今年も「2025年 世界幸福度ランキング」が「国際幸福デー(2025年 3月20日)」にあわせ発表されました。新型コロナウィルスに関する問題も収束しましたが、アメリカ大統領選があり、ロシアによるウクライナ侵攻が激化し、日本国内でも賃上げに勝るほど物価上昇が続くなど、非常に大きなトピックスが世界を騒がせました。そのような問題も一部反映されてか、例年以上に順位変動が大きくみられる結果になりました。気になる日本の順位はどうだったでしょうか。この記事では、最新 2025年 世界幸福度ランキングの結果をもとに、さまざまな観点から分析・考察をするとともに、今年度は日本国内にもよりフォーカスし、都道府県単位での幸福度ランキングについても触れながら解説します。
目次
今年度も発表された「世界幸福度ランキング」ですが、早くも話題を集めています。
この記事では、世界幸福度ランキングの情報をいち早く、イーウェルの考察とともにお届けいたします。
※当記事のすべての出典は「World Happiness Report」から公式に発表された内容をもとにしています。
“World Happiness Report”
-Wellbeing Research Centre at the University of Oxford, in partnership with Gallup, the UN Sustainable Development Solutions Network and an independent editorial board.
「世界幸福度ランキング」は、毎年3月20日に「世界幸福度報告(World Happiness Report)」にて発表されています。この「世界幸福度報告」におけるランキングの発表は2012年に開始され、今年で13年目となります。3月20日は国連が定めた「国際幸福デー」として、幸福やウェルビーイングを啓発、促進するキャンペーンとしてスタートしました。
ジェイム・イリエンが提唱したのがきっかけとなったのですが、彼はインド・カルカッタの路上で孤児として捨てられたのち、マザーテレサの国際希望孤児院で過ごしました。アメリカの女性たちが子どもを養子にすべく懸命に活動する姿を幼いころから目の当たりにし、彼は自身の幸福に関して切実に実感するようになり、養母 アンナ・イリエンとともに活動を開始。彼は自分の使命を“幸福を共有すること”とするとともに、“幸福とは年齢、国、信念、状況を超えた普遍的なもの”と定義づけたことにより、「世界幸福度ランキング」の策定がスタートしたと言われています。
ウェルナレでは2022年より「世界幸福度ランキング」の結果を毎年掲載しています。過去年度ごと、非常に興味深い結果と分析を掲載しておりますので、ぜひあわせてご覧ください。 あわせて読みたい
「世界幸福度ランキング」は、毎年「世界幸福度報告(World Happiness Report)」にて発表されています。発表元はイギリス・オックスフォード大学のウェルビーイング研究所によるものです。
世界幸福度ランキングの調査は、国や地域の市民を対象に調査を実施しています。例年の調査方法は、社会的支援の充実度や人生の自由度など「人生に対する幸福度」をカントリルラダー(Cantril ladder)の指標を用いて、各国の人々に聞き取り調査を行います。カントリルラダーとは、「最良の生活」を10、「最悪の生活」を0として、10段階評価で表現したものです。
具体的には、以下の評価項目を国・地域ごとに数値化、分析することで、順位を決めています。
それでは、発表された世界幸福度ランキング、最新版の2025年結果を見ていきましょう。
昨年度までの考察は前章でご紹介しましたが、さらに過去3年間の全順位の比較表をご覧になりたい方は、お役立ち資料として無料でダウンロードいただけます。ぜひご利用ください。
今回の2025年の世界幸福度ランキングでは143か国の順位が発表されました。ランキングの対象国は前年の143か国より5か国増えています。
掲載されている「World Happiness Report」には、今年度の数値の考察として以下の内容が記されています。
本章では1位から100位までを掲載しましたが、148位までのすべての順位をご覧になりたい方は、お役立ち資料として無料でダウンロードいただけますのでご利用ください。
