社、健康経営に力を入れられるほど経営が安定しているなどのアピールになります。
※出典元:経済産業省「健康経営銘柄」ホワイト500とは、健康経営優良法人制度の中にある「大規模法人部門」で認定された企業の、上位500位に与えられる称号です。開始当初は部門全体の認定企業をホワイト500と呼んでいましたが、基準が変わり上位500社のみに変更された点に注意しましょう。
※出典元:経済産業省「健康経営優良法人認定制度」
※出典元:経済産業省「健康経営優良法人認定制度」
健康経営優良法人に認定されると、多くのメリットがあります。例えば、企業イメージが向上し、人材確保がしやすくなるなどです。昨今では、企業に対し働きやすさや福利厚生の充実度を求める人が増加しています。
健康経営優良法人に認定されることで「健康や働き方に対して理解がある会社」とアピールしやすくなるでしょう。さらに、融資の金利が優遇される、助成金を利用できるなど金銭的な面でもメリットがあります。メリットに関する詳しい内容は、以下の記事で解説しております。あわせてご覧ください。
健康経営を実践し、健康経営優良法人に認定されるためには、従業員の意識改革が欠かせません。ここでは健康経営の取り組みのうち、必要と感じる従業員が多いものとそうでないものの一例を紹介します。
必要と感じる従業員が多い健康経営の取り組みには、以下のようなものがあります。
自分ごと化しやすい施策は、重要度が高いと感じる傾向にあります。例えば健康診断の場合は、実際に病気が見つかることがあるため、成果が分かりやすい施策といえます。
不要と感じる従業員が多い健康経営の取り組みとして挙げられるのは、以下のようなものです。
これらのような、何を得られるか分かりにくいものは、不要と感じる従業員が多い傾向にあります。従業員に重要性が伝わらない施策については、直接的なメリットを感じられるような工夫が必要でしょう。
健康経営認定を受ける前に、前提として行う健康経営宣言とは、その企業が健康経営にどういった意思・思いを持って取り組むのか、社内外に公表されている宣言を指します。
健康経営を推進する目的や目標、取り組み姿勢を社内外へ発信するものであるため、様々な取り組みの拠り所となります。
また、健康経営推進にあたってはトップコミットメントの重要性が指摘されており、経営者の健康経営に対する意思表示でもあります。
大規模法人部門においては、健康経営宣言を単純に明文化し社内外へ発信するだけにとどまらず、健康経営の実施により期待する効果や具体的な取り組み等のつながりを整理し公開することや、推進目的と体制、成果指標の開示も求められます。
また、一度策定して終わりではなく、取り組み状況を分析したうえで、毎年ブラッシュアップしていく必要があります。
健康経営優良法人を認定取得するための必須項目の一つが「健康経営宣言」となります。
経済産業省の「健康経営銘柄選定における必須要件兼健康経営優良法人(大規模法人部門)認定要件」の資料の1番最初にある項目が「1.経営理念・方針」で、その評価項目に入っているのが「健康経営宣言」です。
ここでは企業の経営者が経営理念の中に「健康経営」について明文化し、企業全体で取り組んでいることを社内外に発信することが、健康経営優良法人認定(大規模法人部門)の認定のために重要視されています。
また、中小規模法人部門においては、自社の健康経営宣言ではなく、原則、保険者(加入する健康保険組合)の「健康宣言事業」への参加が必要となります。加えて、経営者自身が手本となる必要があるため、経営者の健康診断(人間ドック含む)受診を認定要件としています。
中小企業においては健康経営の実践において基礎となるコラボヘルス推進のため、原則、保険者の健康宣言事業への参加が必須となります。
加入している保険者(健康保険組合)が健康宣言事業を実施していない場合に限り、各自治体が実施する健康宣言事業への参加または、自社独自の健康宣言の実施をもって代替することを可能なため、まずは、保険者(所属している健康保険組合)に健康宣言事業の参加要件を確認しましょう。
以下は、健康経営優良法人2025(中小規模法人部門)認定申請書に記載されている諸注意事項です。
出典元:ACTON! 健康経営
