健康診断は会社の義務?種類・費用・対象者に加え 受診率アップのためにできることを解説

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企業や組織が実施する、従業員へ向けた健康診断にはさまざまな種類があります。また健康経営に取り組む中で「健康診断受診100%」を健康宣言に取り入れている企業も多くみられます。

健全な企業運営を行うためにも、健康診断はどういったタイミングで、どの対象者に向け行うか?など理解しておく必要があります。




目次

  1. 健康診断は会社の義務?
    1. 1.1 健康診断の実施は法律で義務化
    2. 1.2 健康診断を実施しないと罰則
    3. 1.3 定期健康診断の実施率・受診率の実態
  2. 健康診断の費用
  3. 健康診断の費用負担は会社が行う?
    1. 3.1 健康診断の費用は原則会社が全額負担
    2. 3.2 再検査費用は基本的には従業員の自己負担 経費になるか迷いやすい健康診断のケース
  4. 会社が+αをサポートする
    1. 4.1 カフェテリアプラン
    2. 4.2 福利厚生パッケージサービス
  5. 健康診断の2つの種類
    1. 5.1 一般健康診断
    2. 5.2 特殊健康診断
  6. 健康診断の対象者と実施時期
    1. 6.1 雇入時の健康診断
    2. 6.2 定期健康診断
  7. 健康診断の検査項目
  8. 健康診断の結果の保管
    1. 8.1 定期健康診断の結果は5年間保存
    2. 8.2 二次健康診断の結果も可能であれば保存
    3. 8.3 健康診断の結果を見るのは本人のみ
  9. 特定健康診査・特定保健指導とは
    1. 9.1 特定健康診断
    2. 9.2 特定保健指導
  10. 受診率を高め健康経営につなげる方法とは
    1. 10.1 健診結果を健康経営につなげる
  11. まとめ

1.健康診断は会社の義務?

企業や組織は、健全な企業運営を行うためにも、従業員の勤務状態・業務内容に合わせた健康診断を実施し、心身の健康を守る義務があります。




1.1 健康診断の実施は法律で義務化

企業や組織は労働安全衛生法第66条に基づき、労働者に対して、医師による健康診断を実施しなければなりません。

いわゆる法定健診ともいわれるように、法律で定められた義務になります。
厚生労働省では、健康診断について以下のように定めています。

事業者は、労働安全衛生法第66条に基づき、労働者に対して、医師による健康診断を実施しなければなりません。また、労働者は、事業者が行う健康診断を受けなければなりません。

引用:労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう~労働者の健康確保のために~|厚生労働省



1.2 健康診断を実施しないと罰則



労働安全衛生法第120条1項に「五十万円以下の罰金に処する」とあり、罰則が設けられています。
さらに、労働者は会社が実施する健康診断を受けなければなりません。
ただし、労働者が会社の指定した医師や医療機関以外の健康診断を受けて、結果を提出しても問題ありません。労働安全衛生法によって労働者には、医師を選択する自由が与えられているからです。
なお、労働者がかかりつけの医師による健康診断を希望した場合、特別な理由がない限り、会社はその申し出に応じなければなりません。



1.3 定期健康診断の実施率・受診率の実態



会社側の健康診断の実施と労働者の受診は義務であるため、実施率及び受診率は100%となるはずです。しかし、多くの理由から100%を達成できない実態があります。ここからは、定期健康診断の実施率と受診率の実態について、解説します。

参考:平成24年 労働者健康状況調査の概況|厚生労働省



事業主側

健康診断に取り組んだ会社の割合を「実施率」と呼びます。会社の規模が大きくなればなるほど、健康診断の実施率は高い傾向にあります。平成24年(2012年)の調査では、従業員が500人以上の会社では実施率100%ですが、従業員が10~29人の会社は実施率89.4%という数字が出ています。
会社側が健康診断に取り組まない理由としては「健康診断を実施する費用がない」「実施する時間がない」「健康診断の必要性を感じない」などの理由が考えられます。
しかし、いかなる理由があっても、会社は労働者に対して健康診断を実施しなければなりません。なぜなら、健康診断は労働者の健康を守り、会社の成長に欠かせない仕事のパフォーマンスをサポートするからです。