前章で紹介した2025年世界幸福度ランキングの結果ですが、そこからわかる特徴を紐解いていきます。前年と比較して、ランキングの順位が大きく上昇した国と、大きく下がってしまった国を一覧にしました。それぞれ変動が大きかった国の上位10か国を、昨年の順位と今年の順位を比較して、その差が大きかった順に表示しています。これらの国々は何が原因で大きく変動したのか、国ごとに情勢などを調べてみるのも面白いでしょう。
上位で安定している国は、プライベートを大切にし、「幸福」は日常生活の中に存在するものという認識を持ち、日々の生活を楽しく有意義に送ろうとしている傾向が強いようです。
フィンランドは8年連続で1位を維持していますが、スコアの絶対値はわずかに減少しています(7.740から7.736)。これは第2・3位の、デンマークとアイスランドにも同じ傾向が見られ、2024年と同じ順位を維持していますが、スコアはわずかに減少しています。スウェーデンは4位を維持していますが、スコアがわずかに増加したことにより、上位3か国に迫る値となってきているようです。ノルウェーは7位を維持していますが、スコアはわずかに減少しています。
いずれにせよ、北欧国家は非常に幸福度が高く、その背景には、福祉給付の広さや汚職度の低さ、民主主義が機能していることなど国家制度による要因があることが示唆されます。さらに、市民の自律性とそれを支える自由度の高さや互いに対する社会的信頼が、人生の満足度の高さに寄与していると考えられます。ちなみに他の分野(民主主義・政治的権利・安全感・社会的結束・ジェンダー平等・所得の平等な分配・人間開発指数など)においても、世界的に比較しても北欧諸国は非常に高い水準を誇っているようです。
※OECD・国連・世界銀行の公式データに基づく調査では、フィンランドの首都ヘルシンキは「世界で最もワークライフバランスの整った住みやすい都市」に、2019年選出
続いてオランダが6位から5位に、コスタリカが新たにトップ10入りし6位にと、順位を上げた国もあり激戦となっています。
イスラエルは5位から8位に順位を下げています。これについては戦争による影響が大きいと考えられます。
ルクセンブルクは8位から9位に順位を下げていますが、スコアは同じであることから、相対的に他国の幸福度が上がっていることを意味しています。
太陽の国とも呼ばれる陽気な国家、メキシコが新たにトップ10入りしたことは非常に興味深い結果となりました。
また、大国であるアメリカは、過去最低となる24位となっています。2012年に11位だった順位が徐々に低下していることを考えると、政治や貧富の差といった社会問題が影響しているのではないでしょうか。
最も順位が上がった国はコロンビアで、昨年の78位から今年61位となり17位も上昇しました。またメキシコは昨年度、一昨年に比べ11位上昇しましたが、今年はさらに15位向上し、ついにトップ10に入るまで上昇しました。エクアドル、ボスニアヘルツェゴビナ、ポーランド、タイ、ベトナムなども同様に上昇しています。
これらの国の数値が向上した要因として、以下の2つが挙げられます。
最も順位が下がった国はキプロス・ギリシャ・クウェートで、17位下降しています。クロアチアは昨年度15位降下したのに続き、今年度も9位降下しました。
気になるウクライナ危機(ロシア侵攻)の関係諸国の順位変動ですが、ウクライナは昨年度、92位から105位へと順位を13位落としたのに続き、今年度は6位順位を落としています。反面、近隣諸国が必ずしも順位を悪化させているわけではないようです。
当事国であるロシアとウクライナはそれぞれ順位に変動が見られましたが、周辺諸国においては必ずしも順位が悪化する、良化する、といった傾向はみられませんでした。
ここまで、世界各国の順位動向を見てきましたが、私たちの国、日本はどうだったでしょうか。日本の順位に加え、今年は国内、都道府県ごとの幸福度ランキングにも触れながらご紹介します。
世界幸福度ランキングでは、今年の日本の順位は55位でした。2023年は47位であり、2024年は4位のランクダウンになりました。今年はそこからさらに4位ランクダウンし、残念な結果となりました。2012年からの日本の幸福度ランキングの順位の推移は以下のとおりです。
年 | 日本の順位 |
2025 | 55位 |
2024 | 51位 |
2023 | 47位 |
2022 | 54位 |
2021 | 56位 |
2020 | 62位 |
2019 | 58位 |
2018 | 54位 |
2017 | 51位 |
2016 | 53位 |
2015 | 46位 |
