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「聞く」とは?(ラインケアの二次予防)

平野井労働衛生コンサルタント事務所
平野井 啓一

皆さん、こんにちは。今回はラインケアの二次予防(早期に発見し、悪化させない)について、発見のポイント、聞くためのコツをお話させていただきます。

 

【発見のポイント】
 まずは部下の変化に気付く事からスタートします。どのような点に注目すれば良いかについては、図1をご参照ください。

大事なポイントは、その状態が「2週間から1か月持続」しているかどうかです。みなさんも気持ちが落ち込むことや眠れないことはありますよね。しかし、それがずっと続いていたらおかしいです。

「調子が悪そうだ」と感じる部下がいたら、その状態がどのくらい続いているか注目していただきたいと思います。

ここまでが基本です。ここからはやや発見しにくい事案についてです。

周りには普段と変わらず笑顔で接し、ある日突然会社に来なくなってしまった、というような方もたまにいらっしゃいます。このようなケースでは仕事のパフォーマンスに注目することが大事です。

メンタル不調は脳の機能障害を引き起こすので、単純作業は出来ても緻密な作業が出来なくなるケースが多く見られます。

 

 例えば、以前は出来ていたのに
・物を運搬する作業はすぐに出来ても、シフトを組む事がいつまでも出来ない。
・イエスノーで答えられる質問にはすぐにメールがくる。しかし作成に数日かかるプレゼン資料がいつまでも出来ない、もしくはコピー&ペーストのみ。


もともとある程度のパフォーマンスを出していた方が出来なくなっている事も重要な変化だと理解してください。

 

 【聞く】
 次のステップは話を聞いて情報を得る事です。人間はコンピュータのようにボタンを叩けば知りたい情報が全て出てくるものではありません。
メンタル不調の原因には言いづらい事も多々あり、本人から情報を得るには非常に繊細な技能が必要になります。
ラインケアの書籍等には、共感的態度で傾聴する、と書いております。共感的態度とはどのような事を意味するのでしょうか?
 

 

ここで次の事例について考えてみてください。(女性の方は男性の気持ちになって考えてください。)

 
 結婚15年目の男性管理職。夫婦関係は良くも悪くもない。日々残業で帰宅するのは平均23時くらい。休日も取引先とのゴルフ等であまり家にいることはない。そんな日々の中、今日は結婚記念日。早めに仕事を終えて家で食事をすることになっており、妻が準備をして待っている。ところが帰り際上司に「少しでいいから付き合え!」と言われ飲みに行くことになる。すぐに帰る予定がつい長居をしてしまい、結局いつもの時間に帰宅。家に帰ると真っ暗な部屋の中、冷め切った料理を目の前に妻がこちらを見ている。「いや~帰ろうとしたら部長に誘われちゃってさ~…」と言い訳しようとすると、妻が一喝

 
「仕事は私とどっちが大事なの!!!」


 さて、あなたはどう答えるでしょうか?
「仕事だよ!」とぶっきらぼうに答えて炎上させる方もいるでしょう。
「お前だよ(笑)」と言って収まると思ったら、「本当はそんな風に思っていないでしょ!思っていたら…」と責められ続けるかもしれません。
「どっちも大事だ」と言って、「そういう事を言いたいのじゃないのよ!」と切り返され、真っ白になる方もいると思います。

なかなか正解は難しいのですが、とある番組で女性100人にこの質問の理想的な回答について聞いてみると、一言「ごめんね」という答えが一番上位になりました。

なぜでしょう。

 それは「感情に共感している」からです。我々(特に男性は)言葉を字面通りに捉えてしまう傾向があります。しかしその言葉の奥にある感情に気付き、寄り添う事ができなければ、信頼を得られず真の情報を聞く事はできません。

 先ほどの事例では、妻はどちらが大事か回答を求めていた訳ではなく、家庭を省みない姿勢に対する怒りに気づいて欲しかったのです。

 

 部下に「仕事がうまくいかなくて苦しいのです」と言われたとき「だったらもっと早く相談しろよ」とか「どこがうまくいってないのか説明しろ」と切り出してしまうと、「この人には俺の辛さは分からないから、何を言ってもだめだな」となり、心を閉ざしてしまいます。初めに一言「そうか~辛かったな。」と言ってもらうだけで、部下は気持ちが楽になり、思っている事を話してくれるでしょう。また聞く姿勢も大事です。
 

 業務報告と同じように聞こうとする管理職の方もいらっしゃいますが、脳の機能が低下している状態では理路整然と話すのは難しいです。「だから結論はなんなのだ!」と言ってしまったらそこで終了です。

 

 これは実話ですが、「最近眠れないんです」と上司に相談したら、「寝なきゃいいじゃん!」と言われ、病状が悪化したという事例もあります。「そうか~眠れないと辛いよね、最近何かあったか?」と聞き返す余裕をもっていただきたいと思います。

  

  だいぶ脇道に逸れてしまいましたが、今回の内容がメンタル不調者の早期発見及び明るい家庭を築く一助となれば幸いです。


図1.新版メンタルヘルス
ワークブックより 
株式会社法研




この記事の講師

平野井 啓一


<略歴>

平成16年 秋田大学医学部医学科卒業後、宮城厚生協会 坂総合病院で初期研修終了

現在 西友、日本マクドナルド、ロフト等嘱託産業医
平野井労働衛生コンサルタント事務所代表
㈱メディカル・マジック・ジャパン代表取締役、マジシャン
楽しい労働衛生活動をモットーにマジック等笑いも取り入れた産業医活動を実践している。

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