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「マネージャーにとってのメンタルヘルス」

産業医
林 幹浩

 一時ほどではなくなったとも言われますが、やはり職場のメンタルヘルスの問題は重大です。労働者がメンタルを病んでしまうことが問題であることはもちろん、それにより上長・同僚など、現場にかかる負荷も相当なものです。組織全体のパフォーマンスに影響することは言うまでもありません。

メンタルヘルス対応をすることでご本人の回復があればよいのですが、そうでない場合もあり、悩ましいケースも多々あると思います。
 また、いよいよストレスチェック制度の義務化も始まりましたが、現場のマネージャーとしては部下の受検状況や職場診断が気になるといったこともあるのではないでしょうか。


 今回は現場のマネージャーが「メンタルヘルスの問題に向き合うとき」という視点で一つお話します。

 職場で労働者がメンタルを病んでしまったときは、医療機関を受診させたり、休業などの労務的対応を行って治癒を図ります。多くは人事部門や産業保健スタッフなどの専門家が対応することとなりますが、職場でのマネージャーのあり方が、当人の状態に大きく影響する場合も少なからずあります。

メンタル疾患により休業した労働者が職場復帰する際などがよい例でしょう。例えば、うつ病からの復職者に対する上司の不用意な「励まし」は、再発の最大要因であるとも言われます。


 自分は臨床心理士ではないのでどうしたらいいかわからないが、かといって腫れ物に触るようでは仕事にならないし、他の社員への影響もある・・・といったことに悩まれることもあるのではないでしょうか。
 専門的な知識を必要とする医学的な事柄や主治医との調整等については産業医など産業保健スタッフに任せるにせよ、日常業務をこなしてゆくためにはどうするのか。マネージャーに一定のスキルが必要とされていると言ってもよいと思います。


<マネージャーに必要なスキル>
①当該労働者が十分な強靭性を持っていない(ある心理的脆弱性を持っている)ことを受け入れる
②「スモールステップ法※1」、「共感と承認」などの基本的な業務上のかかわりの方法を知っており、また実践できる
③仕事をさせないことがよいことなのではなく、当人のワークエンゲージメントをどのように上げるかに留意した「仕事の資源※2」の整備を行うことが大切だと知っており、またそれが行える

※1 達成目標を決して高くないハードルにして一つ一つ進ませるやり方。順次の達成感が得られるとされる。
※2 仕事の自律性、職場の社会的支援、上司の公正な評価態度、専門技術やキャリア開発の機会など。ストレスチェックで評価される項目との関連も深い。




 こうしたスキルを身につけることは、マネージャー自身の成長と組織のパフォーマンス向上にとって有効なものとなる可能性が高く、実はこれらは、メンタルヘルス対応に限らない、いわゆるマネジメントスキルの一部であるとも言えます。
 例えば、職域の多くで、特に若い世代などに、社会的葛藤の経験が少なく心理的脆弱性が見られる者や、また旧来的な部下に対する父性的態度が「ハラスメント」と判断されるリスクが無視できなくなっている昨今は、むしろ普遍的マネジメントスキルといってもよいかもしれません。


 多くの企業で、こうした意味でのマネジメントスキルの習得についてのニーズが高いことを感じています。
 自分としても、「メンタルヘルス」の枠に限定されない、現代のマネージャーのスキル習得の支援に努めているところです。

この記事の講師

林 幹浩


<略歴>

経済産業政策、ベンチャー企業経営を経て医師・産業医となる。
現在総合診療医として臨床診療を行いつつ、様々な業種の企業の産業医を務めている。

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