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〜麻疹が沖縄で流行〜  いますぐ確認!企業の麻疹対策

産業医
穂積 桜

この記事で伝えたいこと

1:麻疹は非常に強い感染力があり、会社で一気に広がる可能性がある。

2:脳炎、肺炎などの合併症は死に至る危険も。 妊婦も流産早産のリスクが上がる。

3:流行地域へ行ったら、その後の風邪症状に注意!流行地域への渡航後に風邪症状が見られたら、“出社せず”に医療機関に“電話で”麻疹の可能性がある旨伝えてから指示を仰ぐこと。
根本対策はワクチン接種。

 

 3月末から沖縄で麻疹(はしか)の流行が話題になっています。麻疹は麻疹ウイルスによる急性の全身感染症です。

※麻疹患者の発生について(沖縄県) 

http://www.pref.okinawa.jp/site/hoken/chiikihoken/kekkaku/mashin.html

 

 今回の流行のきっかけはたった一人の台湾人旅行者でした。感染を知らずに観光地を回っている間に多くの人に広まり、4月21日現在で67名の感染が確認されています。

 

【非常に強い感染力!職場での拡大に注意】

 たった一人から短期間にここまで広まった理由は、強い感染力にあります。麻疹は空気感染で広まり、同じ部屋の中にいるだけで感染する可能性があります。2016年に関西空港の職員33名が麻疹に集団感染したニュースを覚えていらっしゃる方も多いかと思います。

後の調査では患者の大半で勤務場所・勤務時間・更衣室などが共通していたことが明らかとなりました。ワクチン接種をしていない、もしくは不十分で免疫がないとほぼ100%発症すると言われています。

 

【麻疹の症状】

 感染すると約10日後に発熱や咳といった風邪のような症状が現れます。その後39度を越す高熱と体幹部を中心とした赤い発疹が出現します。麻疹にかかってからの特別な治療法がなく、予防接種が一番の対策となります。

 

【怖い合併症】

 麻疹の3割に中耳炎などの合併症が起き、とくに脳炎や重い肺炎など後遺症の残る怖い合併症が知られています。約千人に1人が脳炎となり、また、先進国であっても約千人に1人が亡くなります。また妊娠中に麻疹にかかると流産や早産を起こす可能性が高くなります。

さらに、より稀ではありますが、麻疹感染後7〜10年を経て亜急性硬化性全脳炎という脳炎を発症することがあり、この発症者の大半は知能障害や運動機能障害が進行して数年以内に死に至ります。

麻疹感染者の半分は乳幼児や子供であり、将来に重い後遺症を残さないためにも、なるべく多くの人が予防接種を受け、感染拡大を防ぐことが大事です。

 

【予防接種について】

 麻疹ワクチン1回接種では95%の人が免疫を得られると言われています。5%の人は1回接種では不十分であるため、日本では1990年4月2日生まれ以降の人は現在に至るまで2回定期接種となっています。1978年から1990年4月1日生まれの人までは1回接種のみであったため28歳以上の人に免疫が不十分な人がいます。40歳以上では予防接種を受けなかったものの、自然感染して免疫を獲得している人が多いと言われています。

日本を含めたほとんどの先進国では、ワクチンの2回接種が行われ、麻疹排除を達成する国が増加しています。一方で依然として多数の患者の報告があるのは、アジアやアフリカ諸国です。

 


各国の麻しん報告数(2017年1月~6月)

 

<厚生労働省HPより>

http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/measles/index.html

 

【職場での対策】

 麻疹は春に流行します。 流行時期の出張や春休みやゴールデンウィークの旅行で上記の地域に行く人は、自分の麻疹ワクチン接種歴を確認してください。また、流行地域から帰国した場合、10日前後の潜伏機関を経て風邪症状が出現したら、“出社せず”に医療機関に“電話で”麻疹の可能性がある旨伝えてから指示を仰いでください。

今回沖縄で感染した方が埼玉から品川駅を経て新幹線で名古屋へ移動し、名古屋で感染が発覚したケースがありました。感染力が非常に強いため、会社、駅や交通機関などで多くの人に一気に感染が拡大する可能性があり非常に危険です。また、万が一出社していた社員が麻疹に感染していたことがわかった場合、当該社員と接触していた接触者も早期であればワクチンや免疫グロブリン製剤の投与で発症を予防できる可能性があります。一刻も早く、産業医へ連絡を取り、指示を仰いでください。

この記事の講師

穂積 桜


<略歴>

平成13年 札幌医科大学医学部卒業
同年    札幌医科大学付属病院神経精神科
平成15年 国立病院機構東京医療センター総合診療科・救命センター
平成17年 都立松沢病院精神科
平成20年 久喜すずのき病院精神科
平成24年 北里東洋医学総合研究所漢方診療部
平成26年 日本医師会認定産業医
平成27年 上海森茂診療所非常勤医師
平成28年 株式会社MEDICIO代表取締役

【資格】
日本医師会認定産業医
日本精神神経学会精神科専門医
精神保健指定医、臨床心理士
日本東洋医学会漢方専門医
メンタル漢方スペシャリスト

家族とともに海外駐在し、現地にて海外駐在員および家族のヘルスケアに従事した経験を生かし、海外派遣時の相談にも細やかに対応しています。
英語での産業医面接にも対応しています。
HSK 6級(中国語検定1級~準1級相当)保持

現在産業医として、株式会社WELCOM(DEAN&DELUCA)、かどや製油株式会社、株式会社リブセンス(敬称略、50音順)等、16社を担当

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