- 健康経営の実践において基礎となるコラボヘルス推進のため、原則、保険者の健康宣言事業への参加が必須となりますが、加入している保険者が健康宣言事業を実施していない場合に限り、各自治体が実施する健康宣言事業への参加または、自社独自の健康宣言の実施をもって代替することを可能とします。
- 保険者が実施する健康宣言事業の参加要件は各保険者によって異なるため、加入している保険者に事前にご確認ください。
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合は、各支部で健康宣言事業を実施しているため、選択肢「3」「4」を選択すると不適合となります。
- 健康保険組合の場合は、各都道府県連合会で健康宣言事業を実施しているため、選択肢「3」「4」を選択すると不適合となります。
- 東京都に所在している医療保険者のうち健康企業宣言東京都推進協議会による銀の認定取得を健康経営優良法人申請の要件としている保険者に加入している場合は、銀の認定が必要になるため、取得していない場合は選択肢「5」に該当し、不適合となります。
- 各自治体と保険者が共同で実施している健康宣言事業の場合、自治体独自の健康宣言事業ではなく加入保険者で実施する健康宣言事業に参加している扱いとなるため、選択肢「3」を選択すると不適合となります。 ※ふじのくに健康づくり推進事業所宣言、とやま健康企業宣言、うちなー健康経営宣言など
- 都道府県・市区町村等、各自治体にて実施している健康宣言事業については、法人が所在する自治体にご確認ください。
令和4年度健康経営度調査によると、健康宣言をしている企業の割合は回答企業の92%にものぼり、企業の多くが経営理念の中で健康宣言について明文化しています。さらに85.3%が会社全体の目的体制を社外公開しています。
社外のステークホルダー(株主・取引先・求職者等)に健康経営の取り組みについて理解を促すために、健康経営宣言(保険者の健康宣言)だけでなく、健康経営を通して解決したい経営課題や成果指標、推進体制なども併せて発信することが理想です。
まずは、できるところから少しずつ取り組んでいくとよいでしょう。
なお、令和6年度の中小規模部門の調査票によると、以下のような取り組みが推奨されています。これから健康経営宣言を策定するにあたってのポイントをご紹介します。
健康経営は、短期的な費用対効果を得ることが難しく、腰を据えて長期間にわたり取り組む必要があります。
そのため、企業の長期ビジョンに照らしどのような方針で進めるべきか、また社内外からの支持を得るにはどのような発信方法がよいか、経営判断が必要となります。
健康経営を本質的な取り組みとしていくためにも、トップの強い思いを込めて、健康経営宣言をする必要があります。
健康経営を推進する担当者は、健康経営の推進が、中長期的な企業価値向上につながることや、CSRの観点からも重要であることについて、データなどを用いながら説明しましょう。
経営層の関与は健康経営の成果に直結しますので、経営層を巻き込み、トップダウンで推進できる体制づくりを促していくことがポイントです。
そもそも健康経営によって解決したい課題があいまいであると、健康経営宣言も中身のないものになってしまいます。
そのため、しっかりと健康経営の取り組みを通じて解決したい自社の経営課題を特定し、その課題を解決するための姿勢や方針を明文化しましょう。
自社の課題を特定するには、健診結果やストレスチェックの分析や従業員サーベイなどを活用することで定量的に課題を把握することが可能です。
自社の課題を把握できたら、いよいよ健康経営宣言の策定をします。
まずは、課題を分析したうえで自社が目指す状態を定義し、優先的に改善が必要な内容を具体的にしましましょう。
他社比較や産業医・保健師からの意見を参考にすると良いでしょう。
健康経営宣言・健康宣言の明文化が完了したら、社内外へ向けて公開しましょう。社外に対してはホームページや統合報告書への掲載にて公開する方法が一般的です。社内向けには、イントラネットや掲示版へのポスター掲示、トップメッセージを伝える機会の設定などが手段としてあげられます。
単純にホームページへ公開するだけでなく、浸透を図るために、宣言内容に基づいた施策の結果報告や、折あるごとに経営層からメッセージを発信するなど、反復継続的な活動を続けましょう
健康経営優良法人に関する要件を「中小規模」「大規模」の2つの部門に分けて見ていきましょう。
