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職場におけるアルコール問題について

(一社)ふくい産業医・産業保健研究所 代表理事
真﨑 竜邦

産業医を続けていると、時々、上司や同僚に連れられてアルコール依存が疑われる方がやってきます。

 
毎日のように酒臭く居眠りが多い、たびたび、体調不良を訴え休養室にこもってしまう、取引先に会わせられないなど、相談内容は様々ですが、何故もっと早くに連れてきていただけなかったのかと思うこともしばしばです。

実際、アルコール問題はメンタルヘルス不調をはじめとしたその他の問題に比べると、周囲の方の動きが鈍い気がします。
理由はいくつか考えられますが、周囲の方も皆、それなりにアルコールを飲み、自らも失敗した経験があるから、というのが一番大きな理由ではないかと思います。

 面談の際に依存症が疑われる方に体内にアルコールが残っている状態での就業が不適切であることを説明しても、「○○さん(同僚)だって、この間の(自部署の)飲み会の後、酒臭い状態で仕事に出てきていた。自分だけとやかく言われるのはおかしい!」と、開き直ったような発言をされることがあります。

確かにそれは事実なのでしょう。皆、程度の差はあれ、それなりの心当たりがあるため、その方に強く注意をすることができず、結局は周囲が見て見ぬふりをしたり、表面上だけの注意になったりしてしまうのだと思います。

とはいえ、そのまま放置していれば、身体を壊し、職を失い、家族との関係も破綻をきたすなど、いずれは大きなトラブルにつながってしまいます。
やはり何もかも失ってから初めてアルコール問題に取り組むのではなく、早期に本人の自覚を促し、専門医療機関を受診し治療を受けていただく必要があります。

こういった時こそ、産業医の出番だと思います。職場の中で、どのようなトラブルが起こっているか、就業能力の低下がどの程度あるのか、といった実際の職場状況を直接入手し、健康診断の結果を参考にしながら、医学的にアプローチできるのは産業医だけだからです。


もちろん、相手は依存症ですから、それだけでうまくはいきません。本人が飲酒による問題行動を起こした際には、かばったりせず、毅然とした適切な労務管理を行う必要があり、そこは人事担当者の出番です。
就業規則に沿って厳正に対処していくなかで、本人が「このままではまずい」と心底思ったときに初めて治療が始まるからです。

ダメな奴と決めつけるのではなく、人事担当者と産業医が二人三脚を組み、周囲の方の協力を得ながら、厳しい中にも優しさをもって、依存からの離脱を支援して頂ければと心から願っています。

この記事の講師

真﨑 竜邦


<略歴>

(一社)ふくい産業医・産業保健研究所 代表理事

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