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従業員のインクルージョンを高めるリーダーシップ

産業保健とマインドフルネス

武蔵大学 経済学部 経営学科 教授
森永 雄太

多様な人材を活かすためには、インクルージョンを伴うことが重要だと考えられるようになってきました。インクルージョンを高めるために、どのような取り組みができるのでしょうか。今回は、インクルーシブ・リーダーシップについて紹介していきます。

 

インクルーシブ・リーダーシップは、21世紀に入ってから提唱されるようになってきた比較的新しい考え方です。職場における議論や意思決定に、多様な視点を取り込み、様々な意見を取り込んでいこうとする支持的なリーダーシップスタイルを指して用いられてきました。


加えて最近では、(前回のコラムでも紹介した通り)インクルージョンを所属したいという欲求と独自の価値を認めてもらいたいという欲求の2つを同時に満たすことだと整理する考え方に従った上で、インクルーシブ・リーダーシップを捉えようとする考え方が知られるようになってきました。具体的には以下の2つのタイプの行動が求められています。

1.メンバーがチームの一員として受け入れられていると感じられるようすること

これは単にこまめに声掛けをする、というような気づかいの話だけではありません。例えば、チーム全体の方針を決定する会議なのに、自分だけ出席を求められない場合には、自分はメンバーとして認められていないのだ、と思ってしまうかもしれません。


現実的には時間や場所の違い、などの制約があるかもしれませんが意思決定に全ての従業員が参加できるような工夫なども含みます。


また、リーダーは無意識のうちに、期待している一部の社員にだけ多く研修や学びの機会への参加を促しているかもしれません。その人の状況に合わせて能力開発の機会を公正に与えることが求められます。


変わりつつある日本の職場で特に気を付けたいのは、一体感を高めるための工夫です。リーダーが良かれと思ってとる行動が、かえって一部の人に疎外感を感じさせてしまうケースもありえます。


典型的な例としては、「飲みにケーション」が考えられます。夜遅くの宴会の席には、子育て中の社員は参加しづらいかもしれません。仕事の場から離れて、本音を語り合うこと、そのものが有意義であるにしても、多様なメンバーが参加しやすい工夫が求められるでしょう。また、管理者はチームの一体感を高めるための引き出しそのものも、従来よりもたくさん持っておく必要があるのかもしれません。

2.人それぞれの異なる貢献が歓迎されていると感じられるようにすること

ある研究会で組織論の先輩研究者が、「日本の組織では、まだまだ個人の事情を職場に持ち込んではいけない、というような雰囲気があるのではないか」というような発言をされたことがありました。


私は、まさにそのような雰囲気を打ち破っていくことがリーダーに求められていると思います。人にはそれぞれ異なる制約があるし、それぞれ異なる強みがあります。もしかしたらみなさんのチームのメンバーも、自分の制約を必死にひた隠しながら無理をする中で、自分の強みをも隠してしまっているかもしれないからです。


例えば、メンバーの中には、一歩踏み込んだ自分なりの工夫や提案ができるけれど、悪目立ちしたり、周囲から浮いてしまったりすることを恐れて、無難な意見にとどめてしまっている人がいるかもしれません。


そういったことがおきないように、異なる意見や考えを奨励し、その場にそぐわない提案についても感謝の気持ちを伝え、部分的に要素を取り入れていくような振る舞いも求められるでしょう。例えば組織開発では、このような点を強調されることが多いように思います。

 

いかがだったでしょうか。インクルーシブ・リーダーシップは、自分の言うとおりに周囲を動かそうとする専制的なリーダーではありません。複雑な環境で解決が難しい問題に立ち向かわなければならない局面で、職場のメンバーの能力をフル活用しようとする様々なリーダー行動を指しています。


皆さんもご自身や周囲の人のリーダーシップを振り返ってみてはいかがでしょうか。

Nembhard, I. M., & Edmondson, A. C. (2006). Making it safe: The effects of leader inclusiveness and professional status on psychological safety and improvement efforts in health care teams. Journal of Organizational Behavior: 27(7), 941-966.

この記事の講師

コーヒー

森永 雄太

武蔵大学経済学部経営学科 教授

略歴
神戸大学大学院経営学研究科博士後期課程修了。
博士(経営学)。

専門は組織行動論、経営管理論。

主要著作は『ウェルビーイング経営の考え方と進め方 - 健康経営の新展開 -』(労働新聞社)等。

2016年、健康経営を経営視点から取り組む企業横断研究会(HHHの会)で副座長を務める。
2019年日本労務学会研究奨励賞受賞。

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