評価項目 | 2022年 | 2023年 | 2024年 | 2025年 |
一人当たりの国内総生産 [GDP] |
1.835 | 1.825 | 1.786 | 1.678 |
社会的支援 [Social Support] |
1.089 | 1.396 | 1.354 | 1.550 |
健康寿命 [healthy life expectancy] |
0.866 | 0.622 | 0.785 | 0.921 |
社会的自由 [freedom to make life choices] |
0.537 | 0.556 | 0.632 | 0.746 |
寛容さ [generosity] |
0.007 | 0.009 | 0.023 | 0.014 |
汚職の無さ・頻度 [perceptions of corruption] |
0.218 | 0.207 | 0.219 | 0.200 |
ディストピア[人生評価/主観満足度]+残余値 [Dystopia + Residual] |
1.487 | 1.513 | 1.261 | 1.038 |
総合ポイント | 6.039 | 6.129 | 6.060 | 6.147 |
「社会的支援」については、1位のフィンランドが1.840を獲得しているのに対し、日本は1.550と、昨年度に比べスコアは向上しているものの、世界水準としてはあまり良くない結果になっているようです。国策としてさまざまな支援を行うことが求められますが、昨今の物価高高騰やそれに対する税施策などについては、あまり前向きなニュースがないのが実情です。今後の改善が最も求められるポイントのひとつでしょう。
昨今健康経営でも注目される「健康寿命」については、日本は世界的に見ても非常に高い水準を誇っており、スコアでは3位を記録しています。2019年にWHO(世界保健機関)が発表している183か国を対象とした健康寿命の調査においては、日本は1位の74.1歳となっています[※]。世界的に見ても高水準である要因は、魚や野菜を中心とした日本食/和食といった食生活、および国民皆保険制度の整備などが考えられます。
「社会的自由」については84位と、ほぼ中間に位置しています。スコアとしては向上していますが、上位にベトナムやカンボジアがランクインしていることを考えると、民主主義をもともと採用している国家は、この点について特別プラスに感じづらい、と思われる方が多いことも要因として考えられます。
健康寿命ネット:世界の健康寿命
世界幸福度ランキングでの日本の位置づけがわかったところで、国内をもう少し掘り下げてみましょう。
ブランド総合研究所が毎年発行している、都道府県ごとの「幸福度」「生活満足度」「愛着度」「定住意欲度」などを数値化する調査『第6回 幸福度調査 2024』があります。47都道府県全版の数値はこちらです。
※調査を行っているのはブランド総合研究所。インターネットで調査を実施し、各都道府県の住民それぞれ約550人に対し実施・回収し、24,970人の回答を得ている。
出典:ダイヤモンド社|ダイヤモンド・オンライン「都道府県「幸福度」ランキング2024【47都道府県・完全版】」
全体として、世界幸福度ランキングに比べると順位の変動幅が大きく、目まぐるしく順位が入れ替わっていることがわかります。国単位となると人口やサンプル数も当然大きくなるため、全体的に平均的な値となりあまり結果に差が出なくなりますが、その点都道府県単位となるとエリアが限られるため、回答者層や地域により大きな差が出やすくなります。言い方を変えれば、明るいニュース、暗いニュース、その年の話題の有無などにより、悪化も良化もともに可能性があることになります。日本全体では人口が減少する中、どの都道府県も人口の純増と流入者数増を考えていること考慮すると、幸福度ランキングひとつをとっても、上位であること、下位であること、ともに非常に大きな意味を持つでしょう。
香川県(18位→9位)、岡山県(32位→10位)、徳島県(最下位から大幅にジャンプアップ)、佐賀県(34位→15位)など、トップ3分の1の都道府県の多くが、昨年度に比べ大きく順位を上げました。昨年度から継続して幸福度の高い都道府県を含めると、全体的に関西地域が占める割合が多くなった、というのが今回の調査の特筆すべきポイントといえるでしょう。地域差はありますが、関東地域に比べ日照時間(山梨県が全国トップ)や気候条件などが穏やか・暖かであることが多いことも特徴です。