労働者側

健康診断を受けた労働者の割合を「受診率」と呼びます。実施率同様、会社の規模が大きくなればなるほど、健康診断の受診率は高い傾向にあります。平成24年(2012年)の「労働安全衛生特別調査(労働者健康状況調査)」では、従業員が5000人以上の会社であれば受診率は87.8%、従業員が10~29人の会社は実施率77.0%という数字が出ています。
せっかく会社が健康診断を実施しても、面倒くさがって受診しない労働者も多い傾向です。
「仕事が忙しく時間が取れない」「病気を知るのが怖い」などの理由で医療機関への受診を拒む労働者もいます。
健康管理を会社が推奨しても労働者が参加しないのであれば、制度の意味がありません。労働者の足を健康診断に向かせるために、会社側で対策を行いましょう。




2.健康診断の費用

健康診断は、法律により企業が従業員に対して実施することが義務付けられています。この診断にかかる費用は通常、企業が負担します。ただし、企業が負担するのは法律で定められた標準的な項目に限定されており、それ以外のオプション検査項目については従業員が自己負担する場合もあります。

また、健康診断そのものは保険適用外の自由診療扱いとなります。そのため、診断費用は医療機関や地域によって異なりますが、一般的に一人当たりの費用は5,000円から15,000円程度が相場となっています。


※出典元:株式会社ROBOTPAYMENT 「健康診断費用は法人に請求できる?福利厚生費になる場合・ならない場合の違いとは」



 

3.健康診断の費用負担は会社が行う?



3-1. 健康診断の費用は原則会社が全額負担

健康診断は福利厚生費として計上できるため、原則は会社が全額負担するかたちとなっています。

しかし、健康診断以外の検査費用は原則、従業員が負担します。以下で詳しく解説いたします。

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3-2. 再検査費用は基本的には従業員の自己負担 経費になるか迷いやすい健康診断のケース

 
・人間ドック費用

人間ドックは通常、法律で定められた項目に加えて、さまざまな追加検査を含んでいます。そのため、費用は従業員が自己負担するということが一般的です。また、人間ドックの費用は一般的に高額であるため、福利厚生費として「常識範囲内」と見なされる額を超えるケースが多く、自費での支払いが求められることがほとんどです。

 

同様に、オプション検査も法定範囲外の検査項目に該当するため、従業員が自己負担することが求められます。これらの検査を受ける際には、自己負担額についてあらかじめ確認しておくとよいでしょう。


※出典元:Medical DOC「人間ドックの費用と相場について解説!医療補助についてもご紹介」


・再検査となった場合の費用

健康診断の結果に問題が見つかった場合、その後の再検査は基本的に従業員の自己負担となることが一般的です。企業としては、費用の負担はしないものの、再検査が必要な従業員に対する配慮が求められます。具体的には、再検査の日に有給休暇を取得しやすくする、または業務スケジュールを調整するなどのサポートが考えられます。

 

一方で、特殊健康診断(「健康診断の2つの種類」の項で解説)で異常が認められた場合には、再検査を受けることが法的に義務付けられています。この再検査の費用は企業が負担することになりますので、注意が必要です。

 

・常識の範囲外の高額な費用

健康診断の費用が高額である場合、それを福利厚生費として計上することは難しくなります。一般的な健康診断の費用を大きく超える場合は、特に注意が必要です。費用の上限については法的に具体的な規定はありませんが、常識的な範囲を超えた金額での処理は問題となる可能性があります。

 

不安な場合は税理士や専門家に相談して、その費用を福利厚生費として扱うのか、あるいは給与とみなすのかを確認することが重要です。

 

4.会社が+αをサポートする

前述のとおり、通常、健康診断の基本的な費用は企業が負担しますが、これは法的に定められた標準的な項目に限られます。一方で、従業員が個別に選択するオプション項目の費用については自己負担となる場合が多いです。

 

