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その日中の眠気、大丈夫ですか?

株式会社みずほ産業医事務所
代表取締役 鈴木 瑞穂

 

日中の眠気は、誰にでも起こり得る症状かと思います。睡眠不足や疲労、体調不良など日常的なものから、中には放置すると危険な睡眠の病気が原因であることがあります。

 その代表として知られるのが、睡眠時無呼吸症候群(SAS; Sleep Apnea Syndromeです。

おそらく、バスや電車の運転手がSASによる眠気・居眠りで死傷事故を起こした事件でマスメディアにも大きく取り上げられ、その名前はお聞きになったことがあるかと思います。

 

医学的には、SASは10秒以上の無呼吸が一晩(7時間)の睡眠中に30回以上、もしくは1時間あたり5回以上生じることと定義されます。その重症度は通常一泊の検査入院にて、無呼吸低呼吸指数(AHIというスコアで評価します。

 睡眠中に無呼吸を繰り返すことで様々な合併症を起こし、特に40-50代の肥満体系の男性に多いのが特徴です。その他の因子としてアルコールの摂取や、あごが小さく首が短い、鼻や扁桃の形状、舌の大きさなど解剖学的因子が原因である場合もあります。

 診断をしっかりとつけることができれば治療が可能な病気ですが、問題は、「SASという病気だと本人が自覚していない」患者さんが多いことです。

 SASによって生じる日中の眠気は、判断力・集中力や作業効率の低下を引き起こします。

SASを含み睡眠障害によって生じる経済的損失は、3.5兆円とも言われています。労働災害や交通事故(営業職の運転、通勤含む)の原因ともなり得る、恐ろしい病気なのです。

 

更にいうとSASに罹患している成人は、高血圧、心筋梗塞、脳血管疾患、糖尿病などを引き起こす危険性を約3~4倍上昇させ、重度の場合は心血管疾患発症のリスクは約5倍にもなります。
寝ている間に無呼吸が起こると、身体の中の酸素が富士山の頂上に上ったのと同じくらいに下がります。重症のSASでは、一晩に500回以上富士山に登ったり降りたりを繰り返しているような状態ですので、循環器への影響は特に大きいのです。
薬剤抵抗性高血圧の患者さんにSASの治療を行ったところ、正常レベルまで回復したという報告はとても有名であり、その他にも各種生活習慣病を改善させたとの論文も複数あります。

 

実はこのSAS罹患の可能性を簡単に予測する方法が、いくつかあります。


例えばこんな症状に、心あたりはありませんか?

・日中の眠気
・夜間のいびき
・眠っている間に呼吸が止まったと指摘されたことがある
・熟睡感がない
・起床時の頭痛
・夜、何回もトイレで起きる
・肥満や糖尿病、高血圧である

 

  国際的にもSASの簡易スクリーニング検査として使用されている、ESS(エプワース眠気尺度)という質問票もインターネット上からも容易に入手することができます。8つの質問から得られた答えに応じて点数づけを行い、11/24点以上の方は病院での精査対象となります。

 医療機関での精査後、治療が必要と判断された場合はマウスピースCPAP(持続陽圧換気療法)などの治療器具は保険の対象範囲内です。

 まずは簡単なセルフチェックから、はじめてみませんか?

この記事の講師

鈴木 瑞穂 


<略歴>

滋賀医科大学卒業後、自治医科大学付属病院で内科プログラムを終了。その後放射線科を経て、現在、株式会社みずほ産業医事務所の代表取締役。
これまでの産業医担当企業は本田技研株式会社、テンプスタッフ株式会社、山崎製パン株式会社(敬称略)など。大事と考えていることは、人と人とのつながりを大切にする産業保健、有言実行。

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