「従業員の健康が企業の持続的な成長に直結する」という認識が近年さらに高まり、多くの企業が健康経営への取り組みに力を注いでいます。
福利厚生は、その取り組みの中核として、従業員が健康で働きやすい環境を提供するための重要な役割を果たします。これによりモチベーションや生産性の向上が期待されるだけでなく、企業のブランド力や採用力を高める要素にもなっています。
そんな福利厚生や健康経営の推進を後押しする制度の一つが、「ハタラクエール」(正式名称「福利厚生表彰・認証制度」)です。この制度は、企業の福利厚生に取り組む姿勢や実績を評価し、その取り組みを社会に発信するための認証制度です。
本記事では、「ハタラクエール」の制度概要や効果、応募方法、さらに受賞企業の具体的な事例を交えて詳しく解説していきます。
目次
ハタラクエールは、企業、団体、自治体などが実施している福利厚生の充実と活用に焦点を当て、その取り組みを表彰・認証する制度です。この制度の主な目的は、福利厚生の普及と発展を促進し、優れた福利厚生を実施する法人や、今後その充実を図ろうとする意欲的な法人を認定することです。2024年5月現在、延べ352法人が表彰・認証を受けています。
具体的には、ハタラクエールは以下の目的を持っています。
既に優れた福利厚生を実施している法人を表彰・認証し、その取り組みを広く社会に伝えること。
このように、ハタラクエールは福利厚生の充実と活用を推進し、企業や団体の取り組みを社会的に評価・認証することで、日本全体の福利厚生水準の向上を目指しています。
ハタラクエールに認証された企業は、マークを付与され、採用サイトや求人票、公式サイトなどで認定を受けていることを謳うことができます。
2024年 3月19日に発表された「ハタラクエール2024」で「福利厚生推進法人」に認証されたのは100法人でした。その中でも、特に優れた取り組みを行っている14法人が「優良福利厚生法人」として表彰されています。
サイトでは、2024.03.19にリリースされています。
参考:ハタラクエール2024の表彰・認証法人が決定しました! | 福利厚生表彰・認証制度 | 福利厚生の充実・活用に力を入れる企業を表彰
ハタラクエールは、福利厚生の充実に意欲的な法人を「福利厚生推進法人」として認証し、その中でも特に優れた福利厚生を提供している法人を「優良福利厚生法人」として表彰する民間の制度です。認証および表彰は年に1回行われます。評価にあたっては、福利厚生の有効性や実際の活用状況を重視しており、評価基準は6つの分野に基づいています。
具体的には、従業員のニーズにあわせた福利厚生制度の充実度、経営者の姿勢、多様な従業員の課題解決となる制度の導入などが審査の重要なポイントとなります。審査は、学識経験者で構成された「審査委員会」が中立的・客観的立場から審査基準の策定し、総合的な評価を行います。
なお、選ばれた企業には表彰やロゴマーク、認証物が授与されます。これらは自社の採用ページなどに掲載することで、学生や求職者にとって魅力的で信頼できる就職先としてアピールする材料となります。
また、ハタラクエールの応募や審査、表彰には一切の費用がかからず、エントリー料も無料である点も特徴です。制度の運営は、福利厚生に長年携わっている各種法人の有志で構成される「ハタラクエール実行委員会*」や、日本唯一の福利厚生専門誌「旬刊福利厚生」を発行する株式会社労務研究所が行います。
*福利厚生パッケージサービスや選択型福利厚生制度を提供する株式会社イーウェルは、「ハタラクエール実行委員会」構成企業のひとつです。あわせて読みたい
ハタラクエール認証を取得することによって、企業にはさまざまなメリットが生まれます。認証は、企業の取り組みを対外的に示す重要な証となり、企業のブランド価値や社会的な評価を高める要因となります。また、従業員のモチベーションを向上させ、採用力の強化にも繋がるなど、企業経営における重要な効果が期待されます。
ハタラクエール認証を取得することで、企業は「福利厚生に積極的に取り組んでいる、従業員を大切にする姿勢」を社会的にアピールできます。これは顧客や取引先、地域社会に対しても企業の信頼性を示すこととなり、企業ブランドの向上につながります。
認証を受けることで、求職者に対して「働きやすい企業」としてのアピールが可能となります。株式会社マイナビが実施した、マイナビ2025卒年活動実態調査(4月)によると大手企業の選考に参加した決め手として、「福利厚生の手厚さ」が51.5%と最多となっており、福利厚生が充実している企業は、若手人材や優秀な人材を惹きつける要因として、採用力の強化にもつながります。
従業員にとって、福利厚生が充実している企業は制度を活用しやすく、働きやすさを実感できる環境を提供します。その結果、従業員の仕事に対する意欲が高まり、パフォーマンスの向上が期待されます。また、福利厚生制度が整備されている企業で働くことは、長期的なキャリア形成に対する安心感につながります。これにより、従業員の定着率向上や、生産性の向上といった効果も期待できます。このように従業員の健康や働き方に配慮された企業環境は、従業員のモチベーションを支える重要な要素となります。