しかし、福利厚生制度として、基本的な健康診断に加えて、従業員が選んだオプション検査項目の費用を補填する仕組みを導入している企業もあります。これにより、従業員は選択肢を広げることができ、より包括的な健康管理を受けられるようになります。

 

ここでは、健康診断の費用を補填する以下の2つの事例を紹介します。

 

 

4-1. カフェテリアプラン

 

カフェテリアプランとは、従業員が福利厚生のメニューから自分に合ったものを選べる制度です。一定額のポイントが支給され、そのポイントを用いて好きなサービスを利用できます。これにより、個々のニーズに対応した柔軟な福利厚生が実現します。

 

例えば、従業員が人間ドックや予防接種などの自己負担となるメニューの申し込みをしてから受診することで、保有ポイントを利用して、その分の費用を補填することが可能です。他にも、受診した際に費用を立て替えて支払い、その領収書や証明書をもって申請することで、利用するポイント分の金額が補助金として給与加算されるといったケースも挙げられます。 ポイント利用や費用補填の仕組みは、お勤めの企業・加入している健康保険組合によってさまざまであるため、あらかじめ確認しておく必要があります。

 

以上のような健康系のメニューを含んだカフェテリアプランを運営している会社もあります。


※出典元:Medical DOC「人間ドックの費用と相場について解説!医療補助についてもご紹介」

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4-2. 福利厚生パッケージサービス

福利厚生パッケージサービスとは、福利厚生メニューを割引された会員価格で従業員に提供する制度です。これには旅行、健康増進、介護や育児などが含まれ、従業員は自分のニーズに合わせて利用できます。
パッケージサービスとして設定されているメニューには人間ドックやがん検診などがあり、これらのメニューを通常料金よりも割引価格で受診することができます。
このように、会社が導入している福利厚生制度も上手く活用することをおすすめします。


※出典元:株式会社イーウェル「企業HP WELBOX」


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5.健康診断の2つの種類

健康診断には大きく分けると2種類あります。2種類とも従業員の健康を守るのが目的ですが、対象者や検査項目などが異なります。

 

 

5-1. 一般健康診断

 

すべての企業や組織が、条件を満たす従業員へ向け実施を行う健康診断です。

 

※安衛則=労働安全衛生規則



「雇入時の健康診断」と「定期健康診断」は多くの企業で実施すべき健康診断となります。この2つの健康診断については、次の項目で対象者・実施時期など詳細を説明したします。

 

「特定業務従事者の健康診断」は労働安全衛生規則第13条第1項第2号(※1)に掲げる業務(よく謳われるのが深夜業務)に常時従事する従業員がその業務へ配置替えの際と、6か月以内ごとに行わなくてはならない健康診断となり、「海外派遣労働者の健康診断」は海外へ6か月以上派遣する際に、渡航前と帰国後に行う健康診断になります。

 

※1:労働安全衛生規則第13条第1項第2号に揚げる業務

 

引用:労働安全衛生規則第43条、44条、45条|e-Gov
労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう~労働者の健康確保のために~|厚生労働省

 

 

5-2. 特殊健康診断

 

法律で定められた有害な業務に常時従事する従業員に対して実施する健康診断です。

 

 

これら特殊健康診断は常時従事する従業員に対し、原則として、雇入れ時、配置替えの際及び6か月以内ごとに行わなくてはなりません。

 

これら以外にも、じん肺健診や歯科医師による健診があります。じん肺健診とは、砂ぼこりや金属の粒などを吸い込むことで、体に異常をきたしていないかを確認する健診です。じん肺健診は、作業環境測定の管理区分に応じて、1~3年以内ごとに1回の実施が必要です。じん肺健診の対象者は「常時粉じん作業に従事する労働者及び従事したことのある管理2または管理3に該当する労働者」です。「管理2」や「管理3」とは、じん肺の進行を表す指標であり、数字が大きいほど進行していることを意味します。
歯科医師による健診は、塩酸や硝酸など、歯またはその支持組織に有害な物のガスを発散する場所で業務に従事する労働者が対象です。

 