※引用元:ACTION!健康経営「健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)認定要件」
中小規模法人部門の認定要件は上記の通りです。中小規模法人部門では、通常の健康経営優良法人の認定とブライト500で評価項目が分かれます。健康経営優良法人は、7つの項目を満たすことが必須です。しかし、ブライト500の場合「制度・施策実行」に関する15個の項目のうち、13項目を満たす必要があります。
※引用元:ACTION!健康経営「健康経営銘柄2024選定基準及び健康経営優良法人2024(大規模法人部門)認定要件」
大規模法人部門の認定要件は上記の通りです。なお、健康経営銘柄でも同じ項目で審査されます。
ホワイト500にある、特徴的な認定要件の1つに「トップランナーとして健康経営の普及に取り組んでいること」があります。自社だけでなく、健康経営を行っていない企業にも働きかけることが求められるでしょう。
健康経営優良法人2024に認定されるまでの流れを見ていきましょう。「中小規模」と「大規模」で認定の流れが異なるためそれぞれ説明します。
中小規模法人部門は、比較的内定までのステップが多いです。具体的には以下のステップで認定まで進みます。
健康経営優良法人2024では、申請期間が2023年8月21日~10月20日、2024年2月に内定というスケジュールで進みました。
大規模法人部門は、シンプルな流れです。具体的には以下の流れで認定まで進みます。
健康経営優良法人2024では、申請期間が2023年8月21日~10月13日、2024年2月に内定というスケジュールで進みました。
健康経営を具体的に取り組む際、以下の6つのポイントをおさえましょう。
健康経営優良法人の大規模法人部門と中小規模法人部門、どちらの認定要件にも「健康診断受診率100%」があります。健康診断の受診は、ただ促すだけでなく従業員の業務量にも注意が必要です。業務過多で残業が続いている、休日も出勤している従業員は定期検診の時間すら惜しいと感じるでしょう。
現実的に定期検診を受けられる業務量に調整し、体調を崩す前に異常の有無を確認できる環境づくりをしていきましょう。
従業員50人以上の企業は、ストレスチェックの実施が義務付けられています。従業員が50人未満の場合でも努力義務とされており、実施が望ましいとされる項目です。ストレスチェックはメンタルヘルスの把握に役立ち、健康状態の改善につながります。メンタル不調による休職や離職を防ぐため、特に重要な項目です。
ストレスチェックの実施は準備が重要です。実施方法や注意点などは以下の記事で解説しているため、あわせてご覧ください。
健康診断の受診率向上やメンタルヘルスへの理解は、従業員の理解なくしては進みません。
外部講師を呼んでメンタルヘルスに関する講習や、栄養士による食生活講座を開くなど学びの場を設けましょう。eラーニングは比較的安価にできますが、形式上のものになってしまわないよう注意が必要です。
時間外労働や休日の勤務は従業員のパフォーマンスを下げるだけでなく、心身の不調を招きます。経営者としても残業手当や休日出勤手当が必要になり、金銭的な負担が大きくなります。
ノー残業デーを設ける、勤務時間が長い従業員に対して産業医との面談を勧めるなど、今できる範囲から労働時間を見直していきましょう。
特に忙しい部署では、帰宅後の運動時間が取れないケースや、ついコンビニ弁当で食事を済ませてしまうケースが多々あります。食生活に関しては、社内食堂があるならメニューの改善、栄養バランスが取れた仕出し弁当の提供などを検討しましょう。
運動は営業時間内にラジオ体操を行う、昇降式デスクなどを導入して立ったまま事務仕事ができるようにするなどが有効です。
新型コロナウイルスだけでなく、インフルエンザやノロウイルスなどの感染症は従業員の健康を大きく損ねます。感染したのはたった1人でも、個人から部署、部署から会社全体に広がり、最悪の場合会社の営業ストップにもつながりかねません。
予防接種の推奨、手指消毒の徹底や定期的な換気など、感染症予防の環境を整えましょう。
ここでは、健康経営に成功した企業の事例を見ていきましょう。中小企業法人部門、大規模法人部門をそれぞれ紹介します。
静岡部品株式会社では、若い従業員が病気を理由に退職したことがきっかけで健康経営に力を入れ始めました。具体的に行った取り組みは以下の通りです。