ハタラクエール認証の取得は、企業の経営が安定しており、福利厚生が充実していることのアピールにもなります。認証を得ることで、企業は持続可能な成長を目指していることが示され、顧客や取引先、地域社会からの信頼を高めることができます。また、こうした取り組みを続けることで健康経営優良法人などの他の健康関連の認証取得にもつながり、企業の総合的な社会的評価を向上させる一助となります。
ハタラクエールの応募は、企業の取り組みを客観的に見直す機会にもなります。応募にあたっては、企業が提供している制度やその活用状況を具体的に示すことが必要です。
以下では、応募の流れと申請時に必要な書類や評価ポイントについて詳しく説明します。
ハタラクエールへの応募対象は、企業や団体、自治体などの法人であり、福利厚生の充実や健康経営に取り組んでいる、または取り組む意欲があることが条件となります。応募資格を満たす法人は、指定の応募用紙をダウンロードし、企業情報や福利厚生制度の実施・運用状況、課題への対応等記入します。エントリーはオンラインで行います。
審査委員会が資料をもとに審査を行い、認証の可否を判断します。
参考として、応募用紙への主な記載項目は以下のとおりとなります。
基本事項 |
・従業員数、福利厚生提供主体等 |
経営課題と福利厚生制度 |
・人事労務上の課題 ・課題解決に向けた福利厚生の活用状況 |
福利厚生を活用する目的と効果 |
・福利厚生制度実施の目的 ・福利厚生制度実施による効果の実感 |
福利厚生制度の運営 |
・従業員ニーズの把握の取り組み ・従業員の福利厚生ニーズ把握の状況 ・福利厚生の企画・運営に関しての効果測定の実施 ・福利厚生制度の水準の認識 ・多様化する従業員への対応 |
福利厚生制度の導入状況 |
・現在実施している福利厚生制度の状況 ・福利厚生制度の具体的な運用 ・直近に導入した福利厚生制度 ・非正規従業員が利用できる制度の割合 |
福利厚生への考え |
・経営層の福利厚生に対する考え方 ・担当者の福利厚生に対する考え方 |
ハタラクエールの応募には、企業の福利厚生に関する詳細な情報が必要です。応募用紙には、福利厚生の内容や運用状況、従業員の健康支援やワークライフバランスの取り組み、経営者の姿勢などを記載する必要があります。また、福利厚生の現状や課題、改善点についても具体的に記載し、従業員の健康と福利厚生の充実に対する企業の姿勢を示すことが重要です。
主な評価ポイントは、以下の視点に基づいて行われます。
これらの項目に基づき、企業の福利厚生が従業員にとってどれだけ効果的か、またその制度が経営にどのように貢献しているかが審査されます。
ハタラクエールの受賞企業は、働きやすい職場環境を実現し、従業員のエンゲージメントや生産性を高める優れた取り組みを行っています。
今回は、受賞企業の具体例を3社紹介します。
イケア・ジャパンは、2022年から2年連続で「福利厚生推進法人」として認証されました。同社は、従業員の働きやすさと健康を重視し、スウェーデンと日本の教育理念が融合した保育施設「DAGIS(ダーギス)」や入社当日から自社製品を15%割引で購入できる「コワーカー割引制度」など、特に子育て支援や働く環境の改善に積極的に取り組んでいます。また、従業員の多様なニーズに応じて福利厚生を改善するため、定期的にアンケートや担当者への聞き取りを実施しており、経営者や担当者が人事戦略を支える手段として深く認識している点などが高く評価されました。
コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社は、福利厚生制度の利用状況が高く、非正規従業員にも同様の福利厚生を提供している点が評価され、2023年に「福利厚生推進法人」として認証されました。同社は、健康支援に特化したカフェテリアプランを導入しており、従業員が健康増進グッズの購入や人間ドック受診費用にポイントを活用できる制度を提供しています。また、会社が費用補助を行う懇親会やレクリエーションを通じて職場コミュニケーションを促進する制度、定年後の人生を充実させるためのセカンドライフセミナー、さらにキャリアアップ支援や再雇用制度など、幅広い魅力的な福利厚生が整備されています
中外炉工業株式会社は、2022年から2年連続で「福利厚生推進法人」として認証され、2024年には「優良福利厚生法人」を受賞しています。福利厚生制度を単なる従業員支援ではなく、人的資本への投資と捉え、制度の創設や拡充に前向きに取り組んでいる点が高く評価されています。社員間の交流を促進する取り組みも豊富で、ホテルのワンフロアを貸し切って行うファミリーカーニバルや、京セラドーム大阪を貸し切って開催される大運動会、四半期交流会やレクリエーション費用補助制度など、従業員同士の親睦を深めるさまざまな催しが特徴です。
1962年に当時の経営者の考えから、国内企業として初めて、今となっては当たり前になっている「完全週休2日制」を導入しています。
ハタラクエール認証制度の概要や実施効果、具体的な受賞企業の事例を通して、福利厚生の充実が企業にもたらすメリットについて解説しました。福利厚生は従業員の働きやすさや健康を支え、企業のブランド力や採用力を高めるだけでなく、従業員のモチベーション向上にもつながります。また、健康経営を推進することで、企業の社会的評価も向上します。
最近では、求職者が福利厚生を重視する傾向が強まっており、優秀な人材を確保するためにも福利厚生の充実は欠かせません。
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