特殊健康診断は業務ごとに検査内容が違います。そのため実施については最寄りの都道府県労働局・労働基準監督署に詳細を確認するとよいでしょう。

参考:労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう~労働者の健康確保のために~|厚生労働省


充実した福利厚生を目指すなら「WELBOX」

介護・育児・自己啓発・健康増進・旅行やエンターテイメントなど、多彩なメニューがパッケージとなっている福利厚生サービスです。
従業員のライフスタイル・ライフステージに応じて、メニューを選択しご利用いただくことが可能です。

 

6.健康診断の対象者と実施時期

多くの企業や組織が必ず実施を行う「雇入時の健康診断」と「定期健康診断」について、対象者と実施時期を確認しましょう。

 

役員・労働者の家族・配偶者も対象?

会社が健康診断を行う対象は、労働者のみです。そのため、会社の健康診断は、労働者の家族や配偶者は対象となりません。会社は労働者の家族に対して責任を持つ必要はないため、家族や配偶者を健康診断の対象としなくても、罰則に該当しません。また、役員については、その業務内容によって異なります。役員が事業に従事する可能性がある場合は、その役員も健康診断を受診する必要があります。

 

6-1. 雇入時の健康診断

 

安衛則第43条では企業や組織は、常時使用する従業員を雇い入れるときは、従業員に対し、医師による健康診断を行わなければならないと定められています。

 

「常時使用する従業員」が対象者になりますが、正社員はもちろん、パート・アルバイト従業員も以下の通達(※)で該当する場合は対象者となります。

※平成19年10月1日基発第1001016号通達



  1. 期間の定めのない契約により使用される者であること。 なお、期間の定めのある契約により使用される者の場合は、1年以上使用されることが予定されている者、及び更新により1年以上使用されている者。
    (なお、特定業務従事者健診<安衛則第45条の健康診断>の対象となる者の雇入時健康診断については、6カ月以上使用されることが予定され、又は更新により6カ月以上使用されている者)
  2. その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分3以上であること。



上記1と2のどちらも満たす場合、常時使用する労働者となりますが、上記の2に該当しない場合であっても、上記の1に該当し、1週間の労働時間数が当該事業場において、同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の概ね2分の1以上である者に対しても、一般健康診断を実施するのが望ましいとされています。

 

なお、労働者派遣事業法に基づく派遣社員についての一般健康診断は、派遣元の企業や組織で実施し、有害業務従事労働者についての健康診断は派遣先の企業、組織で実施することとなります。

 

※出典元:厚生労働省東京労働局 よくあるご質問「一般健康診断では常時使用する労働者が対象になるとのことですが、パート労働者の取り扱いはどのようになりますか?」


実施時期については明確な定めはありませんが、通達(昭23.1.16基発第83号、昭33.2.13基発第90号)では「雇入れの際とは、雇入れの直前又は直後をいうこと」と記述があります。

 

また安衛則第43条で「ただし、医師による健康診断を受けた後、3月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない。」とあり、雇用3カ月以内の検査項目を網羅した検査結果を従業員が提出した場合は健診実施を省略できるため、概ね3カ月以内に雇入れ健康診断を実施することが適切と考えられています。


6-2. 定期健康診断

 

安衛則第44条では企業や組織は、常時使用する従業員に対し、一年以内ごとに一回、医師による健康診断を行わなければならないとされております。

 

対象者は「雇入れ健康診断」と同じ「常時使用する従業員」となります。
実施時期については、1年以内ごとに一回とされております。

 

また「雇入れ健康診断」と検査項目がほぼ同じの為、該当年度に雇入れ健康診断を実施している従業員は、こちらの定期健康診断は省略することができます。



 

7.健康診断の検査項目

前項でも記載しましたが「雇入時の健康診断」と「定期健康診断」の検査項目はほぼ同じです。
但し、「定期健康診断」の一部検査項目は医師が必要でないと認めるときは、省略することができます。


検査項目

雇入れ健康診断

定期健康診断

診察

既往歴及び業務歴の調査

自覚症状及び他覚症状の有無の検査

身体測定等

身長

体重

腹囲

血圧

視力

聴力検査

オージオメータ(10004000Hz

胸部検査

胸部X線検査

喀痰検査

 