中でも、福井県は19位から5位に上昇し、非常に幸福度が高いことがわかります。福井県は今、100年に一度の転換期を迎えていると言われるほど、全国の注目を集めています。新規開館した博物館、リニューアルオープンした恐竜博物館「ほるる」、市民参加型のマラソンでは最後発のフルマラソン大会「ふくい桜マラソン」、新幹線の開通など、話題は枚挙にいとまがありません。
東京や大阪に始まり、政令指定都市を有する神奈川県、愛知県、千葉県、静岡県、福岡県、新潟県などでは幸福度があまり芳しくないことがわかります。自然が多い都道府県に比べ、首都圏や市街地では人と接する機会も多く、一般的に収入や財産も恵まれやすく、インフラも高度に発達していることが多い中でこのような結果となった理由として、現代人の“幸福の基準”が変化していることが考えられます。スマホの普及と浸透、各種IT技術の進化により、地方でもエンタメや仕事において、都市部と大差なく過ごすことができるようになりました。反面、自然や環境、観光資源などの“魅力”については、都市部では得づらいものであることは確かです。これらの変化が幸福度にも影響を与えているとも考えられるでしょう。
ウェルナレではブランド総合研究所による第6回幸福度調査のデータをもとにしましたが、そのほかにも一般財団法人 日本総合研究所が実施する「全47都道府県 幸福度ランキング」、全国で〈いい部屋ネット〉を展開する大東建託株式会社が実施した「街の幸福度&住み続けたい街ランキング」など、調査方法や対象者、調査内容に大きな違いがあります。それぞれ指標や観点が違うため、興味のある方はぜひ調べてみてください。
また、イーウェルが独自に5年延べ約13万人を対象に調査を実施した「Well-beingアンケート(2025年最新版)」では、日本国内で働く人々の実態をさまざまな観点でご紹介しています。こちらも資料を無料でダウンロードいただけますので、ぜひ一度ご覧ください。
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その他、このレポートの中では若者の社会的孤立の増加についても述べられています。特に北米では若者の幸福度が低下していることに触れられていることは、日本国内でも同じ状況下にあることと結び付けて考えるとわかりやすいでしょう。
これには、旧態依然な仕事や生活の価値観からの脱却が求められます。以前からの習わしで、古い福利厚生制度や人事制度を維持してしまっていることはないでしょうか。従業員のワークライフバランス実現や、仕事への満足度や帰属意識の向上をねらうためには、福利厚生制度を見直してみるのも手でしょう。株式会社イーウェルが提供する福利厚生パッケージサービス〈WELBOX〉では、くらしを助けるための250万ものサービスの中から、従業員が自由に選んで使うことができます。一から福利厚生を自社自前で用意することは非常に費用と工数がかかるため、まずは気軽に検討を進めてみてください。 介護・育児・自己啓発・健康増進・旅行やエンターテイメントなど、多彩なメニューがパッケージとなっている福利厚生サービスです。充実した福利厚生を目指すなら「WELBOX」
従業員のライフスタイル・ライフステージに応じて、メニューを選択しご利用いただくことが可能です。あわせて読みたい
また、リモートワーク/テレワークなどが普及した現代では、従業員同士のコミュニケーションが希薄になりやすいという弊害もあります。従業員同士で褒め合ったりコミュニケーションをとり、エンゲージメントを高めるツールの導入もまた、検討すると良いでしょう。 ポイントを使って評価や感謝を伝え合うことで社内コミュニケーションを活性化するWEBサービスです。社内コミュニケーションを活発にし、従業員の働く意欲を高める「インセンティブ・プラス」
今年の結果を見て、いかがでしたでしょうか。毎年注目度の高い調査結果ですが、評価項目内で気になるのが「ディストピア(主観的な満足度)」という項目です。個人の幸福感に直結するようにも思われますが、国家としての幸福度を測る示準としては非常にあいまいです。主観的満足度が上位の国には、経済的にあまり裕福な国でない国が多く存在することを考えると、他国家の様相についてあまり関心がない/知るすべがない、といった理由が考えられます。他国/他社/他者と比較しがちな現代ですが、まずは自分が“幸せ”だと感じることが非常に重要であることの裏返しととることもできるでしょう。
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