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メンタルヘルス不調で、休職した従業員が『円滑に復職できる』ために~もしも休職者が出ても大丈夫、復職後安定して勤務し、従業員も会社もwin-winとなるためのポイント~

産業医
中原 亮

 

私は首都圏を中心に多くの企業の産業医や、産業保健コンサルティングをしていますが、皆さん休職・復職時の対応でお困りのことが多いです。

今回は、『円滑に復職』をするためのポイントを3つに絞ってお話ししたいと思います。

 

【ポイント1】:きちんと設計された就業規則があること
 休職・復職対応は、最終的に休職期間満了で自然退職となる、などの悲しい結末もあります。休職されていた従業員の方も生活がかかっていますので納得できないことがあれば訴訟になることもあります。

そのためにも、会社の中の法律のようなもの『就業規則』に基づいてお互いフェアに対応していくことが重要です。フェアに対応することが、お互いの納得感を醸成できます。

きちんと設計された就業規則を作るためには、社労士さんにお願いすることが良いと思います。
特に、厚労省のメンタルヘルスに関するポータルサイト『こころの耳』にもありますが、メンタルヘルス法務主任者をお持ちの社労士さんなら、過去の判例に対応した素晴らしい就業規則を作っていただけると思います。

 

【ポイント2】:早期の情報提供
 休職になった時、なるべく早期の段階でいつまで休職できるか、復職時のプロセスなどの復職時に必要な情報を提供するという事が重要です。

休職者は、自分が復職したいと思った時に、すぐに!明日にでも!復職できると思いがちです。いざ、復職したいとなった時に『実はこんなプロセスがあります。』とか、『あと1ヶ月で休職期間満了です。』となれば『聞いてないよ!』と感情的になってしまう方もおられます。
(そもそも休職復職は、就業規則に基づいて会社が命じることという前提を理解されていない方が多い!)

就業規則に基づいた休職復職システムの運用のもと、早めの情報提供が重要なのです。

そのためには、会社の上長、人事の方々がきちんと理解したうえで普段から周知徹底しておくことが大切です。

 

【ポイント3】:復職に必要な条件を明確に示す
 会社として、復職に必要な条件を明確に持っていたほうが、復職のプロセスの運用が楽にできます。その上で『復職判定会議』などで組織的に決定することが重要です。

自分の会社の大切な社員の復職の可否を主治医の判断だけ、産業医の判断だけ、直属の上長の判断だけ・・・と誰かに任せるのではなく、様々な情報を集めたうえで組織的に決断するのが会社側の人間も精神的にプレッシャーを感じなくて済みます。

復職を判断するため最低限、以下の情報が必要だと思います。

主治医の先生の『復職可能』の診断書
生活記録表(就業に準じた生活をしたうえで、最低2週間の安定した状態が保たれていること)
体調悪化の原因の検索
体調悪化に至らない予防方法を具体的に決める
体調悪化してしまったときの具体的対応を明確に決める


以下、それぞれについて解説します。

 

主治医の先生の『復職可能』の診断書
 休職者が、『もう大丈夫、働けます!』という言葉を信じてなんの評価もせず復職させ、すぐに再休職に至ることをよく見かけます。

あくまで、休職者は療養することが重要ですから、まずは主治医の先生の『復職可能』の診断書を貰うことがスタートとなります。ここから休職者に負荷をかけていくことになります。

療養というストレスが少ない状況で元気になったからといって、焦って職場というストレスフルな場所に戻ってもすぐに再休職ということがよくあります。

 

生活記録表
 主治医の先生の『復職可能』の診断書を貰ったら、まずは『生活記録表』をつけて頂きながら、睡眠が安定していること、朝起きたときの疲労感がないこと、日中就業時間内にリワークや、図書館などを利用してもらい、家の外で仕事に関する作業をできていることを確認します。

厚労省が作成した『心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き』にあるように職場復帰可否の判断基準を生活記録表をつけることで見える化し、ご本人にも、会社側にも現在の状態を事実として示すことが重要です。


■職場復帰可否の判断基準例
 ・職場復帰に対して十分な意欲を示していること
 ・通勤時間帯に一人で安全に通勤ができること
 ・会社が設定している勤務日に勤務時間の就労が継続して可能であること
 ・業務に必要な作業をこなすことができること
 ・作業等による疲労が翌日までに十分回復していること
 ・適切な睡眠覚醒リズムが整っていること、昼間の眠気がないこと
 ・業務遂行に必要な注意力、集中力が回復していること等

 業務に必要な作業をこなせるか、というところについては会社の上長さんの活躍が必要です。


例えば、私は生活記録表をつけて頂きながら上記の基準が2週間安定して満たすことを条件としていますが、図書館などで行う作業として、上長さんに仕事に関係する課題図書を何冊か出してもらい、復職の判定時にディスカッションしてどれだけ頭にはいっているか、論理的な思考ができるかなどを評価してもらいます。

体調悪化の原因の検索
体調悪化に至らない予防方法を具体的に決める
体調悪化してしまったときの具体的対応を明確に決める


そして最後、休職者になぜ体調不良になったのかを分析してもらい、対策を考えてもらいます。『自分で考える』というところが非常に重要です。自分と向き合うことをせずに復職しても、同じことを繰り返すことになります。自分で考えたからこそ復職後皆さん頑張れるのです。


プライベートの問題なのか(子育て、介護の問題だとしたら家族や公的機関の助けを検討します)、仕事の問題なら量の問題なのか、質の問題なのか・・・再休職とならないためにその原因と向き合うために新たなサポート体制をしくなど対策を打ちます。


そして、必ず休職者は、生活習慣(食事、睡眠、運動)の乱れ、嗜好品(タバコ、アルコール)などに関する癖があります。そういったものも具体的な作戦を立てて改善することで体調不良を予防します。

 

・例えば、運動します!などの抽象的なものはダメです。
毎週○曜日に何時から何時まで、○○公園を20分間走る。もし雨の場合は家で腹筋20回、腕立て20回する。といった非常に具体的なものを作っていただきます。人間は具体的な計画でないとなかなかできないものです。みずから能動的に作った計画を、見える化し進捗を見守ることによって安定した復職が可能となります。皆さん復職後も非常に輝いています!


上記のような、作戦をたてつつ、最悪の場合、また調子が悪くなった時の作戦も立てて頂きます。

【例】
 ・3日以上眠れなくなったら、上司にその旨伝えて有休をとる。そのとき必ず主治医を受診する。
 ・体調不良で突発休が増え、出勤日の8割出勤できなくなったら再休職を検討する。
などです。


上記の作戦立案、遂行の確認を、ご本人主導のもと、産業医ががっちりサポートし、上長、人事とも連携しておこなうことで非常に安定した復職
となります。

皆さん是非試してみてください。

この記事の講師

中原 亮

<略歴>

株式会社365tokyo 代表取締役 
産業医、メンタル法務主任者、日本麻酔科学会専門医
自分で経験していないことは、他人に指導できない!をモットーに現在自身で働き方改革、健康生活を実践中


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