貧血検査

赤血球(RBC)

血色素(Hb

肝機能検査

GOT(AST

GPT(ALT

γ-GTP(GGT)

血中脂質検査

LDLコレステロール

HDLコレステロール

中性脂肪(TG

血糖検査

空腹時血糖(BS)もしくは随時血糖(BS)もしくは糖化ヘモグロビン(HbA1c)のいずれか1つ

尿検査

尿糖(US)

尿蛋白

血糖検査



※出典元:厚生労働省「安全・衛生」


●…必須検査項目
△…医師が必要でないと認めるときは省略することが出来る検査項目
  なお、「医師が必要でないと認める」とは、自覚症状及び他覚症状、既往歴等を勘案し、
  医師が総合的に判断することをいいます。
  したがって、以下の省略基準については、年齢等により
  機械的に決定されるものではないことに留意して下さい。


定期健康診断(安衛則第44条)における健康診断の項目の省略基準

項目

医師が必要でないと認める時に左記の
健康診断項目を省略できる者

身長

20歳以上の者

腹囲

1. 40歳未満(35歳を除く)の者

2. 妊娠中の女性その他の者であって、その腹囲が内蔵脂肪の蓄積を反映していないと診断された者

3. BMIが20未満である者

4. BMIが22未満であって、自ら腹囲を測定し、その値を申告した者

胸部X線検査

40歳未満のうち、次のいずれにも該当しない者

1. 5歳毎の節目年齢(20歳、25歳、30歳及び35歳)の者

2. 感染症法で結核に係る定期の健康診断の対象とされている施設等で働いている者

3. じん肺法で3年に1回のじん肺健康診断の対象とされている者

喀痰検査

1. 胸部X線検査を省略された者

2. 胸部X線検査によって病変の発券されない者又は胸部X線検査によって結核発病のおそれがないと診断された者

貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査、血糖検査、心電図検査

35歳未満の者及び3639歳の者



出典:厚生労働省「安全・衛生」



 

8.健康診断の結果の保管


検査結果の保管には従業員本人の承諾が必要のため、就業規則の中に「健康診断の受診」と「診断結果の保管」に関する内容を含めておき、従業員にあらかじめ周知しておくとよいでしょう。

また健康診断の内容は機微な個人情報となるため、情報が漏洩しないよう適切な保管が必要です。



8.1 定期健康診断の結果は5年間保存

労働基準法第109条では、企業や組織は、従業員の名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を5年間保存しなければならないとあります。健康診断の結果もこれに含まれるため、保管期間は5年間となります。







8.2 二次健康診断の結果も可能であれば保存

二次健康診断の結果も可能であれば保存し、従業員の健康状態を経年で確認できるとよいでしょう。



8.3 健康診断の結果を見るのは本人のみ

労働安全衛生法66条の5では、医師又は歯科医師の意見を勘案し、従業員の実情を考慮して、就業場所の変更や業務の転換、労働時間の短縮など適切な措置を講じなければなりません。しかし個人情報保護法の観点から言うと、企業は本人の承諾なく検査結果を見ることができません。

労働安全衛生法上、会社は従業員の健診結果を把握することが前提なため、健康診断を受診した時点でその結果を会社が把握することにも同意が得られた、と考えてよいでしょう。

労働安全衛生法で規定された検査項目については、その結果を会社が把握し、適切な措置を講じる義務があると考えられます。



 

9.特定健康診査・特定保健指導とは

1年に1度、特定健康診査を受診して、生活習慣の改善が必要と判断された場合は特定保健指導を受ける必要があります。

厚生労働省によると、「平成20年4月より、内臓脂肪型自慢に着目した特定健康診査・特定保健指導の実施が医療保険者(国民健康保険・被用者保険)に義務づけられました。特定健康診査・特定保健指導は40歳以上75歳未満の被保険者・被扶養者が対象となります。」と記載されております。
生活習慣病の早期発見・予防をして健康維持を図るために、任意でも受診することをおすすめします。