健康経営を実践したことにより、傷病日数が大幅に低下しました。2018年には682日だったものが、2022年には129日と約81%の減少に成功しています。年に数名いた休職人数も0名になり、継続的な勤務が可能になりました。
※出典元:「経済産業省」健康経営優良法人
三菱地所では、従業員が心身ともに健康で最高のパフォーマンスを発揮しつづけるために健康経営に力を入れました。具体的に行った取り組みは以下の通りです。
健康経営を実施したことにより、ストレスチェックの高ストレス者の割合は前年比で-0.8%(全体で4.7%)と、心身共に健康な従業員が増えています。上記のように、健康経営は従業員の健康につながり、ひいては会社の生産性向上につながります。
※出典元:「健康長寿産業連合会「2022 健康経営 先進企業事例集」
制度の民営化を見据えて、日本経済新聞社が運営事務局に認定されました。日本経済新聞社は、ポータルサイト「ACTION!健康経営」を立ち上げ、健康経営に関する情報を提供しています。
申請が有料化になり、中小規模法人部門は16,500円/件、大規模法人部門は88,000円/件になりました。また、提出がオンライン上でできるようになったことも変化のひとつです。さらに、2024年から認定基準が変更されているため、詳しく見ていきましょう。
まず、大規模・中小規模法人部門に共通する変更点を見ていきましょう。
変更点 |
詳細 |
仕事と育児・介護の両立支援 |
仕事と育児・介護の両立に関する設問が追加され、認定要件になった |
女性特有の健康問題 |
月経や更年期症状など女性特有の健康課題に関する研修、行動変容促進に取り組むことが認定要件に追加された |
生産性低下防止の取組 |
花粉症対策、眼精疲労に対する支援の項目が追加された |
新型コロナウイルス感染症への対応 |
5類感染症に移行したことにより、変化を把握するためのアンケート項目になった |
基本的には追加のものが多く、新型コロナウイルス感染症が変更になったと覚えておきましょう。
次に、大規模法人部門のみの変更点を見ていきましょう。
変更点 |
詳細 |
特定健診・保健指導の実施率評価 |
特定健診・保健指導の実施率の設問が追加された |
業務パフォーマンス指標の開示 |
ホワイト500の認定要件に、業務パフォーマンス指標の開示が追加された |
労働安全衛生に関する開示 |
労働安全衛生、リスクマネジメントの開示が求められた |
海外従業員への対応 |
海外駐在員や現地法人で雇用されている社員を対象にした設問が追加された |
すべて項目が追加されており、現在は必須要件ではないものの、今後必須要件になり得る評価ポイントもあります。
健康経営優良法人の情報は、経済産業省のサイトおよびACTION!健康診断のポータルサイトにより発信されるため、実施前に確認しましょう。
ここでは、健康経営の未来がどうなっていくのかを見ていきましょう。
アメリカを例に挙げると、1990年代頃から健康経営により従業員の健康を改善する動きがあります。アメリカに本社を構える「ジョンソン・エンド・ジョンソン」のフィクリー・アイザック博士の論文は多くの反響を呼びました。健康経営に関するプログラムへの投資1ドルに対し、1.88〜3.92ドルのリターンにつながりました。
このように、健康経営は日本だけでなく国際的な課題として取り組まれています。
健康経営は日本の未来にも大きく関わります。特に、育休の促進や残業の削減は育児のしやすさにつながり、少子化にブレーキをかける可能性があります。経営面で見ても健康経営は重要な役割を担います。具体的には、以下のような点です。
上記のように、生活面、経営面両方にメリットがあるため、日本の未来にとって健康経営は重要です。
健康経営優良法人に認定されると、企業イメージの向上や融資の金利優遇など多くのメリットが得られます。しかし、評価項目は細かく、社内のリソースが限られた状態で細部まで実施するのは現実的に難しい場面もあるでしょう。
健康経営の実施でお悩みの企業様は、株式会社イーウェルの「健康経営推進支援サービス」をご利用ください。
健康経営推進支援サービスは「健康経営度調査」「健康投資管理会計ガイドライン」などを活用して、健康経営推進業務をサポートするサービスです。多くの知見を保有するコンサルタントが、健康経営のPDCAサイクルの循環までお手伝いします。