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煙草~最近の知見から

日本医師会認定産業医
大多和威行

【はじめに】
 最近、「喫煙しない事」を採用の条件にする会社が増えています。

2010年、星野リゾートが採用情報のトップページで「あなたはタバコを吸いますか?」と問いかけ、「Yes」を選ぶと禁煙する事を約束しない限り募集要項のページに進めない構造になっており話題になりました。万病のもとであるタバコを吸う喫煙者は中長期的に高い確率で病気となりパフォーマンスが低下する事や、喫煙による離脱時間や受動喫煙の問題があるからだと思われます。また、タバコは定期健康診断事後の特定保健指導のレベル判定に影響を与えます。禁煙をし「積極的支援」から「動機づけ支援」に変わる事で特定保健指導にかかるコストの低減につながります。タバコは健康被害だけでなく、職場に与える経済的打撃も大きいのです。

 

【健康への影響】
 タバコは、癌や脳血管系疾患、心血管系疾患、肺疾患、糖尿病や歯科疾患との関連が確実とされているばかりでなく、最近では、メンタル疾患との関連も示唆されるようになりました。タバコはリラックスするためのものではなく、ニコチン中毒を紛らわせるだけで、心をも蝕みかねないもののようです。

 

【喫煙室の弊害】
 以前は喫煙室設置による分煙が進められていましたが、喫煙後45分程度は呼気中に有害物質が含まれるとの報告があり、喫煙室の設置は受動喫煙防止の役に立たない事が分かってきました。また、喫煙者が禁煙しようとする意欲を削ぐとも言われています。設置や維持に高額の費用がかかる上に効果の期待できない喫煙室は無用の長物のようです。

 

【電子タバコ、加熱式タバコ、ガムタバコ、水タバコについて】 
生涯発癌リスクの点では、ニコチン吸引機を1とした時に、紙巻きタバコは約2700倍、加熱式タバコは64倍、電子タバコは11倍というデータがあります。発癌性に関しては紙巻きタバコよりも電子タバコや加熱式タバコの方がましなのかもしれません。しかし、リスクがある事には変わりません。低減されたからといって、吸わなければ負わないリスクを負う必要はないと思います。更に電子タバコや加熱式タバコも循環器疾患に対するリスクが確認されているようです。

 

一方、ガムタバコは口や喉の癌のリスクを高めるようです。水タバコは心臓発作のリスクを高めたり、気道や肺への悪影響を及ぼすほか、電熱器を利用してシーシャを加熱すると肺の細胞への有害性が顕著に増加するとの報告もあるようです。

 また、電子タバコも、加熱式タバコも、水タバコも受動喫煙のリスクがあるようです。

 

【禁煙にあたって】
 禁煙するにあたって心掛けると良いとされる事は4つあるようです。食べ過ぎ飲みすぎを控えるなど「喫煙につながる行動パターンを改善」する事。喫煙器具や吸いたくなるシチュエーションを避けるなど「喫煙につながる環境を改善」する事。深呼吸や運動をするなど「タバコ以外のストレス対処法をみつける」事。「禁煙外来を受診する」事が挙げられます。最近はアプリを使った禁煙サポートの取り組みも進んでいるようです。

 

【最後に】
 喫煙に対する風当たりは強くなる一方。しかし、それは禁煙へのハードルが低くなっているともいえるのです。この機会にタバコをやめてみるのはいかがでしょうか。きっと、失った以上のものを得られると思いますよ。

<参考文献>

・第91回日本産業衛生学会講演集 シンポジウム2喫煙対策最前線
・たばこと健康に関する情報ページ(厚生労働省)
・Nakata, A. et al:Prev Med 46(5):451, 2008 [L20090910071]
・Breslau, N. et al.:Arch Gen Psychiatry 56(12):1141, 1999 [L20091016003]

この記事の講師

大多和 威行


<略歴>

医学博士 産業医 昭和大学兼任講師
「充実した人生の一部に楽しい仕事がある。」と思えるような職場作りを心掛けています。

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