※出典元:厚生労働省 「健診・保健指導のあり方」



9-1. 特定健康診断

特定健康診査とは、40歳から74歳の人を対象としてメタボリックシンドロームに焦点を当てた健康診断です。
メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪型肥満(お腹周りの内臓に脂肪が蓄積した状態)が蓄積すると、高血圧や糖尿病、脂質異常症を引き起こしやすくなります。これらの症状が内蔵脂肪型肥満と合わせて発症するほど、動脈硬化が進行するリスクが高まるという考え方です。



9-2. 特定保健指導

特定健康診査で生活習慣病のリスクが高く、生活習慣の改善によって予防効果が見込まれる方には、保健師や管理栄養士などの専門スタッフが生活習慣の見直しをサポートします。

株式会社イーウェルでは、ご利用者に寄り添った生活習慣改善のサポートをしており、特定保健指導サービスとして参加者の増加に寄与しています。
健診事務代行と連携したワンストップサービスにより、担当者の工数削減にも貢献しています。
このようなアウトソーシングを活用して、従業員の健康予防対策をしていきましょう。

※出典元:厚生労働省 「特定健診・特定保健指導について」


※出典元:株式会社イーウェル 「企業HP 特定保健指導サービス」



 

10.受診率を高め健康経営につなげる方法とは




健康診断を受けないままでいると、健康を損なうリスクが高くなります。労働者の就労自体が困難になりかねないため、必ず受診を促しましょう。しかし、健康診断の受診率を向上させるためには、どのような対策があるのでしょうか。ここでは、健康診断の受診率を向上させるための主な対策を3つ紹介します。

 

①健康診断を受診しやすい環境を整える

多忙のため健康診断を行わない労働者には、医療機関を受診させる十分な時間の確保が大切です。労働者の仕事量を把握して、繁忙期を避けて健康診断を実施したり、残業時間の見直しをしたりすることが必要でしょう。これにより「忙しくて健康診断を受けられない」という労働者を減らす効果が見込めます。


②健康診断の受信の義務を周知する

労働者の中には「健康診断を受けるのは任意」と思っている人も少なくありません。労働者に「健康診断を受けることは義務である」と説明することが大切です。


③病気を知るのが怖い

病気を知るのが怖い労働者には、早期発見及び早期治療の大切さを説明します。健康診断を受診して、病気を早めに発見すると、医療費や治療期間の短縮につながるなどのメリットがあります。



10-1. 健診結果を健康経営につなげる

健康経営とは、従業員等の健康保持・増進の取組が、将来的に収益性等を高める投資であるとの考えのもと、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践することです。健康診断の結果を有効活用することにより、従業員の健康習慣の形成に大きく貢献し、医療費の削減にも寄与します。ただし、従業員が単に健康診断を受けるだけでは、健康経営を推進するには不十分です。企業が積極的に介入し、健康診断後も従業員の健康維持を支援することが求められます。
ここでは健康診断の結果をどのようにして健康経営の施策に結びつけるか、そのポイントについて解説します。


①健康診断結果のチェック方法を伝える

健康診断の結果を見て、数値が基準から外れていれば健康意識は高まりますが、結果を詳細に確認している人は少ないのではないでしょうか。全体の概要には目を通すものの、具体的な数値にはあまり関心を持たないことが多く、その関心はひと月程度で低下すると予想されます。しかし、健康診断の結果を正しく理解することは、自分の健康状態を把握し、早期に問題を察知して適切な対策を講じるためには非常に重要です。結果をきちんと理解することで、微細な異常に気づき、生活習慣の改善を図るモチベーションが高まります。異常が軽微であっても、その重要性を認識することで、健康改善の意識が芽生えるでしょう。
そのためにも健康診断結果はチェック方法を細かく伝え、従業員が自身の健康状態を具体的に理解してもらう必要があります。重要性を理解することで、生活習慣などの改善を促すことが期待できます。例えば、従業員が健康診断の結果を受け取る頃に、会社のイントラネットなどに健康診断結果のチェック方法を記載することで、従業員の結果チェックを促すことができます。あわせて、自社独自の施策を周知することで、従業員の健康意識を継続させることも期待できます。
また、施策実施や結果チェックを促すことに長けたツールを使用するのも、工数削減や確実な実施を図るうえでは非常に大切です。例えば、弊社イーウェルが提供する健康管理ツール「KENPOS」では、健康診断結果をスマホやブラウザ上で視覚的に閲覧することができます。従業員一人ひとりの健康診断結果に基づいた改善アドバイスの提供や健康習慣の構築を促すことで、会社全体の健康意識を向上させることができるのも特長です。





②健康についての不安を話せる場を作る

軽い頭痛のような少しの不調であっても、不安に陥る要因となることが多くあります。そのため、少しの不調でも相談できる場を作ることにより、従業員の心理的安全性を高めることができます。

「ヤフー株式会社」では、グッドコンディション推進室といった部署を設置し、健康についての社内相談窓口としています。健康に関する相談は、メールや対面で看護師と行うことができます。その後、必要に応じて産業医への相談を取り次ぐこともあります。また、上司と部下が週に1度の面談の機会を設ける「1on1」制度があるため、上司へ健康面について相談できるだけでなく、上司が体調の変化に気づき、産業保健スタッフへ連携する事例も多いようです。

参考:ヤフー株式会社(東京都千代田区):職場のメンタルヘルス対策の取組事例|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト



また、全国に「モスバーガー」を展開する 「株式会社モスフードサービス」では「健康相談室」を設置しており、保健師が日頃の心身の悩みや健康診断の結果に関わること、また少しでも体調が良くない時などの相談対応をしています。従業員へは相談対応の場所と時間を知らせ、いつでも自由に相談できる仕組みとなっています。「健康相談室」は人事部門とは独立した窓口として運営を行っています。また、外部EAP機関による電話相談窓口も設置しており、従業員は社外の専門家へも気軽に相談を行うことができます。

参考:株式会社モスフードサービス(東京都品川区):職場のメンタルヘルス対策の取組事例|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト



ただし、このような窓口を一般的な企業が設置するのには非常に費用や手間がかかり、結果として「導入したくてもできない」といった環境になりがちです。こうした場合には、外注する(=アウトソーシングする)ことも選択肢のひとつとして挙げられます。弊社イーウェルの福利厚生パッケージサービス「WELBOX」には、「WELBOX健康チャンネル」といった24時間365日健康について電話で専門家に相談することができるメニューがあります。このような、従業員が自由に外部・第三者へ相談できる窓口を用意することで、従業員の不安を軽減させる効果が見込めます。


③医師のアドバイスを受けて施策を見直す

現在、健康経営促進のために行っている施策も、自社に適しているか 定期的に見直しや検討を継続して進めていく必要があります。他社が採用しているから、長年続けているからというだけでは、現在の貴社には適していない可能性があります。
また、健康診断の実施後には、産業医などの医師からのアドバイスを受けて、施策の見直しを行うことが必要です。産業医へ相談を行うと、健康診断結果を基に従業員の健康リスクを評価し、改善点をアドバイスしてくれます。医師からのフィードバックを活用することにより、健康診断の結果を健康経営の施策に直接結びつけることができます。具体的には、健康診断結果を集計して全体の健康傾向を把握し、そのデータを基に共通の健康リスクに対する対策を講じる、などの対応をとることができます。
このように、健康診断の結果を積極的に活用し、定期的な施策の見直しを行うことで、貴社の健康経営をさらに強化することができます。


④ごほうびツールやイベントで健康習慣構築のきっかけを作る

健康診断を受けることを奨励し、受診後にちょっとしたごほうびや従業員参加型のウォーキングイベントなどを設けることで、健康習慣の向上を促すことができます。
例えば、ウォーキングイベントのランキング上位者には特別なインセンティブを付与する、はじめて参加する人には目標達成で上乗せインセンティブを付与するなど、特別なごほうびを与えることで、健康に無関心だった層が健康問題に興味を持ち始め、短期間で健康意識を向上させることが期待できます。

出典:個人の予防・健康づくりに向けたインセンティブを提供する取組に係るガイドラインについて |報道発表資料|厚生労働省


出典:個人の予防・健康づくりに向けたインセンティブを提供する取組に係るガイドライン|厚生労働省



例えば、「三井住友銀行」では、健康保険組合において弊社イーウェルの健康促進ツール「KENPOS」を導入し、様々な健康促進施策を実施しています。その一例として「KENPOS」内でウォーキングキャンペーンを開催し、歩いた歩数に応じてポイントを付与する仕組みを採用しています。これにより、従業員が日常的に運動する動機付けとなり、健康維持の意識向上に貢献しています。

参考:健康経営|三井住友銀行



また弊社「イーウェル」では、「健康診断事後措置キャンペーン」を実施しています。このキャンペーンでは、健康診断の結果を基に従業員を健康状態に応じて階層別に分け、それぞれの階層に応じた行動目標を設定します。指定した行動を実施することでポイントが付与されます。結果として、昨年度健康診断後の精密検査受診率は、一昨年度と比べ8.8%上昇しました。

参考:イーウェルの健康経営|企業情報|ウェルビーイングな社会へ「イーウェル」



健診を受けた後に従業員が具体的な行動を実施するインセンティブを提供することは、長期的な健康習慣の構築を促します。自社にあった施策を組み合わせることにより、従業員の健康意識を全体的に底上げし、より健康的な職場環境を形成することが期待できます。
弊社イーウェルが提供している「データヘルス計画支援サービス」では健診データを用いて簡易的な分析から改善施策までのレポートを作成するだけでなく、事業所ごとの詳細分析やスコアリングレポートも作成いたします。貴社に適した具体的な実行支援策をご提案し、それらを実施した後の効果検証も行っているため、次年度以降の具体的な計画策定につなげることが可能です。

計画策定から実行の支援まで「データヘルス計画支援サービス」

コラボヘルス研究会をはじめとした分析ノウハウ・施策ノウハウをもって、 分析に基づくソリューションをご提案できます。

社内での課題分析や施策策定などでお悩みの際には、イーウェルにご相談いただければ、その解決に向けて徹底的にサポートが可能です。健康診断結果の活用方法についてお悩みがあれば、イーウェルの「データヘルス計画支援サービス」へお気軽にご相談ください。




11.まとめ

この記事では、会社が実施すべき健康診断の重要性について詳しく解説しました。
健康診断は、病気の早期発見及び早期治療に大いに役立ちます。病気を早めに発見すると、回復までの期間が短くなるメリットがあります。労働者が病気になると、休職や新たな人材確保などの問題も発生するため、定期的に健康診断を実施するようにしましょう。
また、労働者が健康診断を受けやすい環境作りも大切です。休みが取りやすかったり、業務を分担できるような体制を整えたりと、健診機関に出向く時間を確保できる配慮が必要といえます。
日常の業務に追われて、労働者の健康診断にまで手が回らない場合は、株式会社イーウェルの健康支援サービスがおすすめです。健診事務代行サービスでは、健康診断の手配から健診結果のデータ化までを一括で代行しています。全国の約3,000の健診機関とのつながりを活かした健診手配や、厳重なチェック体制で実施されるデータ化作業など、安心してご利用いただけるのが特徴です。お気軽にご相談ください。

業務の一括代行で受診率を向上「健診事務代行サービス」

全国約3,000*の健診機関とのコネクションを活かした健診手配、完全内製化され厳重なチェック体制で 実施されるデータ化作業など、安心してお任せいただけます。

著者情報

株式会社イーウェル ウェルナレ事務局

「人も、企業も、ウェルビーイングへ。」をテーマとして、企業の健康経営や福利厚生の支援を行う株式会社イーウェルが運営する、BtoB(人事総務向け)オウンドメディア「ウェルナレ」の編集部。
2021年7月にメディアリリース後、毎年60回以上、有名企業様とのコラボセミナーや官公庁の専門分野に特化した方を招いてのカンファレンス、大学教授による福利厚生勉強会の開催や専門家記事の掲載などを実施し、多くの方に好評いただいております。
人事部署や経営者が、会社のウェルビーイングを向上されるためのヒントを探して、日々活動しています。

運営会社:株式会社イーウェル

 

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